『母さんが、死んだ。 前編』作者:ぱちこ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約6.44枚
男 金井高志。おれがぼーぜんとしてなんにも出来なくなった事が一つ。

おれの母さんが、死んだ。

嫌いな数学図形分野。あと3分でチャイムがなる。
隣の奴と「あと3分だぜ」とか言い合いながら暇を潰していた。まぁ、勉強しろよって感じだ。
消しゴムが落ちて拾おうとした瞬間。
うちの担任が授業中なのにクラスのドアを激しく開けて「金井ちょっと来い!」
と大声で呼ばれた。俺はまだ何もしてないのに。
「おーい、勘弁してくれよ・・」心の中でそう呟いた。
廊下に出されてけだるそうに興奮してる先生をジロ。とみた。
「落ちついて聞けよ・・・・。あのなぁ・・・」
「先生もったいぶんないで早く言ってよ。」

「・・・お前のお母さんが今亡くなったそうだ。」
「は?」

嘘だろ。冗談勘弁してくれよ。
「と、とにかく今から荷物まとめてすぐ近くの○×病院へ行け!早く!」
担任のこのものすごい形相をみて本当の事なんだ。と悟った。
おれはすぐに荷物をまとめて教室を出た。
ちょうど授業の終りを次げるチャイムが鳴った。

はぁはぁと息を切らし猛ダッシュで病院へと急ぐ。
途中で黒猫がないていた。嫌な感じだ。
母さんがいる病院に急いでかけこみ、受けつけにかじりつき、「
「今日運ばれた金井祥子はどこですか!?」と聞いた。
余りの大声に病院中の患者が俺のことを見ていた。

302号室。エレベーターを使い3階までいく。
入ると、そこにはなんとも言えない顔をした医者がいた。
「あぁ、金井祥子さんの子供さんですか?」どこか悲しそうな声。
「はい、そうです。」息を切らして入ってきたもんだから少しどもってしまった。

「母さん!」ベッドに駆け寄り母さんの顔を見る。
よくテレビで使われるように寝顔のような死に顔だった。寝顔のような顔は本当だった。
足ががくがく震える。
「な・・・な、なんで、死んだんですか」
「それは・・・。」言葉を濁す。
「何で死んだんですか!?」怒鳴ってしまった。
先生は母さんの手首を取り巻いてあった包帯を取り、
「自殺です。」そう言った。そこにあったのは深く大きい切り傷。
自殺?母さんが?
「・・・これは誰かにやられたとかじゃなくて・・・?」
「お母さんは左手にナイフを持っていたからね。多分自殺でしょう。」

おれはなんにもできなかった。涙もでなかった。何かを言う事もできなかった。
大きな喪失感。こころに大きな穴が空いたような。
病室の外のソファに越しかけて今日の朝の事を思い出しいた。


「高志!いいかげんにしな!また遅刻するよ!!」
「・・・・うぁ!うるせえなあ!もう遅刻は慣れっこなんだよ」
「慣れてどうすんのー!!」
「いてぇ!」
ベッドから蹴落とされた。
「じゃぁいってくるから!」
「授業中居眠りしないでね!」
「うるせえババァ!」
そう言い放っておれは家を出たんだ。母さんに最後に発した言葉が「ばばぁ。」


もし、母さんが死ぬっていうことを知っていたらもう少し優しく出来たかもしれない。
もう少し言う事を聞いていたかもしれない。
味噌汁美味いよ。って言えたかもしれない。
手を顔に当ててどうしようもできない愚かさを感じつつ病院独特の薬の匂いを感じていた。

携帯をパカと開けみて見ると5件はいっていた。
すべて友達からの「なんで今日途中で帰ったの?」っていう内容だった。
最後の5件目。 クラスメートの安西佳織からだった。

 今日はどうしたの?何かあったの?うちビックリしちゃった。
 なんかすごい重大な事あったらいつでも相談してね。
 話しぐらい聞くよ。

こいつはすごい優しくてどこかこいつに恋心を覚えていた。
どこか自分のなかで安西に甘えたい気持ちがあった。
震える指先で安西にデンワをする。
3回コールのあとに安西が出る。「はい」その懐かしいような遠いような声は
おれの心に深く、重くしみこんだ。

「あぁ、おれ。金井。」  「あぁ!金井君!今日どうしたの?」
少し間をおいて重いい口を開く。
誰かに弱音を吐けば少しは楽になるかもしれない。

「おれのかあさん、死んだ。自殺したんだよ。」

おれは気付かなかったけど、かなりの涙声だった。
「え・・・・。」困惑する安西の声。

「多分・・・おれのせい。おれが母さんに酷いことばっかいってたから。」
「・・・。」
「おれ、最後に母さんに言った言葉が「うるせえババァ!」だったんだ。笑えねぇ?」
「・・・。」いつまでも無言になっている安西。
なんだよ。相談しろとかいって。結局なんにも言えてないじゃねーか。

「ごめん。そんだけ。じゃーな・・・」
「まって金井君!!」
「・・・なんだよ・・」
「うち、ビックリしてなんも言えなかったけど多分、ううん。絶対お母さんが死んだのは
金井君のせいじゃないよ!」
なんだそれ。きやすめのつもりかよ?
「うち、金井君がじつは優しい所とか・・・知ってるから・・・・」
言葉を濁す安西。きやすめでも少し気が楽になった。
少し、嬉しかった。
「さんきゅ。少し、元気でた。」ピと電話を切り夕暮れの空を見ていた。

「高志。」低く、聞きなれた声。
そこには単身赴任で滅多にかえって来ない親父がいた。
家族の事なんて全く考えてナい。ただお金が会社からはいれば良い人だ。
家族より、お金が大切なんだ。それはおれの15年間生きてきて知ったこと。

「オヤジ・・・・」
「母さん、自殺なんだってな。」
言葉を冷たく言い放つオヤジはいつもみているからべつにいい。
でもこういう状況で冷たく言い放たれるのは許さない。
「おまえ・・・いまさら何しにきたんだよ・・・・」震える声。

「なんでずっとほったらかしにしてたのに今更来るんだよぉ!!」
おれの声が響く病院の廊下に響く。

なんでいまさら?もうおれの目の前に来ないでくれよ?

おれの胸に響く安西の声。励ましてくれた安西の声。

おやじは、何も言わなかった。
2004-01-24 21:42:42公開 / 作者:ぱちこ
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■作者からのメッセージ
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それでは。
この作品に対する感想 - 昇順
誰かがいなくなることで
2004-01-25 16:13:07【☆☆☆☆☆】葉瀬 潤
2004-01-25 16:13:15【☆☆☆☆☆】葉瀬 潤
↓何度もすいません。。誰かがいなくなった喪失感が痛いほど伝わり、主人公の今後の心境の変化を注目したいと思います!
2004-01-25 16:14:49【★★★★☆】葉瀬 潤
計:4点
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