『迷路』作者:スピンナ / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
男は生まれた時から迷路のなかに住んでいた。ある日、ふと疑問が湧き上がるこの迷路の先に何があるのだろうか。
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「お食事です」
 そう言って、ロボットがテーブルの上に料理を並べた。食事の時間になると、どこからか運んでくるのだ。
メニューは、毎食違うものが用意される。栄養バランスや、カロリー計算も考えられているため、健康に問題はない。味も素晴らしいものだった。
 男は、食事をすますと、部屋の中を見渡した。六畳ほどの広さで、窓が一つ。反対側は外に出るためのドアがついている。
それと、ユニットバス。小さな棚があり、何十回と読み返した小説が、数冊置いてある。
洗濯物はかごに入れておけば、ロボットが定期的に洗濯し、持ってきてくれる。必要なものは全てそろっていた。
暑くもなく、寒くもない。まさに快適そのものである。
 物心ついた時からこの暮らしをしている。両親の顔も知らないし、兄弟がいるのかもわからない。ただ、自分が人間という生き物であり、どうやって生まれるかは聞かされていた。だが、どういう経緯でここにいるのかは教えられていない。
 部屋の外に出ると、細い道が複雑に入り組んで、どこまでも続いている。それは丸で迷路のようだった。
 ある時、ふと、こんな疑問が浮かび上がった。この迷路には、出口があるのだろうか?
外の世界には、きっともっと素晴らしいものがあるはずだ。
 男は、その日以来、体力が続く限り歩き続けた。
行き止まりがあれば分岐点まで戻り、新しい道を進む。一度間違えた道は進まないよう地面に印をつける。そんな日々がしばらく続いた。
 やがて、出口なんてどこにもないのではないかという思いが足取りを重くした。諦めても誰かに叱られるわけではない。
そんなことを考えながら曲がり角を曲がった。
 次の瞬間、あまりの驚きで体が硬直し、言葉を失った。自分と同じ、人間がそこにいるるのだ。それは、女性だった。
「はじめまして」
 彼女は、にこやかな顔で言った。
「はじめまして」
 こちらも笑顔を返す。
「あ、あのどこから来たんですか」
 彼女がぎこちなく聞く。
「ずっと向こうです」
 男は、来た道を指した。その後、どちらからともなく笑いあった。
 それから、二人は一緒に暮らすようになり、出口を探すことはなくなった。
出口のむこうに何があるのかは、分からないままだが、満ちたりた日々がそこにはあった。
 やがて、子供ができた。彼女のお腹が大きくなると、それ専用のロボットが現れ、詳しいことは全部やってくれた。
子供がたって歩けるようになった頃、迎えがやってきた。何も説明はなかったが、二人ともすべての意味を理解していた。
「あの子、大丈夫かしら」
「大丈夫さ。僕たちの子供なんだから。さあ、行こう」
 部屋を出ると、ちょうど、二人が乗れるほどの大きさの乗り物が止まっていた。
二人は、それに乗リ込むと、どこかへ走り去った。
2013-03-28 04:22:12公開 / 作者:スピンナ
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