『ようこそ天国へ』作者:笹の葉 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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手を擦って、離す。
離した手を戻そうとすると、少しだけゴムのような抵抗が生まれる。
これを、『気』と呼ぶんだそうだ。

俺は、この気を出すのを何日か練習してみた。
慣れてくると、その気の大きさを調節する事にも成功した。
ふくらんだ気は、俺の両手ほどにまでなるようになった。
これを応用して、脚で床を擦ってみる。
やった、成功した。僅かに気が生まれて、俺の体がゴムみたいな物に乗っかって浮いている。
俺は、脚の下の気も大きく出来るようになった。
よし、この調子だ。
ベランダに出ると、空中浮遊を愉しんだ。
そろそろ夜だ。夜の街を見下ろすのはなかなか気持ちがいいぞ。
風も出てきた。でも、この風も丁度よくて気持ちいい。
よし、もっともっと上に行こう。俺は、ますます気を大きくした。

しばらく上に行くと、一つの大きなマンションから、こっちを見ている女に出会った。
さぞかし驚いてるんだろうなぁ。俺は自慢してやろうと思って近づいた。
「おい、俺スゲェだろ?」
女はええそうね、とそっけなく頷いた後、深刻そうな顔で付け足した。
「でも、これ以上上に行っちゃ駄目よ。まだあなたには早いわ」

そう言われると、行ってみたくなっちゃうんだよな。
俺は、女の忠告を無視して、ますます上に上がっていく。
―――あれ、こんな繁華街あったか…?
俺の目の前には、今まさに賑わっている繁華街が広がっている。
そこも見下ろせるくらい高く高く上がっていく。

一面が花畑になった。
俺は嫌な予感に襲われる。嫌だ、嫌だ、絶対に嫌だ。
でも、もう引き返す事は出来ない。
がむしゃらに花畑をかき分けて進んでいく。
俺の目の前が、一面光り輝く。
なんとも言えない威圧感を、上から、下から、横から、全ての角度から感じる。
…ちょっと、やばいんじゃないの、コレ?

俺の目の前にあったばかでかい扉が、ゆっくりと音を立てて開いた。
その向こうには―――
2004-01-08 15:06:47公開 / 作者:笹の葉
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■作者からのメッセージ
この『気』という現象に興味を持ったんで書いてみました。
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