『鎮魂歌』作者:柳瀬羽魅 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角22805文字
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原稿用紙約57.01枚
 其処は一つの森の中だった。沢山の木々が鬱蒼と茂り数メートル先すらも見る事が出来ないような森だった。
 一人の少年が居た。その森の中に一人、佇んでいる。月明かりに照らされたその横顔が青白く見られるのは、月明かりのせいだけではないだろう。
「帰ろうよ」
 そう声をかけられて振り向いた少年の視線の先には、一人の少女が立っていた。
「うん」
 そう言って少女の元へ駆け寄る少年と、それを笑顔で迎えている少女の年の頃は十五、六前後。
 少年は笑顔で言った。
「帰ろう」

 歌声が響く。コンクリート製の冷たい雰囲気の建物の中のその更に暗い部屋で少年は歌っていた。
「何て歌?」
 隣で静かに聴いていた少女が尋ねた。
「分からない」
 そう素っ気無く言った少年に別段何を思った風でもなく、歌い続ける少年を眺めた。
 唇だけが色を持ったような顔をした少年は、微かに動く唇だけが生きていることを告げている。なびいている髪は月の光で白く映る。
「千歳」
 そう呼ばれた少年は歌う事を止め少女を見やる。とても澄んだ碧眼であった。
「何、どうかした? 癒乃」 
「……ううん、なんでもない」
 ただ何となく呼んでみただけだとか言おうと思ったが、呆れること確実である。だから癒乃は口を噤んだ。
 ゆったりとした時間がただ流れる。
「……ねえ、千歳はさ」
「うん」
 静寂の中口を開いた少女は、
「“外の世界”、見たことある?」
 そう、尋ねた。
「外?」
「うん、外」
「今さっき見てきたじゃん」
「違うわ」
 先程見てきた景色は確かに“外”であるのだが、どうやら癒乃が言っているのは違うものらしい。何のことかと千歳が口を開こうとした時、
「遠い国々のこと」
 とても小さな声で呟いた。
「とてもとても遠い国。それは在るかさえ分かっていないのだけれど、それでも此処とは違う世界。此処は、寂しすぎるの。何処か、遠くへ行きたいわ」
 格子窓から見える世界が狭すぎる故に抱いて止まない願望を口に出した所でどうにかなるものなのか。
「無理だよ」
 だが少年は、千歳は否定する。どうにもなら無いことなど初めから分かりきっているのだ。
 すると癒乃は柔らかに笑んで格子窓から視線を移した。
「千歳は現実的ね」
「夢ばかり見ててもどうにもならないでしょ」
 そう言うと千歳は小さく欠伸をした。
「ね、取り敢えず、寝ようよ」
 癒乃は同意する。
 そして二人は、身を寄せ合って、眠った。

 暖かな朝日が一人の肌を刺激する。
 今日は快晴。春のような陽気が深い眠りから優しく起こした。
 癒乃は、ゆっくりと目を開ける。其処には自身以外に、誰も居なかった。
 暫くぼんやりとしていた癒乃であったが、何を思ったかおもむろに立ち上がり、勢い良く扉を開けた。バンだとかドンだとかのレベルではない。それは爆発音にも近かった。
「……お早う、癒乃。大分機嫌が悪いみたいだけど大丈夫? 朝食はベーコンエッグだけれど。癒乃の好きな」
「……おはよ」
 癒乃の態度はお世辞にも淑女のそれとはかけ離れていたが、元々気品など備わっていないのでまあ仕方が無いのであろう。そんな態度にも千歳は文句の一つも言わず、癒乃の目の前にベーコンエッグと食パンを並べ、そしてコップにはブラックコーヒーを淹れた。
「……ブラックは苦手だって言ってるのに」
 不平を並べる癒乃を、それなら自分で淹れろとでも言わんばかりの顔をしたくなった千歳ではあるが寸でのところで思いとどまった。彼女が朝に機嫌の良かった日など、数える程も無いのだ。暫く放っておけば元に戻るので、いつも千歳はこうしてブラックコーヒーを出して少女の眠気が覚めるのを待つ。傍から見れば御苦労な話ではあるが、別段千歳は気にしていない。癒乃の血圧の低さは物心が付いた頃から身に染みて分かっているからだ。
 千歳が自分の分の朝食を並べて席に着いた頃、ブラックコーヒーに砂糖やミルクをふんだんに混ぜた、もはやコーヒーと呼べるかどうかという位の飲み物を飲んだ癒乃は平然としており、
「おはよ、千歳」
 などと挨拶を再びかます余裕などすら出来ていた。
「……いつも思うのだけれど」
 二枚の食パンのうち一つにマーガリンを塗って一口かじりながら口を開いた。
「何?」と返す癒乃もまた、食パンをかじっている。ただし、大量のジャムを塗りたくって。
「甘すぎない? そんなに砂糖ばっかり摂取してたら、太るよ」
「あら、千歳が淡白なのよ。しかもかなりのね」
「そうなのかなあ……」
 それ以後は二人共黙って食事を続ける。食べ終わった癒乃は「ご馳走様。お先に失礼」とだけ言い残し、食堂を去った。
 そして千歳は食べ終わっても尚、食器の片付けの為に此処に残ることとなる。

 彼らには家が無かった。
 家が無いというのは、即ち故郷――帰る家が無いという意味であって、あえて“家”と称すのであれば此処、廃れた工場を改築した建物となるのである。しかし、誰も其処を家とは思わなかった。
 其処に住まう少年少女達。
 戦乱の為に身内を無くし、行くあてすらもない子供達を寄せ集めて出来た一つの家。
 そして彼らは徴兵された者達でもあった。
 孤児には年齢性別関係なく徴兵される制度が採用されてから数年、彼らは多く集められた。気がつけば施設などもあてがわれており、訓練に勤しむ者、勉学に励む者、様々な形でこの制度は役に立っていた。
 そして沢山の彼らの“家族”は失われていった。
 徴兵され、戦場に出され、死んだ。沢山死んだ。誰も何も言わなかった。ただ、ひそひそと聞こえる声は決まってこう言う。
「自分じゃなくてよかった」――と。
 不謹慎だと僕は思う。ただ、それでも何となく分かってしまう僕もまた、彼らと同じなのだろう。同じような境遇で育ったのだから、仕方の無い事なのだろうけれど。
 そして今日も、誰かが死ぬ。
 そして誰もが、それを自分である筈がない事を、望む。
 場所は、すぐ其処だ。飛行機でそんなに長くは行かない距離。
 直接此処に攻撃を仕掛けてくればいいのに。
 そうすれば戦わずに済むし、相手も楽だろう。しかしそうではない事を、今目の前にいる軍最高指揮者――樋渡雪次が語る。
 軍の最高指揮者とは言え、所詮はただの年老いた兵である。年季が入りすぎた為にただの役立たずを化した男で、よって誰もが必要としない、むしろいる方が迷惑な人材であった。
 今、少年少女の若い兵士達が集まっている大きめな部屋は、それでも人で埋もれていた。ひそひそと話し声が聞こえる。
『今日召集されるのはどの部隊だろう』
 だとか、
『いつまでこうしていなきゃいけないの?』
 などと、不安の声は止む筈もなく、ただ静かにざわめいていた。
「北三百キロメートル地点に紛争が起きた」
 樋渡が、ようやく語りだした。するとあたりはまるで水に打たれたかのような静けさを取り戻す。
 そこからは、ただの単調な現状況、軍隊配備についての説明だけであった。現在は双方共に休戦状態にあり、些か落ち着いている事、軍隊配備は、次に交戦するまでには完璧にしておく事、我々は、東側の軍隊を援護する事……
 そして第三部隊が、召集された。
 癒乃と僕は、最高軍、第一部隊に属している。

「朝がベーコンエッグだったのに気分が最悪ってどういう事」
 僕の隣で、彼女は、癒乃はぼやいた。
「まあまあ。そのうちまた作ってあげるから」
 そうしてなだめながら、今朝の事を考える。
 第三部隊は僕達の部隊の中でもそれなりに高く位置する。基本的には、弱い部隊から切り離されていくものなのだが。
 又もや千歳の作った昼食、今日はスパゲティであったが――を、口に運びながら言った。
「ねえ癒乃、変だと思わなかった? ……その、今朝の事だけど」
「何が」
 そっけない返答ではあったが、機嫌の悪い時には返事すらも返してくれない事もある癒乃の事だ。関心を持ってくれたのかもしれない。だから千歳は続ける。
「えっと、これは僕の意見だけれど、第三部隊は広範囲に渡る戦闘に置いて秀でた能力を発揮する。そしてそれはとても難しい事で、全体の戦闘範囲を広げない役割を持っている。それ故に人民の生命を護る為の責任は大きい。普段召集され、戦場に出て行くのは、第八部隊からだ。捨て駒から使っていくものだからね」
 そこまで言って千歳は、自分達の事を捨て駒と称するのに抵抗が無かった事に気づく。癒乃は一瞬怪訝な顔をしたが何も言わず、話の続行を待った。
「……でもそれをしなかった。あまつさえ第三部隊を要請した。重要部隊なのにだよ? 僕は、事態がいつもと同じとはとても思えないんだ」
 はっきりと言った。
 そして返事は、
「そうね」
 たった、一言。それだけだった。
「でも今はお昼だわ。お昼御飯の時間なの。さあ千歳も食べなさい。糖分を摂取しなくちゃ貴方の頭も全回転しないわ」
 癒乃は優しく、笑う。

 其処は一つの森の中だった。沢山の木々が鬱蒼と茂り数メートル先すらも見る事が出来ないような森だった。
 一人の少年が居た。その森の中に一人、佇んでいる。月明かりに照らされたその横顔が青白く見られるのは、月明かりのせいだけではないだろう。
「いつも此処に来るよね」
 少女の名は癒乃。少年は千歳と言う。
「一番此処が落ち着くから」
 腰を下ろした千歳の隣に、釣られて癒乃もしゃがみ込む。月光の青白さが木々の間から透けていたのが開けて、余計に際立って見えた。
「たまには違うとこだっていいのに」
 不機嫌を装っているその声は、それでも多少は外に出た事の悦びに満ちている。頬がほんの少し歪んでいて、笑っていることを示す。
「どうせ木しか見えないよ」
 そう此処は、全てが森に囲まれた盆地の奥にひっそりと佇む場所。今まで彼らが居た“家”は、すぐ其処に在る。遠出なんて出来やしない。まるで隔離された存在であるかのように置かれたこの施設は、孤児兵士の養成所で、其処で寝食する生活を送る。
「つまらないわ」
 そういって彼女はもう一度、
「つまらない」
 よく聴こえる声で言う。それで何が変わるでも無い事など、彼女が一番知っているのに。
 心なしか少し元気が無かったのは、気のせいではないだろう。
 昨日は沢山の兵士達を見送った。最も、第一部隊に属する僕達は皆から見ればただの高みの見物だと決め付けられ、兵士全体に半眼で睨まれて、最後に殺気や憎悪と言ったものも感じられたが。そして第三部隊は旅立っていった。――戦場へと。
 そして今日、彼らは帰ってきた。全員。ただし昨日見送った頃の姿で戻ってきた者は誰一人としていなかった。
 全員、死んだ。第三部隊総勢、百四十二名。
 搬送されてきた直後、命を落とした者も居た。そのうちの一人は、永戸誉という少女で、体中がピクピクと痙攣しており、暫くすると動かなくなった。僕と違う意味で癒乃ととても仲が良かった。その子も、死んだ。声にならない叫びを挙げて、奇声を発する者、精神が狂ったものも居た。最終的に、生き残った者は誰一人としていなくなったのだ。
 癒乃はきっと気に病んでいるのだ。わけも分からないが、何故だか自分のせいなのだと。笑顔がいつものような輝きを見せないのは、塞ぎこんでいるせいだと思う。
 そんな癒乃を見ているのはとても辛いものだった。いつものように笑わなくて、いつもよりも口数が少なくて、何処か遠くを見つめる瞳。まるで別人になったみたいだと、癒乃じゃないんじゃないかとさえ、思ってしまう。
「癒乃」
 声をかけてみても虚ろで、生返事しか返って来ない。辛うじて形作っている笑顔も、直に壊れてしまいそうだ。気丈に振舞っているその姿が、だからこそ痛々しい。
 でも、僕達には傷ついている時間なんて無かった。
 だから僕は、癒乃の手を軽く握り、唄いだす。そういえば、初めて癒乃と此処に来た時も、確かこの歌を歌ったなあなどとしみじみと感じながら。
 すると癒乃は僕の手を握り返してくれる。
「……何て歌?」
 唄い終えてから暫くして、ようやく癒乃は口を開いた。どうやら幾分か楽になったらしい。
「知らない」
 いつも尋ねてくるいつもと同じ質問。
 本当は本当に小さな頃父親から聴かされていたのだが、もうその記憶は無い。何処か心の片隅に残っている筈なのだが。
 直にやって来る静寂を破るかのように、何とか間を持たせようと必死になって話題を捜す。
「明日だね」
「……うん」
「癒乃は、怖い?」
「怖い、けど仕方ないしね」
「うん」
「外の世界、見たかったなあ……」
「見れるよ」
 外の世界の正体を、千歳は知っている。敢えて口にこそ出さなかったものの、癒乃がその正体を知ったとき、何を思うだろうか? 何かを思うこともないのかもしれないが。
「いつ? いつ、見ることができるの? だって私達は明日――」
 彼女の言葉を遮るように、再び千歳は唄いだす。優しいリズム、悲しい音色。そして聴き取れない、何処か知らない国の言葉。
 その少年の歌を、聴き入る事しか出来なかった。

 翌朝、珍しくすんなりと癒乃は目を覚ました。隣には千歳が、未だ規則正しい寝息を立てている。その様は、小さな森の小動物のように見えた。
 もう彼と身を寄せ合って眠ったり、ただ怯えるだけの日々を送らなくて済むのだと思うとやはり少し寂しい。目が腫れている事に気付いたのは、それから暫く経ってからだった。
 癒乃はベッドから降り、音も無く部屋を出た。

「おはよ」
 千歳は早朝から驚いた事がある。
 まず一つは目を覚ました千歳の隣に、癒乃が居なかった事。
 もう一つは癒乃が食堂に居て、名前も知らない資料を眺めながら「おはよ」と挨拶をしてきた事。
 後はいつも食堂に遅く来ているグループが幾つか、早くに来ていた事。
 そして最大に驚いた事が、目の前に朝食が置かれていた事だ。
 いつも千歳が作る事が日課となっていたのだが今日は、今目の前で資料に目を落としながらクロワッサンを一つ頬張っている、低血圧で朝には滅法弱くて機嫌の悪いのが当たり前の癒乃が、朝食を作って平然としている。身形も軍服で全身整えられ、まるで非の打ち所が無い。
「今日、だね」
「うん」
「何か現実感が湧かないや」
「あら、珍しい。千歳が現実的じゃないなんて」
「だって今日僕等は……」
 そう言いかけて、止める。未だ信じられない事なのだ。事実として受け止められないでいる。
 癒乃は何も言わない。ただ、優しく笑っている。いつものあの笑みだ。
 ――どうやら、土壇場では女の子の方が強いものらしい。思わず苦笑してしまう。
 刻々と時間は過ぎる物で、今日はいつに無く早く感じられた。心臓の鼓動が波打つ。
 席を立って、準備をしようとしたその時、食堂に誰かが入ってきた。
「……よう」
 今日の事を知っているのか、気まずそうに声をかけられた。ただ、そういった気遣いも今となっては憎い。
「今日、なのか?」
「……うん」
「……そうか」
 酷く悲しそうな顔をする。やめてくれ。君には笑顔が似合う筈なんだ。
「京輔」
 声をかけられた少年は、悲しそうな顔から戻り、千歳を見る。
 すると千歳は京輔と呼んだ少年を――殴った。

 男の子同士ってこういうものなのだと思う。
 仲が良くて、時々悪くて、喧嘩もする。勿論殴り合いだって。
 畿井京輔は、千歳の唯一無二の親友――この場合、戦友と称すべきだろうが――であった。沢山喧嘩もしたし、口を聞かなかったこともあった。けれど殴り合いは、殴り合いだけは、したことがなかった。お互いに、人を殺す術を知っているから。
 だが今は、今だけは、もう会う事も無いであろう戦友を、送り出す為に、一発位殴ってやったって許してくれるだろう。
 そしてそれはエスカレートする。
 互いに顔が腫れ上がる程殴り合って、へたり込んだ。息も絶え絶えに、満足げに、笑う。笑う。そして、爆笑し始めた。
「痛ェよ、馬鹿」
「五月蝿い、阿呆」
 罵って、また、笑う。何が可笑しいのか癒乃にも、京輔の連れてきた友達にも理解は出来なかったが、男の子とは、こういうものなのだろう。何か、見えない何かで、繋がっている。少し羨ましいと思った。
 私は、誉と繋がっていたのかな――……
 繋がっていたいと、切に願う。もう確かめる術は無いけれど。
「なあ、京輔」
「なに」
「僕はきっと死ぬだろうね」
「だろうな」
「だったらさ、埋葬は、京輔がしてくれよ」
「え?」
「燃やして、骨にして、墓に入れて。そんで手合わせてくれたら、それでいいからさ」
 これは僕の、最初で最期の我儘だろう。聞いて欲しい、願いでもある。
 暫く考え込んで、やがて京輔はゆっくりと
「……分かった」
 頷いた。そして千歳は
「ありがとう」
 そういって、また、互いに、笑った。

 千歳は唄っている。
 遠い昔、母親の墓の前で父親が唄った歌。あれから教えてもらったけれど、題名は覚えていない。
 機内のエンジン音を誤魔化すように、唄う。
 大声で唄うと、とても乱雑な響きになってしまうが、それでも。
 優しいリズム、悲しいメロディ。
 さあ僕は行くよ。
 癒乃、答えを教えてあげる。
 “外の世界”って言うのはね――……

 そして戦闘機はただ独り、敵軍基地に、突っ込む。
 優しくて悲しい旋律は、いつまでも心の奥底に。


+++++


 少女は独り、夢を見た。
 今でも脳裏に焼き付いている、生々しい記憶の欠片。
 ベッドから飛び起き、激しく波打つ鼓動と比例するかのように呼吸も荒い。軽く運動をした位の汗をかいている。どうやら眠れそうに無い。一筋の雫が滴っている。そしてそれが汗ではない事に気付いたのは朝日が昇ってきてからであった。眩い光が水晶体を屈折し、景色がはっきりと映らずぼやけている。ようやく涙を流している事に気付いた。
 頭が痛い。
 当たり前である。同じ夢を見ては同じように飛び起き、また暫くしてから眠る。ここ数日はそれを繰り返し続け、まともに眠った日などありはしないのだ。一日に三時間眠っていればいい方だろう。原因は睡眠不足としか言いようが無い。
 医者に薬も処方されているのだが、それを呑むには胃に何かを納めておかなければならなかった。少女は此処数日食欲がない。無理に胃に納めようとすると吐き気を覚え、折角入れた食物も全て無駄に終わる。そして何も食べずに薬だけを摂取しようとすると胃が荒れ、何も入っていない胃から胃液を出そうとする。悪循環だ。
 少女は生きる屍と呼べそうなものだった。
 数日前までは誰よりも元気があり、周りに活気をもたらしていた存在から打って変わっての変貌である。
 その日、少女は大切な人を失った。
 千歳と言う名の兵士の最期を少女は見た。
 

 その日はこの地方にしては珍しく快晴で、まさに雲一つ無いと言える青空だった。
 そんな気分のいい日に少女――癒乃は溜息を一つつく。年の頃は十五、六といったところか。
「どう、順調?」
 癒乃と同じ格好の、汚らしいつなぎを着た少年は自身の機体から顔を出した。
 今は最後の機体の整備。あと数時間もすれば戦場へと赴く。
「まさか」
 癒乃は言う。
「適当に弄って動かないようにしてやろうかと思っているところよ」
「はは。無理だよ、癒乃じゃあ」
「あ、何それ。カチンときた。千歳は出来るっての?」
「さあ、どうだか」
 あの時ははぐらかしていたけれど、きっと千歳なら出来たのだろう。千歳は誰よりも努力家で、勉強家だ。天賦の才と言っても過言ではなく、誰もが言う。“あいつは天才だ”と。
 千歳が元より勉強の出来る頭をしていると皆は言うが、癒乃はそうは思わない。千歳は誰よりも努力して、それで得てきた力であると信じている。何故なら癒乃は知っているから。千歳が夜遅く、又は暇さえあれば勉強している事を。
 天才とは生まれつき頭の良い人の事ばかりなんかじゃない。
 そしてそれとは対照的に、彼は馬鹿だったのだ。
 戦地へ赴く勇気ある兵士を一名、彼は強制的に離脱させた。兵士は戦闘機に乗らなければ意味を持さない。その戦闘機を、千歳は故障させたのだ。やっぱり彼は天才で、どうしようもなく馬鹿だった。
 自身の戦闘機の不調にすら気付かなかった私は、ただ単純に馬鹿なのだろう。
 死に逝く時間が刻々と近づいてくる。
 不思議と緊張感はあまり無かった。
「第一飛行部隊、出動します。各自準備を」
 冷徹な声がスピーカーから響き渡る。
 よく考えれば私達を心配する者など皆目居ないのだろう。
 孤児であることを理由に徴兵されたのである。身内が存在しない者達の集まりであるからこそ、上の者からしてみれば捨て駒同然で、どうでも良いなんて事は言わずと知れているのだ。
 けれども癒乃は信じていた。少し位哀れんでくれるのではないかと。それが人間の情というものであるのではないかと。
 そういえば、いつだったか誰かとの会話を思い出した。
 少なくとも、その相手は、哀れんでいてくれたと思う。もう、誰だかさえ覚えていないのだけれど。
「知ってる? 第一部隊って別名何て呼ばれてるか」
 その誰かは言う。どうやら誰かから噂として伝わってきたらしい。その子が所属するのは、第三部隊。軍服についた小さな三ツ星が目に入った。綺麗に輝いている。そして私には、大きな一つ星が金属特有の光沢を見せている。
 別名などあったのか、と私は問うた。何と呼ばれているのかと。しかし彼女は口を噤み、中々話そうとはしなかった。
 今にして思えば、あれ程言いにくいものがあっただろうか。処刑宣告をするに等しいその言葉を、彼女は呑み込めずにいたのだ。しかし話してしまっていいのだろうか、もしも傷つけてしまったら? と、思う。
 優しい、とても優しい少女だった。
 そして結局の所最後には言ってしまったのだ。
 優しさ故に隠し事など出来なかった。
「それはね……」
 
 戦闘機の中で回想する事がどれ程危険であるかなど癒乃には重々分かっていた。
 けれどこれから向かう先、私達に未来など無いのだ。敵軍に撃ち落されようがこれから向かう基地に突っ込んで自滅しようが変わらない。勿論回想していても何ら変わりは無いだろう。戦闘機はゆったりと大きな河川の流域を飛行する。青々と茂る森の木々を眺め、その先に見えるコンクリート製の薄汚れた灰色の建物から出る大量の煙がその景色を曇らせる。産業革命が本格的になればなる程、きっとこの地域も工場で埋め尽くされてしまうのだろう。
 大量の森林伐採。
 二酸化炭素の排出。
 工業排水による公害。
 苦しむ人々。
 金に目の眩んだ財閥。
 最終的に利益を得るのは国家のみで、兵器を大量購入し、自国の製品を大量に輸出する。国内で品不足が頻繁に起こっているのにも関わらず、政府は目を瞑り、利益の為に、武力強化の為に、日夜市民を苦しめ続ける。今も尚。
 見えて来た工場に悪態をつきたくなったが、喉まで出掛かって、止めた。言った所で何とかなるものでもない。
 川に沿って戦闘機は群れを成し飛行を続ける。
「いつまでこのままで居るつもりなのよ……」
 あまりの長さに溜息混じりに嘆いてしまう。そして無線にスイッチが入っていた為にそれは相手に筒抜けだった。
 その相手は律儀にも返答する。
「あと数百キロはこのままだろうね。未だ下流区域から脱していない。中流あたりまでは行かないと。……癒乃?」
「暇。暇よ。どうせ突っ込んで終わりでしょ。近くって言った癖に。樋渡の嘘吐き。禿げ。髭親父。駄目監督。」
 思いつくままに悪態を吐きつけ、また沈黙が訪れる。しかし今までのエンジン音だけが響く空間とはまるで違った。雰囲気が、どこか違う。無線の向こうからなにやら音が聞こえるのだ。一定のリズムを保って。つと訊ねる。
「千歳」
「……っ、なに」
 絞り出されたような声だ。何かに耐えている。
 そして遂に我慢の限界はやって来た。
 笑っている。
 それも、かなりハイレベル。割合百パーセント。大爆笑だ。これでは現実感も何もあったものじゃない。
 私達はこれから、死にに逝くと言うのに、だ。
 またふと脳裏に過ぎる、あの名も知らぬ少女の言葉。あの続きは、なんだったっけ。忘れてしまった。
「笑いすぎ」
 思わず此方も苦笑する。珍しい事もあったものだ。どちらかといえば千歳はポーカーフェイスの筈なのだが。
「だってあの人はまだ禿げてないし、髭もそんなに生えてないよ」
 嗚呼、やはり彼は現実的な見解を持っているらしい。
「いいの、そんなこと。勢いよ、勢い」
 自分は相変わらず意味不明なことを言っていると分かっているのだが、他の言葉など見つからないし、大体一言一句考えて言葉を発するのは性に合わない。思ったことを言ったまでだ。
「髭生えてるでしょ」
「人並み。平均的だよ」
 そうまるで、極一般的な子供のように、学校に通っていそうな学生のように、私達は話をする。
 どうして話の内容が教師じゃないのだろう。
 どうして私達は学校に通わずに今から死のうとしているのだろう。
 どうして私達は捨てられたのだろう。
 ねえ、どうして?
 言葉にしようとすると、それは虚空を描き、空に届く前に姿を消した。
「癒乃、もうすぐ。敵軍基地までの距離残り二百キロ」
 そんな千歳の言葉が、痛い。現実味を帯びた、真実の言葉だった。

 目標が、見えてくる。
 ゆっくり、ゆっくりと。けれど確実に。
 そしてそれは肉眼でも捉えられるようになった。
 第一飛行部隊は河川をゆっくりと進む。いつの間にか日は暮れてしまい、戦闘機の光だけが頼りだった。微かに見えるのは、今渡っている河川の流れと、敵軍基地。あとは、全てが森の中だ。殆どが闇にのまれており認識するのは難しかったが。
「もうすぐ、だね」
 癒乃は言う。冷静な声だ。いつもと違ってその声は落ち着いている。年齢の割に大分大人っぽく見えた。そんな彼女を見るのは、月明かりの下二人だけで話をしている時以来だ。やはり恐怖に怯えているのか、それとも諦めの表れなのか。
「癒乃は恐い?」
 同じく此方も冷静に言葉を返す。いつもと変わらない声色だったが。
「もう、どうでもいいわ。どうせ生き残ったって捕虜になるだけだし」
 ガソリンのメーターを見れば殆ど残っていなかった。これでは帰ることは出来ない。行きのガソリンのみが計算され、任務遂行が絶対で、撤退は許されない。そういえば、それ故に異名があったような気がする、と千歳はふと思い出した。無駄な知識は直ぐに忘れてしまうので覚えていなかったが。
「陵辱されそうになったら遠慮なく殺しなよ」
「……馬鹿」
 冗談めかして言われているのにその言葉は重い気がした。しかしこの時癒乃は何も知らなかった。だから何も思わなかった。生き残る事なんて出来るわけが無いのだと、信じて疑わなかった。
 馬鹿だったのは、私だ。

 前線を切って数機が夜の闇に散った。真っ暗な闇に炎が映え、綺麗だと思った。
 私も、ああなるのかな。
 大戦で戦死したお父さん。
 私を捨てて他の男と再婚したお母さん。
 見てるかな、私の事。
「……やだなあ、思い出しちゃったよ」
 思わず、涙が零れてくる。幾滴も、頬を伝う。
「どうして? どうして私達が、犠牲にならなきゃいけないの?」
 孤児だから。何度も何度も、聞かされた言葉。納得なんて出来るわけなかった。けれど、何も言えなかった非力な私達。叫んでも、叫んでも。最終的に、心のどこかで壁を作っていたのだろう。孤児である事を理由として。
 第一飛行部隊、別名、特攻部隊。
 役割は、敵軍基地にその身を捧げる事。それによって被害を受けさせる事。
 真っ暗な闇に映える炎は、仲間達の戦果である。悦ぶべき勲章で兵士として名誉な事だ。そして私達は名誉なまま死ぬ事が出来るのだ。倖せなのだ、私達は。
 だが、それなのに少女の涙は止まらない。
「……癒乃」
 何故なのかと、死にたくないと、嘆き叫んで、それでも心のどこかで諦めがついていて、しかし止まらない。
 死にたい者など、彼等の中に居ようか。
「死にたく、ないよ……」
 だが無情にも刻々と時間は迫る。
「大丈夫」
 沈黙を破ったのは、千歳の言葉。
「大丈夫だから」
 繰り返す。そして千歳は唄い出した。曲名なんて知らない。何処の国の歌かなんて覚えていない。ただ心に残るのは、優しいリズムと悲しいメロディ。
 戦闘機の右翼がガタガタと振動を始めていた。おかしい、とこの時ようやく癒乃は気付いた。
 そしてその時は、既に遅かったのだ。
「バイバイ、癒乃」
 ガクンとバランスを崩した機体は河川へと落ちていく。
 お互いにもう何を言っているか分からない。
 癒乃は最後に千歳の笑顔を垣間見た気がした。その直後に千歳は背を向け、敵軍基地に突っ込んでいたから真実は誰も知らない。
 その機体は、どこか寂しげで、誰よりも孤独だった。
 千歳という名の少年の、名誉ある死を見届けたのは、癒乃という名の少女、たった一人だった。


+++++


 気がついて目を開けたとき、その世界は白かった。決して汚れてなどいないその色を見て、ああ、私、死んだのか――などと、暢気に思ったものだ。しかし実際は違い、身体は白い枕とシーツに埋まり、場所は医務室だった。
 上体をゆっくりと起こしてみても、視界に広がる景色の基調とされている色は全て白。治療道具が唯一、金属特有の光沢を輝かせているのみだ。そこに人影は無い。
 癒乃は昨今の出来事を頭に思い浮かべてみる。どうにも記憶が曖昧だ。確か戦場へ行って死んだのではなかったか――そこでようやく、ある事実が甦った。
 千歳が、死んだのだ。そしてもう、二度と隣に並ぶ事は無い。夜、共に内緒で抜け出す事も。
 何かが自分の中で抜け落ちた感覚。脱力感。私はこんなにも無気力だったのか。
 変わってしまった自分を見るのも、変わらない現実を感じるのも、双方に苦しかった。出来る事なら、何も感じないで居たい。
 そういえば、と何となく過去の自分を思い出す。あの頃の私は兎に角笑顔を振りまいて、少しでも気に入られようと必死だった。生き残る術を、笑う事でしか知らなかったから。役に立つようになったのは大分先の話であったが。しかし今は、どんなに努力したって引きつった笑みしか浮かべられないだろう、と思う。随分と消極的になったものだ。千歳が見たら何を指摘するだろうか。現実的だった彼は多重人格についてあまり良くは考えていない。むしろ批判的だ。だからこんな私を見ても演技だとか病気だとか適当な理由をつけて納得させてしまうのだろう。それで私も納得してしまうのだ。
 千歳が、居たなら。
 雫が頬を伝い、真白の枕に僅かな染みが出来る。枕に到達した瞬間、その雫は広がり、まるで花の開花のようで。
 雫の量は次第に増えていき、少女の喉はゴクリと鳴った。嗚咽交じりに声を発する。
「どうして、何で……!」
 後悔してももう遅い。千歳は既にこの世に存在しないのだから。頭では解っている。しかし、精神が全面的にそれを拒絶する。
 拒絶する事によって得られるのは喪失感、虚無感。――何も得られないに等しい。
 何故。何故。何故。
 脳内の回路によって紡がれる言葉は同じ。何故?
 彼はどうしようもなく馬鹿だったけれど、それでも皆から必要とされていたし、天才だ。矛盾しているのだけれど、千歳は天才だったのだ。
 そんな有能な人材だったのにも関わらず、彼は私を護って死に、私は生き残った。
 私が、死ぬべきだったのだ。
 なのに、千歳は、最期に笑って、死んでしまった。

 消毒液の臭いが充満する医務室で過ごし始めて何日が経ったのだろう。食欲が失せ、やせ細った腕に点滴の針が一本、管を伸ばして腕と液体の入った袋を繋ぐ。ピチャンと音を立てて弾け、管を通じて体内に押し寄せる。その薬品には睡眠効果もあるそうなのだが、針を刺されている腕を動かせない状態に晒されていれば、嫌でも眠気など吹っ飛ぶ。仮に眠ることが出来たとしても、千歳との一件を夢に見て、悪夢に魘され飛び起きる。眠っていないようなものだ。しかし殆ど意識は眠っている。眠りは深いが、脳は覚醒している状態のレム睡眠ではなく、ノンレム睡眠に近い。しかし意識は保っているのだ。医務官の質疑にはイエスかノー程度の返事は示すし、自ら起き上がったりもする。目を開けている事すらあるのだ。
 生きる屍と、人は言う。死人も同然だ、と。
 中にはいっその事殺してしまえなどという意見もあったのだが、それでは大人が世間の目を受ける破目になるのだろう。それを意地でも避けたい大人達は結局癒乃を生かしている。こんな所に孤児とは言え十代の若い少年少女らを閉じ込めている時点で既におかしいと思うのだが。法で制定されたからであろう。酷い世の中になってしまったものだな、と感慨にふける。
 医務室の前を、女子が数名通り過ぎた。此方をチラと見やり、こそこそと逃げるように歩いて行く。
『今の子って……』
『……あの?』
 彼女らの声が聞こえた気がした。被害妄想なのかもしれないが。それでも、衰弱していることに変わりは無いらしい。きっと体力も大分落ちているだろう。復帰できるのだろうか。
 時刻はもう直ぐ昼。十二時を指そうとしていた。
 今の時間は成長期云々はともかくとして、人類が生理的に空腹を訴える時刻ではないのか。しかし相変わらず癒乃の胃は、食物を流し込む事を、拒絶している。
 窓を眺めると其処は、色のある場所。モノクロ画面のような医務室とは、まるで違った世界、存在であった。
 私なんかとは、まるで違う、輝いた――……
「何、考えに耽ってんだよ」
 背後からの何者かの声に反応し、職業病なのかは分からないが思わず受身を取ろうとした。が、その必要はまるで無かった。
 見知らぬ兵士でもなく、研究意欲に満ちた医者でもなく、当然の如く千歳でもなく、其処に立っていたのは。
「……京輔……」
「反応薄いなあ。折角久々に登場したって言うのに感激の言葉とか無いのかよ」
「何て言って欲しかったのよ」
 とても癒乃の口からでは言えないであろうことを言われるのは覚悟していたが、京輔が発した言葉は余りに鮮烈だと言えた。
「ああ、我が愛しの千歳と見間違えるほど格好よくなって!……とか言ったら怒る?」
「キレる」
「ごめんなさい」
 素直に京輔が謝った所を見ると余程癒乃が恐ろしい形相だったことが窺える。
 そもそも京輔は千歳よりも格好いいとかの比較ではない。明らかに京輔の方が容姿は良いのだ。遊び過ぎる辺りは千歳と正反対と言えよう。それでも彼らは戦友以上の関係だと見ているだけで誰もが知れた。
 そんな千歳と深い関係であるのに、千歳が亡くなって数日しか経っていないのに、それでも彼は、普段と何ら変わらない屈託の無い笑顔を向けている。それが癒乃には理解し難かった。
「千歳と見間違える筈が無いわ」
 敢えて“筈が”を強調して言ってやったら幾分かへこんだ様子を見せた。そして更に追い討ちをかける。
「千歳の方が断然まともだもの。貴方みたいな遊び人とは違って」
「うわ、傷つくなあ。俺は遊び人じゃなくてちゃんと働いてるよ」
 ほら、と軍服を見せる。成る程。癒乃が着ているのは赤いチェックの寝間着であり、癒乃と比較した場合、彼は働いている事になる。
「なら、どうして働いている筈の人が見舞いに来てるのよ」
「今はお昼休みだから。昼一緒しようと思ってて」
「残念。私遠出は出来ないの」
 事実ではあったが、外に出たくないのが本義である。沢山の人の目に触れたくはない。
「それは良かった。俺も食堂には行きたくなかったんだ。――だから、持ってきた」
「……え?」
 手渡されたのは、ひんやりと心地よく冷えた栄養バランス食品。何ともいえない触感からして、ゼリーであろう事は容易に察しがついた。
 しかし妙である。食材は食堂に並べられているが、調理するのは自分達だ。自給自足が理想的らしいのだが、辺りは木々に囲まれていて、何も採れない為に食材だけはどうやってか調達されている。それでも既製品などは無いはずなのだ。この、ゼリーのような既製品は。
「どうやって手に入れたか、だろ?」
 心中を見透かしたかのような問いに対して癒乃は頷く他ない。
「今日、街に出動要請があった」
 語りだした少年の顔は、悪戯に笑んでいる。絶対に何か仕出かしたのだ。背筋が凍るのを感じた。
「テロリストだよ。手榴弾やらライフルやら、一体何処で手に入れたんだろうね? 軍専用の筈なのに」
 悪戯な笑みは、更なる破顔を堪えているようにも見える。くっ、と声が洩れた。
「まさか」
「ああ、違うよ、俺じゃない。でも、軍の奴であることは明らかなんだ。しかも、手榴弾、ライフルを主に使うのは?」
「……第二戦闘部隊」
「当たり。それで罪滅ぼしで連れ出された」
 京輔は、第二戦闘部隊所属だ。
 話は続く。
「それで、帰りに街に寄って、癒乃への見舞い品を選んでた。何も他から言われない所を見ると上手くカモフラージュ出来たようだけど」
 そうだ、と癒乃は思う。こういう所が千歳と違う所なのだ、と。
 出動要請が無い限り、余程の理由がないと外には出してはもらえない。だから夜にこっそりと、千歳は癒乃を誘って抜け出した。それを彼はいとも簡単に、こんな白昼堂々とやってしまうのだ。
 私の、為に。
「どうして?」
「どうして、って? 簡単だよ。癒乃が心配だったから」
 ストレートに気持ちを表現できてしまうのも、京輔の良い所だ。だから多くの人に好かれるのだろう。
 食べよう、と言われて癒乃は逡巡する。軽い目眩と、吐き気。しかし折角自分の為を思ってまで買ってきてくれたのだ。食べないと無礼である。
 だから癒乃はゆっくりと、白いキャップを回し、開けて、――口に含んだ。
 くっ、と一瞬身体が拒絶反応を示したが、飲み込んでしまった。そして吐き気は納まった。
「……美味しい」
 久しぶりに自分の口から栄養を取り込むと、体中に力が行き渡る気がした。いつもの点滴とは違う。
 それが嬉しく、素直に「ありがとう」と口にする事が出来た。
 京輔は歯切れの悪い返事を二言、三言返して、癒乃と同じ物を口に含んだ。
「……美味いな」
「うん」
 葡萄の匂いが心に沁みる。甘酸っぱい味が、舌に残ったままで。
 医務室には、彼と彼女の、二人きり。葡萄の匂いが広まっている。
「ありがとう」
 もう一度、彼女は言った。


+++++


 此処は綺麗な蒼い空の良く見える、丘の上。
 其処に一つの石碑がある。漢字が多くて読めないけれど、二文字だけは、見て取れる。
 その墓の前に、二人の人間がやってきた。年の頃はそろそろ二十歳になるかならないか程度。
 性別は双方に違い、それぞれ男と女であった。
「……いい眺め」
 女が言う。長く黒い髪がなびき、白い顔に映えている。
「こんな所で眠っていられるなんて……幸せね」
 女の言葉にああ、と頷いた男は石碑に寄って行き、花を供えた。
 それは豪華とは決して言えなかったが、何よりも輝いて見えた。
 沈黙が漂うが、それは気まずいものではなく、穏やかなものだ。二人して手を合わせ、黙祷を捧げた。緩やかに風が吹く。もう寒さは感じなくなった。春が来たのだ。墓の周りに無造作に生えた野草にも、どこか彩りまであるような気がしてくる。
「此処に来るの、凄く久しぶり」
 伏せた目を開けて、墓と向き合う形で居る女の横顔に、男は一瞬目を見開いた。
 女は笑っている。
 幼き日の、あの時のように。
「あの日も貴方が此処まで連れてきてくれたわよね」

 医務室で生活するようになって数日、あれから癒乃は、自分で動き回れる程に回復した。
 やはり点滴と自分の口から摂取するのとでは、雲泥の差があるのだろう。
 拒食気味だったのも今ではすっかり治り、空腹まで訴えるようになった。
「……退屈」
 毎日毎日、生きる力すらも衰えていた頃とは打って変わって、幾分か落ち着きを取り戻した。元々がポジティブ思考であったから、周りの環境の変化にも基本的には無頓着だ。ただ今では心にぽっかりと穴が空いている感じがする。何かが物足りない。
「退屈」
 本日何度目だろうか。医務室での生活にも慣れた物だが、流石に日々此処に訪れる負傷者達の視線には一向に馴染めない。酷い物になると、興味や物珍しさではなく、睨んで来る物までいる。私が何をしたのだろうか。
 きっと第一戦闘部隊は癒乃を除いて全滅した為、唯一の生き残りであった癒乃が怨めしいのだ。そんなのはただの当て付けだ、と癒乃は思う。生き残りであったからそう思うのかもしれないが、生存者を疎んで何になると言うのか。私を疎んで嫌って、怨み続けて、それでどうなる? 私自身は構わないが、怨み疲れて止めてしまったら、その人の心には何も残らなくなる。虚しいだけだ。だが、それでも怨まずには居られないのだ。憎くて堪らないのだ。友達が死んだ人も居ただろう。恋人が死んだ人も居たかもしれない。或いは、最も大切な人を失ったのかもしれない――……
「何、物思いに耽ってんだよ」
 気付けば彼の顔が目の前にあった。足音があまりしない歩き方を教え込まれており、癖になっているとは言え、気配までは完全には消せない。死ねば消え失せてしまうけれど。
 また医務室の前を数名、珍妙な物を見るかのような面持ちで通り過ぎる。平気とは思っていても、心の奥が少し痛んだ。
「もう動いても平気なのか?」
 そんな癒乃を知ってか知らずか、唯一癒乃に大して変わらずに接している少年、京輔は問う。癒乃は心に蓋をした。平常心を装って、
「うん、まあね」
 と答えた。
「その割には元気じゃなさそうだけど?」
「……」
 その問いには答えに詰まる。体調的に言えば元気だ。けれど、感傷的になっているのは精神的に完治していない証拠だろう。完治してしまえば千歳の事を忘れてしまう気がして、恐くて、拒絶する。
「元気だけど、元気じゃない」
 まるで餓鬼の言い訳のようだ、と知りつつも、他に答えは無い。例え理解されなくても。
 ただ、京輔の場合、最初から理解しようとしないから、深く考えて答えなくて済む。気が楽なのだ。今更ながら普通に接してくれるのが京輔で良かった、と思う。彼はからからと乾いた声で笑う。純粋に心から笑っているのだろうな、と思わせる程に彼の笑顔は純真無垢で、まるで穢れが無い。今まで無理に笑顔を作ってきた癒乃は、彼を羨ましくさえ思う。笑いたい時に笑い、泣きたい時に泣く。彼はそんな人間だ。癒乃と同じく、千歳もまた、京輔とは正反対の人間であった。泣きたくなるのを抑え込むのは、逃げている気がして、辛い。けれど涙を流す暇など無かった。退屈退屈、と日々嘆き叫んでも、それでもそんな猶予は無かったのだ。どんなに矛盾していても。
「いつまでこうしてるつもり?」
「知らない」
 こっちが訊きたいぐらいだと言わんばかりの素っ気無さで答えると、私って嫌な女だな、と思う。
「……医務官が教えてくれないから」
 一言だけだと余りに冷たすぎると判断して、理由を少し付け足してみる。そんなに大差無いが。
 ただし医務官が教えてくれないのは事実であった。何度訊ねてみても適当にはぐらかされている感があり、はっきりとした返事は無かった。
「ひょっとしたら罰として人体解剖の実験体になれって言われて人造人間にでも改造されるかも」
 冗談で言ったつもりなのだが京輔がどう受け取ったかは知らない。
 でも、一言、彼は言う。救いの言葉を、差し伸べる。
 助けて、なんて言ってないのに、どうして通じてしまうのかなあ?
「……じゃあ、逃げよう」
 彼は言う。
 待ち続けていて、それでも、誰にも何も言わなかったから、ずっとずっと言われなかった言葉を。
 例えば一緒に行こうとか、頑張ろうとか、そんな事を囁かれても、私は信用しないだろうし、心が楽になったりすることは無い。
 私が待ち続けていたのは、同情でも、社交辞令でもなんでもない、私が欲したのは、逃げるための言葉。卑怯だとか臆病だとか言われたって構わない。自分は自分なりに闘ってきたのだから、何を言われても、もう立ち上がる気力さえ無い事がある。支えとなる人物が欲しかった。必要だったのだ。
 そしてそれは、今までは千歳だった。
 そして今では、彼、京輔に寄りかかろうとしている。
 醜い女だな、と思う。このままじゃ駄目なんだって、解ってる。でも私は今は疲れ果てて、普通に立っては居られない。
 私が飛べない鳥ならば、彼は私を癒す止まり木となろう。
 しかし、鳥はいつまでも其処にとどまっているわけにはいかない。
 だから。
「逃げるわけにはいかないの」
 少女は、この時この瞬間、決めたのだ。
 もう逃げるのはよそうと。
 立ち向かわなければ何にもなら無いと。
 未だ自分の足で歩き出せる程勇敢ではないけれど、向かってくる壁に自ら向き合ってみよう。
 そう先ずは、現実を受け止めることから。少しずつ、始めよう。

 休日。隊員達が丸一日の休息を許される日。各隊ごとに日は違うのだが、その日、第一部隊は休日で――最も、毎日が休みだと言っても過言ではないが――第三部隊は戦闘から帰ってきた直後で、一時の休息を与えられていた。
 最近は戦闘の激化が目に付くようになった。物資の配達にも普段の二倍以上の時間や労力を要するらしく、頭が決して良いとは言えない癒乃でさえ、自国が苦戦しているのだと分かった。
 負けるのが判っていて、何故、戦う?
 休日の最中にも関わらず癒乃が勉強しているその国は、地球温暖化などが進んで海の奥深くに沈んでしまった島国だ。我々の祖先は持ちうる限りの技術、努力、労力を注ぎ込み、何をしたのか一部分の大陸を残す事に成功した。
 沈んでしまった国の歴史を調べる過程で、数世紀前の歴史に辿り着く。まだ数多の大陸や島が存在したその時代、土地の所有権を得る為に、国民全体で戦ったと言うその国は、結局敗戦し、他国の提示した条件を呑むことになる。それでも最後まで足掻きに足掻き、力で捻じ伏せられ、そして武力解除を行った。それから数百年は、平和だったのだ。犯罪こそ無くならなかったが、我らの祖先が居住した大陸よりも、遥かに平和であった。他国からの評価も高かった。しかし産業革命の過程で爆発的な環境変化によりそれらは破壊された。二酸化炭素排出量は一向に減る気配を見せず、彼らは何の対策もしなかったために、滅んだ。愚かである。
 更に歴史をさかのぼる事数百年、その時代は“金の国”と呼ばれていた事が分かる。それらを知った各国の猛者達は、国の制止を振り切り、金を探し当てるため海に出た。そして誰一人として発見する事は出来なかった。
 それもその筈。その国はとうに金など底をつかせていたのだから。今現在では、明確な場所は定かにされなくなった。消えてしまった島国。
 その島国は、最後まで戦ったのだ。国家全体厳戒態勢を敷き、国民皆がそれに従う。まるで今の私達のように。強制的に武力を要される。そしてそれに従わなくば、私達の居場所は無い。
 馬鹿だなあ、とか、くだらない、だとか、様々な思いは交錯する。けれど誰も何も言わないのは、やはり。
「“過去の大陸と歴史”?」
 いつでもこいつは神出鬼没だな。と表情一つ変えずに読んでいた書物から顔を上げた。そこには思ったとおり、京輔の明るい笑顔がある。何が楽しいのかまるで分からないのだが。
「いつか、異国の地を踏んでみたいって思ってるって言ったら、笑う?」
 彼ならば、苦笑する所だ。「そんな場所、無いでしょう?」って。
 嗚呼、もう、逃げないって決めたのに。
「俺も行ってみたいよ」
 そんなに明るい顔で言わないで。私が隠れてしまうから。
 貴方はきっと、私の心に気付いていないでしょう。こんな醜い心、見せられないもの。
「何、その本に載ってんの?――……うわ、何此れ、字しかないじゃん!俺無理だよ、そんなの」
 覗き込んできたその顔は、癒乃の視界一杯に広がり、不覚にも目のやり場に困ってしまった。やっぱり、顔立ちは綺麗で、肌は白くって、黒い髪は痛んでいなくて羨ましい。何よりも、その真っ直ぐな瞳は絶対に持ち得ないと思った。
「……羨ましいな」
「え?」
「ううん、何にも」
 私は貴方のように素直じゃないから、何も言わない。
「意地悪」
 意地悪だと言われたって、直りはしないだろうから。
「ねえ、そんなことよりも今日は、何処かに連れて行ってくれるのでしょう?」
 突然話を反らされて、不服そうな顔をするその姿でさえ、醜くなんて見えなくて。人気があるのも今になって頷ける。
「二部隊が休みなのは稀だからな。今のうちに行っておこうと思ってて。今日は外出許可もちゃんと出すよ」
「何処に行くの?」
「それは内緒」
「……意地悪」
「お互い様」
 そんな事、と言いかけて、止めた。意地悪なのは、私の方だ。
「癒乃の分の外出許可も出しておくから。こんなに元気なのにまさかドクターストップはかからないでしょ」
「え、許可なら私も一緒に――……」
 癒乃の言葉を指で遮り、京輔は笑いながら癒乃を見た。
「寝間着のままで外に行くつもり?」
「あっ!」
 癒乃はまだ、医務室で生活している事を、忘れていた。

「ねえ、何処に行くのよ?」
「だから、まだ内緒だって」
 そんなやり取りをもう何度繰り返しただろうか。歩きながら何度も何度も、癒乃は京輔に詰め寄り、同じ質問を繰り返す。
「歩いていればそのうち分かるでしょ」
 そう彼は言うが、癒乃にはまるで想像が付かない。
「どれくらい歩くの? もう結構歩いたじゃない」
「まだ二十分しか経ってないじゃん」
 まあそうではあるのだが。癒乃達にとって二十分の徒歩など雑作も無いことだ。耐久戦で三日間歩き続けることもある程だ。並の体力ではやっていけまい。
 しかし何も言われずに何があるか分からないような道を歩き続けるのは不安というものがある。
「ねえ、ヒント頂戴?」
「何の」
「だから、私達が今、何処に向かっているか」
 せめて、大体の予測さえ付けられればいいと思ったのだ。
「言えない。ヒント言ったら癒乃、直ぐ分かっちゃうから」
 それでも京輔は、断固として何も言わない。これでは一寸先は闇、だ。
「分からんないよ」
「まあまあ。もう直ぐ着くからさ」
 以後、歩き続ける事小一時間。京輔等にとってもう直ぐであっても、常識的に言えばもうすぐなんてものじゃない。
 いい加減怒鳴ろうかと思い始めた癒乃が口を開こうとした瞬間、
「――……着いた」
 京輔は言った。
 二人の前は、視界が開けており、小高い丘になっていた。
 そして癒乃は、この場所を知っていた。
 この場所は。
「……千歳!」
 癒乃は叫んだ。
 そう、この場所は、この森は、いつしか通うようになった名も無い丘。夜に訪れると青白い月光が千歳の肌を青白く照らし、恐怖したのを覚えている。今でも鮮明に、忘れられずに。
 結局の所、やはり千歳に依存している自分がいるのに気が付いた。
 死者に逃げても、どうにもならないことなんて、始めから知っていた。
 小高い丘の上に新しく建てられてたのは、千歳の名が刻まれた、小さな石碑。それに供えられた、申し訳程度の小さな花。
 癒乃は走ってその石に駆け寄り、狂ったように一つの言葉を繰り返す。
 千歳、ちとせ、チトセ。
 まるで機械仕掛けの人形の如く、同じ言葉を何度も、何度も。
 目からは涙。太陽の光でそれは宝石のような輝きを見せる。
「………」
 京輔は、何も言わなかった。ただ、優しく癒乃を見ていた。

「ごめんなさい」
 日中に出ていたにも関わらず、もうすっかり日は暮れ、見たことがある景色になっていた。青白く月光が、二人を照らす。そこに千歳は居ないのはとても寂しい事だけれど、もう幾分か楽になった。赤く腫れている目は、未だ痛々しいけれど。
「こんなに泣き続けたの、初めて」
「だろうね。こんな癒乃、見たこと無い」
 今まで耐えてきた分の涙が、溜め続けたモノが、一気に押し寄せたのだろう。お陰で清々しく、自然と笑顔を浮かべている。その方が癒乃には似合うと、京輔は思った。何故か言葉にはしなかったけれど。
「どうしても、千歳を癒乃に見せなきゃいけないと思った。でもあの時、癒乃は重症だったし、精神的にも不安定だったから、いけなかったんだ」
 まるで誰も居ない中一人、独白するかのように、ポツリ、ポツリと呟く。
「そして集団墓地の中に、千歳を入れるのは可哀想だと思ったんだ。俺の自己判断でした事だから、許して欲しい」
 そして、頭を下げた。
「……此処の事、千歳から聞いてたんだ……」
 何だか、複雑な気持ちになる。でも、嫌な気分じゃない、と思う。
「良かった。良かったよ……千歳は此処に居る。ありがとう、京輔。これからも、此処に来て、千歳に会うよ。私、分かったの。千歳に頼らない事ばかりが、逃げない事じゃないんだって、分かったの」
「……うん」
 分かったから、だから、これからも私は此処に来る。
 例え戦争が終わって平和な世の中が来ても。
 この施設を追い出されても。
 それでも、千歳は此処に居るから。
「……帰ろうか」
「……うん」
 口ずさむのは、聴き慣れたいつかの悲しい淋しいメロディ。口ずさむ。
 優しいリズムに乗せて、言葉なんて分からないけれど、それでも私は忘れない。

 ありがとう、千歳。
 ありがとう、京輔。
 私は忘れない。
 優しいリズム、悲しいメロディ。
 誰かに送る、レクイエム。
 一人でもいいから、心に残りますように。


 ――何処か遠くの、知らない国へ旅立った、一人の友人へ捧ぐ。

2004-04-19 15:00:44公開 / 作者:柳瀬羽魅
■この作品の著作権は柳瀬羽魅さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久しぶりです。思っていたよりも時間が掛かってしまって(普段暇が無かったのです)
取り敢えず、これにて終幕、です。誤字脱字程度の修正はあるかもしれませんが、一応確認はしましたので、指摘してくださると嬉しいです。感想、助言もお願いしたいです。今まで読んでくださった方、ありがとうございました!次作は、構想中です。学園物とか憧れてますが。
この作品に対する感想 - 昇順
突っ込むって事は、千歳は死んじゃったんですか!?そこが知りたい!話の内容が、とっても良かったです!
2004-03-13 15:45:32【★★★★☆】ニラ
戦争しているっていうのがよく分かります。途中、なにげにグロいですね。やっぱり戦争なんだから、こういう描写はすごく必要だと思います。これって続きモノなんでしょうか?それとも短編?ではでは
2004-03-13 18:50:06【★★★★☆】rathi
ニラさん、rathiさん、ありがとうございます!話は今構想中です。まとまったら書こうかと思ってます。修正部分もありましたので;
2004-03-14 18:13:41【☆☆☆☆☆】柳瀬羽魅
こんにちあー・・・。戦争物ですかぁー・・・自分も今変な戦争者書いてるんですが・・・全然及びませんねー・・・(汗 描写にセリフ回し、もう尊敬します。
2004-03-27 21:34:57【★★★★☆】ベル
心情と情景の描写、話のテンポが全て私の好みでした。主人公たちの気持ちがしっかり伝わってきます。回りくどくなく、かつ軽すぎない描写がストーリーの寂しさ?虚無感?みたいなのを際立たせているとした。続き書かれるんですよね?楽しみにしています。
2004-03-28 13:47:52【★★★★☆】白雪苺
ちょっと私には難しい気がしましたが、おもしろさは伝わってきました。 臨場感?も伝わってきて、うまい!と思いました。
2004-03-28 14:03:47【★★★★☆】藍
言葉使いがステキですー!戦争モノですかっ!私には書けない分野ですよ〜!結構むごいのとかも好感持ちます!心理描写とかもステキ!私は…ど下手だから心理描写なしなんで…すごい羨ましい限りです!
2004-03-28 22:55:54【★★★★☆】ハルキ
ベルさん、白雪苺さん、藍さん、ハルキさん、感想ありがとうございます!力になります!描写は悪戦苦闘中ですよ(苦笑
2004-04-05 14:16:52【☆☆☆☆☆】柳瀬羽魅
読ませていただきました。戦争ものというだけに、かなりヘヴィーな翳が見え隠れしますが、文章そのものは非常に読みやすく、情況が読み手にダイレクトに伝わってきますね!これはなかなかの手法だと思いました。ワタシは描写が下手な物書きなので、参考になります!
2004-04-05 14:18:52【★★★★☆】小都翔人
計:28点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。