『ねぼう屋』作者:甘木 / AE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角18240文字
容量36480 bytes
原稿用紙約45.6枚
 時の流れという染料によって濃い茶色に変色した板塀。丁寧に刈り込まれた水蝋樹の生け垣。ところどころ崩れた白壁の蔵。僅かに凹凸する砂利道。砂利敷きの道なのに踏みしめる感触はウッドチップ舗装の道路のように柔らかくて足下がおぼつかない。この道の左右にはどこにつながっているのかも、その先に何があるのかもわからない狭隘な路地が幾筋も伸びている。湿り気を帯びた真っ黒い土の道の先には靄のような白濁した空間が広がっている。あの靄の中に入っていけば、自分を象るすべてが微細な粒子に還元されてしまいそうな感じがして怖ろしい。路地から逃げるようにして砂利道を歩き続けた。
 木造の古めかしい建物が何十軒も続く。家々はせり出すように立ち並び、両腕を広げたら左右の建物に触れてしまいそうで圧迫感がある。迫る家並みのせいで空気は圧縮されたかのように重く動きがない。酸素とか窒素とか二酸化炭素とか呼ばれる物質が透明なまま存在感を示している。まとわりつく大気を掻き分けながら歩き続けていると、ポゥ、ポゥと短いサイレンの音が聞こえてきた。どこで鳴っているのかも、なんで鳴っているのかも分からないが、この音を聞いていると心がざわざわと波立ちじっとしているのが不安になる。とても嫌なものが背後から忍び寄ってくる妄想が湧いてくる。だから振り返らぬよう歯を食いしばり足早に歩き続けた。
 闇雲に歩き続けるうちに太い通りに出た。メインストリートだろうか。コンクリート舗装された道の左右をには色々な店が並んでいる。時計・眼鏡の八雲堂、山越八百屋店、森鮮魚店、おおぬま文具、茶・茶器の桔梗庵と書かれた木製やホーロー製の看板を掲げている。入り口のガラス戸に『力王足袋入荷しました』とチラシを貼った靴屋や今時珍しいブラウン管テレビを飾る電気店。
 この町はおかしい。脳の奥底から警報が響く。
 自動車もバイクも自転車も通らない。それどころか人と出会わない。犬や猫も見かけなければ、飛ぶ鳥や虫の姿もない。もう聞こえなくなったがサイレン以外音すらない。出来の悪い書き割りのような景色が眼前に広がるだけ。生きているものの気配が感じられない。
「ここは、どこなんだ?」
 無意識のうちに声に出していた。
 当然だが答えは返ってこない。
 僕はどうしてこんなところにいるのだろう?
 どこかに行こうとしていたはずなんだけど……頭がぼんやりとして思い出せない。


 どれだけ考えながら歩いていたのだろう。気がつくと駅舎がある駅前広場のような場所にきていた。駅舎といっても切符売り場と改札があるだけの小屋で待合室すらない。入り口の横には古びた木製のベンチがふたつと灰皿が置いてある。もはや置いてあるのが当たり前となっている飲料物やタバコの自動販売機すらない。
 自販機の有無はどうでもいい。幸いなことに喉は渇いていない。いまは座ってゆっくり考えたかった。
 どこに行こうとしていたのか。どうしてここにいるのか。ここはどこなのか。考えなきゃいけないことは山程ある。ギシッときしむベンチに座り携帯電話を取り出す。GPS機能でいま自分がどこにいるか把握して、誰かに電話してみれば僕がどこに行くとか伝えているかもしれない。
 携帯電話の画面は真っ白だった。受信アンテナ表示もメール表示も時計表示も消えている。壊れたのか? くそっ! 手がなくなった。どうすればいいんだよ。
 はぁぁあ。
 自分でも驚くくらい大きなため息が出た。
 とにかく何をしようとしていたのか、どこに行こうとしていたのか思い出すんだ。焦らずゆっくり思い出そう。そう自分に言い聞かせてベンチに横になった。
 ギシッとまたベンチがきしむ。会社のロッカーもこんな音を立てていたよなぁ…………あ! 会社だ!!
 ゴールデンウィーク明けに僕が勤めていた会社で緊急会議があった。会議室に集まった全社員十七人に向かって社長が深々と頭を下げ「皆さん済みません。私の力が足りなくて本日で会社を解散することになりました。本当に済みません」と涙ながらに謝罪した。
 半年前に大口取引先の椎井興産が倒産してから会社の経営が苦しくなっていたのは知っていた。だから社長の話を聞いた時も驚きはなかった。逆に驚いたのは失業の手続きでハローワークに行った時だ。もの凄い数の人が仕事を探していた。就職難と言う言葉が実感できた時、無職になった恐ろしさがじわじわと湧いてきた。
 社長は経営が苦しい中、社員に退職金を用意してくれた。けれど高卒で入社二年ちょっとの僕に渡された金額は四十万円。これと失業保険がなくなる前に仕事を探さなきゃいけなかった。だけど仕事は見つからなかった。不景気というものは僕の想像以上に深刻だと言うことを嫌って言うほど実感させられた。
 僕は新卒じゃないけどまだ二十歳だし、仕事は簡単に見つかると楽天的に考えていた。それは楽天的ではなく単なる無知だとすぐに知ることになった。履歴書を送っては送り返され、アポの電話で断られる。住んでいる千葉県内はもとより、範囲を広げて東京都や神奈川、埼玉、茨城県の会社も探した。資格や前職での実績がなければ試験すら受けることができないのは当たり前。電話で嫌味を言われたり、やっと面接までこぎ着けた試験では冷笑され、将来への不安や無能な自分への悔しさで眠れない日もあった。就職活動をしなくていい日曜日が心の底から待ち遠しかった。
 焦りと疲れと諦観の日々が三ヶ月続き、このままでは精神がおかしくなりそうになり僕は逃げた。
 就職活動と無縁の場所に行きたくて、何も調べず朝一番の電車に飛び乗った。普通電車を乗り継いで中下川という無人駅で降りた。そのまま電車に乗っていれば那瀬という大きな町に着くけど、人の多い場所には行きたくなかった。ここで降りたのは、なんとなく故郷の風景に似ていたのが原因かもしれない。
 駅に掲げられた時刻表を見ると次の電車までは四時間以上ある。駅前には自転車置き場の他には案内板とシャッターが降りた雑貨屋。あとは民家が点在するだけ。時間を潰すようなものはない。案内板を見ると『重要文化財・下稲倉金山神社三キロ』とあった。往復で二時間ちょっとか。時間を潰すにはいいかもしれないと思って歩きはじめて……そこから記憶がない。
 いつの間にかこの場所に来ていた。空を見上げれば橙色に染まっている。もう夕方のようだ。中下川駅に着いたのが午前八時少し前だ。と言うことは十時間近く記憶をなくしていたのか? でも、いままでこんなふうに記憶をなくしたことなんてない。事故に遭って頭を打ったという気配もない。それに十時間も飲まず食わずでいればお腹が空いたり喉が渇いていてもいいはずなのにそれすらない。記憶がはっきりしない不安も大きいけど、この場所に対する違和感の方が大きかった。
 ピーッ。
 背後から笛の音。同時に電車のブレーキの重い音がした。
 この音に驚き慌てて起きようとしてベンチから落ちた。口の中に土が入り、土の匂いが鼻腔を刺激する。口の中のエグさを無視して駅舎に駆けこんだ。電車が来たのなら人がいるはず。変な顔をされるかもしれないけど、ここはどこですかと尋ねれば場所が分かるし、電車に乗って移動してもいい。とにかく人に会えれば。
 改札の向こうには電車の姿はなかった。人の姿もない。
 寂しさから僕が生んだ幻聴だったのか? 一度希望が湧いただけに失望は精神的な疲労となって重くのしかかってくる。駅舎を出たものの何もする気持ちが起こらず、ベンチに座ることもなく立ちつくしていた。
 ん? なんだろう? 人?
 街路の方をゆらゆらと揺れる黒いものが二体ゆっくりと横切って行った。人間のような形をしているけど、真っ黒で顔もない。輪郭がぼやけていて、まるで影が三次元になったような不思議なものだった。ここに来て初めて見る生物かもしれないが、あまりにも異常すぎて近寄るのがためらわれる。どうしよう。気づかれなかったようだけど、逃げた方がいいのかも。でも、この状況を打開するには、あの影のようなものに話しかけるしかないかもしれない。どうすればいいのか判断がつかない。
 また影が一体街路に現れた。こんどは僕の方に向かってきた。
 ど、どうしよう。逃げるか、駅舎に隠れるか。
 え!
 こんどの影には顔があった。さっき見たヤツとは違って黒くないし、服も着ている。輪郭は相変わらずもやっとしているけど相手が女性だってことは分かる。女性は僕の目の前に来た。こんなに近くなっても姿が鮮明にならない。僕の目がおかしくなったのか? だけど周りの風景ははっきり見える。なのに彼女の顔には目鼻口があるのは分かっても、ソフトフォーカスがかかったように細部がはっきりしない。彼女の口が動いて何か言っているようにみえる。けれでも声は聞こえない。
 彼女から苛ついた空気が伝わってくる。彼女は右手を上げ……、
 頭の中で火花が散った。


「よぉ目が覚めたか」
 目の前に見知らぬ女性が立っていた。歳は二十代の半ばだろうか。不思議なことにいまははっきりと彼女の姿が見える。
「しっかし、おまえひ弱そうな見かけの割に面の皮厚いな。殴ったオレの方がダメージでかいんじゃねぇの」
 顔をしかめ赤くなった右手を痛そうに振る。
「おい、あんた。なんか言えよ。というか鼻血出てるぞ。って、オレが殴ったのが原因だけどよ。だけどあんたが悪いんだぜ。オレがいくら声を掛けても反応しないから、ついあつくなっちまってよ」
 鼻の奥が熱いのは鼻血のせいか。
 だけどいまは鼻血が気にならないほど、目の前の女性に見とれていた。
 ベリーショートの栗色の髪。胸の圧力で見事な曲線を描いた黒いタンクトップの上にモスグリーンのジャケット、履き古したブルージーンズ。背は一六〇センチぐらいだと思うけど、手足が長くて頭が小さいからスラッとした印象を与える。街でこんな女性を見かけたら男だったら誰もが振り返ると思う。
 なにより目を惹くのは顔面の大きな傷と赤い左目だった。整った顔立ちなのに刃物で斬られたような直線の傷痕が左の眉毛の上から顎にかけて走っている。その傷の下に真っ赤な瞳。硬質的な赤さで温かさを感じさせない。こんなオッドアイはあるのだろうか? たぶん義眼かカラーコンタクトレンズだとは思うけど、顔の傷も含めて女性に訊くのには憚られる。
 傷と赤い目を差し引いても美人の範疇だろう。いや、凜とした麗人という方が当てはまる。同時に近寄りがたさも醸し出している。それに言葉遣いと身にまとわらせている雰囲気が異質だった。女性特有の柔らかさとは真逆の男性的なオーラのようなものを感じさせる。
「おい、もう一発殴らねぇと目が覚めないか? でも、これ以上素手で殴ったらオレの手がいかれるし」
 バットくらい太い枝を拾って剛性を確かめるように二三度振っている。
「こいつなら」
「め、目は覚めてます」
 なんだ。と言うとつまらなそうに枝を投げ捨てた。本気であの枝で殴るつもりだったようだ。冗談じゃない。あんなので殴られたら鼻血だけじゃすまない。そんなことは子どもでも分かるだろうに、なんて女だ。
「だったらさっさと答えろよ。あんたと違ってオレは忙しいんだ。時間を無駄にさせるな」
 女性はジャケットのポケットからタバコを取り出し火をつけた。
 煙が漂ってくる。変わった匂いだった。僕は喫煙者ではないが両親が喫煙者だったせいでタバコの匂いに嫌悪感はない。それに友だちにタバコを吸う人もいるから匂いは色々嗅いできた。けれどこの匂いは初めてだ。どろりとした甘さが鼻腔を刺激する。こんなのは嗅いだことがない。甘すぎて気持ち悪くなりそうだ。この人は気持ち悪くならないんだろうか? 気持ち悪いのか彼女は顔をしかめてタバコをくわえている。顔の傷のせいだろう左の唇が少し上がる。そのせいで冷笑しているように見える。
 その冷笑が僕に向けられているようで落ち着かない。落ち着かないけど、ある意味凄く魅力的な表情だ。女性的に考えれば顔に傷があるのはマイナスポイントだと思うけど、彼女の場合は傷による凄味と赤い瞳が精悍な野生動物のようで美しい。初対面の人の顔をジロジロ見るのは失礼なのは分かっているが、つい視線が彼女に向かってしまう。
「これが気になるのか」
 僕の視線に気がついた彼女は自分の左目を指差し、
「変に気を回されるのは嫌いだから先に言っておく。見て分かるだろう、オレの左目は義眼だ。顔に怪我をした時に失明した。というか、顔面がこれだけ切れたのに目玉だけが無傷だったら奇跡だぜ。で、知り合いの技師に義眼を作ってもらったんだが、そいつがセンスの悪いヤツでよ、義眼をこんな風に作りやがった。そこからじゃ分からないかもしれないが、瞳が赤い薔薇の形になっているんだぜ。どこの少女マンガだよ。どうせならレーザー光線が出るとか超小型爆弾になっているぐらいのオプションを付けろよな。こんな乙女チックはオレの趣味じゃねぇから、そこは覚えておけよ。カワイイですねなんて言いやがったら死を覚悟しろよな」
 恥ずかしさを誤魔化すためか握った右手を素早く繰り出し、僕の鼻先で寸止めする。
 よかった。彼女は僕が見ているのが義眼だと勘違いしてくれた。
 でも、本当に彼女は魅力的なんだ。
「で、あんた」
 ウウウウウウーッ!
 彼女の言葉はサイレンにかき消された。ここに来てから何度か聞いたサイレンとは全然違う鋭い音。ずっと先にある白く大きな建物の方から響いてきた。
 ウウウウウウーッ!
 サイレンに導かれたかのように、さっき見た影のような物体がわいてくる。建物から、路地の奥から、数え切れないほどの影がゆらゆらと現れた。
「やべぇ! もう時間か」
 彼女の表情が険しくなる。
「おい、ぼやっとするな。ここにいたらやつらに捕まる。逃げるぞ。ついてこい!」
 彼女は僕の肩を乱暴に叩くと、影を避けながら路地に入っていく。
「ま、待ってください」
 僕も走りだしたが、影が多くて真っ直ぐ進めない。彼女は猫的な敏捷さで器用に避けながら走って行く。何とか路地に駆け込んだ時には彼女の姿は見えず、背後からは影が追いかけてくる。影を振り切って目に付いた路地に駆け込む。走り続けているうちに公園のような広場に出た。しかし、彼女の姿はなかった。
 公園につながる二本の道路からは影が入って来る。一体、二体、三体と数は増えていく。僕の周りを取り巻くように集まって、
『ジコだ』『シュッスイだ』『ナカマがコウドウにトりノコされている』『タスけにイくぞ』『イソげ』
 影たちの声が脳に直接響いてきた。
 何が言いたいんだ。僕に何をさせたいんだ。
『ジコだ』『シュッスイだ』『ナカマがコウドウにトりノコされている』『タスけにイくぞ』『イソげ』
『ジコだ』『シュッスイだ』『ナカマがコウドウにトりノコされている』『タスけにイくぞ』『イソげ』
『ジコだ』『シュッスイだ』『ナカマがコウドウにトりノコされている』『タスけにイくぞ』『イソげ』
 ああそうか。鉱山で事故が起こったのか。助けに行かなきゃ。仲間を助けに…………




 僕は見知らぬ町にいた。
 太い通りには色々な店が軒を連ねている。着物屋、家具屋、自転車屋。店内に商品を飾っているが、どこにも人の姿はない。コンクリートで舗装された道路は片側二車線はとれそうなほど広く、綺麗で紙くずひとつ落ちていない。なのに誰ひとり歩いていない。車も自転車も通らない。映画で見た第三次世界大戦が起こり人がいなくなった町を彷彿させる。
 太い道の真ん中に立って見渡しても人の姿おろか犬猫や烏の姿もない。それに一切の音がない。風の音も鳥の鳴き声も。もちろん生活音もない。音を伝える大気そのものが固まって音の伝播を遮っているみたいだ。
 なぜ? 何かが起こったのか? いや、ここはどこなんだ?
 気がついたら僕はここにいた。始発電車に乗って中下川という駅で降りたのは午前八時ぐらいだったはず。そこからの記憶がない。どこをどう通ってきたのか分からない。知らないうちに見たこともないこの町にいた。携帯電話は壊れたのか一切の表示が消えてしまったため時間が分からないが、空が夕焼けの赤味を帯びた色合いをしているから五時過ぎだろう。これだけの時間、僕は何をしていたんだ?
「誰かいませんか!」
 誰もいない不安感から大声で叫んでしまった。
 返事はない。
 返事はなかったが、右手の方から何か音がした気がする。小さくこすれ合う音。それはライターのフリントを擦る音のようだった。
 音がした方向を見ると、瀬棚煙草店と四つ目垣に囲まれた家の間に狭い路地が伸びていた。僕は路地に飛び込み足早に歩みを進める。
 人がいるかもしれない。人がいればこの状況を何とかしてくれるかもしれない。いや、状況が変わらなくてもいい。とにかく人と会いたかった。誰もいない無音の場所にいるのが不安で心細い。誰もいない町への戸惑い、状況が分からない恐怖、自分の存在さえあやふやになってしまいそうな静寂。このままずっとここに独りでいたら気がおかしくなってしまいそうだった。
 だから僕は音のした方向に向かってひたすら歩き続けた。誰でもいい、人に会いたい。
 トタン張りの木造住宅が続く。夕飯の支度をしたり帰宅したりする人がいてもいいはずなのに誰にも出会わない。それどころか、家々からは生活の匂いも人の気配も感じられない。ただ、無人の家が続いているだけ。
 あの音は気のせいだったのかも……いや、もう少し先に行けばライターを使った人がいるかもしれない。さらに速度を上げて路地を進む。
 気が急いているせいか、周りの建物の輪郭が曖昧になっているように感じられる。踏みしめる土の道はコンクリートの堅さに感じられる。変だ。この路地はおかしい。
 違う! いまはそんなことを考えている場合じゃない。人に会わなきゃ! 全力で地面を蹴る。
 えっ!?
 目の前には瀬棚煙草店の建物があった。曲がらず真っ直ぐ進んでいたのに、なぜ? あり得ないだろう。偶然同じ名前の店の前に出たのかと思ったが、隣には四つ目垣の家がある。この太い通りはさっきまでいた道だ。いくら路地が気がつかない程度に湾曲していてもぐるっと一周することなんて物理的にあり得ない。
 シュッ。
 また、あの擦過音。こんどは確かにはっきり聞こえた。さらに濃厚な甘さを伴った匂いが背後から流れてくる。
 振り返ると人影が視界に入った。と同時に胃袋あたりを猛烈な衝撃が襲った。


 鳩尾に走る痛みと苦しさに身体がくの字に折れ、胃袋からこみ上げてくる圧迫感を歯を食いしばってこらえる。
「よぉ、目が覚めたか」
 顔に大きな傷があり左目だけ赤い瞳の女性が見下ろしていた。
「何度も手間を掛けさせるなよ。ところで大丈夫か? 前はあんたの顔を殴ってオレの方が被害が大きかったから、懲りて蹴りを入れたんだけど、あんたが急に振り向くものだから見事に鳩尾に決まっちまってよ。悪ぃな」
 この人が僕を蹴ったのか。なにするんだって文句を言ってやりたかったけど、口を開いたら胃の中のものを戻しそうで睨みつけることしかできなかった。
「あんたバカか? やつらに捕まるから、オレはついて来いって言っただろう。なのに簡単に捕まって、鉱山に連れて行かれて二次災害で死亡って、お約束すぎるだろう」
 やつらに捕まるとか、二次災害で死亡とか、彼女はいったい何を言っているんだ?
 僕を知っているような口ぶりだけど、彼女に会った記憶なんてない。
「あ、あのぉ。人違いしてませんか? 僕はあなたとは初対面だと思うんですが」
「やっぱ記憶はリセットされるのか。オレの言うことをちゃんと聞かなかったからだぞ。あんたバカじゃねぇのって疑問形はいらねぇな。正真正銘のバカだ。バカの見本のようなバカだな」
 はぁぁぁ。大きなため息をつくと彼女はくわえていたタバコを大きく吸い大量の煙を吐きだした。
 濃厚な甘い匂いが漂ってくる。初めて嗅ぐ匂いのはずなのに、どこかで嗅いだような香りだ。決して気分の良い匂いじゃないんだけど、嗅いでいると頭がすーっとしてくる。さっきまでは風邪をひいて高熱が出た時のように、意識が自分自身から乖離したみたいでぼんやりしていたのが嘘のようだ。
 そういえば何をしていたんだ? 電車に乗って下中川駅で降りたのは覚えている。でも、そこから先の記憶が曖昧だ。なんだか長い時間歩き回っていた気もする。なのにいま僕は見知らぬ場所で知らない女性に罵倒されている。この状況はおかしすぎるだろう。
「こ、ここはどこで、あなたは誰で……」
 僕の言葉を手で制し、彼女は周りを見渡した。
「質問は後だ。ここにいたらまたやつらに捕まるかもしれねぇから移動するぞ。こんどこそちゃんと着いて来いよ。必ずだぞ!」
 あそこなら問題なさそうだと独りごちると、彼女はタールで黒く塗られた木造の二階建ての建物に入っていく。
 整然と並んだ靴箱、廊下に壁には掲示板。どうやらこれは学校らしいが人の姿はなく静寂だけが支配していた。彼女は土足のまま上がると正面にある階段を登りだす。僕は学校に土足で入ることに瞬時躊躇したが、来客用のスリッパも見当たらないし、階段の踊り場で睨む彼女のとっとと登ってこい怒鳴る声に負けた。失礼しますと小声で言って階段を登った。彼女は廊下を足早に歩き、木札に三年一組と書かれた教室に入る。
 大きな黒板に教台。三十ほどの木製の机。チョークの乾いた匂いと床磨きのワックスの匂いが充満している。
「学校の匂いというのは好きになれない」
 彼女はむすっとした表情で呟き、匂いを消すためかタバコに火をつけた。
「さて、質問タイムだ。あんたは何を聞きたい? オレのスリーサイズ以外なら答えてやるぞ」
 くわえたタバコを小刻みに上下させる彼女は苛つきの空気を立ち上らせている。
「あなたは僕のことを知っているようですが、あなたは誰ですか? 会った記憶がないんです。それにここはどこですか? やつらってなんですか?」
 疑問に思っていたことを一気に尋ねた。
「オレか? オレはねぼう屋のトキだ。トキと言っても佐渡島にいる朱鷺じゃねぇぞ。漢数字の十にキャッスルの城。十城でトキ。絶滅しかかった間抜けな鳥と一緒にするなよ」
 十城は不味そうな顔をしながら吸っていたタバコを床に吐き捨て踏み消し、赤い瞳が義眼であることも説明してくれた。
 十城って名字なんだろうか。それとも名前? 十城なんて名前は女性にはないだろうから名字なんだろう。
 ところで、ねぼう屋ってなんだろう? ねぼうって寝坊のことだろうか? 屋がついているということは、八百屋や本屋のように商売をしていると言うことだろう。寝坊の商売? 寝坊しないように起こしてくれるモーニングコールをする仕事だろうか。
「あんた、オレの仕事はモーニングコールだと思ったろう」
「い、いや、そんなことは」
「オレの商売を聞いたヤツはみんなそう思うんだよ。ねぼう屋というのはこういう字を書くんだ」
 十城はチョークをつかむと黒板に右肩上がりの文字で『昵夢屋』と書いた。
「昵は近づくとか、馴染むとか、親しむと言う意味がある。オレは今みたいに誰かが見ている夢に近づくことができる。つまり他人の夢に入ることができるってワケだ。そしてあんたが思ったようにモーニングコールもできる。夢を終わらせることができるのさ。簡単に言えば魔法使いみたいなもんだ。で、オレはこの夢を終わらせる依頼を受けてここにいる」
 何を言っているんだ? 十城の言っていることが理解できない。だってマンガじゃあるまいし他人の夢の中に入れるわけないだろう。
「もし十城さんの言うことが本当で、ここが夢の中だというのなら変だ。だって、夢って記憶の整理なんでしょう。僕はこんな場所には来たこともないし、この場所を見たこともない。だいいちこんな夢は望んでない」
 そうだ。この町で気がついて以来ずっと焦って不安に襲われていた。わけがわからなくって、心細くて、心が苦しくて、十城さんに会えなかったらおかしくなっていたかもしれない。
「そりゃそうだ。この夢はあんたの夢じゃない」
 えっ?
 十城は当たり前のことを聞くなといった表情でさらっと言った。
「この夢はあんたが見ているものでも、オレが見ているものでもない。それどころか生き物が見ている夢じゃない。これは町が見ている夢だ」
 冗談を言っている場合じゃないだろう。夢見る町とか比喩的な表現なら聞いたことがあるけど、町が夢を見るわけがない。
「そんなバカなことがあるわけがない」
 十城は冷たく笑う。
「ま、あんたが信じられないのは無理がない。オレのような昵夢屋でもない限り夢の実体は理解できないからな。だが、あんたにだってこれが現実世界じゃないってことぐらい薄々感じているだろう。やつらに拉致されて一度は死んだんだから。と言っても、あんたはそれを覚えていないようだがな」
 なんだか凄く怖い夢を見た記憶はある。あれは本当のことだったのか。
 ああ、思い出した。僕はあの時、誰かに連れられて出水事故を起こした鉱山に救出に向かい、そこで二次災害が発生した。救助に向かった僕らは坑道で落盤に巻きこまれて……もの凄い音と土煙と突然の暗闇。男たちの叫び声がこだまする中、意識は唐突に途切れた。あれが死だったのか……痛みも苦しみもなかった。ただわけがわからないうちにスイッチを切られたかのように意識がなくなった。もし自分自身で自分の顔を見ることができたなら、すごく間抜けな表情だったろう。死ってあんなに呆気ないものだったのか。後悔も生への執着もなかった。ただ、納得できないって気持ち悪さだけが湧いて、すぐに消えた。
「そうだ。僕は落盤事故で死んだんだ。でも、また生きている。これはどういうこと?」
「あの事故はこの町が見ている夢のワンシーンだ。事故は実際にあったが、四十年以上も昔のことだ。当時ここは鉱山関係者が住む町があった。けど、鉱山ででっかい事故が起こり、それが原因で閉山が決まった。閉山になって鉱山しか産業のないこの町は一気に衰退した。当時のことは知らないが、依頼者の話だと本当に短時間で人がいなくなったそうだぜ。あたりまえだが町というのは人間がいなければ存在できない。歴史的に見れば、災害や時代の流れで人がいなくなって消えていった町は山程ある。それが時の流れというもんだ」
 十城は窓際の机に腰を掛け、窓の外を指差す。木造の家屋が続き、ずっと先には白い壁の大きな工場。
「けど、この町は消えていくことを拒否した。往時のような人間がたくさん暮らす町にもう一度戻りたいと願ったのさ。そして、現実には町をつくれないから夢でそれを実現しようとした。その結果がここだ」
 ここは町が夢の中でつくりだしたな場所? 全体的に建物が時代がかっているけど、日本の田舎ならどこにもありそうな風景。これが現実じゃないなんて信じられない。
「過去の記憶をベースに夢の中で創りあげた。けど、この町が記憶しているのは鉱山事故の日までだ。この日を境に町は衰退に向かったから覚えていたくないんだろう。だからここには現代風の建物はない。ま、四十年以上も前に衰退を始めたからソーラーパネル付きの家とか見たことがないだろうしな」
 言われてみれば古くさい建物しかなかった。
「本当にここが町が見ている夢だとして、どうして事故の夢なんか見るんです? 町にとっても辛い思い出でしょう。思い出したくないんじゃないですか?」
「オレは昵夢屋だが、理由までは分からない。ひょっとしたら繰り返し見ているうちに事故が起きない夢が来るなんて思っているのかもしれないぜ。いくら夢見ても歴史は変わらないのに御苦労なこった」
 皮肉っぽい言い方をした十城はわずかに口角を上げて声もなく笑う。
「これで、オレの言ったことが本当だと分かったろう。って、信じられないって顔をしているな。だったら本当だってことを教えてやる」
 ついて来いと手で示し歩きだす。
 着いた場所は三階建ての建物の前だった。表通りから少し入ったところにあるコンクリート製の建物。斜め向かいには駅舎のような建物がある。。
「なんでか知らねぇが、やつらは事故の時間になるまでこの建物に近寄らねぇから観察にはもってこいだ。表通りを見てみろ」
 観察って何だ? 何を観察させるつもりなんだろう。この町には僕と十城しかいないじゃないか。あれだけ走り回ったけど誰にも会っていないじゃないか。
 表通りを見るんだよ、と十城がうるさいから言われるままに目を向けた。
 ゆらゆらと動く影が通り過ぎていった。人間のような形はしているけど真っ黒くて顔もない。
「な、何ですかあれ?」
「正式名称は知らねぇよ。オレはやつらって呼んでいる。で、あんたはあんなものが現実にいると思うのか? それにこいつだ」
 十城はジャケットの内側から革ケースを出した。
「この中から好きなのを一本抜きだせ」
 ケースの中には針が何本も入っていた。三十センチはある細くて長い針。長いけど針金のように細い。
「そいつを曲げてみろ」
 両手に持って力を入れるとほんの少し抵抗があったけど簡単に曲がった。
「この針が硬くないことは分かったな。その曲がったのは捨てて、もう一本抜きだせ」
 こんなに長い針を何に使うんだろう? 鍼灸で使うには長すぎる。かと言って釘のように使うには細くて柔らかすぎる。
「そいつでそこの建物を刺してみろ」
 この針でコンクリートの建物を? 曲がるに決まっている。
「曲がりますよ」
 いいから刺せとの言葉に建物の壁に針を押しつけた。
 すーっと刺さっていく。抵抗なんてない。豆腐に刺した方がまだ手応えがある。
「抜いてみろ」
 針は真っ直ぐのまま出てくる。
「次はそこの鉄柱に刺してみろ」
 こんども何の手応えもなく刺さった。
「針は特別硬いわけじゃない。信じられないならまた曲げてもいいぞ。硬くもない針がコンクリートの壁や鉄柱に突き刺さるのは現実にはあり得ないよな」
 十城は針を指揮棒のように振り上げると木の枝に向けて振り下ろした。刀じゃないのだから枝に弾かれるはずだったのに、針は中空に映し出された映像を切るかのように枝をすり抜けた。
「この建物も鉄柱も枝も夢の産物だ。オレもあんたも夢の中にいるから、コンクリートはコンクリートの触感で鉄柱は鉄柱の触感で認識される。と言っても表通りだけだ。夢の端っこの方はつくりが甘い部分も結構あるけどな。それにしたっていまのオレたちには実際にあるように感じられる。ベンチには座れるし、建物の階段だって上れる。壁により掛かっても通り抜けることもない。だがオレの針にはちょっとした細工をしてある。それは夢を壊す呪法を施してあるのさ。夢の中でつくられたものは針には効かない。これがここが夢の中だという証明だ。あんたにもこれで納得できたろう」
 いや。納得はできていない。でも、この世界が異常であることは確かだ。
「まだ納得してない顔だな。まあいいさ、あんたがどう思おうとオレには関係ない。オレはこの夢を覚ます依頼を受けている。だからいまから夢を消す。ただし、このまま夢を消したら夢の中に入りこんでしまったあんたがどうなるかはオレにも分からない。夢と一緒に消えるかもしれねぇし、夢が消えたら現実に戻るのかもしれねぇ」
「この世界を消すんですか?」
「オレは昵夢屋だからな。で、あんたはどうしたい? このままこの町の住民になるか? ここに留まれば町が夢を見る力を失う日まで一緒に夢を見ていられるぞ。ま、毎回事故を繰り返すだけの夢だがな。それでもオレのような部外者が入ってこない限り、あんたが本当に死ぬことはない。夢の中で死んでまた生き返るだけだ。だがここにいる限りあんたは何もできない。町を出て行く自由も、人間の三大欲求を満たす自由も無く、ゆくゆくは思考力とか意思と呼ばれるものが薄らいで自我を保つことはできなくなるだろうな。ゲームで言えばノンプレイヤーキャラクターになるようなものだ。あんたも見たろう、あの影のようなやつら。ほとんどはこの町が生み出した想いの産物だろうが、中には町の夢にひきこまれて影になったヤツも混ざっているぜ。あんたも引き込まれた先輩たちのように影になるか?」
 十城は針先をわざとらしくこっちに向け冷ややかな笑みを浮かべる。
「ぼ、僕は」
 現実に帰りたいって即答したいはずなのに言葉が出てこなかった。
 勤めていた会社は倒産した。貯金もほとんど無い。この三ヶ月間毎日のように仕事を探したけど採用されなかった。失業保険は来月で切れる。どんなに節約してもアパートの家賃を払えるのはあと四ヶ月。かといって実家にも戻れない。父さんが事故で半身不随になって以来、実家だって生活が苦しい。無職の息子の面倒を見ることなんてとても無理。派遣社員やバイトで日々の生活費を稼ぐというのが精いっぱいだろう。現実は僕には厳しすぎる。彼女なんていないし、親だってできのいい兄貴がいるから僕がいなくなっても気にしないかもしれない。現実世界では僕の周りには絶望しかなかった。
「オレは町が見ている夢を消すことは依頼されたが、あんたを助け出すことは依頼されていない。ぶっちゃけ言えば、オレとしては赤の他人のあんたがどうなろうと知ったこちゃない。あんたはとうの昔に消え去った町が見る夢に魅入られるぐらいなんだから、おおかた現実社会じゃ負け犬なんだろう」
 十城の赤い瞳が僕を真っ直ぐに見ている。あの目が義眼だということは分かっているが、すべてを見透かされているようで息苦しさを感じる。
「あんたがどう思っているかはともかく、ここは天国じゃない。夢は覚めるからいいんだ。覚めない夢は単なる無間地獄でしかない。ただ同じことを繰り返すだけの閉鎖された時間は拷問だぜ。世の中にはそれを望むヤツもいるようだが、あんたはどうする?」
 現実世界じゃ僕は負け犬だったかもしれない。仕事もないし、金だってない。でも……でも…………僕にだって夢はある。こんな夢じゃない。それは中学時代から憧れていた作家になるという夢。いままで色々な賞に応募してきて最高でも三次選考止まりだけど、根性無しを自覚する僕が八年間も見続けてきた唯一の夢。腕試しで投稿した小説投稿サイトで面白かったという感想をもらった時は感激して、いま思えば迷惑になるくらいの長文のコメ返しをした。今時プロの作家になっても、よほどの売れっ子じゃなきゃ生活できないことは知っている。それでも書くことはやめられないし、やっぱりプロの作家になりたい。
 繰り返すだけの夢の中じゃ小説は書けない。
 やっぱり現実世界に戻りたい!
「帰りたいです。お願いです、僕をこの夢から出してください」
「分かった」
 十城はどうでもいいって風におざなりにうずき、ジャケットから手帳を取り出すと何かを書き始める。
「あんたの救出代金は二百万円だ。支払い方法は現金一括払いが望ましいが、分割でもいいぞ。ただし分割の場合は年十パーセントの遅延金利がつく。この条件でオーケーならサインしろ」
「金を取るんですか! 僕、いま無職で、貯金もほとんどないしとても払える金額じゃないんですけど」
「オレは特殊技能を持つプロだ。プロはただ働きはしない。そしてこれが一番重要なことだが、オレに依頼すれば確実に現実世界に戻れるってことだ。金を払わずこの人間の住まない世界で繰り返し鉱山事故を経験したいというのならかまわないがな」
 手帳とペンを僕に渡し、十城は一歩下がった。
 脅しているだけで十城が夢を終わらせたら自動的に現実に戻るんじゃないのか。僕を欺しているだけじゃないのか。僕が代金を支払わなくても十城は夢を終わらせなきゃいけないはずだ。
 僕の懊悩を楽しむように十城が質の悪い笑みを浮かべている。
 ウウウウウウーッ!
 サイレンが鳴った。
「このサイレンは?」
「こいつは鉱山で事故が起きたっていう警報だ。そろそろやつらがここにも来る。早く決めないとまたあんたはやつらにまた鉱山に連れて行かれ岩に押し潰されるぜ」
「分割払いでお願いします!」
 僕は名前を書いた。
 十城は手帳を受け取るとサインを確認することなくポケットに手帳を仕舞い、長い針を僕に渡してきた。
「時間がないから一度しか言わないぞ。オレが指示した場所に針を刺せ。声を掛けたらオレと同時に刺すんだ」
 そういうと十城は郵便ポストの横の地面にバッテンを描いた。
「あんたはその印のところで待機だ。オレが『いち、にの、さん。刺せ』と言ったらそのバッテンに針を刺せ」
 十城がバッテンをしたところはなぜかぼやけていた。
 十城は建物の入り口付近に移動する。しばらく地面を見つめ松の木が生えているそばでしゃがんで針を構える。
「いち、にの、さん。刺せ!」
 思いっきり針を刺した。三十センチはある針が手応えもなく地面に突き刺さって……。




「ここは?」
 さっきまでは夕暮れ時のような弱々しい朱色が空を染めていた。なのにいま上空を覆っているのは透明感ある夏の終わりの蒼い空。
「むかし稲倉って呼ばれていた場所だ」
 松の大木に寄りかかった十城が、相変わらず不味そうな顔でタバコをくわえ紫煙を立ち上らせている。
 稲倉は広い谷間だった。左右になだらかな山並みが連なり、遠くから水が流れる音がかすかに聞こえてくる。
「稲倉は明治時代に良質な銅鉱脈が発見され鉱山が開発された。鉱物の産出量が多く大勢の人が働いていた。家族が住む家もあったし、子どもが通う学校や鉱石を運び出すための鉄道も走っていた。往時には三千人以上が暮らす町だったそうだぜ。だが閉山によって人がいなくなり町は消えた」
 背の高い雑草が生い茂っているここに町が? ずっと先に見える大きな白い建物の屋根とひび割れた舗装道路に描かれた横断歩道の白線が無ければ、町があったなんて本当に信じられない。
「あんたが見たのは昔の稲倉の記憶だ。あの建物を見ると閉山前の一九六〇年代ぐらいだろう」
 一九六〇年代ってことは僕の父さんが生まれた頃だ。
「一九六八年六月、大規模な出水落盤事故が起こり二十九人が死に一五〇人以上が負傷した。この事故がきっかけで稲倉銅山の閉山が決まった。鉱山事務所は閉鎖され、鉱物を運ぶための鉄道は廃線になり、働いていた人々は町を出て行き、四十年後の結果がこれだ」
 十城は草むらを指差した。
 雑草の奥にコンクリート製の石碑のようなものが立っていた。苔と汚れで読みずらかったけどペンキで書かれた文字は『稲倉停車場』と読み取れる。
「ここがこの町の駅前。当時一番賑わっていたろうな。鉱山鉄道には客車も連結していたらしいから、汽車に乗って那頼市に買い物に行く人も多かったろう。が、今じゃこのざまだ。まさに桑海の変」
 賑わっていた面影などうかがえない。四十年と言えば人の人生の半分くらい。人間にとっては長い年月だけど、歴史から見ればほんの僅かな時間。その僅かな時間ですべてが消えてしまうのか。さっきまでは家や建物が立ち並んでいたのに……。
 もう一度、草に埋もれた町を見た。
 ここに暮らしていた人も、事故で死んだ人たちも色々な夢を持っていたはず。でも現実はこれだ。夢って力がないのか。夢って本当に儚いんだ。僕の作家になりたいって夢もこんな風に消えてしまうのかな。
「さて、仕事も終わったし引き上げるとするか。あんたはどうする? ここで観光でもしていくか? と言っても見るものなんて何もないけどな」
 感傷的になっていた僕は十城の声で現実に戻された。
「僕も帰ります」
 この場所にいい思い出なんてない。早く人のいる町に戻りたかった。それにさっきから胃袋が空腹感を訴えている。あの町にいた時は何も感じなかったのに。
「そういやあんたの名前を聞いてなかったな。名前はなんて言うんだ?」
「田中。田中太郎(たなか・たろう)です」
 僕が名乗ると十城は呆れた表情を浮かべた。
「本名なのか? 偽名じゃないだろうな?」
 いつもの反応だ。僕が名乗るとたいていの人が信じられないって顔をする。そりゃあ、最近は瑛磨(えーす)だとか澄海(すかい)のようなマンガの登場人物みたいな名前が増えて、太郎とか一郎のような名前は減っているけど覚えやすくっていいじゃないか。
「本名ですよ」
「平凡すぎてすぐ忘れそうな名前だ。ま、影の薄いあんたには似合っているかもな。そんなことはどうでもいいや。中田、あんた車の免許は持っているか?」
「田中です」
「ああ、悪かった。それで免許は持っているのか?」
「持ってますよ。ほぼペーパードライバーですけど」
「持っていりゃそれでいい。この先に白い建物が見えるだろう。あのそばにオレが乗ってきた車を止めてある。あんたはいまからそこに行って車を取ってきてくれ。借り物だから傷つけるなよ」
 そう言うと僕に向かって十城は車のキーを放り投げた。
「えっ、あそこですか?」
 白い建物はここからでは小さく見えるけど、夢の中で見た時は見上げるほど大きかった。それがこんなに小さく見えると言うことは、離れているってことだよな。おまけに建物はなだらかとはいえ坂の上にある。
「ひょっとして凄く遠くないですか」
「遠いよ。だからあんたに行ってもらうんだ。あそこまで歩くの面倒じゃん」
 当たり前のようにさらっと言う。
 勝手なことを言わないでほしい。夢の中にいたせいか身体が怠いんだ。とても歩いて行く気力なんかない。
「おい、田之口。とっとと行けよ」
 僕が答えないでいると、十城は短くなったタバコを投げつけてきた。
「田中です! もう少し休んでからにしてもらえませんか。凄く疲れているんです。それにお腹が空いて力が出ないんですけど」
「いいことじゃないか。いいか、現実世界にいるからこそ疲れや空腹を感じられるんだ。夢の中じゃそういう身体的欲求は感じられなかったろう。あれは死人の世界だからな。死人は何も感じない。何も感じず自分が消滅していくのが夢の世界だ。夢の世界から救い出してやった大恩人のオレ様が行けと言っているんだ。さっさと車を取りに行け田代!」
「田代じゃなくって田中です!」


 結局、三十分以上歩く羽目になった。
 車を取って戻ってきてみれば十城は松に寄りかかったまま、相変わらず顔をしかめてタバコを吸っていた。僕に御苦労の感謝の言葉もなく、後部座席に乗りこむと「行け」と不機嫌そうな声で命令する。
「どこに行きますか? 那瀬駅が近くにあるんですよね。那瀬駅まででいいですか? 駅に着けば僕は電車で帰るつもりですけど」
 この地域には来たことがないけど、那瀬の名前くらいは知っている。朝市が有名で日本一大きい水族館もある。観光地としても知られている。大きな街らしいから電車もたくさん走っているだろう。金はあんまりないけど、何とか戻れるだろう。
「那瀬じゃない。目的地は鐘峰だ」
「鐘峰ってG県の鐘峰?」
「そうだ」
「ここから三百キロ以上はありますよ。なんでそんな遠くに」
「鐘峰で次の仕事があるんだよ。だからとっとと車を出せ。オレは疲れたから寝る。鐘峰に着いたら起こせ」
 後部座席から欠伸とともに返事が返ってくる。
「えっ、僕が鐘峰まで運転するんですか? 千葉に戻りたいんですけど」
「どうせ無職なんだろうあんた。それに助ける代わりに金を払う約束をしたよなぁ。いますぐ二百万円払えるのか? 払えるのなら那瀬でお別れだ」
「……払えません」
「だったらこれは代金の一部だ。これからしっかり肉体労働で払ってもらうからな。それじゃあ出発しろ田山」
「田中です!」
 僕の文句は後部座席からの寝息にかき消された。
2012-10-13 23:46:29公開 / 作者:甘木
■この作品の著作権は甘木さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 お久しぶりです。もしくは、初めまして。
 駄文書きの甘木です(←当人は謙譲のつもりで書いているが、実は事実であることに気づいていない)。
 ほぼ1年ぶりの投稿です。元々遅筆のうえに昨年末から気力とか根性とかやる気というものが行方不明状態でした。その間はエアガンだのお面作りだのにうつつを抜かしていた次第。だけど、そろそろ何か書かなきゃと一念発起して書いたのが今回の作品です。短編なのに書くのに1ヶ月以上かかりました。我ながら書けなさすぎに情けなくなりましたよ。

 ねぼう屋の十城さん登場です。
 このネタはずっと前から温めていたのですが、なかなか書くことができずにいたものです。最初のアイデアでは十城は男だったのですが、色気がないので女にしました。顔に傷はあるけど美人だしスタイルいいし凶暴です。
 今回投稿した作品を書いてしまえば、これはシリーズにもできるという便利な作品で、読み切りシリーズにするかどうか思案中です。十城さんには色々設定を用意してあるのですが、それを披露できる日が来るのだか、来ないのだか……

 このような拙い作品ですが読んでいただけたら幸いです。

10/13 バニラダヌキさんのご指摘により誤字等を修正。ただ、針を刺すシーンは上手いアイデアが出なかったため保留。現状のままです
この作品に対する感想 - 昇順
 ども、読ませて頂きました。
 昭和ぐらいの時代かなぁーと思っていたら、GPSとか出てきて、おや? と疑問に思っていたら、そういう事でしたか。
 ドリームバスター的な設定は結構見受けられますが、町――しかも鉱山の町というのはなかなか珍しいと思いましたし、渋いなぁとも感じましたw
 背景描写はさすがの一言に尽きます。すげぇや、甘木さん。この胡乱な感じはいろいろと参考になります。
 私なんか長編終わらすのに平気で半年掛かる人なので、全然早い方ですよ。……あまり慰めになっていませんね。

 田中君の作家になりたいと決める辺りは、いろいろと身につまされる思いです。自分も何年目指してやってる事やら……。
 さておき、針を刺すシーンは、もうチョット欲しかったかなぁーとも思いました。やつらとの対決……みたいな。
 ともあれ、楽しかったです。

 ではでは〜
2012-10-08 20:57:18【★★★★☆】rathi
こんにちは、作品読ませていただきました。
前にもどこかの感想でお話したかもしれませんが、僕はどうも「気づいたら異世界に」的な展開を安易に使うのは好きでないのですが、その「異世界」がさすがの甘木さんらしいこのような魅力的なものであれば、話は全然違いますね。
炭鉱の閉山によって町が…という辺りの設定も思い切り好みですので、読んでいて引き込まれました。十城さんのキャラクターのほうはあまり面白みを感じなかったのですが、まあこの辺は個人の好きずきというところでしょう。

ただ、「ねぼう屋」としての仕事の部分(針を刺すところですね)が、あまりにあっさり流れてしまってるようで、ここは気になりました。「真っ白な光に包まれて」だけでは、これだけリアルに構築された異世界を消し去ってしまう行為としては、ちょっと物足りない気がします。中二的になってもいいので、もうちょっと見せ場として盛り上がれば、この「町」も報われるような。
ともあれ、なかなか魅力的な作品であることは間違いありません。続編(あるのかな?)も、楽しみにしています。
2012-10-08 21:10:23【★★★★☆】天野橋立
お久しぶりです。拝見致しました。
出だしを読んだ限り、「二等辺三角形」と同一タイプ、つまりはあれだ、「みんなは絶賛するけど、どうせ神夜にはついていけねえ物語なんだろ、舐めてんじゃねえよ」と素直に思ってしまった訳ですが、中盤以降、具体的には「影」登場からトキまでの流れでその考えは払拭され、最後は良い意味で、「まさかあの意味不明な甘木節から、神夜好みの少年漫画風読み切りに変化して終わらせやがった」と感心させて頂きました。人によってはもしかしたら納得できない変化かもしれませんが、個人的にはツボでした。いや面白かったです。これが続編になろうともこれで終わろうとも面白かったです。続編があればそれはそれで楽しみですが、そうするとなんだろう、基本一話完結型になるのだろうか。難しそうだなそれ。
しかし。一ヶ月掛けて作れる、っていうのは個人的に逆にすげえ。書き始めて三日も間が空いたら、もう二度と神夜は書くことができない。そうして取り残された物語がすでに5個くらいある。この残骸達をどうしたものか――、見なかったことにするしかねえよね、うん。
それでは続編、並びに次回作の方、楽しみにお待ちしております。
2012-10-09 13:27:50【★★★★☆】神夜
前半の夢の描写が狸のツボをモロに直撃し、直撃されてしまった狸としては皆様のおっしゃる針治療部分の淡白さなどちっとも気にならず、ラストまでイッキに「おうおううんうんおうおううん!」などと頷きまくっておりました。頷きまくりつつも「おや甘木様らしくない重複表現が脱字が句点のダブリが」とか、底意地悪く重箱の隅をつついていたのは、加齢のため自分を棚に上げきった因業爺いの宿命なのでなるべく気にせず、でもちょっとだけ気にしてくださいね。
ともあれ、いやはやなんと身につまされる夢と現実と夢の釣瓶打ち。「分割払いでお願いします!」には、笑いながら泣いてしまいました。この作品は、きっと狸のための創作物に違いない。作者様としては「狸の感傷なんぞ知らねーよ、これは俺の創作物だよ」とおっしゃるかもしれませんが、読者には読者としての夢があるので無問題。
ちなみにシリーズ化されるとしたら、田中君の分割払いも激しく希望いたします。
2012-10-11 18:23:27【★★★★☆】バニラダヌキ
 久しぶりに書いた作品で、ちゃんと書けているかどうか不安でしたが、皆様の感想を読んで最低限レベルには達していたようでホッとしています。


 >rathiさん、ありがとうございます。
 rathiさんにわかりやすい言い方だと、この作品は東方projectの二次作品の幻想入りをイメージして書いてみました。
 本編には書いていませんが、夢を終わらせるのに針を使ったのは古代中国では盟約の時に針を地面に刺すから(あと、生贄の犬の血)私も見習ってみました。鉱山跡が舞台なのは、私が鉱物採取が趣味で色々な鉱山に行っていて馴染みがあったんです。今回の舞台は新下川鉱山の廃墟を見た時のイメージで書いてみました。新下川はなかなか印象的な場所でしたよ。
 ただ、自分的にはもっと昭和の町をちゃんと描写したかった。ただ、書き出したらきりがなくなるし、文章のリズムも悪くなりそうなので割愛したけど未だ気になっています。
 田中の気持ちは登竜門に来る人なら誰でも感じる感情ですよね。そこは狙ってみました。
 夢はあっさり覚めるものから簡潔にしてみたけど、もっと書き込んだ方がよかったのか。参考にさせていただきます。でも影に戦う力はないでしょう。しょせん夢の産物で輪郭までもやもやしているんだもん。


 >天野橋立さん、ありがとうございます。
 もろ「気づいたら異世界」物でございます。王道です。でも、ちょっと待って。私は異世界物は実は好きじゃないんです。だって現実じゃないから色々描写しなきゃならないじゃないですか。私の力じゃ描写すればするほどアラがでるから……苦手。
 自分自身は廃墟マニアだとは思っていないのですが、趣味の鉱物採取でヤマに入ると否が応でも廃墟とか廃集落を目にするんです。廃墟も廃集落も独特の雰囲気があっていつか作品の舞台にしたいと思っていたんです。
 十城は好き嫌いがはっきりでるキャラだろうなぁと思っていました。と言うか、つくった設定のほとんどを出していないので薄っぺらいキャラになっていたと思います。
 rathiさんにも指摘されましたが、針を刺すシーンは弱かったようですね。夢のはかなさを示すつもりでほとんど書かないで済ませましたが、これが裏目にでたなぁ。そうか、あのシーンは中二病的な書きこみの方がよかったのですね。参考にさせていただきます。見せ場の発想はなかったなぁ。自分的には昵夢屋という職業を紹介する意識しかなかったので、その辺りの配慮が欠けていました。そうだよなぁ……自分の頭の中じゃこの先(次回作以降)の世界まで考えていたので、言葉足らずになっていたのに気がつけませんでした。反省しなきゃですね。


 >神夜さん、ありがとうございます。
 そりゃあ私もたまに電波的な作品も書くけど、基本的には中二病的なラノベ作品が好きなのは神夜さんも知っているでしょう。
 と言うか今回はわざとこういう書き方をしてみました。出だしは幻想小説風にして徐々にマンガ的な展開に持っていく一種の罠的な作品なんですよ。見事に罠にはまってくれて嬉しいです。
 でも、いままでの評価を読むと私が好きラノベ的な作品より、電波的な作品の方が評価がいいんだよなぁ……需要と供給が合っていない会社の社長になった気分だよ。電波系は短い割に時間がかるからキツイんだけど。
 続編のネタは考えてあるんですよ。第2話はのっけから幕間。それに昵夢屋の仕事もなしという外道ぶり。第3話は以前から書きたかった登山の話。と、予定はあるのですが、書く気力がどこまで続くか……というか、いま現在はまたも電波的な短編を書いている最中だし、続編を発表できるのはまだ先になりそうです。でも、田中君の活躍を一番読みたいのはこの私。
 遅筆の私からすると神夜さんのように短時間で書けるのがマジ羨ましい。



 >バニラダヌキさん、ありがとうございます。
 神夜さんに続いて罠に快く引っかかってくれた。本当に嬉しいです。今回は幻想的な入り方からマンガ的な展開になって、反発を喰らうだろうなと自虐的な目論見だったのですが、寛容さをもって受け入れていただけて感謝しています。
 誤字脱字重複表現……ヤバっ! 見逃した。本職が整理(校正)記者なのに恥ずかしい。
 田中君の境遇は登竜門に来る人すべてが身につまされるでしょうね。私は幸い職に就いていますが、田中君の立場になったら電車に乗らず富士の樹海を目指してしまうかも……明日は我が身だなぁ。
 元々のアイデアでは十城が主人公で三人称で書くつもりだったのですが、田中君を思いついて急遽変更。私としては田中君の不幸ぶりが非常に気に入っています。田中君の不幸物語をもっと書きたいです。もちろん分割払いは続きます。


 読んでくださった皆様、わざわざ感想を書いてくださった皆様、本当にありがとうございます。皆様の感想のおかげで文章を書きたいという欲がまた湧いてきました。
2012-10-13 23:42:57【☆☆☆☆☆】甘木
遅ればせながら、御作読ませていただきました。
読んでいて、これは御大の好きな色だろうなぁ、などと思っていたら、やはりでしたねw
いやいや、私ももちろん楽しめましたよw
十城のキャラが甘木殿のお話には良く登場しますよね。こういうキャラは私は大好きです。後最後の田中君の名前を間違えまくるのもツボでした。
しかし分割払いで労働返済ですよね。時給どのくらいで換算されるんでしょうね? 十城さんの性格からして、ドSな時給な気がしますが……
一つ素朴な疑問なんですが、この街の夢を覚めさせてほしいと依頼した人は誰なんだろう? どこかで出てきました?
田中君の救出料が200万だから、街の夢を覚ます料金はきっとどえらく高いと思うんですが、それを払ってまでお願いすると言うと……?
済みません、くだらないことを書いてしまいましたw
門で久しぶりに面白い物を読んだ感じがします。また次回作もお待ちして……ってもう投稿してる!?
早いなぁ〜

鋏屋でした。
2012-10-15 15:24:37【★★★★☆】鋏屋
遅ればせながら拝読しました。水芭蕉猫ですにゃん。
描写もさることながら、個人的にはトキさんのキャラにぞっこんしました。いいなぁトキさん。凶暴でカッコいいぜ!! タバコ吸ってるところが男前ですね!! しかし、その代金は如何なものか……。年十パーセントは暴利だよね? ね?
鍼治療は良いものだよ。腰だって終った夢だってなおしちまわぁ! ……良いと思うんだけどなぁ鍼治療。
それではにゃ。
2012-11-03 22:51:55【★★★★☆】水芭蕉猫
計:24点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。