『 明日への大海  第一話〜』作者:シンバル / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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第一話 


古ぼけた港のやぐらにカモメが集う―――

この小さな島は人口はとても少なく、貧しいながらも平和に暮らしていた。
「今日は風が出てるな」
やぐらの上から一人の少年が言う。
再び望遠鏡をのぞき辺りを見回し、異常が無いことを確認した。
異常・・・この国には海賊という輩が襲いに来るときも有る。
ここ最近は2,3年現れて無い。

少年はやぐらを降り、家に向かって走っていった。
もうお昼だ。
家の戸をバタンと開けると、スープの良い香りがただよっていた。
一足先に、祖母が用意してくれていたようだ。
「ハルク。どう?今日も異常はないのかしら?」
「うん、大丈夫だった!」
 
「あれからもう・・・・13年も経つんだねぇ・・・」
「そうだね」
少年はスープをすすりながら険しい顔で返事をした。


あれとは・・・・そう、今から13年以上前の事―――――
この国で戦争が起こった。
もうそれは酷くて、被害はそうとうのものだった。
島も沈んだ。村や町は壊れた。人が死んだ。
誰もが悲しみや憎しみを抱いた戦争だったのだ。

この村の少年―――ハルク
ハルクは生き別れの妹がいる。
名も顔も声もしらない。
戦争中、母親はその幼い二人を抱きしめ逃げ回った。
島々を渡り、其処までも生きた。・・・が、戦争はそんなに甘くなかった。
母親は死ぬもの狂いで二人を抱え、ある小さな村へあずけて来た。
そしてそこで母親は息絶えた。

二人は戦争後、何とか生き延びたが二人とも他の人に引き取られた・・・。
幼い二人には当時のことはあまり理解ができなかったのだ。


「どう?今日のスープもおいしいでしょ?」
祖母が優しく微笑み問う。
「うん、おいしいよ。ありがとう」
ハルクも微笑み返す。

「・・・・貴方の母親の手料理も食べてみたいかい?」

「・・・・っ!」

ところ祖母が母親の話題を振ると、目を見開いて歯を食いしばった。

「母さんが俺に料理なんか作ってくれるものか!母さんは俺たちが嫌いなん だ・・・・!だから・・・捨てたんだ・・・・!!」

「だからそれは・・・・」

興奮しているハルクに祖母は真実を話すが、耳に通らなかったようだ。

「もう良い・・・!港に行って来る・・!」

乱暴に扉を閉めると港に駆けていった。
ハルクは、悲しすぎる真実が受け止められなく居た・・・・・。

再び外に出た。
やぐらの上に上り、寝転んで空を見た―――

ふと、涼しい風の為にか、眠りについてしまった。
しかし見るのは戦争の炎の中に駆け回る夢ばかりだった・・・・。


突然

「海賊船だぁーーーーーー!!!皆非難しろぉーーーーー!!」

この大声でハルクは飛び起きた。
急いでやぐらの外を見ると穏やかな光景は・・・もはやそこには無かった。
家が崩壊され、横たわる人も見に付いた。
どこからともなく村人の叫び声も聞こえてくる・・・・。

ハルクはやぐらを急いで降りようとすると、一人の少女が上がってきた。
その少女は、ハルクよりも少し年下に見え、海賊の格好をしていた。
ゆっくりとハルクに近づくとニヤリと笑い、話しかけた。

「アンタ、ここの村人?」
「・・・そうだけど・・・」
「フッ、随分間抜け面してるわね。腰を抜かしてるし」
「それより皆は・・・村の皆はどうしたんだ!?」
少女はすばやく短剣をハルクの目の前に突き出した。
「動くんじゃないよ。村の人は殺してないから大丈夫。盗みに来ただけよ」
「・・・・早く帰れ!村から出て行け!!」

短剣をしまい、後ろを向いた。
「フ・・・言われなくてもすぐ帰るわ。金になるものはもらったしね」

少女はそう言うとやぐらを降り、自分の船に乗った。
その海賊船はすぐに船を出すとこの島を出た。

ハルクはすぐさま村の人の所へ行き、介抱した。
酷い・・・ハルクは少し、戦争のことを思い出し・・・涙をこらえた。
幸い、死人は居なかったようだ。
家の瓦礫から祖母が語りかけた。

「ハ・・・ルク。お前は此処に居るべきではない・・・。此処に居るとまた 海賊がくるだろう・・・」
「で、でも・・・」
「この光景を見て一番心が痛むのは・・・ハルク。お前だろう」
「・・・・おばぁちゃん・・・」

「よくお聞き、今から大切な、重大な事を話すよ」
「うん」

「お前は、生き別れの妹を探し、戦争の本拠地となったオールダウ山に向かうんだ・・・・。そこで自分の真実を知るんだ。分かったね?」

「う・・・ん」
必死に涙をこらえるがどうしても零れ落ちてしまう」
「オールダウ山・・・?」
「そう。あそこには今で言う伝言板のような石碑があるんだよ。きっとお前 の母親のことも書かれているんだ。自分の目で確かめておいで・・・」

「分かった。で・・・・も・・」
「一人で心細いでしょうね。この村の近くに精霊がいる洞窟があるの。そこ で、貴方の心のよりどころが見つかるはずよ」

「うん・・・。俺、頑張るから・・・・!待って・・・て」

ハルクは涙をぬぐい歯を食いしばった。村の人を避難所におくと、武器など
を抱え、小さな小船を出した。

「いってらっしゃい。気をつけて。行き先は分かるかい・・・?」
「分かるよ。この洞窟と・・・オールダウ山。そして・・・・・」
地図を握り締めると、前を見据えて言った。

「妹を探し出す!」

その言葉と同時に小さな船が出発した。
今日の風は少し強いが、それだけ進みは良かった。

ハルクの鼓動はまだ早い・・・・。
急な出来事にも、何か意味があると思ったのである。


向かうは、精霊のいる洞窟―――――――  (つづく
2004-01-21 21:42:06公開 / 作者:シンバル
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■作者からのメッセージ
初めまして^^
前から少し考えていたネタの小説です!
まだまだ未熟ですが、読んでもらえると嬉しいです!!
アドバイスなどがあれば教えてください!!
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