『クリスマス・カロル』作者:天野橋立 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
西国巡礼の旅の途中、ある小さな町に泊まることになった私は、終列車の去った駅で不思議な体験をすることになった。
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原稿用紙約18枚
 暖房の効きが悪くて、ベッドのシーツは冷え切っていた。思わず身を震わせながら布団をかぶり、じっとしているうちに、ようやく自らの体温でベッドの中が暖かくなってきた。
 ほっとしながら、私は枕元の古びた文庫本を手に取った。二十代の頃から愛読している、「二都物語」。慣れ親しんだページを開いたその時、窓の向こうから汽笛の音が聞こえてきた。続いて、ディーゼルエンジンの苦しげなうなり声。ヘッドボードの時計に目を遣ると、緑色のデジタル文字が二十二時十五分という数字を表示していた。本線の上り最終列車が、東佐治駅を発車したのだろう。
 私は、その車内の様子を思い浮かべた。弱々しい蛍光灯の光にぼんやりと照らされた、旧式ディーゼルカーの薄暗い車内。たった二両編成の列車には、せいぜい一人か二人くらいの乗客しかいない。がらがらのまま、列車は単線のレールをひた走る。一駅一駅に着実に停車しながら、終着の奈須田駅を目指して。到着は、日付が変わる直前になるのだろう。
 思わず私は、このうらぶれたビジネスホテルの部屋を飛び出して、駅へと駆け付けたくなった。しかし、もうそこに列車はいない。ホームの灯りが消され、無人になった駅は明日の朝まで眠りにつくことになるのだ。
 それでもいい、と私は思った。この部屋は、あまりにも寂しすぎる。いっそのこと、あの牛丼屋でもっと粘れば良かったのだ。食べ終わったからと言って、そそくさと店を出てくることもなかったのだ。喫茶店でもあれば、いや、ハンバーガーショップでも何でもいいから、コーヒーを飲んで時間が潰せるような場所がないかと探したのだが、結局この町にそんな店は一つも無かったのだった。
 私はベッドから起き上がり、文庫本をショルダーバッグに放り込んで、壁に掛けてあったジャンパーを羽織った。行こう、駅へ。
 ロビー、と呼ぶにはいささか狭い玄関前のスペースはすでに消灯されていて、フロントのカウンターにも誰もいなかった。まさか閉め出されることもないだろうと、私は部屋の鍵をポケットに突っ込んだまま、外へと出た。ホテルが面しているのは駅前へと続く、この町のメインストリートであったが、人影など見あたらない。等間隔に並んだ街灯が、虚しく通りを照らしているだけである。街灯の柱には、明滅する豆電球がまばらにぶら下がったコードが投げやりに巻き付けられていたが、これは一応イルミネーション、ということなのだろう。今日はクリスマス・イブなのである。
 駅へ向かって歩き始めたが、やはり人影を目にすることはなく、開いている店もほとんどなかった。ドラッグ・ストアや携帯電話の店が看板を明々と光らせてはいたが、どちらもすでにシャッターが下りていた。トヨタ・オート店の真っ暗なショールームの中では、クリスマス・ツリーが独りでライトを点滅させていて、それはまるでこの世の果てのクリスマスを思わせるような眺めだった。
 よりにもよって、と私は思った。何だってまた、こんな寂しい町で一泊するようなコースにしてしまったんだろう。
 しかし、ここで泊まって明くる朝一番の列車に乗るのが、この先の巡礼の旅程を考えるともっとも効率的なプランだったのだ。それに、この県の南西山間部では一番の町なんだから、そこそこには賑やかなんだろうとも思ったのだった。何と言っても、名前に「市」が付く町は、周囲三十キロでここしかないのである。
 去年までなら――と通りを歩きながら私は、そう思わずにはいられなかった。クリスマス・イブの夜に、独りでこんなところにいるなんて、考えられないことだった。一年前の自分に教えてやったら、さぞ驚くことだろう。かじりかけのチキンを手に、目を丸くしている自分の姿が目に浮かぶようだ。隣にいる三人が、数箇月後にみんな出て行ってしまうなんて、夢にも思っていないのだから。
 正面に、二階建ての駅舎が見えてきた。意外にも、改札口の照明はまだ消されていないようだ。車など一台もいないロータリーを、私はまっすぐに突っ切って駅に近付いて行った。
 駅舎に一歩足を踏み入れて、私は思わず立ち止まる。人がいるとは思っていなかった。もう上下線ともに、最終列車は出た後なのだ。しかし改札前に置かれたベンチには、高校生と思われる制服にコート姿の男女二人が並んで座っていた。
「こんばんは」
 女の子の方が、そう言って会釈する。
「どうも、こんばんは」
 そう返事を返しながら、まずいところに来てしまったなと私は思う。もう誰も来ないだろうと、このカップルはそう思ってここで過ごしていたのだろう。そんなところに四十絡みの怪しいおじさんが突然現れたわけである。こりゃ、すぐに退散するに限るな。私はそう思いながら、改札口の上に掲示された時刻表を見上げるふりをした。
「あの、列車ならさっき行っちゃいましたよ」
 今度は男の子のほうが言った。
「そうみたいだね」
 私は残念そうな顔を作ってうなずく。
「さっきのが、最終の列車なんです」
 女の子が申し訳なさそうに私の顔を見た。
「どちらまで行かれる予定だったんですか?」
「ああ、いや、奈須田まで行くつもりだったんだが」
「田舎なもので、最終の列車がとても早いんです。残念なことでした」
 ますます申し訳なさそうに、女の子は言った。
「いや、構わないさ。先を急がない旅だから。どこかで時間を潰して、明日の始発にでも乗ることにするよ。ありがとう」
 それじゃね、と私は外へ向かって歩き始める。
「あの、もし良かったら」
 背後から、男の子の声がした。私は足を止めて振り返る。
「僕らのところに来られますか? この二階が、基地なんで」
「お店とか、こんな時間に開いてるところもほとんどないんです、この町ですから」
 二人が、口々に言った。いや、実はちゃんとホテルに泊まっているんだと言い掛けて、私は言葉を飲み込んだ。男の子の一言が、少し気になった。基地?
「この駅の上に、何かあるのかい?」
「ええ、そうなんです。僕ら、実は『サンタクロース組合』の事務局やってて、今夜はここの二階を借りてプレゼント発送の基地にしてるんです」
 男の子が、笑顔でうなずく。
「クリスマス・イブですから。今夜はフル稼働ですよね、それは」
 当然のような顔をして、女の子がそう言う。
 そう言えば、クリスマスの夜に子供たちにプレゼントを届ける活動をしている、学生ボランティアのレポート記事を読んだことがある。きっと彼らもそんな活動をする団体に参加しているのだろう。
 面白そうだな、と私は思った。どうせホテルに戻っても、あの狭いベッドで寝るだけだ。特に急いで帰る理由もない。
 じゃあ、お言葉に甘えて、ちょっとだけお邪魔するよというと、二人は顔を見合わせて嬉しそうに笑った。その時に気づいたが、この二人の顔はよく似ていた。
「はい、その通りなんです」
 彼女はそう言いながら、切符売り場の隣にある、狭く急な階段を上り始めた。
「この人が、私の弟でタカクニというのです。私は優しいに美しいと書いてユミと申します」
「名前負けしとるでしょう、この人」
 タカクニはそう言って笑った。
 ショッピングセンターでもない駅の二階、というのはどんな場所なのだろうかと思ったが、階段を上がるとそこは青白い蛍光灯に照らされた廊下で、病院とか役場のような感じだった。特に面白味はない。廊下の両側には磨り硝子の窓が開いたドアがいくつか並んでいて、そのうちの一つだけが室内の灯りで窓を明るく光らせていた。そこが彼らの言う基地らしかった。
 二人に続いてその室内に入った私は、またもや思わず立ち止まった。十畳間くらいの広さがあるその場所には彼らと同じような高校生が二人いて、これには驚かなかったけれど、その隣には真っ赤なナイトキャップをかぶり同じ色のコートを着た、立派な白いあごひげを生やした老人が座っていた。見事なまでに、それはサンタクロースであった。
「……こんばんは」
 高校生二人は、私を見て一瞬きょとんとした後、そう言って挨拶してくれた。その声が聞こえたのか、うつむいて何やら作業をしていたらしいサンタクロースも、顔を上げて挨拶してくれた。
「メリー・クリスマス。ホッ、ホッ」
「どうも、こんばんは。いや、ええとメリークリスマス」
 私も、慌てて挨拶を返した。
「この方は」
 とタカクニが説明してくれた。
「奈須田まで行かれる旅の方で、終列車が出てしまって困っておられたので、こちらへお連れしました」
「それは、それは」
 とサンタクロース老人はうなずいた。
「大変でしたな。寂山本線は、本線とは名ばかりのローカル線でしてな、随分早いうちに列車が終わってしまうのですよ」
「ここは今晩は朝までやっているのですし、そこのソファーで仮眠もできましょうから、おくつろぎいただければ結構なのですよ」
 と優美さんが微笑む。彼女が指し示したソファーというのは、古びてはいたがなかなか立派なもので、四〜五人が並んで座れそうな幅があった。座面には、折り畳まれた毛布も置いてある。この室内は、暖房も良く効いて暖かかったから、十分快適に過ごせそうだった。あの寂しいホテルに戻るより、こちらのほうがずっと楽しそうだ。ここは好意に甘えることにしよう。料金はチェックインの際に払ってあるから、後で鍵だけ返しに行けばいいだろう。
 改めて室内を見回してみると、壁際に並んだ机の上には、赤いリボンがかかった箱がいくつも、山のように積み上げられていた。やはり、クリスマス・プレゼントを配って回る活動をしているのだろう。机の下には、そのプレゼントを入れて運ぶのに使うらしい、白い袋が置かれている。
「なかなか本格的ですね。すごい数だ」
 と私は感心しながら、プレゼントの箱の一つを手に取った。何が入っているのか、思ったよりは軽い。
「そこはやはり、伝統のある『サンタクロース組合』ですからな。未だ人気衰えず、ありがたいことです」
 と老人がうなずく。
「子供たちからのリクエストも、昔よりは減ったらしいんですけど、それでもこの数ですからね」
 タカクニはそう言って、壁の時計を見上げた。
「わ、まずい。もう十二時が近いよ」
「この時間ですから、残りの荷詰めも急いで終わらせてしまわなくては、さあ」
 優美さんにそう言われた二人の高校生は、積まれた箱を一つずつ取り上げては、机の下に置かれた袋に詰め始めた。タカクニも、サンタクロース老人も、同じように袋詰めの作業に取りかかる。
「あの、僕も手伝いますよ」
 と私は慌てて言った。世話になるのに、何もしないんじゃさすがに悪い。
 優美さんが、何か言いたげな顔で老人のほうを見た。今度はサンタクロース老人が、真顔でじっと私の顔を見る。やがて老人は、優美さんに向かってうなずきかけた。
「ありがとうございます。それではお願いいたしたいと思いますので」
 彼女はにっこりと笑って、私に向かって頭を下げた。
 箱の一つ一つは、大きさに関係なくばらばらの重さだった。それぞれみんな違う品物が入っているということなのだろう。リクエストとか言っていたが、これは本当に子供たち一人一人に希望通りのプレゼントを贈るということなのかも知れない。しかしそれにしては、箱には名前も番号も入っていなくて、これを果たしてどうやって見分けるのだろう。袋の方には「A−15」などの番号が入っていたから、もしかしたらまとめて町内の民生・児童委員などに渡して、あとはそこで自由に配ってもらうようなやり方なのかも知れない。
 袋詰め作業を続けるうちに、私はふと二人の子供たちのことを思い出した。光子も敬太郎も、今夜は楽しいイブを過ごすことができただろうか。欲しいプレゼントは、ちゃんと新しいパパに買ってもらえただろうか。
 もう私からあの子たちに、クリスマス・プレゼントを渡してあげることはできない。ならば代わりに、この町の見知らぬ子供たちにプレゼントを贈る手伝いを今こうしてさせてもらえたというのは、せめてもの救いではないだろうか。もしかしたら私にとって、これこそクリスマスの奇跡なのかもしれない。西国札所巡りの旅の最中だというのに、クリスマスだの奇跡だのとは節操が無いな、と仏様が呆れてしまうかもしれないけれど。
 ちょうど全ての袋詰めが終わったその時、壁の時計が十二時のチャイムを奏でた。
「よし、完了だ」
 タカクニが嬉しそうに言った。
「それでは、みなさんでこれらの袋を階下へとお運びになりますように」
 優美さんにそう言われて、私を含むみんなは袋を一つずつ肩に担いだ。サンタ老人はさすがに様になっていて、本物のサンタクロースにしか見えない。
 袋を担いで廊下を歩きながら、みんなは賛美歌らしい歌を歌い始めた。これは、そういう決まりになっているのかも知れない。私の知らない歌ではあったが、メロディーには聞き覚えがあった。これは「グリーン・スリーブス」そのものだ。今一つ歌詞が分からないまま、私も一緒にそのメロディーを口ずさんだ。

 いざいざ宝を たずさえ急げや
 きよけき喜び あふるる今宵
 いまぞ迎えん 我らの君をば
 ともに歌わん 我らの主をば

 荷物を担いだままに急な階段を苦労して、一階切符売り場の横へと下り、みんなは改札口を抜けてプラットホームへと入って行った。おや、なぜこんなところに、と思いながらついていくと、終列車が終わった線路の上に何かがある。いや、何かがいるというべきだろう。そこには、大型の獣が二頭佇んでいたのだ。
「……そこまで、やるのか」
 私はつぶやいた。立派な角を持ったその獣は鹿に似ていたが、しかし奈良公園や安芸の宮島で見た奴に比べると、角の形が随分違う。初めて見るが、これはトナカイという奴なのだろう。二頭とも、澄ました顔でおとなしくじっとしている。特に鼻が赤かったりはしないようだ。
 当然にと言うべきか、二頭のトナカイの後ろには軽自動車くらいの大きさがある橇がつながれていた。下部に取り付けられた刃の部分が、ちょうどレールの上に乗っていて、これなら雪が無くても滑走可能だろう。それにしても、想像を上回って本格的だ。
 みんなでプレゼント袋を橇の上に積み込み、優美さんがトナカイたちに餌を与えた。丸い形をした煎餅状のその餌は、どうも奈良名物の鹿せんべいそっくりな気がした。トナカイたちは、大仏殿の周りを闊歩している神鹿のみなさんと同じように、嬉しげにお辞儀をしながら、その謎の煎餅をむしゃむしゃと食べた。
 こうして出発準備が整い、サンタクロース老人が独りで御者台に乗り込んだ。
「それではニコラス様、お届け方よろしくお願いいたします」
 優美さんが、神妙な顔で言った。
 サンタ老人はうなずくと、手綱を手に取る。
「では出発、ホッ、ホッ」
 本気なのか、と私は思った。本気でこの橇で、線路上を走って、プレゼントを届けて回るつもりなのか。JRの許可とか、ちゃんと取ってあるのだろうか。そもそも、線路から離れたところへはどうやって届けるつもりなのか。
 そんな私の疑問を余所に、みんなはホームに並んで先ほどの賛美歌を再び歌い始めた。トナカイはゆっくりと歩き出し、橇はトロッコよろしくレールの上を進み始める。

 御使い歌いて 牧人集えば
 いとしき嬰児 静かに眠れ
 いまぞ迎えん 我らの君をば
 ともに歌わん 我らの主をば

 橇は次第に速度を上げながら、駅の構内を走り去って行った。トナカイたちの首に下げられた鈴が、いかにもクリスマスらしくシャンシャンと鳴っている。それは何だか、とてつもなくシュールな光景だった。あの赤信号の当たりで上下線のレールが合流するはずだが、トナカイたちはちゃんとカーブを曲がれるのだろうか。目を凝らして後ろ姿を見つめていた私は、次の瞬間、その我が目を疑った。
 サンタを乗せた橇は、ポイントへ向かうカーブを曲がろうともせずに、そのまま全速力で直進した。しかし、脱線転覆するようなことにはならなかった。ポイントの手前で、橇がふわりと宙に浮かび上がったのだ。牽引するトナカイたちは、まるでそこに透明なスロープがあるかの如く、星空へ向かって駆け上がっていく。地上には、信号機の光を映して赤く輝く二条のレールだけが残された。
「……本物だったのか」
 そうつぶやいた私に、優美さんとタカクニの二人が、笑顔でうなずきかけた。私もつられて、笑ってしまう。こんなことって、あるだろうか。しかし、サンタクロースが実在するというのなら安心だ。光子も敬太郎も今夜はいい子にしているに違いないから、確実にプレゼントをもらうことができるだろう。
 離陸した橇は、ゆっくりと旋回するように進行方向を変えながら頭上の空を昇り続け、やがて鈴の音だけを残して見えなくなった。満点の星たちが、聖なるこの夜を祝福するかのように、澄んだ大気の向こうで瞬き、輝いていた。
「さあ戻りましょう、次の仕事があるものですから」
 優美さんが言った。賛美歌を歌いながらホームの上を進む一行の後ろについて歩き、一緒にうろ覚えのメロディーでその歌を歌いながら、私はあの名高いクリスマス小説の最後の一節を思い出していた。
――神よ、我々を祝福したまえ。我々全ての人間を。
(了)
2014-12-17 20:00:43公開 / 作者:天野橋立
■この作品の著作権は天野橋立さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
この前完結した長編のラストもクリスマスの場面だったので、今年はクリスマスものはお休みにするつもりだったのですが、試しにちょこっとスケッチみたいなものを書いているうちに、そのまま完成してしまいました。短編というか長めのショートショート、位の感じでしょうか。
こんな展開にするつもりはなく、ひたすら一人で町を歩くようなものにするつもりだったのですが、駅で二人に出会った辺りから全然違う方向になってしまいました。自分で書いてても、こんなことになるとはびっくりです。

ラストの一節は、青空文庫に収録されていた岩波文庫版の「クリスマス・カロル」を下敷きにしました。手許の村岡花子訳もいいのですが、ちょっと雰囲気に合わない感じがしたので。
それではみなさま、良いクリスマスを。
この作品に対する感想 - 昇順
 こんにちは。さくっと書かれたもののようで、体裁がきっちり整っているわけではないところがまた味があっていいですね。どことなくディケンズっぽい感じがするのは、やはり意識されてのことなんでしょうか。優美さんのしゃべり方が変な(古くさい?)のもそういうことなのかなあ……。「奈須田」と出てきた時点であれっと思ったのですが、ここで登場するのはすべて架空の地名でしょうか。とすると冒頭に描写される列車も架空……? 鉄道には詳しくないのでよくわかりませんでしたが――この列車いいですね、乗ってみたいなあと思いました。
 ラストシーン、やっぱりそうきたか、とにやりとしてしまいました。おもしろかったです。
2014-12-17 23:42:55【☆☆☆☆☆】ゆうら 佑
元気ですか。神夜はあんまり元気じゃないです。
毎年毎年、クリスマス作品をよくもまぁ投稿できるものである。素直に拍手する。ただ直子やスバルに比べてしまうと「おい天野!神夜に対するプレゼントとしてはボリューム少ないやないかい!」になってしまうんだけれども、まぁ神夜もまったく作品書いてないし勘弁してやろう。うん。
素直な物語である。なんかもう、何もかも全部すっ飛ばして最後は「ですよね」と心微笑ましく読ませて貰った。クリスマスの肴としては十分ではないだろうか。
ただ繰り返すけど、神夜のクリスマスプレゼントとしては不足だ。いいから400枚の長編を一気に投稿するかラーメン餃子セットの美味いところ紹介するか、選んでプレゼントとして献上してくれ。お年玉としてでもいいよ。
次回作も楽しみにお待ちしております。
2014-12-24 16:55:31【☆☆☆☆☆】神夜
クリスマスおめでとうございます。旧年中はお世話になりました。本年もよろしくお願いいたしま…………違う。違うぞ。
閑話休題。
大好きなディケンズの作品中でも狸が至高と信じる『クリスマス・カロル』、それと同題で、しかも作者はあの天野様――なんじゃやら厳粛に構え、イブ当日まで楽しみにとっときました。
で、ウィーン少年合唱団の歌声なんぞを聞きながら、しみじみ読ませていただいたところ――ほんとにサラリとしたスケッチだったのですね。何かとクドいたちの狸ゆえ、読みながら、様々な脳内補間をじっくりと楽しんでしまいました。
しかしまた、その楽しみが天野様の楽しみとどこまで同調していたか、天野様御自身の細密描写と付き合わせてみたいのも確か。400枚は無茶でも40枚くらいまでなら、悠々語れそうな世界に思われます。
2014-12-24 21:09:40【☆☆☆☆☆】バニラダヌキ
 作品を読ませていただきました。
 いいなあ、筆の赴くままに書かれた作品ですね! こういうのをさらっと書けるようになりたいのです。熟練の書き手さんじゃないと、変に説教臭くなってしまったり、単調な描写ばかりで飽きてしまったりするのですが、この作品はそんなことがない。さすがは天野様ですね!
 とは言え、このサンタクロース組合というもの、題材としてすごく面白そうだったのが、少し残念です。駅に行って、サンタクロース組合という謎の単語が出てきた瞬間、俄然面白くなってきたのですよね。これを短編で使ってしまうのか。組合がどういうものか知っただけで終わっちゃうのはちょっともったいなく感じました。
 作品全体に流れる雰囲気も良くて、これで主人公がおっさんじゃなくて純粋な少年だったら童話になるんじゃないかってくらい素晴らしかった。人気のない駅って密やかな魔力があるような気がします。何か不思議なことに巻き込まれてしまいそうな、そんな人を惹きつける魔力ですね。ちょっとした非日常を望む人の期待をかきたてると力があるとでも言いましょうか、プラスの属性を持った魔性の力ですね。僕、東京幻想の絵が大好きなのですが、それに通ずる何かがあるように思えます。
 最後は本当に飛んじゃいましたね(笑)。このラスト、天野様らしくなくてちょっと驚きましたが、とてもよい〆だったように思います。僕も飛ばしていたんじゃないかと思います。
 主人公は――可哀想だったかなあ。どういう事情があってこんなことになってしまったのかは分かりませんが、ファンタジーな光景に心癒され、これからを強く生きていってほしいな。強くとまではいかなくても、もう少し楽観的に。
 とてもよいお話でした。ありがとうございました。メリー・クリスマス!
2014-12-24 21:39:51【★★★★☆】ピンク色伯爵
>>ゆうら佑さま
 感想ありがとうございます。
 優美さんのしゃべり方、あれは実はディケンズではなくてつげ義春の影響だという…なんでここでという気もするのですが、旅先で出会った少女がちょっと不思議な言葉遣い、というのを前からやってみたかったんです。
 ここに出てくるのは架空の土地ですが、駅のモデルはありまして、これは東萩駅をイメージしています。ですので、鉄道のほうは山陰本線ですね。あの辺りの山陰本線のひなびた風情を出したい、と思って書いてみました。一度夜の山陰本線に乗っていただければ、これに近い雰囲気ではないかなと思っています。
 ともかく、ラストシーンで楽しんでいただけたようで、嬉しいです。それでは、メリークリスマス!

>>神夜さま
 おお、このところ見かけないなと思っていたら消えてませんでしたね。リアル世界のほうで、色々あるのでしょうな。でも全ては太郎のためだ!
 今回の作品は、もうとにかくさらっと書こうというコンセプトなので、いつものように情感的に盛り上げたりしませんでした。たまにはこういうのもいいのじゃないかと思いました。「全体」のほうもラストは一応クリスマスだったりしたので、さすがにあんまり連発するのもちょっと、という気もしたので。
 ともあれ、ほほえましく感じて読んでいただけたのなら、ある種の童話みたいな仕上がりを目指した、ほぼその意図通りで嬉しいです。
 次はいきなり400枚、はちょっとどうだか分かりませんが、ラーメン餃子セットは、どこがいいかな。鳳林ってとこが地味にうまいんですが、場所がマイナーだな。また考えておきましょう。神夜さまもメリーなクリスマスを。

>>バニラダヌキさま
 欧米ではメリークリスマス&ハッピーニューイヤーですからね。こちらこそ大変お世話になりました。
 クリスマス・カロルもお好きでしたか。いや、僕も好きでして…それでバニラダヌキさんのクリスマス物も良作が多いのでしょうか。
 何だか、期待していただいて申し訳なかった感じもするのですが、今回はいくらでも感動的に持って行けそうな背景がありそうなところを、ともかくあっさりとスケッチ風に仕上げてみようという感じにしましたので、拍子抜けさせてしまったかも知れません。しかしここには語られていない、ずっしりと重い孤独がこの主人公の上にはのしかかっていて、しかしこの一夜だけはそれを忘れて過ごしている、というつもりで書いていますので、脳内補間を楽しんでいただければそれもまた嬉しいことです。
 それでは、よいお年を!(やっぱりまだ早い…)

>>ピンク色伯爵さま
 ひと気のない駅、いいですよね。最初はほんとに誰もいないつもりで書いていたんですが、そこにあの二人が現れて「サンタクロース組合」とか言い出して、予想もしないような夜になってしまいました。
 そうなんです、実は重い背景を背負っているはずのおっさんが、まるで童話の中のストーリーのような一夜を経験する、というのがこの小説の最終的なテーマなんだと思います(書き上げた結果として言えることですが)。従って、最後の部分も童話ですから、サンタはやっぱり空へ飛んでいかなければならないわけです。
「サンタクロース組合」は、また何かで使おうかな…。クリスマス物も、これで終わりではないはずだし。
 ちなみに「東京幻想」ってなんだろうと思って検索しましたが…これ僕も好きですね。ちょっと似た路線で「帝国少年」というイラストレーターさんの作品シリーズがあるのですが、前からその世界が好きだったりします。
 ともかく、気に入っていただけてありがとうございました。あと、長編完結お疲れ様でした。あれだけのものを仕上げられたのだから、良いクリスマスだと思いますよ。それでは、きゅんきゅんきゅんのッ! ラーブラブッ! じゃなかった、メリークリスマス! 
2014-12-24 23:15:56【☆☆☆☆☆】天野橋立
計:4点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。