『隠蔽の輪廻 前編』作者:リーフライ / AE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
主人公の 阿山宕 の幼馴染 掬優羽 は根っからの推理好き。その幼馴染が学校で起きている不審火の事件を解決するといいだす。それを知った主人公はいきなり推理を始めると言い出した、しかも「幼馴染には伝えないように」と言う条件を付けて。
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原稿用紙約13.59枚
1 「始まりは終礼で」



いつもの終礼、だらけている俺の耳に先生の声が聞こえる。
「みんなも知ってると思うが今日校内で不審火が起きた、何か知っている者は先生にいいに来るように」

(不審火か物騒だ)
「ありがとーしたー」
だらしない挨拶を済まし、教室を出た。

「そういや宕って掬さんと幼馴染なんだっけ?」
話を振ったのは友人の有楽堅穂蛆(うらかた ほうじ)だ。

「ん?そうだけど?どうかしたのか?」
「いやね、掬さんに不審火の事について聞かれてさぁ」
その言葉を聞いた瞬間、俺は穂蛆に詰め寄って声を少し荒げて聞いていた。
「それ、本当か?」
穂蛆は顔を引きつらせながら答えた。
「え、本当だよ」
「そうか」

「どうしたんだい?いきなり怖かったよ」
「すまん、ちょっといろいろあってな」
「いろいろ?まあいいや、近くに美味しいたこ焼き屋ができたんだけど」
「ちょっと用事ができた」
俺は少し早足で歩き出した。

「また明日」
「ああ、すまんな」

俺は早足で自室に戻ってすぐ、携帯を取り出したて電話をかけた、液晶には掬優羽(むすび ゆう)と写っている。
「はーい、どうしたの?宕?」
「優羽、お前何を聞きまわってんだ?」

「情報が早いね、ほら聞かなかった?不審火事件」
「HRに聞いた」
「それを調べてんの」
「…やめとけ」
「やだよ、私こういうの好きなの知ってるでしょ?」
「ああ」

そう、俺の幼馴染、掬優羽は昔っから推理が大好きだ。
「だったらわかるよね、やめないから、宕も一緒にどう?」
「絶対やらん」
「そう、じゃあいいわ」
ツーツー

一方的に切られた…。
「しょうがないな、やってみるか」


翌日、俺は何人かの友人に自然に不審火事件の事を聞いていた。
「確か図書部が燃やされたらしいよ」
「そうなんだ」
そうやって何気ない話のなかから少しずつ情報を集めていった。


「起立、礼、ありがとうございました」
挨拶終了と同時に教室を出た、早足で向かった先は図書部の部室だ。
図書部の部室は図書室の一角だ、部員じゃない俺でも入ることはできる。


図書室には確かに燃えた跡があった、壁が焦げていた。
「何をしようとしてるんだい?阿山宕(あやま すぎる)君」
振り向くとそこには穂蛆がいた。

「何故フルネームで呼ぶ」
「なんかびっくりしなかった?」
「声でわかった」
「なんだ…何しようとしてるの?」
一瞬考えて答える。

「普通に本を借りに来ただけだ」
「嘘だね」
「なんでそう思う」
「本を借りに来てるのになんでそんなとこ見てるの?」
「たまたま目についただけだ」
「じゃあなんでいろんな人に不審火の事を聞いていたんだい?」

「…お前分かって言ってるだろ」
「バレた?あの不審火事件を解決しようとしてるんでしょ」
「その通りだ、絶対誰にも特に優羽…掬には言うな」
「んーなんでか気になるけどいいよ、でも条件がある」


「推理なんて楽しそうだね、僕も混ぜてよ」
穂蛆は意味深な笑みを浮かべて言った。




2 「掬」


朝、俺が登校していると穂蛆が追いかけて来た。
「やあ、宕、情報集めといたよ」
「仕事が早いな」
「楽しいんだ、こういうの」

穂蛆が渡してきた紙に目を通す。
・不審火が起きたのは 新聞部、運営委員、第二書庫室。
・いずれも学校終了から翌日までに起きている。
・すべて大きな被害は出ておらず、燃えたあとだけが残っている事が多い。


「よくこんだけ集めれたな」
「聞いていったら簡単だったよ、あ、ちゃんとバレないようにしてるよ」
「助かる」

その後いろいろと討論しながら登校していると誰かに後ろから押された。
「おはよう」
「ああ、お前か」
「お前はひどいでしょ」
そう言って優羽は横を向いた、穂蛆と目があったようだ。

「どうも、有楽堅 穂蛆です」
「ああ、この前はありがとうございます、掬 優羽です、宕の友達?」
「そうだ、てかお前なんか元気だな、なんか生き生きしてる」
「そう?じゃなくて今日日直だった、先行くね」
そう言って優羽は走っていった。


「掬さんは一緒に推理しないのかい」
「わかってんだろ」
「宕がいきなり始めた理由でしょ?掬さんが」
「そうだよ」
「なんでかは…聞かないほうがいいみたいだね」
「そうしてくれると助かる」


それから何日か俺達の推理は続いた。
俺達はいつも行っている喫茶店で推理をしていた。
「とりあえずわかったことをまとめてみたよ」
「さすがだな」
穂蛆が得意げな顔をしながら紙を渡してきたきた。


・不審火が起きたのは 新聞部、運営委員、第二書庫室。
・いずれも学校終了から翌日までに起きている。
・すべて大きな被害は出ておらず、燃えたあとだけが残っている事が多い。
・すべての教室の燃えている場所に一致は無い

「あまり進んでないけどね、あとは部員達に聞いて回るかな」
「ああ、この一番目の項目に 図書部と生徒会室も加えといてくれ」
「そこも燃やされてたんだ、わかった、じゃあ明日の放課後聞き込み開始だね」
「わかった…くれぐれも」
「掬さんにバレないように、でしょ」
「頼む」



翌日、俺達は聞き込みを開始した。
「僕は新聞部に聞いてくるから、図書部と書庫は任せたよ」
「おう、よろしくな」



3「放火と液体と匂い」


「ああ、いいよ、ついておいで」
そう言ってくれたのは図書部の副部長、二年生の心礎庄(しんそ しょう)だった。
「ありがとうございます」

心礎について図書室の椅子に座る。
「えーと、何が知りたい?」
俺はメモを取り出して言った。

「まずは不審火が起きた時間と燃やされた物を教えてください」
心礎は少し考える素振りをして言った。

「時間は放課後、それしかわからないね、部員全員で資料の整理に行ってる時にやられた、いつの間にか図書室の壁と机の上に置かれている物が焦げていたね」
「机の上には何がありましたか?」
「確か生徒会から渡された資料と…みんなのファイルぐらいだね」

「ありがとうございます、失礼ですが誰かに恨まれるような事があったりは…」
「無いと思うけど…こういうのは本人はほとんど気づいていないからね、他の人に聞いたほうがいいと思うよ」
「最後に第二書庫も見てみたいのですが」
「いいよ、僕もついていくよ」



第二書庫は図書室のすぐ隣にあった。

「どうぞ、ここは僕たちが帰ったあとに燃やされたみたいだね、こっちも壁が燃えていて、飛び火したのかいくつかの物が燃えているね」
「そうですね」
「なにか気づかないかい?図書室とは犯人の心情が違うようだけど」

俺は部屋を見渡す、焦げた壁と本や資料、そのすべてに異様なシミがついていた。
「犯人は慌てて何かをかけた?」
「そう、慌ててたんだろうね、そろそろ僕は部活に行くよ、鍵は渡しておくから戸締りをして職員室に返しといてね」
「はい、ありがとうございます」
俺は少しの間部屋に残って考えていた。



4「一筋」


「やあ、宕、聞き込みしてきたよ」
「ああ、こっちもOKだ」
穂蛆が駆け寄ってきた。
「じゃあそこの喫茶店で発表といこうか」
俺はカフェオレ、穂蛆はコーヒーを頼んだ。

「じゃあ僕から発表するね」
穂蛆は紙を渡してきた。
「よくこんなの作れたな」
穂蛆はウインクしながら

「仕事が早いでしょ」
「自分でいうな、てかなんでウインクだ」
「いいじゃないか、気分だよ、まあ読んでみて」
俺は紙に目を通した

新聞部聞き込み結果

・時間は水曜日午後4時から翌日午前6時の間
・燃やされたのは部屋の一部と近くにあった資料
・犯人の行動や性格は不明

「どう?」
「ほんとよくまとめたな、すごい完結だ」
「そうでしょ、じゃあ次は宕ね」
「ああ、資料は無いがな」

俺はメモを取り出して一回咳払い
「えーと、図書室の方は3時あたり、書庫は部員が帰った後だ、いずれも燃やされた物は部屋とその近くにあったもの、
  しかし書庫の方は飛び火して予測外の燃え方をしたみたいで犯人は慌てて消火をした形跡があった」
「消火方法はわかるかい?」
「最終的には踏んで消したようだ、すべて床に押し付けられた跡があった、しかし濡れていたからな、液体で消そうとしたのだろう」
「液体?水じゃなくて?」

穂蛆は鋭く質問をしてくる。
「ああ、なんの匂いかはわからないが匂いがした」
「…特徴的な匂いかい?」
「なんとなく花系の匂いだと思う、なんか嗅いだことあんだよなぁ」
「液体の匂いじゃなくて服とかの匂いかもよ」
「そんな可能性を言われるときりがないぞ」
「そうだね、色々と気になってね、こういうのは楽しいや」

「お前も優羽と同じか」
「違うと思うけどね、掬さんは猫まっしぐら、推理一筋だ、
  僕は楽しいことならなんでもいい、自由人さ、自由一筋ってことだね」
「そんなもんか」
「そうだよ、っと、じゃあ帰るね、今日は用事があるんだ」
「英語の宿題終わってないな?」
「そのとおり、じゃあね」
穂蛆は手を振って喫茶店を出て行った

しばらくして、何気なくもらった紙を裏返して気づいた。
「やられた…穂蛆の野郎」
紙の裏には一言
{口止め料}

そして目の前には二人分の伝票があった。




5「せいか」

翌日、推理開始から約一週間がたった。

通学路で穂蛆を見かけた、俺は足音を消しながら小走りで追いついた。

「昨日はよくも、こんにゃろ!!」
俺は穂蛆にヘッドロックを決めた。

「ぎゃ!宕やめろってやめろ!!口止め料だってんだろ」
 穂蛆はもがき始めた。

「それなら最初に言えってんだ、ほんとギリギリで焦ったんだからな!!」

俺はより力を入れた。

「いてててギブギブ無理すまん代わりに情報あるからって痛い!!」

俺は力を緩めた。

「情報?なんかあったか」
穂蛆は得意げな顔をして紙を渡してきた。

「生徒会と運営委員の聞き込み証言だよ」

「おお、どうやって取ったんだよ、すげぇな」

穂蛆はさらに得意げな顔で

「僕のコネだよ」

俺は顔をしかめて言った。
「お前にどんなコネがあるってんだ」

「僕の姉の存在をお忘れかい?」
「ああ、そうだったな」

有楽堅清花(うらかたせいか) 穂蛆の姉で現在大学生、そして元生徒会長だ。

「じゃあお前の成果じゃねえじゃねえか」

「まあね、成果は姉ちゃんの担当さ、僕はあくまで補助だ、宕は…」

穂蛆が何かを言いかけたとき、横を同級生が走っていった。
「宕、穂蛆、遅れるぞ!!」
「時間ギリギリだぞー」

俺と穂蛆は同時に腕時計を見た、遅刻ギリギリだった。

「急ぐよ宕!」
「急ぐぞ穂蛆!」
二人同時に声を上げて走り出した。

昼休み俺は渡された紙を読んでみた。


生徒会と運営委員の聞き込みでわかったこと。

・共に燃やされたのは部屋とその周りのもの
・生徒会では生徒新聞と保健委員のプリント
 運営委員では壁掲示用の資料数枚が燃えていた。
・金曜日の放課後から月曜の朝までに行われた。
  (生徒会のほうは会議があったため土曜の昼まで)
・新聞やその他紙類にはカッターで切りつけたような跡があった。


「なるほどね…」
「なにかわかったかい?」
穂蛆が弁当を持ってやってくる。

「なにか引っかかる共通点があるはずだ」

考える俺の横で穂蛆が満足そうな顔をしている。

「…なんだよ」

「いや、やっと事件の真相が分かるとなるとね、ここ最近ずっとモヤモヤしてたんだ」

「まだわかったわけじゃない」

「うん、だから僕も考えてるよう、せ、と、し、だ…としだうせ?」

「…誰だよ」
「いるかもよ?」
「色々と飛ばすな、順序と経過を大切にしよう」
そう言うと穂蛆はいたずらな笑みを浮かべ

「それは宕の推理法、僕は僕の推理法も試させてもらうよ」

そういって穂蛆は紙をみながらブツブツなにかを呟いていた。

「まずは共通点かな」


運営委員 生徒会 図書部 新聞部 第二書庫 

 壁掲示用資料 生徒新聞 部員のファイル 生徒会の資料

俺は顔を上げていった。
「新聞…新聞だ」


                                                   後編に続く
2012-12-23 17:38:02公開 / 作者:リーフライ
■この作品の著作権はリーフライさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初投稿となるので皆さんはじめましてリーフライです。

今回の作品「隠蔽の輪廻」前編です、すぐに後編も出す予定ですのでよければそちらもよろしくお願いします。

あとがきは後編で…
この作品に対する感想 - 昇順
こんにちは、はじめまして。
感想でなくて申し訳ないのですが、この程度の長さの場合前後編をわけて投稿せず、一つにまとめるようにしてください。三百枚とかを超えてきた場合は、分割しても構わないと思います。
2012-12-24 12:54:59【☆☆☆☆☆】天野橋立
分かりました すいません基準がわからなかったもので、以後気をつけます
2012-12-24 13:32:13【☆☆☆☆☆】リーフライ
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。