『RED NOTE』作者:琴子 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約7.75枚
私は今、片手に赤色のノートを持って呆然と崖に立ち尽くしている。
これには・・・事情があるのだ。

1月10日
「ねぇ、知ってる?呪われたノートの話!」
私の親友、桜子が休み時間に話題をもって来た。
「呪われた・・・ノート?何それー、もしかしてコレ?」
私は両手で首をつかんで「うげぇ」と言いながら首吊りの真似をして見せた。
「はは!凛ってば。そんなことしてたら呪われるよ?マジで。」
私は桜子の言葉が、真剣ではないと思っていたので笑いながら返事を返した。
「冗談、冗談だって!」
すると、桜子はいきなりがたがたと震えだした。
「ちょっ・・桜子どうしたの!?」
すると桜子はがたがた震えながら私を指差し、
「次は・・・お前だ。」
と言った。それにはさすがに私も恐怖感を覚え、きゃっ。と悲鳴をあげてしまった。すると桜子はケラケラ笑い出し、
「なぁーに、マジびびってんの?」
と言いながら、ノートの話をし始めた。
「その呪われたノートはね、赤くて・・・分厚くて。私が聞いた話だとね、友達から自分へ、また自分から他の友達へとまわっていくんだけど・・まわってきた人はなぜか・・・。」
私は身を乗り出して続きを聞いた。
「崖から飛び降りたくなるらしいよ。」
私は「へぇ・・・。」と、軽く流していた。
1月15日
私は思いがけない知らせを聞いた。
「さ・・桜子が死んだって・・・。」
私はその言葉を聞いた瞬間、驚きのあまり涙もでなかった。
その日、私のクラスは学級早退となり、全員が家へと帰された。
下校途中、私は桜子が死んだ理由をずっと考えていた。
死因については一切誰も何も言おうとはしなかった。
1月16日
---通夜---
通夜の夜、私は悲しみよりもあの、赤いノートのことを考えていた。
すると、桜子のお母さんがわたしのもとへ近づいてきた。
「あのう・・・凛ちゃん?」
私は桜子のお母さんを見て、「はい。」と答えた。
「うちの子のカバンからこんなものが出てきたんだけど・・・凛ちゃんこれもらってくれないかしら。きっとあの子も喜ぶわ。」
私がそれに目をやると、一瞬息が止まった。
それは・・・みるだけでも鳥肌が立つような真っ赤なノートだった。
「このノート、中身は見てないんだけどねぇ。どうやら日記のようなのよ。」
私は仕方なくそのノートを受け取った。
その夜、私はノートの中身を恐る恐る見てみた。
そこには、こんなことが書かれていた。
「1月10日、今日このノートをゴミ捨て場で拾いました。赤くてかわいいなぁなんて思ったので今日から日記をつけます!最近、赤いノートの呪いっていう話を東堂先輩から聞いたのですがー、これは違うみたい!このノートの前の持ち主って崖から落ちて自殺したみたいです。だからって、ノートがまわってきたからって自殺したくなるわけないよね!ウソだよーウソ。」
私は息をのんだ。コレは確かに桜子の字だった。
「1月11日、今日は学校で嫌なことがいーっぱいあった。テストがああだこうだってあの先生もうヤダなぁー。って、私は思いました。では、また明日。」
「1月12日、今日もテストテストって。今日なんて親までかかわってきた。ムカツク・・ムカツク・・・ムカツク・・・。」
「1月13日、今日初めて死にたいって思った。死にたい・・死にたい・・・死にたい・・死・・死・・・死・・・」
「1月14日、私はもう耐えられなくなった。明日の朝一番にあの崖で・・・そうよあの崖で死ねばいいんだわあの女もそうさせればよかったんだ。」
1月14日の日記は、もう桜子に誰かが乗り移ったとしか思えなかった。それにしても、あの女とは誰なんだ?崖とは?崖から飛び降りた人とは・・・?
ただ疑問が残るだけだった。
1月17日
私は日記に書いてあった「東堂先輩」に会うことにした。
私は東堂先輩とは1度きりしか話したことがないのだが、このことばかりは真剣に聞いてほしいと思っていた。
「柔道部」
柔道部の部室が見えてきた。ドアをノックすると顧問の先生らしき人が出てきた。
「どうしたんだ?練習中だぞ。」
私は初めて見る先生に一瞬たじろいだがすぐに姿勢をたてなおした。
「あの、東堂先輩を探しているのですが。」
その言葉を聞いて、顧問の先生の顔から血の気が引いた。
「東堂・・・?今確かにそう言ったか。」
私がうなずくと先生の顔がひきつり、部室の奥へと入っていき、おおきな写真を持ってきた。
「これ、わかるな。遺影だ。・・・東堂は死んだんだよ。」
私は鳥肌が立った。確かに遺影の中に笑顔の東堂先輩がいた。
「わかったら・・・もう帰りなさい。」
先生の顔色は青いままで、その先は何も語ろうとはしなかった。
まさか・・・東堂先輩も崖から・・・?
そんな考えが浮かんだ瞬間、後ろから声がした。
「柏木さん?」
声の主は、柔道部に所属する東堂先輩の同級生らしい人だった。
「赤いノートについて聞きたいんでしょう?」
その人は私の目を見て言った。
放課後、私はその人と校庭で赤いノートの話をした。
「あのノートって、もともとの持ち主が関連してるってこと知ってるでしょ?」
私はうなずいた。
「持ち主には彼氏がいて、二人は愛し合っていたんだけどしばらくして彼氏にはもう一人彼女ができたんだ。いわゆる、二股だね。で、彼氏とその浮気相手は二人である日もともとの彼女には内緒で二人でどこかへ行ってしまったんだよ。かけおちって感じかなぁ。で、もともとの彼女は毎日日記をつけていたんだ。赤いノートにね。その日から彼女の日記には死という言葉が頻繁に出てくるようになったらしいんだ。そして・・・崖から飛び降りた。ノートを置いてね。」
私は聞き入っていた。でも、どうしてそんなに詳しく知っているのだろう?
「あの、どうしてそんなによく知っているのですか?」
するとその人は苦い顔をしながらこう言った。
「その彼氏ってのがね。俺のお父さんなんだ。」
私は驚愕した。
「父さんさえも崖から自殺してしまったんだ。これも、ノートを受け取ったからに違いないんだ。父さんが逝ってからは、僕はノートを受け取った。だから僕もそろそろ・・・」
私は息を殺した。
「崖に行こうとしてる自分がいるんだ。」
それから少し間があいた。
「それからは・・・ノートの行方を知らないよ。」
その人は静かに立ち去っていった。
家に帰ってから赤いノートをじっくりと読み直した。ずいぶんと分厚く色々なことが書いてある・・・。
私も心なしか「死」という言葉が頭の中を駆け巡っていた。
1月18日
頭のなかがもうぐちゃぐちゃになっていた。「死」が駆け巡り・・・そして
「死にたい」ということを無意識に口走るようになった。
そして赤いノートに手を伸ばし、赤いペンで「死にたい」と書いてしまった・・・。
どうしても崖の方向へ方向へと足が向いてしまうのだ。
もう、耐えられなくなっていった。ノートに蝕まれていくようだった・・・。




1月19日
私は今、片手に赤色のノートを持って呆然と崖に立ち尽くしている。
この事情・・・わかりましたか。

 みなさんも赤いノートにはくれぐれもお気をつけてください。

 
                       さようなら










2004-02-06 16:36:15公開 / 作者:琴子
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■作者からのメッセージ
怖くないですね。怖い話だったんですけど。
都市伝説のようなものです。貞子の話に似てますけど悪魔でも違います。
この作品に対する感想 - 昇順
最後は少し物足りないものを感じましたが、出だしや、話の展開は面白かったです!
2004-02-06 18:19:17【★★★★☆】葉瀬 潤
計:4点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。