『completion of a course』作者:ラインストーン / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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「三年ニ組三十七番、斉藤梓」

舞台の上に、私が立って、何度も練習したおじぎをする。
校長先生のつるつるした頭を見つめながら、にっこりと微笑む。

卒業証書を受け取り、振り向いて叫ぶ、「私の決意」


「高校に行っても、皆の事忘れません」

舞台から降りて、決められた座席に着いた。


中学三年生、斉藤梓。
今日、この中学を卒業する。

別に、決して会えない別れではない。
只、小学校の時とは訳が違う。

皆が皆、別々の道を進む―――

―――そう、たった今から

プロサッカー選手を目指す人、芸能界へ進む人、
今ある才能を延ばせる高校に、それぞれが進んでいく。


私も、小さい頃から夢見ていたテニス選手の憧れから、
推薦を受けていた高校に進む事を決心した。

同じ学校に進む人は、誰もいない。

大好きだった人とも、笑い合えた友達とも、優しい先生とも。


あの教室から抜け出して―――

人生を一回区切るとも言える日が、今日だ。

―――もうこの中学ともお別れかぁ…
梓がそんな事を思っていると、舞台の上に梓の親友の真樹子が立った。

真樹子とも、今日からあまり会わなくなるんだな…

と、その時卒業証書を手に取った真樹子の体が震えた。

―――え?

振り向いた真樹子の瞳からは、大粒の涙が零れ落ちていた。
いつも強気で、よっぽどの事がないと泣かない真樹子が泣いている。

ぐしゃぐしゃの顔で、真樹子が叫んだ。

「皆高校行っても元気でね!また会おうね!!」


         マタアオウネ


その一言が、ふいに梓の胸を貫いた。

あの教室の中で笑い合っている皆の光景、楽しかった毎日が
梓の脳裏に蘇ってきた。

すると、ふいに梓の使い古したブレザーの上に水滴が壊れた。

―――あれ??


梓も自分が泣いている事にしばらくの間気がつかなかった。



             
            マタアオウネ


言っていたのは真樹子だ。


梓だって、皆だって―――


いつまでもその事を心の中で思っていたんだ。


この涙は、梓だけの物じゃなかった。

今、初めて自分の心を正直に打ち明けられる気がする。


卒業

人生にとって、過ぎるしかない運命。


梓が隣を見る。
皆の瞳が、滲んでいた。

真紀子の一言が切なくて―――


けれどこれは、別れじゃないんだ。





式は終わり、各クラスでの集合写真。


「はい、行くよー。1、2、3!」

梓は最高の笑顔をカメラに向けた。
きっと、今までにないくらい―――

―――素顔の、最高に綺麗な私だったと思う。


「梓!!」

振りかえると、たくさんの友達。
「また、電話するね」

「うん」

「元気でね!!」


「うん」

うなずく度に、嬉しさで胸がいっぱいになる。

この涙は、たぶんずっと忘れない。

くしゃくしゃになったブレザーの袖を、梓は伸ばすことなくいつまでも
見つめていた。



           マタアオウネ

―――真樹子の言った言葉。

ずっと忘れられない。


    中学卒業おめでとう、私。


          皆へ

     高校行っても、元気でね。ありがとう。


2003-12-17 19:59:41公開 / 作者:ラインストーン
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■作者からのメッセージ
私も卒業する時泣いちゃいそうですJJ
皆さんはどうでしたか??
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