- 『no answer』作者:黒子 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
- 全角972.5文字no answer
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原稿用紙約2.43枚
人のために何かがしたくって、僕は夏休みにボランティアグループに参加した。
貯めてたっていうよりは、貯まっていった貯金。それを全部おろして、行ったのは外国だ。
白い砂漠が果てしなく続く、暑い国。
……もしかしたら、そのどこかに地雷が埋まっていたって、ちっともおかしくなんかない、危険な国。
ジープに揺られて、三時間。僕と一緒に車に乗った人たちが、隣でひっきりなしにゲェゲェ吐いてた。そしたら、少しだけ木と、草と家があるところに辿り着いた。
用を足すなら今のうちだ、って言われたから、僕は車を降りた。他にも何人か。
ほとんどの人はかたまっていったから、僕はその人たちとは少し離れた、木の側に行こうと思った。
……木と、僕の、間。
松葉杖代わりみたいな木の棒によりかかった、男の子か女の子か分からない小さな子供が、黙って僕を見つめていた。
僕はとりあえず、にこり、と、笑う。
その子は、笑わなかった。
「どうしたの?」
覚えたての、現地の言葉を使って、話し掛ける。
……その子は、何も答えなかった。代わりに、杖をつきながら、ひょこひょこおぼつかない足取りでこっちへ来たから、僕もその子に歩み寄った。
僕はその子の前まで行くと、目線を合わせるように、座り込む。
……横に、持ってたリュックを、ぼすん、と置いた。
「……こんにちは。どうしたの?」
もう一度、話し掛けた。
その子は、何も、答えなかった。
そして、リュックを引っつかむと、松葉杖みたいにしてた棒を放り投げて、すごい勢いで走って逃げた。
「……」
……僕は動けなかった。
おろした僕の貯金全部と、日記にしてたノートが入ったリュック。ほかに、水と、保存できる食べ物。
それを奪ったその子をの背中は、すぐに見えなくなった。
……僕は、ボランティアでここへ来た。
あの貯金全部、くれてやるつもりで来た。
……なのになんで、盗られたのが悔しくって、たまらない気持ちになるんだ?
……体調不良を理由に、僕は日本に帰ってきた。
出かける前の、あの何か揚揚とした気持ちは、そこには、なかった。
END - 2004-03-04 15:07:49公開 / 作者:黒子
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短くスッキリした文章ですが、テーマは深いですね。主人公の気持ち、よくわかる気がします。
2004-03-04 16:01:27【★★★★☆】小都翔人まるで主人公が書いた日記を読んでいるような小説でした♪読みやすかったです!2004-03-05 02:23:44【★★★★☆】律初めて黒子さんの作品を拝見させてもらいました!小都翔人さんと同じようにテーマが深いですね。。文章もとても読みやすくて、またこういうショートを拝見したいです!2004-03-05 11:52:44【★★★★☆】葉瀬 潤計:12点
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