『夢と現実の挟間に・・(プロローグ)』作者:遠野光希 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約10.91枚
プロローグ

僕は夢を見ていた・・いや今も見ている・・
昔は夢の中の僕はなんでも出来る、そう信じていた・・
しかし・・僕の夢は自分の自由なんて何もない・・
ただ広がる大地の荒れ果てた姿・・
僕はいつも思う・・僕の夢はつまらない・・現実にはやく戻りたい・・
毎回・・そればかり思う・・そして目が覚める・・・

『なぜ僕はこんな夢ばかりみるのだろ・・・』

僕はいつものようにため息を吐く・・そして一日が始まる・・
いつものように制服に袖を通し、僕が通う風魅学園に向かう。
僕は風魅学園の3年生、名前は「時杉 奈嗚」友達の間ではナオと呼ばれている
僕はいつもの通学路の桜を見ながらゆっくり歩いていた、
そんな時、幼なじみの由希が歩いているのが目に入った、
他の生徒にどんどん追い抜かれて、今にも死にそうな表情で歩いていた、
昔は明るく冗談も口にする少し変わった女の子だったが・・
一年前に両親を事故で亡くしてからまるで別人になったかのように暗くなってしまった
当時、僕は、よく声をかけて元気づけていたがこの頃は、話すらしなくなってしまった
僕は由希が元気になるよう祈っていたが通じない、自分自身それを感じた時
由希に自然に話が出来なくなってしまった。
僕はそんな事を思いながら由希を通り過ぎようとする
その時、後ろから他の生徒の話し声聞こえてきた、
女生徒1「ねぇねぇ、あの子隣のクラスの「鈴原 由希」でしょ?」
僕は自然に聞き耳をたてていた
女生徒2「そうそう、あの子鈴原さんだよ・・」
僕は思った、僕に聞こえるって事は由希にも聞こえているはず・・
僕はその女生徒の見ながら、そう、お前らになにがわかる!
と言わんばかりの視線を送っていた、しかし、話はまだ続いていた、
女生徒1「あんなに暗くされると、迷惑よね〜?」
女生徒2「うんうん、迷惑だよ、暗くしてれば同情でも誘えるから?」
僕はその女生徒の続きの言葉が聞きたくないと思い女生徒に近づいた
そして周りの生徒を忘れ叫んだ
奈嗚「おまえら!いい加減にしろ!!」
その声に女生徒も由希も驚いていた
女生徒は顔を赤くして走って行ってしまった。
その後、自分も急に恥ずかしさが込み上げてきた
そして、僕はその場から足早に去ろうとした時、横に由希がいる事に気がついた
そんな由希を見て僕は、一言だけ言葉を吐いた
奈嗚「由希・・今日夜少し顔だせ、話がある」
由希「・・・・」
こないかもしれない約束をして、僕はその場を離れた。
学園に着いた僕は、はぁ・・とため息を吐き席についた、
なんなのだろう今日は・・自分でもあの場であんな事をするとは思わなかった、
思い出すだけでもはずかしい・・でも少しだけ由希が嬉しそうに見えた・・
そして、授業が終わり帰りの通学路で昔の事を思い出していた・・
由希「ナオ!何してるの?先にかえっちゃうよ!」
由希が笑顔で話しかけてくる
奈嗚「おい!待て!人の足を蹴ってから言うセリフか!?」
僕も少し怒りながらもやはり笑っていた・・
ただ楽しかったのかもしれない、二人でバカやって冗談を言い合っているのが・・
しかしかなり昔に思えてしまう・・今の由希は笑顔がない・・冗談も・・話すらしない
「はぁ・・」とため息を吐き夕焼けを眺めながらゆっくり帰宅した。
家に着き「ただいま・・」と言い、由希の事を考えていた、
今日あって何か変われば良いが・・由希に自分の両親の事を話す事にしていた
僕の両親も僕が小学6年生の時、交通事故で死んでしまった、親戚がいないという事で
父の知り合いのお寺で小さなお葬式をあげた、幼なじみの由希、近所の人達には、
両親は海外で仕事の為留守で通っている、両親が死んだとなると僕は引き取り手がいない為
知り合いのおじさんがこうするのが一番だと言いそのような事になってしまった、
今となっては、おじさんの言葉がよくわかる気がする・・
父が何の仕事をしていたのかは今も分からないが、僕が一生かけても使いこなせない程の
お金を残していった、そのお金があれば、大きな家に住み、贅沢な生活が出来た
しかし、マンションを一部屋買い、普通の生活をしていた、贅沢とは無縁なごくごく普通な生活だった、父が死んだ後、1ヶ月に一回おじさんが家を訪れ、生活に必要なお金を置いて話をして帰っていった。
そして、僕が高校に入った時、おじさんがいつものように家に来た、その時に
おじさんはまじめな顔で言った「奈嗚・・おまえはもう一人でやっていける、おじさんの役目も終わる」そう言うと、困惑していた僕の手に通帳と印鑑を置き、もう一言付け加えた
「おじさんはもう来ないけど、がんばれよ・・」そう言い残して帰ってしまった
僕は困惑しながら「うん・・」とうなずきおじさんの背中を見送った、それ以来おじさんは
僕の家に来る事は愚か連絡すら取れなくなってしまった・・残されたのは父の財産
とっておきの寂しさだけだった・・
しかし、その寂しさを忘れさせてくれたのは他ならぬ由希だった、事情は知らないのに
寂しそうな僕といつも一緒にいてくれた・・だから僕は由希を救いたいと思う・・
そして、夜になり時計は9時をさしていた、僕はあきらめ見ていたテレビの電源を切り
自室に戻ろうとしたその時、家にチャイムの音が鳴り響いた・・
「由希!!」思わず声を出し玄関まで走った
玄関を開けると由希がポツンと立ちすくんでいた・・
奈嗚「由希・・来てくれたのか・・よかった・・」
そう言うと自然に笑みがこみ上げる
由希「・・・ナオが来いって言った・・・」
今にも消えそうな小さな声で由希が言った
奈嗚「由希・・とにかくあがれ・・お茶でも入れるから・・」
由希は無言のままリビングに向かう
僕ははぁ・・とため息をもらしながら、「しょうがない・・話をするか!」と決意し
由希の待つリビングにお茶を持ち向かう事にした、
由希は相変わらず暗い顔で下を向きリビングのクッションに小さく座っていた・・
そんな由希の正面のクッションに座り、僕は話をし始めた、
奈嗚「由希・・元気だせ・・お前には笑顔が似合う」
僕はみんなが言うような事は意味がないと分かっていたが始めはこれからと思い
同じセリフを口にしていた
由希は下を向いたまま小さく言った
由希「・・・今朝は・・ありがとう・・それと・・話は・・それだけ?・・なら私帰る・・」
そう言うと由希はクッションから立ち玄関に向かおうとする、そんな由希の手をひっぱり
奈嗚「ちょっと待て!話はまだ終わってない!」
僕は思わずきつい口調で言ってしまった、由希は無言で・・だまって座りなおした
奈嗚「あ・・ごめん・・じゃ・じゃあ話の続きするよ・・」
由希「・・・」
いままで人に両親の事を話した事がなかったので少しうまく話せるか自身がなかった・・
しかし僕は意を決して話をする事にした
奈嗚「いままで黙っていたんだけど・・僕の両親も事故で死んでいる・・僕が小学6年時に」
由希「・・嘘・・私をからかっているの?・・」
奈嗚「いいから黙って聞くように・・」
由希は再び下を向き話を聞き始めた、そして僕は昔の出来事をすべて由希に話しをした
由希「ナオ・・冗談はやめて・・私・・うぅ・・うう・・」
由希は僕の話を信じてはいないようだった・・そして泣き出してしまった、僕は、はぁ・・
とため息を吐きながら・・しょうがないと・・父の通帳を由希に差し出した・・
由希「ううぅ・・なによ・・これ・・」
奈嗚「見ればわかる・・」
僕は一言だけ言った、由希は泣きながらその通帳を静かにめくった・・
その瞬間・・涙が止まり・・驚きの表情に変わった・・
奈嗚「由希・・本当なんだ・・だから・・お前の気持ち・・分かるんだ・・」
僕は由希にハンカチを渡し・・由希の言葉を待った・・
由希「ナオ・・本当・・なの?・・なら・・どうして?私にまで・・隠して・・」
奈嗚「隠すつもりはなかった・・でも話すきかいもなかったし・・」
生温くなったお茶をすすりながら言った
由希「ナオ・・どうして?こんな話を・・私に?・・」
由希は涙を眼にためながら言った
奈嗚「俺がその時・・お前に助けてもらったからだ・・一人で寂しい時お前がそばにいてくれた・・そのおかげで・・毎日が楽しかった・・だから由希・・がんばれ・・俺は気のきいた事言えないけど・・お前の笑顔がもう一度みたい・・お前と一緒に学園にだって行きたい・・
ただ・・それだけ・・」
僕はお茶をテーブルに静かに置き由希の目を見ながら答えた・・
これは告白だったのかもしれない・・でもどんなことになってもこれでよかったのだと
信じている・・
由希「ナオ・・ごめんなさい・・私・・自分だけ・・一人で落ち込んで・・いっぱい迷惑か
けたけど・・少し・・ナオに頼ってもいいかな・・」
涙を流しながら・・由希は僕をみて涙笑顔で言った
僕は嬉しかった・・悲しい由希の顔が笑顔に変わっていく事が・・
そして、僕も涙笑顔で答えた
奈嗚「なにいってんだ・・あたりまえじゃないか・・」
由希と僕は二人で泣いていた・・・僕はその後由希を自宅まで送っていった・・
夜桜を二人で見ながら・・寂しい桜はもう見ない、これからは笑顔で見られる
そう思いながら、一歩前進したようなそんな気分だった、
由希「今日は、ありがとう・・私がんばるね!だからナオ、一緒にいてね」
由希が笑顔で言う、僕は右手を上げ「ああ!もちろん!」と答え来た道を帰って行った
僕は自宅に戻りベッドに横になり天井を見ながら「よかった・・」と一言もらし眠りに落ちた・・そして、その夜はいつもと違う夢を見た・・桜吹雪の中に僕は立っていた・・
その先に昔の姿のままの母が立っていた・・僕は思わず叫んだ!
奈嗚「かあさん!」
母はまぶしい笑顔で・・一言言った「奈嗚・・夢は現実になるよ」
そう言残すと姿が消え僕も夢から覚めた・・
まだ外は暗かった・・窓のカーテンを開け夜空を見上げて先ほどの夢の言葉を考えていた
奈嗚「・・・どういう意味なのかな・・」
ふたたびベッドに横になり目を閉じた
僕は何かとんでもない事がおるような気がしてならなかった・・「夢は現実になるよ」・・
母の夢の言葉・・そしてこれから変わっていく僕の運命・・



プロローグ終
2004-01-10 09:47:29公開 / 作者:遠野光希
■この作品の著作権は遠野光希さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今回は自分が初めて書いた物を投稿させていただきました♪
シリーズ物なので完結はしていませんが、
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この作品に対する感想 - 昇順
拝見させていただきました。物語りの内容的には○ 何か涙を誘う物でした。ですが、少し言わせていただきますと、会話中や、描写の時に「・・」と二点リーダが使われていますが、二点リーダは省略を意味するので、「…」の三点リーダの方がよかろうかと思われます。次回作があるのならば、期待したいモノです。
2004-02-15 00:52:39【★★★★☆】KUNIMITSU
計:4点
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