『ラスボス』作者:ミミック / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
とある女の話
全角692.5文字
容量1385 bytes
原稿用紙約1.73枚
 ぎりぎりと歯軋りが聞こえてくる。
 女はパソコンの前でかれこれ三日動いていない。
 とっくの昔に限界が来ているはずだ。しかし女は動いている。
「もうすこし……もうすこし……」
 女の指は激しく音を立てながらキーボードの上を舞っている。
 ディスプレイにはたくさんのページが開かれている。
 掲示板、動画……そしてオンラインゲーム。
 女のキャラクターはどのキャラクターよりも強く、美しい。
 しかし現実の女は誰よりも弱く、醜い。
 ゲームでは女はいわゆるラスボスへと挑んでいた。
 しかし何度戦ってもあっけなく倒されてしまう。
 女はそれから睡眠も食事もとらずにパソコンの前に座ったままだ。
 攻略法を試しても失敗に終わる。どうしても勝てない。一番強いのに。
 そのモンスターは女のように醜い。しかし強かった。
 女の攻撃を受けてもノーダメージだ。
「なんで……また……」
 そうとは知らず女は挑み続けている。
YOU ARE LOSE
 絶えずその文字が浮かぶ。
「あ……あぁ……」
 女に限界が来たのかその場に崩れ落ちた。
 そのまま女は動かなくなった。

 勝手にキーボードが動き出した。
 ガタガタガタガタ
 ずっと負けてばかりだった女のキャラクターが大きな剣を振り一撃でモンスターを倒した。
 いままでまったくダメージを受けていなかったモンスターが一撃で、だ。
 軽快な効果音と共に当然のようにディスプレイに文字が浮かんだ。
  YOU ARE WIN


 それからもずっとキーボードは動き続けている。
 新たなラスボスとなって。
2013-04-14 20:11:49公開 / 作者:ミミック
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■作者からのメッセージ
二回目です。
やりすぎると怖いねって話です。

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