『ハミスタガンの部屋』作者:甘木 / AE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角7015文字
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原稿用紙約17.54枚
 私たち親娘は朝日のない町に住んでいる。
 近代的なオシャレなビルと高層マンションに囲まれた街区。そこは華やかで煌びやかで時代の最先端をいっている。でも綺麗な建物の裏には時間の流れに忘れられた薄汚れた家々がひっそり立ち並ぶ町が隠されている。そんな町にある築後四十年は経つ木造モルタルアパートの一階一〇三号室。ここが私と娘のサチが生きることを許された唯一の場所。ビルが邪魔をして日中でも薄暗く、日光が当たるのは夕方のわずかな時間だけ。だけどかまわない。どうせ起きるのは太陽の残光が未練がましく茜色に空を染めあげている頃だから。
 今日も朱色の時間に目が覚めた。
 布団代わりの炬燵から見回すといつもの景色が目に入ってくる。早春の毒々しい夕陽が浮かび上がらせるものは、脱ぎ散らかした服、いたるところに積まれたゴミ袋、空になった酒瓶、干からびたパン、嫌な臭いをさせる食べかけの弁当。まるでゴミ溜めだ。このわずか八畳の空間が私たち親娘が生きていける唯一の場所。私たちにはここの他に行く当てはないし、引っ越ししたくてもお金もない。だけどここだって考えようによっては悪くない。雨風はしのげるし、テレビも冷蔵庫も炬燵もある。なによりサチの仕事場に近い。
 身体に掛かっている湿って重い炬燵布団をどけ身体を起こそうとした。が、左腕を下にして寝ていたせいで手が痺れてバランスが崩れる。無意識のうちに右手を伸ばそうとしたが、脳溢血を患って以来右半身はまともに動かない。右手は何もつかむこともなく無様に倒れた。
 陽が沈み惨めな世界にも夜の帳が降りる。すべてが闇に沈み暗い陰と化してしまう前に灯りをつけた。蛍光灯の明かりが汚物だらけの世界を鮮明にさせる。
 私はサチがいないことを確認すると、まだ半分残っている焼酎の一升瓶に手をかけた。
 今日もちゃんと仕事に行ったようだ。仕事に行けば幾ばくかのお金を持って帰ってくるはず。贅沢さえ言わなければまたお酒が買える。一升瓶を傾け茶碗に注ぎ一気にあおると、頭の中にかかっていた霞が晴れてきた。五感もじわじわと戻ってくる。耳鳴りしかしていなかった耳朶に周囲の雑音が流れこんでくる。歪んでいた視界が鮮明になってきた。同時に疲れや怠さが澱のように積み重なった不快感がわき上がってくる。
 ああ気持ちが悪い。呑みすぎかもしれない。いや、きっとこんな安酒を呑んでいるせいだ。焼酎じゃなくって、もっといいお酒を呑んでいたらこんなことにはならなかったはずだ。こんな気持ちが悪い思いをするのもサチの稼ぎが悪いせいだ。帰ってきたらもっとがんばって働けってきつく言わないと……サチが戻るまではまだ時間がある。それまでは呑んで時間を潰していよう。




 高校を三ヶ月で中退した私は、家出同然に家を飛び出し東京に来た。初めは住みこみの弁当店で働いたけど、給料は安かったし休みも少なかったからすぐ辞め、その後は職を転々としながら東京の街で遊びほうけていた。気づいた時には啓太と暮らしていた。啓太は都内の私立大学に通う大学三年生だった。といっても大学にはほとんど行くことはなく、プロミュージシャンを目指してバンド活動ばかりしていた。
 啓太はパペットピッツというバンドでギターを弾いていた。私には音楽の善し悪しはわからないけどパペットピッツは人気はあった。ライブをやればお客さんがたくさん入ったし、有名バンドも出るサマーフェスタの出演者に選ばれたこともある。でも、それは啓太のギターが上手くて人気があったわけじゃない。ボーカルのヒロ君がハンサムで歌が上手かったからだと思う。ヒロ君が就職活動のためにバンドを抜けると人気はなくなり、パペットピッツのメンバーも故郷に帰ったり就職したりして程なく解散した。だけど啓太だけはギターを続けた。ほとんど講義に出席していなかったことが祟って三年生から四年生にはなれず留年が決定した時、ロックで食っていくんだと言って大学を辞めてしまった。それからは色々なバンドのサポートをしたり、自分でバンドを組んだこともあったけど、どれもこれも鳴かず飛ばず。パペットピッツが解散して一年経つ頃には、俺の命だと言っていたギターも埃をかぶるようになっていた。
 そんな時、サチを身ごもった。
 私はまだ二十一歳。音楽を辞めた啓太は定職にも就かず毎日パチンコだ競馬だと根無し草の生活を送っていたから、私が働かなきゃ暮らしていけず堕ろすつもりでいた。けれど啓太は堕胎のために貯金していたお金まで博打につぎこみ、それに気がついた時にはどうにもならない状況になっていた。仕事先からの前借りも友達からの借金も限界だったし、両親には勘当されていてお金を借りるあてもなく、ついには堕胎の期限を逃し出産した。
 六日間の分娩入院からから帰ってみると、生まれた子どもに紗千(さち)という名前を残して啓太は消えていた。色々な知り合いに尋ねてみたけど、啓太の行方は誰も知らなかった。わかったことは何人ものバンド仲間からレアな楽器や高価な機材を借りて勝手に売り払って姿を消したということ。啓太は博打で私のお金だけでは足りず質の悪い筋からも借金していたとライブハウスの山崎さんが教えてくれた。山崎さんが言うには啓太はもう東京にはいない。たぶん二度と東京には戻って来れないだろうとのことだ。
 乳飲み子を抱えた女が働ける仕事は限られている。生活に困って借りた街金の紹介で水商売の世界に入っていった。それからは色々なことがあったような気もするが、今となっては思い出せない。
 サチのことがあったから……。
 サチは器質的知的障害だった。早い話が知恵遅れだ。医者の話だと成人しても小学生ぐらいの知能にしかならないそうだ。バカな女がバカな子どもを抱えたわけだ。サチのことが解ってから酒量が一気に増えた。仕事中はもちろん帰ってきてからも呑み続けた。だって現実から逃げるにはお酒しかなかったから。
 いつも酔いつぶれていた私は悪い母親だったと思う。サチを遊びに連れて行ったことはほとんどないし、食事だって作ってあげたことは一度もない。
 なのにサチは買い与えた弁当を食べながらニコニコしていつも私を見ていた。いつだってサチは笑っている。私がどんなにつらく当たっても顔中に笑みを貼り付けて「まま、だいしゅき」とニコニコしている。
 この笑みは私への叱責かもしれない。人並みに生んでやらなかった罪、遊んでやることもなく放置していた罪、そんなことを理解すらできない娘をつくりあげた罪。
 私はサチの笑みが怖ろしい。無垢な笑みに見えるその奥にあるものが怖ろしい。怖ろしいからお酒を呑む。意識がなくなるまで呑めばこの笑みから逃げられる。




 サチが十六歳の年、私は長年の飲酒が祟って脳溢血で病院に運びこまれた。幸い外出中の発作だったから通行人が救急車を呼んでくれて一命を取り留めた。もしアパートで倒れていたら、サチには救急車を呼ぶなんてことは思いつかないだろうから死んでいたかもしれない。でも、今思えばあの時死んでいた方がよかったかもしれない。命は助かったけど代償として右半身に麻痺が残った。リハビリのおかげで右足はひきずりながらも歩けるようになったけど、右手は無様に曲がったまま全然力が入らない。
 退院はしたものの、この身体では働くことができない。お酒も食べ物も買うことができないし、家賃だって払えない。このままではアパートを追い出されのたれ死にするしかない。
「まま。ねこさんあげるからげんき。げんきね」
 途方に暮れる私にサチが猫のぬいぐるみを差し出してくる。
 入院中、サチは民生委員の手配で養護施設で預かってもらっていた。そこでどのように説明されたか知らないが、サチは私が病気だと理解したようだ。大病を患ったことがないサチにとって病気とは風邪や腹下しのようなもので、具合が悪くなり熱や咳が出て元気がなくなるもので、元気になればすべてがよくなると思っている。自分の宝物の猫のぬいぐるみをあげるから元気になれと言っているのだ。
 このぬいぐるみは私がまだスナックで働いていたとき店の客から貰ったものだ。こんなものを貰っても私は嬉しくない。だからサチにやった。それが十年前のこと。それ以来サチは猫のぬいぐるみを大切にしている。思い出してみれば私がサチにやった唯一のものだ。猫のぬいぐるみをやれば私が元気になる、手足も元通りに動くようになると思っているのだろう。
 バカバカしい。ぬいぐるみを大切そうに両手で差し出すサチを無視してコップにお酒を注いだ。


 お酒も弁当も買うお金がなくなって、もういっそサチと共に電車にでも飛びこんですべてを終わらせようかと思ったとき男が訪ねてきた。男はこの辺りに縄張りを持つヤクザ、赤尾組の組員だった。私に水商売の店を紹介してくれたことがある顔なじみの男が「あんたらを助けてやるよ」と言ってきた。
 男が言うには、サチに実入りのいい仕事を紹介してやるとのことだった。つまり売春だ。
 サチはバカだが顔は可愛いしスタイルもいい。一緒に出かけたとき、男たちがみんな嫌らしい目でサチを見ていたほどだ。
「これだけの器量なら稼げるぜ。俺たちの方で客は紹介してやるし、場所も提供する。取り分は半々だ。どうする?」
 断る理由はなかった。
 このままでは二人とも死ぬだけだ。ならば死んだつもりでサチに働いてもらえばいい。
 お金があれば酒が買えるんだ。
「サチ、お母さんのお願い聞いてくれるかな?」
 私の言葉にサチはニコニコとして「うん」と答えた。
 あの日からサチは夕方になると赤尾組の若い衆に連れられて夜の街に出かける毎日となった。
 そして、サチが稼いだお金で暮らすようになって二年の月日が過ぎ去った。




 サチは今ごろ見知らぬ男に抱かれているだろう。自分がしていることの意味さえ解らぬまま、わずかなお金をもらうため股を開く。性に飢えたニキビだらけのガキ、ソープランドにすら行けないサラリーマン、客待ちの間に赤尾組の若い衆にカップ麺をやるからと言われてベッドに押し倒されているかもしれない。たとえどんな相手だろうが、サチはニコニコと曖昧な笑みを浮かべて抱かれているだろう。
 サチはどんな気持ちで抱かれているのだろう。好きでもない男に股を開く気持ちを私は理解できない。私も水商売はやってきたけど売りまではしたことがない。何度も誘われたことはあったけど、どうしても最後の一線を越えることはできなかった。サチが生まれてから色々と出費が多く、誘われた時に心が動きかけたこともあった。でも、性欲に目を血走らせた男たちに抱かれる自分を想像すると吐き気がして断り続けてきた。サチも吐き気を堪えて抱かれているのだろか。いや、あの子の頭でそこまでは理解できないだろう。ただ、股を開いてじっとしていれば赤尾組の若衆からお菓子や服をもらえるから、私が喜ぶからとなすがままにされているのだろう。
 お菓子をもらえれば嬉しい。私に稼いだお金を渡すと嬉しい。嬉しいから抱かれる。
 サチは単純な世界に住んでいる。
 それが羨ましい。
 そして妬ましい。
 だからサチに売春をさせる。
 死んだら私は地獄に堕ちるだろう。でも、怖ろしくない。
 いま、この生活より辛いはずがない。
 髪を振り乱し、くの字に曲がった右手をぶら下げ、無様に足を引きずる私の姿を見て町の人は気持ち悪いものを見たようにチラッと視線を送ってはすぐ目をそらす。サチが売春をしていることを知っている人は、知恵遅れの娘に酷いことをさせながら娘の稼いだ金で酒を飲む最低の母親だと蔑む。私が酒屋に行くと店員は疫病持ちが来たとでもいう表情で一秒でも早く追い返そうとする。弁当屋に行けば残飯でも漁っていろとばかり冷たい目で見る。他人は私に侮蔑と嫌悪しか与えてくれない。
 でも知っている。弁当屋の店員も酒屋のオヤジもサチの姿を見るたびに嫌らしい目で見ていることを。サチのツンと盛り上がった胸を、くびれた腰から張ったお尻を、血走った目で見つめていることはお見通しだ。サチが買い物に行くと色々オマケをつけてくれるのも、すべてはあわよくば一回でいいから抱けたらという下心からだ。
 周りの人は私を汚物のように見、サチを性欲処理の道具としか見ない。
 誰も私たち親子を人間とは見てくれない。私が仕事に就けるはずがない、サチの頭が急によくなるなんてことは絶対ない。二人ともこのボロアパートでゆっくり朽ちていく未来しかない。幸せも希望も夢もない。救ってくれる人なんているはずがない。救いを望むだけバカを見るのは解っている。
 私は長生きできないだろう。最近は胃がシクシクと痛むし、嫌らしい咳も止まらない。サチだって老いていく。若い間は身体を買ってくれる男もいるだろうが歳をとったらどうなるのか。考えるまでもない。赤尾組にも見捨てられお金を稼ぐことができなくなるだけだ。
 私もサチもとっくの昔に地獄に堕ちている。
 だから地獄なんて怖くない。ただ、生きているのが怖ろしくて辛いだけだ。
 生き続ける未来が怖ろしくてお酒をあおる。何も考えられなくなるまで安酒を呑み続けるしかないのだ。




 気がつくとつけっぱなしのテレビの画面には見たこともない芸人が映っていた。この番組が面白いのかつまらないのかは解らない。頭の中に靄がかかっているようで内容が頭に入ってこない。
 ああ、苛つく。
 灰皿の中からまだ吸えそうなタバコを掘り出しライターを擦る。でも手が震えていてなかなか火がつかない。腹立ち紛れに、わけがわからない番組を続けるテレビに向かってタバコを投げつけた。
 ああ、苛つく。
 サチは何人目の男と寝ているだろう? ちゃんと稼げているだろうか? もうお酒の残りも少ない。明日までに酒屋にツケを払わないとお酒も買えなくなる。
 ああ、本当に苛つく。
 苛つくからコップに残っていた焼酎をあおった。
 頭の中の靄が濃くなり、視界がぼやけてくる。強ばっている感じしかしない右腕から緊張が抜けていく。
 そして意識は闇に沈んでいく。
 私は夢を見た……、


「今日は販売会議があって遅くなるから夕飯は用意しなくていい。先月は上町スーパーが閉店したせいで業績が落ちたから会議が長くなるだろうな。ああ憂鬱だ」
 少し髪が薄くなった啓太がネクタイを締めながら溜息をつく。
 商品開発部から顧客管理部に配置換えになって以来残業が続いている。啓太はいつも、しんどいと愚痴っているが、顧客管理部は出世コースだという。啓太の年齢で顧客管理部に異動になることは滅多にないことらしく、同期に比べて二割も給料が上がった分仕事はきつくなったようだ。
「お父さん、のんびりしていて大丈夫なの?」
 洗面所で髪の毛と格闘していた紗千が居間に入ってくるなり壁に掛けられた時計を指差す。
「えっ? もうこんな時間じゃないか。いつも父さんより早く家を出る紗千がまだいるから油断していた。でも、どうしてまだ家にいるんだ? テニス部の朝練は行かなくていいのか?」
「いまはテスト期間だから朝練はお休み」
「そうか、テストか。頑張れよ。じゃあ行ってくる」
 そう言うと啓太はブリーフケースと新聞をつかみ慌てて出ていく。
「お母さん、お弁当できてる?」
「できてるわよ。今日はテストだから一口カツを入れておいたわよ。テストに勝つってね」
「お母さん古いよ。それに今日は得意教科ばっかりだもん。ゲン担ぎなんて無用だよ」
 生意気なことを言う紗千を見ていると不安になってくる。だってこの娘は頭はいいのだけど、テストでは必ずと言っていいほど単純なミスをする。小学校の頃から高校生の今になっても変わらない悪癖だ。親心としてはゲンも担ぎたくなるわよ。
「あたしもそろそろ行くね」
 紗千は学校指定のバッグにお弁当を入れると、上着の裾を二、三度引っぱって制服の皺を伸ばす。
「行ってらっしゃい。頑張ってね」
「楽勝、楽勝」
 紗千は跳ねるようにして玄関から飛び出していく。
 どこにでもある普通の日常の光景。でも、とても幸せな光景。


 それは……あり得ない夢。




 黴びた臭いのする炬燵布団の中で目覚めた。テレビはいつ消したのか覚えていないけど消えている。変な体勢で寝ていたせいで鈍い痛みがある腰をかばいながら身体を起こす。
 壁に掛かった安物のデジタル時計は午前二時三十二分を表示している。さすがにこの時間になると表通りのざわめきも聞こえてこない。部屋の中には重い静寂だけが充満している。
 サチはまだ帰っていなかった。
 テレビの画面に自分の姿が映る。暗い画面に浮かぶ不鮮明な人の顔。幸せも希望も夢もない醜い影。
 さっきまで見ていた夢を思いだし、四つんばいになったままトイレに駆けこみ……嘔吐した。
2014-07-13 14:42:26公開 / 作者:甘木
■この作品の著作権は甘木さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 お久しぶりです。
 最近は生命エネルギーの80%を艦これに奪われ、残り20%のうち15%はアニメを見たりマンガを読んだり、メシや風呂などに3%、仕事に1%、その他1%と言う具合に忙しい日々を送っていました。小説のネタは思いつくのですが書くのにやたらと時間がかかって苦戦していました。

 今回の目標は「嫌な話」です。
 嫌な話は書いていて全然つまらない。というか苦痛。書いている当人が嫌な気分になる。嫌な気持ちになって気分が乗らないから、一行書いては気分転換にアニメ見たり、マンガ読んだり、ネットしたり。だから短編なのに書き上げるまでに凄く時間がかかっています。
 俺、なんでこんな話を書いているんだろう……
 どうせ書くのなら笑いがあったり、夢や希望がある作品を書きたいよなぁ。だけどネタのストックは暗い話しばかり。ああ嫌になる。

 題名のハミスタガンはゾロアスター教の用語です。

 こんな作品ですが読んでいただけたら幸いです。
この作品に対する感想 - 昇順
 こんにちは、甘木様。上野文です。
 御作を読みました。
 正直言って評価に困る小説です。打ち破るべき障害、乗り越えるべき試練としての不幸を描くのではなく、憎悪と閉塞感と無力感を煮詰めて表現しようとしたらこうなった、という印象を受けました。
 ただ、実は私もそういう話、何回か書いたことありますし。負の感情だからこそ、形にしなきゃいけなかったのでしょう。
 形のない「なにか」は、形にして初めて、心の中で整理されるのだと思います。
 興味深く考えさせられる小説でした。
2014-07-13 15:44:00【☆☆☆☆☆】上野文
初めまして。
読ませて頂きました。
この内容で、このタイトル・・・個人的には審判の時、と言うイメージですが、序盤ですのでこの先を読まないと、タイトルの本当の意味は分かりませんよね。この物語がどうなっていくのか、自分には検討がつきません。
それにしても、嫌な話です。所で、他の作品も多々ある様ですが、そちらの文章を読むと、いささかこの物語には作者様の心を感じない、と言うのが正直な感想でした。一定の距離感が見られるのです。
今後の展開を、お待ちしております。読ませて頂き、ありがとうございました。
2014-07-14 00:01:29【☆☆☆☆☆】半獣
おお。お久しぶりです。お元気ですか。僕はあんまり元気じゃないです。
久々の甘木さんや、と言う訳で読ませて貰いました。読んだのはいいんだけれども後悔した。出だしで既に「ああ、あれだ、これはあれや、甘木さんのあっち方面の物語や」と思ったけど、それでも読んだ訳ですが後悔しか残らない。まさに「嫌な物語」だ。よくもまぁこんな物語を書けるものである。自分でこれ書いたらたぶん鬱になる。いろいろな要素をすべて負に叩き込むこの物語に拍手という名の嫌悪を捧げます。この物語に救いが無い以上、神夜はもはや何も言えないのである。
ところで最初の過去話に進むまで、「私」が女だと思ってなかった。てっきりダメ男かと思ってた。
2014-07-16 21:53:27【☆☆☆☆☆】神夜
 皆様お久しぶりです。
 感想への返事が遅くなって済みませんでした。
 この作品の題名にあるハミスタガンとはゾロアスター教において、善でも悪でもない魂が救済の日までいる場所です。

上野文
 >上野文さん、お久しぶりです。
 ははは、そうでしょうね。私が読者ならこの作品の感想は困ると思います。
 この作品の本題は、唾棄すべき現実とか嫌悪すべき親子関係ではなく、どうにもならない「負」の情景を切り取ったらどうなるか、嫌悪感を文章にするにばどうすればいいかというものです。ある意味、私にとっては以前書いた「不透明少女」に近い作品ですね。
 ぶっちゃけ言ってしまえば実験作品です。
 書いていて楽しくなかったけど、書き終えて清々しています。

 >半獣さん、初めまして。このたびは作品を読んで下さってありがとうございます。
 すみません。この作品はこれで終わりなんです。続きは私の力ではとても書けないし、なによりこんな不快な作品を書き続けたら精神が保ちません。
 嫌な話と感じていただけて嬉しいです。我ながら悪趣味だとは思いますが、とにかく不快感を与える作品を書いてみたかったんです。それゆえ半獣さんの感想は我が意を得たりという感じです。
 ここ最近は書いていませんでしたが、私は基本的に脳天気な作品が多いですよ。こういう作品は自身の感情から少し距離を取らないと書けません。

 >神夜さん、お久しぶりです。
 私は見た目は元気なのですが、実体は生命エネルギーのほとんどブラウザゲームの艦隊これくしょんに吸い取られてゾンビ状態です。
 神夜さんは元気じゃないのか。空元気でもいいから元気を見せて下さいよ。
 神夜さんの感想は嬉しいな。とにかく読後に不快感や嫌悪感を残す作品を書きたいと思って書き始めたから、神夜さんの感想は最大の賛辞です。
 この作品は書くのに時間がかかりましたよ。書いている自分自身が嫌な気分になるものだから、1行書いては放置、1行書いては放置の繰り返しでした。
 救済なんてありませんよ。だって現実は残酷なものだし、主人公だって救済は求めていませんしね。最後に見る夢が救済と言えば救済だけど、主人公はその夢に対し嫌悪して嘔吐しているぐらいだもの。

 こんな精神衛生の良くない作品を読んで下さり、感想までしていただけた皆様には最大の感謝を遅らさせていただきます。
 次書く作品は脳天気な作品にしたいなぁ。
2014-07-20 18:33:15【☆☆☆☆☆】甘木
おお、久しぶりに甘木さんの新作、と、嬉々として読み始めたら……20トンの巨大な分銅が、真上からズド〜ンと。
ところが狸は、ぺしゃんこになりながらも、あんがい鬱らずに分銅の下から這い出せてしまいました。
これはたぶん、狸がチョンガー親爺ゆえ、この母親の心理がリアルなのかリアルでないのかさえ判別する術を持たないからでしょうが、また甘木様御自身、御自分でおっしゃる「不快感や嫌悪感」に徹しきれていないからだと思われます。
たとえば母親がここまでに至る過程で公的支援と縁を切らざるを得なかった絶望的心理とか、つまり煉獄を煉獄として狸のような能天気な奴にも納得させられる徹底的な要素、それが足りないと、この母親の鬱が空回りしてしまう。さらに一介の小動物である狸としては、この母親は啓太との関わりの中でオルガスムスに達したことがなかったのだろうか、とか、サチは自分がしていることの意味がわからないからこそ生物として日々なんら箍のない快感を享受しているのではないか、とか、ならばそれに対しての母親の心理は、とか、えぐりこみたい煉獄要素に次々と思い当たったりして……うわ、狸のほうが甘木様より遙かに鬼畜か。
しかしそこまでやったら、それこそハミスタガンならぬ地獄に墜ちてしまう気もしますし……ううむ、鬱系は難しい。
2014-07-20 20:14:43【☆☆☆☆☆】バニラダヌキ
 初めまして、夏海と申します。御作、拝読させていただきました。
 アルコール依存の患者さんは多くが男性と言われていますが、実際には女性の方がアルコールを分解する能力は低く、キッチンドランカー等、女性のアルコール依存が問題になっていますね。御作とはあまり関係ないのですが、肝硬変や慢性膵炎などきっついビョーキが今女性の間で増えています。
 さて、重いですね、地獄の底というか、それを遠くから傍観していることしか出来ない歯痒さというか、人間の愚かしさを抽出しているというか、とにかくずずんと重い作品でした。他の方も書かれていますが、最初ヒモのダメ野郎の話かと思いましたが……、サチの父親がダメ野郎だったんですね(苦笑 
 これだけ重くて暗いストーリーならば、せめて救いの手が差し伸べられてほしかったというのが感想です。筆者様の力量ならばそれも可能だったのではないかと勝手な想像をしてしまいました。現実的には生活保護という制度もありますし……。
 いずれにせよ、次回作に期待です。それでは。
2014-07-25 10:37:38【☆☆☆☆☆】夏海
計:0点
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