『狂気の登校日 1』作者: / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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夏。じめじめとした湿気がシャツにまとわりつく。
「……嫌な天気だな」
独り言を言う。
今日は夏休みだが俺のクラスだけ登校日なのだ。良い気分のわけが無い。
いや、そもそも学校に出席するという行為そのものが好きではなかった。
無駄なのだ。
情報通信技術の発達で知るべき事は知ることが出来る。
知りたいやつだけが知っていればいいのだ。
既に一部の企業などは自宅勤務などを実現させているのに……
「よう、高鳥。あいかわらずさえない顔だな」
そんなことを考えていると京山が話し掛けてきていた。
いつの間にか横にいたらしい。
「……朝からうるさいぞ」
朝にコイツのテンションはこたえる。
コイツとは小学生からの付き合いだが腐れ縁というやつだろうか。
「また親父さんとケンカでもしたのか?」
「わるかったな。大体あのクソ親父がだなぁ…」
「はいはい、わかってるよ。ここ最近の鍛冶の調子がわるいんだろう?」
親父は鍛冶をやっているのだが、そのせいか考え方が古く俺と意見が合わない。
上手くいかない時など俺にやつあたりをする始末だ。
「いい迷惑だ」
「そう言うな。親父さんだって悪気があるわけじゃないだろう」
こんな会話をしているうちに学校につく。
「おはよう!雄二君!」
教室に甲高い声が響く。コイツもテンションが高い。
「……おはよう」
「おはよう、恵美子ちゃん」
二人で挨拶に答える。
「お前せっかく恵美子ちゃんが挨拶してるんだからもっと愛想よくだなぁ…」
「俺は低血圧なんだよ」
お前らこそ俺に気を使って欲しいと思ったが言うのも面倒だ。
「あいかわらずだね、雄二君」
「悪いね〜、恵美子ちゃん」
朝からこいつらと会話をする気にもなれず黙っている事にする。
そもそも俺は自分から話し掛けるような事は無い。
恵美子だって入学したときに席が近かったから話し掛けられただけで俺は話す気なんてなかった。
だがそのおかげでクラスに溶け込めているのだから多少感謝はしている。
だがひねくれた性格は学年内でも有名らしく頻繁に他クラスのいわゆる不良どもに絡まれるのだが
幸か不幸か親父から教わっていた武術のおかげで怪我もなく生活している。
……不良は怪我だらけだが。
しばらく考え込んでいると担任が教室に……あれ?知らないやつが入ってきたぞ。
慌ててみんな席に着く。
「今日は斉藤先生は休みですので私があなた方を受け持ちます」
そういいながらこちらを見渡した。

ゾク…

その視線に背筋が凍るような感覚を覚える。
視線は気のせいだったのか他愛のない説明が続く。
(あんなやつ教師にいたかな…?)
そんなことを考えていると突然
「ではテストをしたいと思います」
……は?
全員があっけにとられる。そんなことは関係無しとばかりに話は続く。
「ではこれを配ります」
全員の机の上にMDくらいの大きさの黒い物体が置かれる。
「今配ったものを持ってください」
まったく訳がわからない。抗議をしようと立ち上がる。

!!

体が動かない!
いや、身体の自由がきかないといった方が正しい。
なぜなら右手だけは黒い物体に向かって動いているからだ。
同級生達も同じらしく黒い物体をつかもうとしている。

「グ、グアアアァァァ」

突然後ろの方から奇声が聞こえる。
後ろを見ることは出来ないが、黒い物体が影響しているのは間違いない。
右手が物体をつかもうとする。
(ヤ、ヤバイ)
冷や汗がつたる。

ガシッ

物体をつかむ。
…何も起こらない……のか?
そう思ったのもつかの間、突然目の前が赤くなる。
「う…ぐ……」
吐き気、めまい、頭痛がひどい。
ふと親父が作った刀を思い浮かべる。
それと同時に右手の黒い物体の形が変わってくる。
永久に続くのではないかと思うような吐き気の中、右に気配を感じる。
(…誰だ?)
吐き気をこらえつつ右を向くと通常ありえない状況が目に映る。
同級生の身体の形が変わっているのだ。
皮膚は黒く変色し硬くなり、肩や膝などからとげのようなものが出てきている
変化し終わった同級生はもはや人間ではなかった。
そう思った瞬間目の前の同級生だったものが襲い掛かってきた。

ブンッ

鋭い爪。よけたのか、外したのかすら解らないくらい早い。
「ど、どうなってんだ!!」
いつの間にか気分は回復していた。
化け物から距離を取る、周りをよく見ると皆化け物になっているか苦しんでいるかだった。
中には化け物に食われている同級生もいた。
「うぅ!」
無残な同級生の姿に強烈な吐き気を覚えパニックになりながらも教室を出る。
いやだ!死にたくない!
必死に走って下駄箱に着く。とにかく学校から出れば何とかなると思っていた。
だがそんな考えは甘かった。学校から出られないのだ。
玄関も、窓も、すべて開かないのだ。
どういうわけか窓を割ることもできない。
「クソッ」
右手に持っていた刀で窓を叩きつける。
……刀?
いつの間にか右手に真っ黒な刀を持っていた。
(黒い物体がこれになったのか・・・)
どうやって外に出ようかと考えてるといきなり放送が鳴り出す。
さっきの教師の声だ。
「では、これからテストを始めます。先ほどの黒い物体を持つとあなたの武器のイメージに変形します。
武器のイメージが弱かった方は残念ながら化け物になってしまいました」
「それをもって屋上まで来れればテストは終了です。
但し校舎内の人間が3人より多いと開かないので注意してください。では皆さんの健闘を祈ります」
……ふざけるな!
あんな化け物がうろうろしている校舎をまともに歩けるわけが無い。
屋上まであと3階上がらなければならないのだ。
不意に後ろの方で物音がする
「誰だ!」
「よう、高鳥。元気そうだな」
後ろを向くと階段から降りてきた京山が右手にライフルを持って立っていた
「お前も無事だったか……」
自分以外にも無事の人間を見つけて安心する。
「無事……ではないかもな」
意外な答えが返ってくる。
「ど、どういうことだ?」
「それはな……俺は今お前を殺したくてしょうがないんだよ!」
そういった瞬間ライフルをこちらに向けて撃つ。
訳もわからず下駄箱の身を隠す。
数発こちらに打った後打つのをやめる。
「この銃はいいぜぇ。何せ弾が切れないんだからな。ここに来るまでに2匹化け物をころしたぜ」
京山はこちらに歩きながら話す。
「でもあの化け物は弱すぎだ。だから骨のあるやつをしとめたくてなぁ」
完全に頭がおかしい。もとからこうだったのか、今日こうなったのか。
「なぜ俺なんだ!俺たちあんなに仲がよかったじゃないか!」
「別にお前を選んだわけじゃない。たまたまここに居たお前がいけないんだぜぇ」
声からするともうすぐそばだ。
(このままじゃやられる!)
そう思った俺は意を決して下駄箱から身を乗り出し刀で切りかかる。

「!! う、うぎゃあああぁぁぁ」

京山の左手が落ちる。
「痛ぇ…、痛ぇぜぇ。俺たち友達じゃなかったのかよぉ!」
「お前が俺を殺そうとしたんだろ!」
「友達だったら……、友達だったらおとなしく殺されろよぉ!!」
狂ってる。そもそも手ごたえのあるやつを殺したかったんじゃないのか?
「まあいいさ、お前は後回しだ。他のやつらをしとめてから殺しに来る!それまで生き残ってろよ親友!」
そういいながら人間離れした速さで走り去っていった。

「…もうお前なんか友達じゃないね、次に合ったら殺してやる」

俺も狂ってきていた。


2003-12-11 23:35:36公開 / 作者:熱
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■作者からのメッセージ
ある学校の夏休み登校日に起きる狂気のサバイバルです。
小説は初めてなので誤字、脱字などが在るかもしれません。
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