『自分の価値 〜ありがとう〜』作者:神無陰 聖夜 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約4.82枚
 やがて、警報が鳴り響く。
「汚染が発生しました。感染拡大、非常警報…」
 無機質な声が残酷な現状を、淡々と告げていく。
「黙れ!!!」
 鋭い声を発しながら、アースはスピーカーを殴り壊した。殴り壊されたスピーカーは白い煙を上げながら、ザーっという雑音しか発さない。
 廊下に出ると、他の隊員たちがパニックに陥り、走り回っている。
 今、隊員の心にあるものは、
 混乱。
 恐怖。
「直ちに非難を開始してください」
 再び無機質な声が、今度は廊下から流れる。
 壁が朽ちて、腐って、崩れていく。
 今世界を包んでいる病原菌は、そういう能力を持っている。物質を腐らせ、人の体をも腐らせ朽ちさせる。この病原菌でライアも死んだ。たった微かに体の中に入ってしまっても、体を蝕んでいく。
 早くに気づけば、今は治療法が出来ているのでまだ救える。しかし、進行が進むと、もう誰の手にも負えず死を待つしかない。そんな病原菌が、どんどん世界に広がっている世界。モンスターだけではなく、病原菌にもおびえる世界。
 アースは外に出た。
 背後で本部の崩れる音がした。しかし、脱出できたものはほんの数名で、あとは瓦礫の下敷きに…しかしここで助かっても、病原菌の餌食に。
 すぐさまアースは携帯用の呼吸器をつける。今はまだいいが、早めにこの場から逃げないと、体から朽ちていく。
 未来は荒野だ。
 俺は何をやっているんだ?
 世界は消える。
 俺も消える。
 地面に今まで共に戦ってきた相棒ともいえる剣を刺し、その剣の柄に自分のトレードマークとも呼べる紅いハチマキを結びつけた。
 果たして、世界が朽ちていくのは病原菌のせいだろうか…?
 病原菌が、ここまで人の感情を腐らせることは可能なのか…?
 違う。
 憂鬱だ。
 憂鬱が病原菌なのだ。
 誰もが感染し、世界を破壊させた。
 そうだろう?
 きっと世界は疲れたんだ。疲れ果てたんだ。
 俺たちの憂鬱に耐え切れなくなったんだ。
 俺たちを世界は見捨てたんだ。
 俺は何だ?
 そういえば昔、そんな疑問をライアに投げかけたことがあったっけ。ライアはなんて答えてくれたっけ。
 アースは天を仰ぎ、記憶を巡らせる。
 …あぁそうだ、そしたらライアは一つの詩を作って読んでくれたっけ。
 天を仰いでいたアースは、ハッと我に返り、一気に剣を引き抜いた。
 ありがとうライア、あと一歩のところで助かったよ。
 背後の崩れた本部から、弱々しい声がする。
「う、助け…助けて……」
 アースは本部の下敷きになっていた声の主を抱え、力強い足取りで自分のオートバイのもとへ向かう。
 生きなきゃ。
 俺には価値があり、生きる理由がある。
 アースは、後部座席に怪我人を乗せ、オートバイのエンジンをかける。
 変えて見せる、この世界を。もし、俺の生きている間に変わらずとも、その間に俺は、世界を変えると共に多くの命を救って見せる。
 救うことが、俺の生きる理由。
 救うことが、感情を蘇らせる唯一の鍵。
 やっと伝わったよ、あの詩の意味が。
 アースの乗ったオートバイがエンジン音をあげ、砂煙を巻き上げながら前へ進む。
 ありがとうライア。そして、さようなら―――――


   自分の価値がわからない?
   フフフ、あなたはとってもおもしろい

   自分ってね
   自分じゃよくわからないものよ
   誰だってそう
   でもね
   他の人から見るとよくわかる

   あなたは気付いていないけど
   私に笑顔をくれたのは
   私に幸せをくれたのは
   私にとってあなただけ
   世界であなただけだったのよ

   いい?
   人にはちゃんと
   一人一人の価値があり
   生きている理由があり
   意味がある

   いい?
   自分はね
   かけがえのない
   世界で大切で特別な一人なの

   だから思わないで
   あなたを必要としている人がいる

   最低でも
   私にはあなたが必要
   私にとってあなたはとても大切な人

   いい?
   それが答えのなの
   自分の価値は
   自分が思っているよりもずっと大きい
   それがね
   いつか自分の支えになってくれるよ
   それが
   枉げようの無い
   自分の価値


                    ライアの詩「自分の価値」より
2004-01-19 21:16:36公開 / 作者:神無陰 聖夜
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■作者からのメッセージ
一応これで完結です。
この作品は、言ってしまえば最後の『ライアの詩』を書くために即席で書いたので...もう文法が滅茶苦茶ですいません。もっとバシッっとしたものを書けるように、頑張ります。
この作品に対する感想 - 昇順
世界観がSFなのかファンタジーなのか悩むところですが。どっちにしろなんというか、中途半端な感じが否めませんでした。詩を使うにしても、もう少し印象的に出来たのではと思います。
2004-01-19 21:52:56【☆☆☆☆☆】佐倉 透
計:0点
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