『二人の距離は今』作者:リーフライ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
あの幽霊は今何処に で天界に行った二人のその後の物語
全角8562.5文字
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原稿用紙約21.41枚
[審判を受ける]

「はいはい、えーと羽馴麗華さんねぇ」
 地上、天国、地獄を繋ぐ場所、地上の認識で言うと閻魔様のいる所に私はいた。
「聞いていますか? 羽馴さん」
「あ、すいません、なんでしょうか」
 私としゃべっているのは鬼というより小人のような感じのおじさんだった。
「羽馴麗華さん、天国に行く事を許可します」
「え……」
 つい声を出してしまった、小人が怪訝な顔をして持っていた資料に目を通す。
「何か不満でも? 地獄に行きたいわけでもないんでしょう」
「それは、そうですけど」
「じゃあ行った行った、こっちも忙しいの」
 一人一人区切られている部屋を追い出されそうになったが小人の手を掴んで私は言った。
「捜している人がいるんですが……今日死んだのですがこちらに来てませんか?」
 小人は溜息をついて
「私一人で取り仕切ってるんじゃないんですよ、一日何人の人が来ると思ってるんですか」
「す、すいません、わかりませんよね、それじゃあ」
 私が部屋を出ようとすると今度は小人が私の手を掴んだ。
「待ってくださいよ、そういうのも使命の内なんですよ、じゃあその人のお名前を教えてください」
 私は少し考えて気づいた、私はあの人の名前を知らなかった。
「えっと……知りません」
 小人はまた怪訝な顔をした。
「知らない? ああもうじゃあこの先の角を右に曲がってください」
「? 移動するのですか?」
「エンマ様の所です、私達の下には名前ぐらいしか判別できるものがないんですよ」
「そうなんですか、ありがとうございます」
 そう言って私は部屋を出た。
「羽馴さんですね、案内をさせていただきます」
 そう言ったのは鬼……だと思われる、頭から少しだけ角が見えている。


「……そのような男の人はいません、成仏してないのではありませんか?」
 エンマ様と呼ばれていたのは大きい男性では無く小さな少女だった、聞くと閻魔大王の娘で閻魔大王は忙しいらしい。
「そんなはずはありません、ちゃんと確認しました」
「でも……天国か地獄に居たとしてもこの情報だけでは無理なようです、すいません」
「いえ、大丈夫です……ありがとうございました」
 私は名前を確認してから成仏しなかったのを深く後悔した。







[男性は新しき生活を]


「福津裕二さん、天国に行くことを許可するね」
 気だるそうに対応していた小人が一枚の書類、天国入国許可証を俺に押し付けた。
「ありがとうございます」
 そう言って俺は天国の入口に向かった……のだが。
「迷った」
 そう、俺は方向音痴なのだ、成仏した後ここまで来るのにも相当迷った。
「また迷ってんのか? 裕二」
 途方にくれていた俺の後ろから懐かしい声がした、俺が振り向くとそこにいたのは無精髭を生やしたいかにも軽そうな男、
「親父じゃねぇか!!」
 そうおれの父である。 
「そんなに驚くか?」
 そう言って頭を掻いた父は俺に近づいてきて言った。
「お前、俺と一緒に暮らす気は無いか?」
 俺は即答した。
「いいよ」


 その後親父に案内されて天国に入り、親父が住んでいるという家に向かった。
「なんか天国って感じしねぇなぁ」
 そう、俺が今歩いているのは少し懐かしい感じの道路、下水道や電信柱等は無いがそれ以外は地上とあんまり変わらないようだ。
「そうだろ、ここが俺の家だ」
 ついた家は少し古臭い一戸建ての家だった。
「なんか懐かしい感じがするな」
 俺がそう呟くと親父が優しい顔でこっちを向いて言った。
「お前が三歳の頃までいた家だ、俺とあいつの思い出の家を似せて作った」
 あいつというのはお袋なんだろう、親父は遠くを見る目をしている。
「てか……作った? 親父が?」
「いや、頼んだ」
 親父に聞くと友達に大工魂の塊のような人がいるらしくその人が創造力(物を生み出す霊の能力)を使わずに作り上げたらしい。
「まあ話は入ってからしよう、時間はたっぷりある」
「そうだな」
 そう言って俺は親父と一緒に家に入った。











[女性は新しい世界に]

 私はとりあえず天国に入った、これから先の事は何も考えていなかった。
「お嬢さん、どうしたのかい?」
 私が途方に暮れていると老夫婦が話しかけてきた。
「あの、人を探していて……」
「それならあの可愛い小人かエンマの嬢ちゃんに聞いたらいいんじゃないかい?」
「それが……」
 私は今までの事情を簡単に話した、するとおばあさんのほうが口を開いた。
「羽馴さんはこれからどうするつもりなのかい?」
 私はしばらく考えて
「どっかにとどまって少し考えようと思っています」
 すると老夫婦はお互いに見つめあったあとこっちを向いた。
「羽馴さんさえよければ、私達と一緒に住まないかい?」
 私は目を丸くした。
「え?」
「いや、羽馴さんが今の私達の孫と同じくらいの歳でね、それに」
 次はおじいさんが口を開いた。
「わし達の歳になるとおせっかいを焼きたくなるもんだよ」
 私は目に涙を流すのを我慢して言った。
「よろしく……おねがいします!」



 それから数週間後
「麗華や、ご飯ができましたよー」
 一階からおばあさんが呼んでいる、私はここ周辺の地図を閉じて下の階に向かった。
「今日はきんぴらごぼうですか」
「煮付けもありますからねー」
 おばあさんの料理の味付けは薄かったのだが数日でそれが美味しく感じるようになった、お袋の味っていうやつなのだろうか。
「麗華、今日はどこまで行くんだ?」
 おじいさんが霊界新聞を閉じながら言った。
「今日は第五地区ですね」
「そうか」
 そう言っておじいさんはまた新聞を広げて読み始めた。
 ここにお世話になることになってから数日後、私は周辺の捜索から始めることにした。
「ん……麗華、お前捜索伝言板は使っているか?」
「捜索伝言板……ですか?」
 おじいさんは新聞の一部を指差して言った。
「これじゃよ」
 {捜索伝言板、一定区間内で共有出来る人を探すための伝言板です、詳しくは第七地区中央広場まで}
「……!!」
 私は急いでご飯を飲み込んで地図を持って走り出した。
「おばあさん、ちょっと出かけてきます」
「ああ、いってらっしゃい」
 私は全速力で七地区に向かった






[男性は決意を固め]

 親父と暮らし始めて数週間が立った。
「そういやさ、親父とお袋ってどうやって知り合ったの?」
 気まぐれにする食事の途中、俺は何気なしに親父に話題を振った。
「俺の一目惚れだったな」
「一目惚れ?」
「ああ、街でみた瞬間ズキューンと来た、早速猛烈アタックをしたっけなぁ」
「それで成功してめでたく結婚ってか」
 親父は首を横に振った。
「いや、即効で振られた」
「はあ?」
「しかし父さんは諦めなかったぞ、その後何度も家の前で待ち伏せしては嫌がられ、アタックしては断られ……」
「ストーカーじゃねぇか、よく結婚できたな」
 俺は一言で結論を述べた、親父はオーバーリアクションで
「そうだろう、一年かけてようやく付き合えた」
「よく通報されなかったな」
「いや、三回ほどお世話になった」
「前科持ち!?」
 衝撃の事実だ、親父が前科持ちだった、しかもお袋に対してのストーカー……
「で、どうしてそんな事聞いてきたんだ?」
 親父は優しい声でそう言った。
「さあ、なんか懐かしくなったのかもな」
「なんか、あるんじゃないか」
「なんもねぇよ、未練が無いから死んですぐにここに来たんだ」
「好きな人、忘れられない人がいるんだろ?」
 親父が言った事は図星だった、俺はまだ羽馴さんの事を思っていた。
「……そうだよ、なんでわかったんだ?」
「お前が寝言で言ってた」
「まじか!?」
「まじだ」
 寝言に出てた、恥ずかしい!!
「で、話してくれるんだろうな」
 俺は親父に羽馴さんとの事を話した、一目惚れしたことから最後に別れを告げられたことまで。
「……その羽馴さんとやらは今どうしてるんだ?」
「多分成仏してこの天国のどっかにいると思う」
「なぜ探さないんだ?」
「なぜって……言ったろ、最後に別れを告げられたって」
 親父が俺に顔を近づけてきた。
「お前はそれでいいのか? まだ忘れられないんだろう」
「それはそうだけど」
「ならアタックだ! 当たって砕けても何度でも立ち上がれ! それが男ってもんだろ」
 それが男なのか執念深い奴なのかはわからないけど俺は親父の話を聞いて決心した。
「俺、探してみるよ」






[女性はまた旅立つ]

「ありがとうございます、おばあさん、おじいさん」
「いつでも帰ってくるんだよ」
「わしらはずっとここにおるからな」
「はい、では」
 伝言板を使ってあの男性らしき人の情報をいくつか掴んだ、私はその真相を確かめるために遠出することにした。
「大丈夫、大丈夫」
 そう自分に言い聞かせた、知り合いじゃなくても優しい、心を許せる人はいる、それをあの老夫婦から再度気づかされた。
 その心を最初に教えてくれたあの男性、どうしても会いたい、あった瞬間に罵倒されてもいい、あの人はもう霊に関わった人の事を知っているのだろう。
「まずは……」
 なんとしても、何十年かかってでも会いたい、その心を励みに私は新たな一歩を踏み出した。






[男性は手がかりを探す]

 親父とのあの会話から数日後、朝おきたら親父が立っていた。
「行くぞ! 裕二」
「へあ?」
 寝ぼけた返事をした、何か予定でもあっただろうか。
「情報収集だ、考えるより行動! 情報を集めるぞ!」
「……どうやって」
「まずは知り合いに聞く」
「ここら辺の人には聞いたよ、でもダメだった」
「違う! 遠くの情報を得るのだ!」
「遠くに知り合いなんていねぇよ」
「いるだろ!」
「?」
「お前の祖父と祖母!」
「なるほど! じいちゃんとばあちゃんか!」
 俺は飛び起きて親父と一緒に走って外に出た。
「行くぞ裕二! 走れー!!」
「おー!!」
「あいに行く為に一直線だー!!」
「親父上手いな! 待っててくれー、羽馴さーん!!」
 冷静に考えるととても恥ずかしいテンションで俺達は走っていった、後親父の言葉はそんなに上手く無かった。

 数日後、俺は祖母と祖父の家についた。
「裕二、お前さんいつの間にここに……」
 二人は目をまん丸にしていたが俺は自分の話を始めた。
「羽馴麗華っていう人知らないか?」
 実に単刀直入だ。
 二人は事情が全くわかってないだろう、しかし祖母は即答した。
「知ってるも何も数日前までここに住んでいたよ」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
 俺と親父は同時に叫んだ。





[女性は新しき出会いを]
「これも……違う」
 あれから数日、十三件の情報を確かめた、しかしどの情報もあの男性の物では無かった。
「次こそ……」
 この中にあの男性の情報があることを願って次の情報の場所に行こうとした時私の目の前が真っ暗になった。


「起きましたか」
 目を開けると約二十歳くらいの女性がこっちを見てそう言った。
「……んん」
 起き上がろうとしたが女性に押さえつけられた。
「まだ起きないでください……話すならそのままで」
「あの……ここは?」
 見えているのは和風の家、昔ながらの家の感じだ。
「地上界で言うなら警察署ってとこです」
「警察……?」
「はい、第十八地区統治所代表の白久
しらく
です」
「えっと、私は」
 名乗ろうとすると白久さんが先に口を開いた。
「羽馴麗華さんですよね」
「え? なんで知ってるんですか?」
「明香に聞きました」
「……明香?」
 そう言うと白久さんは咳払いをして。
「閻魔様の娘さんです」
 思いだいした、最初に相談したあの閻魔の娘だ。
「明香さんって言うんですね、仲が良いのですか?」
「はい、幼馴染でして……ではなく、なぜあのような所で倒れていたのですか?」
「ああ、それは……」
 なんで倒れたのだろう、食事も何もいらず体力が尽きる事も無い(動きが遅くなったりはする)はずなのに。
 伊馬さんは何かを紙に書きながら。
「まあ精神的な疲労でしょうけどね」
「精神的な疲労……ですか」
「そうです、霊体となった生命は基本的に精神に体調を左右されますからね」
「そうなんですか?」
「そうでなければ地獄での償いがただのめんどくさい事となってしまいます」
「なるほど……」
 地獄なんて見たことないからなるほども何もないのだけれど。
「まあしばらくはここでおとなしくしていてください」
「えっと……何時間くらいでしょうか?」
 そういうと白久さんは目を丸くして。
「何言ってるんですか、数十日は休んでもらいますよ」
「そんな……!!」
 そう言って起き上がろうとすると白久さんは一瞬で私の体を完全に動けない体制にした。
「いけません、精神の疲労は霊にとって重大な事です……崩壊しますよ」
「ほう……かい?」
「霊での死を意味します、しかも生命とは違い魂どころか何も残りません」
 白久さんの真剣な声に驚き私はしばらく口を開けなかった。


[男性もまた旅立つ]
「恋に向かって言って来い」
 俺を送り出す親父の言葉は明らかにふざけていた。
「……いってきまーす」
 親父ギャグには無干渉で俺は歩き出した。
 二人に聞くと羽馴さんはある人を探しに出て行ったらしい。
「俺かなぁ」
 とか妄想しながらニヤニヤしながら羽馴さんが得た情報を二人からもらい、彼女を探しに行くことにした。

 数日後、俺は道に迷っていた。
「迷った……てか羽馴さんいねぇ……」
 その時後ろから聞きなれた声が聞こえた。
「裕二!? 何してるんだ!」
 振り向くとそこにいたのは親父だった。
「は? 親父? ついてきたのか?」
 親父は目をまん丸にして言った。
「お前戻ってきてるぞ」
「へ?」
 俺は方向音痴だっただろうか……いつの間にか祖父の家の近くににいたらしい。
「まあちょうどいい、明日はあの日だからな」
 親父は優しい声でそう言った。
「あの日? てかその気持ち悪い声やめろ」
 訂正、優しい声というより優しい声に見せようとした変な声で親父はそう言った。




[運命の日]
 白久さんに助けられてからかなりの日にちが立ち、ようやく自由に動けるようになり、私は捜索を開始した。
 そんなある日の朝、私が歩いていると空に大きなテレビが現れた。
「何……あれ」
 テレビに映っている可愛らしい少女に見覚えがあった、閻魔大王の娘、明香さんだった。
 明香さんは咳払いをしてあの時より威厳のある声で話し始めた。
「父は忙しいため、時期閻魔である私がお知らせする」
 周りを見たが真剣に聞いている人はほとんどいない、みんな内容を知っているかのように平然としている。
「今日は地上で言う盆休みだ、それにより今日正午から明日正午まで地上界への行き来を自由とする」
「え!?」
 驚いたのは私だけだった。



[男性は久しぶりの故郷に戻る]

「親父、家には行かないのか?」
「ああ、ここでいいんだ」
俺達は広い花畑にいた。
「なんでだよ」
「まあ、明日になればわかるさ」
「そっか」
俺は明日になるまで日向ぼっこをすることにした。
「あーあ、羽馴さん何処いんだろなー」
おそらく家族の所にいるのだろうがもちろん場所は知らない。
「あー、くそー」
俺はふて寝を始めた。


[女性は思い出の場所に]

「……福津裕二さん」
私はあの男性と出会った家にいた。
あの男性はこない、やはり怒っているのだろうか。
私は地上にいる間はこの家にいることにした。
家族の所に行っても悲しくなるだけ、一人だという事を突きつけられるだけだ。
「福津さん……」
私はあの男性、福津さんに恋をしている。
でもそれは叶わないだろう、私は福津さんを殺したも同然だ。
「…………」
私は一人静かに涙を流した。





[ 男性は走り出す]
翌日、約十時に俺と親父以外だけだった花畑に一人の女の人がきた。
「…………」
親父はその女の人を愛おしそうに見ている。
「母さん….…?」
その女の人は俺の母さんだった。
「そうだ、お前の母さんだ」
「来るってわかってたのか?」
「ああ、ここは俺とあいつの思い出の場所だ」
「通じあってんだな」
「まあな、そういやお前羽馴さんはいいのか?」
俺は少し間をおいて
「何処にいるかしらねぇよ」
「俺の個人的主観だけどな、女ってのは思い出を大切にするんだ」
親父は俺の目を真っ直ぐ見て。
「羽馴さんが探してるのがお前なんだったら思い出の場所にいるんじゃないか?」
「親父……」
「あくまで俺の予想だけどな」
「……行ってみる」
親父は俺に背を向けて
「ガキは空気読んでさっさといけ、こっからは俺とあいつの時間だ」
母さんの方に歩いて行った。
「羽馴さん……今行くぞー!」
親父譲りのハイテンションで俺は走りだした。



[二人の距離は今]
「あと十五分!!」
時刻は午前十一時四十五分、家まではもう少しだ。
「羽馴さん、いてくれ!」
羽馴さんとの距離が近い事をひたすら祈りながら俺は家に飛び込んだ。
「いますか!! 羽馴さん!」




[彼が来た].
「いますか!!羽馴さん!」
彼、福津さんがドアから飛び込んできた。
「ふ、福津さん!?」
突然の事で驚いたがなんとか福津さんの方を向いて私は口を開いた。
「あの……福津さん! 謝って償えるような事じゃないんですけど……でも、その」
これで完全な別れ、そう思うと目が潤んできた。
なんとかそれを飲み込んで続けようとする。
謝る事だけを考える、この恋は叶わないと自分に言い聞かせて再度口を開く。
「福津さんを……死なせてしま……」
「羽馴さん!!」
いきなりの事で私は固まった。
福津さんがいきなり私を抱きしめてきたのだ。
「ひゃ……」
「大丈夫、大丈夫だから……なんとも思ってないから」
耳元で囁きながらなだめるように背中を叩かれる。
「や……でも……」
「羽馴さん……」
涙が溢れそうになる。
「うう……あ」
福津さんは自分がしている事にようやく気づいたようで私を離して、でも肩だけは掴んだまま。
「羽馴さん….…ようやくあなたと同じ世界にこれた……」
少し間を置いて優しい声で彼は言った。
「好きだ」
堪えていた涙が溢れだした。
「わ……私も……」
なんとか喋れる程度に涙を飲み込んで
「す……好きです」
ようやく告白をして涙腺が壊れた。
「うわ……あ」
「羽馴さん……!」
優しい声と共に暖かい腕に包まれる。
少しして体が上に引っ張られる感覚があった。
天国に戻る感覚だと気づき福津さんを見て。
「七地区の中央広場で待ってます」
福津さんはゆっくり頷いて
「長くは待たせない、すぐ行くよ」
今回は待つ事が楽しくなりそうだ。
「じゃあ、また」
福津さんが何気無く嬉しい挨拶をした。
私は笑顔で頷いた。
「はい、また」
私たちは抱き合ったまま天国に戻った。










エピローグ [まるで……]

「大切な人の所に言ってくる」
俺は親父達に一言告げて走りだした。

約三十分、七地区の中央広場に着いた、辺りを見渡すと彼女がいた。
小走りで駆け寄って話しかける
「羽馴さん、お待たせ」
「待ってません」
そう言って羽馴さんが俺の手を握ってきた。
「行きましょう、裕二さん」
名前呼びになった事に喜びを感じて俺は口を開いた。
「わかったよ、麗華さん」
二人は手を強く繋いで幸せそうに歩いて行った。

まるで昔からの恋人のように。







2013-05-09 18:00:23公開 / 作者:リーフライ
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■作者からのメッセージ
あの幽霊は今何処にの続編です。
この作品に対する感想 - 昇順
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