- 『灰色』作者：仲村藍葉 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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もう空が色を失ってからかなり経つと誰かが言う。
この灰色の空の向こうに未だ青色があるのだと、誰かが言った。
灰色
「君、あの空は何色に見えるかい？」
唐突に友人であるカラが云った。
彼のこう言う癖は昔からなので、僕は特に抑揚もなく、空を見上げながら、
「灰色じゃあないか」
とだけ答えた。
「そうだ、確かに灰色だね」
カラは只小さく笑って、
「今、僕があの空が青色だといったら如何する？」
「普通だったら皆に変人扱いされるだろうね」
僕は答える。
するとまた小さく笑う。
今度はゆっくりと掌を空へと伸ばす。
そのまま空を握り締めて。
再び手を下ろして。
掲げた自分の手を見つめると、呟いた。
「本当はまだあの空の向こうの方に青い空があるのかもしれない」
その瞳に観る事の無いこの空の灰色のような淡い夢を、カラはいつも口にする。
「もしかすると、あの空の色は僕には灰色に見えるだけであって、実は真っ青かもしれない」
いつか本当に起きるのかのように楽しそうに云う。
僕はその隣でいつも長いマフラーを巻きながら、彼の話に耳を傾ける。
誰も聞かないような、本当に夢の様な甘く淡い戯言を。
唯一人で。
このいつ住人がいなくなったのかわからない廃ビルの屋上で聞き続ける。
「ユウも、僕の事を変人だと思うかい？」
まるで確認するかのように時折カラはそんな質問をする。
「君のそう言う所は昔からだし、変わってるかもしれないけれど、頭がおかしい訳じゃあないだろう」
寧ろ彼はとても頭が良い。
続けて、
「それに、君の話を聞くのは嫌いじゃない」
と云う。
すると彼はいつものように小さく微笑んでから、空を見上げて
「そう言うと思った」
といい、更にいつもの様にこう言うのだ。
「だから、君が好きなんだ」
いつか
いつか
君が。
色を失ったあの空に
鮮やかな青色が戻る時を
本当に見られたらいいのにと思った
僕にとっても
君はモノクロームの写真の中で色を映す
灰色のような淡く綺麗な存在だから
夢が現になればいいのにと
それはとっても勝手な事だけれど
僕は。
いつも
いつも
いつも
君の隣でいつものように願っている。 - 2004-03-06 22:29:31公開 / 作者：仲村藍葉
■この作品の著作権は仲村藍葉さんにあります。無断転載は禁止です。 - ■作者からのメッセージ
長編書ける人を尊敬します。書こうとしたら、いつまでも止まらないので（汗）。
この二人でまたお話は書きたいと思っています。お気に入りなんで。
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小説なのに詩的な雰囲気・・・。良いですね〜、なんか蕩けそうですよ。雰囲気も幻想的で、人物も不思議な感じでいいんですが、いかんせん短いと思いました。
2004-03-06 22:38:02【★★★★☆】堤初めまして、小説の様な詩、見たいでよかったのですが、自分はロクな小説もかけないのですが…空白が多いと思いました、それでも、小説の様な詩と言ういい感じが出ています、次の作品もがんばってください2004-03-07 00:30:08【☆☆☆☆☆】白露詩的な雰囲気で、私的にはこういうのがとても好きです。曇り空と、廃ビル。灰色を象徴する二つの印象が、物悲しさ寂しさを語っていて、読んでいるだけでその様子が想像できました。空白は少し多いので、もう少し少なくしてもよいのではないでしょうか。私的にはとてもよかったと思いました。2004-03-07 11:37:38【★★★★☆】冴渡タイトルが気になって読んで見ました。不思議な感じがしてよかったです。2004-03-07 15:36:46【★★★★☆】灰猫詩的な雰囲気かもしれませんが、きれいに読めました。。また違った切なさに出会えた気がします。。2004-03-08 14:56:14【★★★★☆】葉瀬 潤計：16点
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