『終決の時へ 第1話〜第3話』作者:水奈見時人 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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〜その1〜「幼き頃」
 
 
その頃、私たちはまだ何も知らない子供だった。

世界に異変が訪れ、大人が頭を悩ましている頃、私たちはまだ子供だった。

地殻変動。そして突然の異常気象に天変地異。

常識ではあり得ないことが世界を包み込んでいた。

――そんな中で私たちは出会ったのだ。

・・・・今になって思えば、これらは予兆にしかすぎず、全ての始まり――

運命だったのかも知れない。
 
 
私たちの出会いは、まだ何にでも興味を示す5歳半ば。

そんな自分が「ぱたぱた」と言うおもちゃを作っているときに、

その子は現れた。

漆黒の髪にきれいな茶色の瞳・・。にっこりとした頼れそうな男の子。

その子は病弱だった。

「何作ってるの?」

薄い赤色の髪に青い目をした私とは全く違うその男の子、

神崎隆決(かんざきりゅうき)は言った。

あまりにもまっすぐすぎる純粋な瞳に聞かれて、普段は人見知りをするこの

私さえも答えずには居られなかった。

「ぱたぱた・・・作ってるの」

すこしばかり照れながら、作っている途中だった「ぱたぱた」を私は

差し出した。

その自分の手に乗せて差し出した、あの小汚い下手な「ぱたぱた」を、

私は今でもよく覚えている。

自分でも恥ずかしいくらい下手な出来だった。けれど彼は褒めてくれた。

「すごいね」と。

それが「嬉しい」と思った私は、彼が好きになった。

それから私たちは、よく遊ぶ友達となったのだ。

―――――彼の家は私の家からさほど遠くはなかった。

私の家から歩いて数分、のところにあった。

赤い高いマンション。多分結構高いのだろう、きれいな施しがしてあった。

私たちはそこで遊ぶか、外の公園の砂場で遊んだ。

彼の家で遊ぶとき、することと言えば「ぱたぱた」作りだった。

だから「ぱたぱた」と言えば私たちを表すようになっていた。

一つの木片を持つと、そこからぱたぱたという音と共に、回転しながら

次々と絵が変わっていく、「ぱたぱた」。

これにはそんな思い出があった。



ある日、ふと、私は自分の名前を教えてないことに気づいた。

それに気づいたのは、彼が私を「おわりな」と呼んだことからだった。

私は自分の名前の漢字の読み方を訂正しようとして、気づいた。

私はまだ名前を教えてなかった。漢字すら言ってなかった。

なのに彼は、知っていた。

私の名前――瀬戸終奈(せとしゅうな)――という名前を。

もともと変な名前だから教えてから間違えるのならわかる、だが、

教えてもいないのに知っていると言うことに、私は驚いた。

・・・その日から、私は「終(しゅう)」と呼ばれるようになった。

そしてそれと同時に、私は彼にただ者ではないと言う感じを持った。

また、名前を教えた記念に、私は彼にあのときの小汚い「ぱたぱた」をプレゼント
したのだ。

それは今でも彼の宝箱に入っているのだった――・・・。。
 

〜その2〜「高校生」
 
 
あれから10年あまりがすぎて、私たちは高校生となった。

・・・隆決とはあれからずっと仲が良い。

小学校も一緒だったし、中学校も一緒だった。

そして今は、両親の帰りが遅いから1週間に3〜4回は

夜ご飯を一緒にする。もちろん作るのは私。片づけは隆決だ。

・・・・それだけを見ているとまるで新婚夫婦みたいらしい。

私にしてみればそれはそれで嬉しい。

なぜなら、私たちはつき合っているから。


私たちの通う高校は「風上高等学校」。

白いシンプルなデザインの近代的な校舎に、大きな時計。

今でもきれいなその校舎・・・・それがこの高校の特徴と言っても良い。

また、制服も真っ白白だ。

ちなみにこの高校は、高校の中でも超のつくほどの名門校だ。

だからちょっとでも気を抜けば、すぐに勉強に置いて行かれる。

勉強内容のほとんどはなぜか機械のことばかり。

これは今に始まったことではなく、昔からの特徴だった。

「なんで機械のことばっかり勉強するのかなぁ?」

ある日の帰り道、私が隆決に聞いた。

「さぁね・・やっぱり今の時代について行くためじゃない?」

彼は普通に微笑みながらそう答えた。

「例えばさ、これから先はきっと、機械を個人が作る時代が来る。

 簡単なロボットとか・・ね」

・・・それから彼は言った。

私たちが出会った頃から、この高校はそういう特色を持っていたこと。

それがこの異常な世界を直すためだと言うこと。を。

なぜこれが世界のためになるのかは良くわからないけど、とにかく

頷いておいた。

それから、私たちはいつものように隆決の家へと足を運んだ。

家へ着くなり、私はご飯を作り始め、彼は薬を飲み始めた。

「・・・やっぱりまだよくならない?」

「結構良くなったよ・・・・」

私の問いに、薬を飲みながら答えた彼。

彼の病弱な体はだんだん回復へと向かっていた。

国から出された、特別な薬のおかげで。

「隆決、早く体を全快にしてね」

「うん、わかってるよ。。そしたらいろんな所に出かけよう。

 もっと都心の方に行ったりスポーツしたりねw」

彼の優しい微笑みが私の胸に突き刺さった。

私は言った。

「そうだね・・・」


『・・・未明、H県T市でひったくりが・・・』

「人も懲りないねぇ〜・・」

私がニュースを見ながらつぶやいた。

毎日と変わらない、極悪なニュース。

経済が悪くなるに連れて、だんだんと悪くなっていく治安。

政治は何をやっているのだろう。

ここ数年間でより多くなった犯罪。私の身の回りでも増えてきている。

「まぁ、これが普通か・・」

そう呆れかえって彼の方を向いた。

と、その時。

「・・・げふっ!!」

むせかえるように苦しくなり、私の口から血が飛び出した。

まるで昔の隆決のように、大量に血を吐いた。

「〜っげほっ・・」

「終ッ!!」

ドチャッ

血の中に私が倒れた。

白い服が赤い血を吸ってゆく。

遠くなる意識の中、彼は必死に救急車を呼び、処置をしてくれていた。

そして、あの特別な薬が私の中へと入ってきた。

次に私が目覚めたのは、次の日の夕方だった。

気がつけば私は病院のベッドにいた。

横にはお母さんが。

「ああ、終奈・・よかった。。」

お母さんは泣いて私にすがりついた。

「無事で良かった・・!!本当に・・・」

泣き崩れる母。その手には見覚えのある袋が握られていた。

「その袋は・・・?」

「・・え?・・・ああ、これはね、隆決君と同じ、国からの特別な薬よ」

「え・・・特別な・・・」

この薬に疑問を持ちながらも、この時はまだ何も知らなかった。

そして・・・その日から、私も隆決とその薬を飲むことになったのだった・・・。



〜その3〜「始まった衝撃」
 
 
ずぅぅぅ・・・・ん・・

その日、私はまだ朝起きたばかりだった。

昨日血を吐いて倒れた私は、薬を貰って家へと帰ってきた。

それから数時間としか立たない、まだ夜明けの頃だった。

隆決からのメールで目を覚ました私は、携帯をいじっていた。

メールの内容はわけがわからない。

ただ一言、「始まった。」とあるだけ。

果たして何が始まったのか。

そう考えながら顔を洗っていたときに、その地響きともとれる音が

――低く鈍い音が――私の耳へと聞こえた。

「何が始まったの!?」

先ほどの音に疑問を感じた私は、隆決へとすぐさま返信した。

まだ水気をふき取っていない顔から、水が垂れる。

・・・・・。返信を待つ私を沈黙が包む。

まだ両親は起きていない。

・・・ぴろりろ♪

携帯が鳴った。私はすぐさま携帯を開けた。

「そのうち・・わかる?」

メールの内容を確認するように声に出す私。

「なにこれ、わけわかんなぃ」

いたずらだと勝手に決めつけ、私は携帯を放り出した。

そして、学校へ行くための準備を始めた。

その時、私の携帯が光っていたことを、私は気づいていなかった。


午前7時40分―――

彼は待ち合わせ時間に待ち合わせ場所にいなかった。

あんなメールの後、私は正直不安だった。

なにかが隆決の身に起きたのかも知れない。

そんな不安が脳裏をずっとよぎったままだった。

「まさか・・・だよね」

「そんなことはない」と自分の気持ちにカタを付け、さほど

遠くはない学校へと急いだ。

そこの角を曲がれば学校が見える。

そんな高い建物の前まで来たときだった。

隆決が後ろから追いついてきたのは。

「おはよう」

私が挨拶した。

「おはよう・・」

彼の挨拶はいつもより元気がないように思えた。

それに疑問を持った私は、彼に尋ねた。

「ねぇ、今朝のメール、あれ何?」

「・・・・学校に着けば分かるよ」

「えっ!?何?良く聞こえない・・・」

ぼそっとつぶやいた彼の言葉に耳を傾けながら、私たちが建物を

曲がったときだった。

「!!?」

・・・・・突如、私の視界に飛び込んできた衝撃―――。

それは考えられない物だった。

学校の高い屋上の上にへばりつく、巨大な機械・・。

巨大な目をギョロリとさせて、まるで本物の生物みたいに

それはこちらを見た。

一瞬、笑ったかのように見えた。

そしてそれは、空高くへと舞い上がって消え去った。

「・・・なにあれ・・・」

今見たばかりのモノを信じられなくて――信じたくなくて――私は

地面へと座り込んだ。

「もうすぐ・・・始まるんだ・・」

「!・・・何が始まるの!?隆決、何か知ってるんだよね!?」

「・・・そのうちわかるよ・・。ただ、今はまだ知らなくていい」

「何よそれ・・・!?わけわかんなぃ!」

隆決がいきなり、遠くなったように感じた。

それもやだったし・・何より自分がこの出来事について知りたかった。

だから私はその日、その時、家へと向かって走り出したのだ。


家へ帰ってやったこと。

それは家にある本を片っ端から読みあさること。

だが、それはまったくの無意味に過ぎなかった。

あのモノはどこにも乗っていなかった。

隆決に送ったメールの返事は、来なかった。


午後5時5分―――

私はテレビをつけた。

もしかしたらあのことがニュースになってるかも知れない。

そんな考え――いや、願いからの行動だった。

しかし、どのチャンネルを回してみても、やっていない。

そんな機械のことどころか、朝の地響きやあの音のことまでもが

やっていない。

そんなのおかしい・・私は確かに見たし聞いたし感じた。。

なのにどこにもそんなことは報道されていない。。

私は母の元へとかけた。

「お母さん!ニュース、おかしいよ!?」

「あらあら、何なのよ」

「どこでもやってなぃ!機械のことも、地響きのことも!」

「ふぅ・・・」

「?」

「・・・・・おかしいのはあなたよ、終奈。ニュースいつも通りじゃない。
 学校に行ったと思ったらすぐ帰ってきて・・あなたどうかしてるん
 じゃないの?」

「・・・!!!」

信じられない答えだった・・・。

確かに私は見た・・誓ってもいい。

なのに・・・見えてない?

 翌日午前8時5分

いつも通り学校に行った私は、屋上へと目を向けた。

・・・何もない・・

そのままその足で教室へと向かって、私は友達にも聞いた。

だけど返事は・・・やはりNOだった・・。。

それどころか・・おかしい人扱いされた。


放課後、私は公園にいた。

家に帰っても馬鹿にされる・・学校でも・・どこでも・・。

ブランコに乗って暮れてゆく夕日を見ながら、私はつぶやいた。

「絶対に見た・・」

「・・・・うん、見たね」

「!?」

・・・隆決だった。

「信じて・・くれるの?」

「・・うん。君は確かに見たんだ。見てはいけないモノを」

「・・・え?」

隆決の口から出てくるその言葉・・見てはいけないって?

どういうことか、全然わかんなかった。

「あれは・・・人には見えないモノ・・なんだ」

「え・・だって・・私は見たよ?隆決も見たんでしょ?」

「・・・ああ・・。確かに僕も見た」

「だったらなんで!?」

「・・・・よく思い出してごらん・・・僕達と他の人の違うところ」

「・・・違うところ・・?」

「そうだよ」

いきなりこんな事言われても、すぐにはわからなかった。

でも、それからすぐにわかった。

「違うところ・・・」

「・・・特別・・」

「特別・・?・・・!?もしかして!」

「・・そうだよ」

まさか、あの薬のせいだなんて・・・想像もつかなかった。

でもなんで?

何で私たちなの?

「・・・・全部話して?知ってるんでしょ・・?」

「・・・うん」

それから、全部話して貰った。

「信じられないだろうね・・」

「・・信じるわけ無いじゃない!なによ・・それ・・・

 世界の終わる合図!?戦争の始まる合図!?なんなのよそれ!!!」

「・・・信じたくないなら信じなくてもいい」

その言葉と同時に、私の前に本が置かれた。

「終決の時へ〜」と書かれている。

『ただ・・・わかっていることは一つ・・確かに始まっているんだ』

その声に顔を上げたときは遅く、彼は声と一緒に風のように消えていた・・。



家へ帰ってすぐ、私は本をベッドの上に投げ出した。

もう、なにも信じたくなかった・・。

何が起こっているのか、知りたくもなかった。

ただ、お腹が激しく減っていた。


午後7時半

私はファーストフード店にいた。

母も家にいないこの時間、良くここには来ていた。

店員さんも顔なじみで、よくサービスしてくれる。

・・・ここは安らぐ。。

私が定食セットを頼んで、席で食べているときだった。

「邪魔なんだよ!」

甲高い女の声が聞こえて、がたんっ!と物の倒れる音が聞こえた。

私は食べるのを止めて、音のした方を覗く。

「あ〜!!このじじい、どーしてくれんだよ!?ブランドの服に
 シミが付いたじゃねぇかよぉ!」

「そ、それは君たちが・・・」

「ざけんなよっ!」

ふ〜ん・・・・状況は大体分かった。

おじいさんを邪魔者扱いして蹴倒して・・それで飛び散った物が服に

付いたから逆ギレ・・馬鹿な奴によくあることね・・。

でも・・おじいさんにあたるなんて・・。

「ほら、謝れよぉ!」

「ううう・・・ワシは悪くなぃ・・・」

「はぁ!?ざけんなよぉ!」

「君らが勝手に・・・」

「うっせーよ、金払えって!ふざけんじゃねぇよ!・・・」

「・・ふざけんなはあんたらだろ!」

・・・気が付いたときにはもう、立っておじいさんの前にいた。

「勝手にぶつかっておいて、逆ギレだなんて・・・あんたら
 それでも人間か!」

「んだよ、てめえは・・」

「私!?私は終奈よ。それがどーかしたの!?」

「うわ、マジウゼェ!やっちまおーぜ」

そう言って女達がかかってきた時だった。

ずぅぅぅぅ・・・・ん

「・・・始まった・・」

「えっ!?・・・」

老人がつぶやいた・・・そう思うやいなや、突然衝撃が体に走った。

ぐらっ!!!・・・・っどんっ!!

『!?』

私たちは建物と一緒に、揺れた。

2004-02-06 19:24:27公開 / 作者:水奈見時人
■この作品の著作権は水奈見時人さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
それなりに好きな作品なんですけど、古いのでちょっと・・・・(汗)長くてすみません。
これはまだ先があるので、どんどん長くなる物と思われます。
ちなみにこれはHPで公開しています。
この作品に対する感想 - 昇順
ぱたぱた。。私もぱたぱたってするおもちゃを持っていたんで、同じものかなとちょっとどきどきしました。展開はこれから!って感じなんで、楽しみです。雰囲気が素敵ですよ。。★
2004-02-05 14:48:48【★★★★☆】黒子
レスありがとうございます!!
2004-02-08 23:41:17【☆☆☆☆☆】水奈見時人
あ、内容書きそびれました。。。
2004-02-08 23:41:46【☆☆☆☆☆】水奈見時人
計:4点
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