『偽善少女』作者:もげきち / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
偽善も善なんです! きっと……きっとね……
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「ねえねえ、真菜(まな)。私将来の夢決めたよ!」
「ほへ? おお、天子(てんこ)将来の夢なんてあったんだ」
 お昼ごはんの弁当を広げ、二人の少女が話を楽しそうにしている。
「うん! あ、でも進学とかじゃないよ? 将来の夢だよ」
「わかってるって。進学はまだまだ先じゃん。で、将来の夢ってなに?」
「うん! 私ね――」
 訝しげに尋ねる真菜に対し天子は、えっへんと胸を張り力強く頷く。因みに胸は隆起も見えない悲しいほどに大平原だ。そのまま、彼女は言葉を嬉しそうに続ける。
「私ね、将来は偽善者になるの!」
 ブーッ
 真菜はあまりにも突飛な発言に思いっきり口から唾を飛ばした。
 勿論対面していた、天子の顔に襲い掛かる。
「ぎゃっ、真菜何するの! チョー汚いじゃん! えんがちょー(古い」
「……ちょっと待って、天子」
 慌てて、ハンカチで天子の顔や服を拭いて上げながらも真菜は歯軋りするような声で天子に聞き直した。
「偽善者になるって――何?」
「えー、偽善者は偽善者だよ? 偽善者で将来大金持ち! 地位も名誉もうっはうは!」
 きょとんとした表情で答えを返し、最後は笑顔を両手を上げる。
「…………」
 沈黙。
「えっと、その、つまり、どういうこと?」
 やっと出した真菜の声は、呆れ分が過分に含まれていた。
 その言葉に、天子は待ってましたと身を乗り出し破顔した。
「えっとね、偽善って普遍の悪徳じゃない! しかも悪徳なのに世間では美徳ともてはやしてもらえるの! この仕組みに、私気が付いちゃったんだー。やったね♪」
「それって、善人顔して何かをやるって事? チョー悪くない?」
「うん! 悪いよ? 当たり前じゃない。偽善者だもん。だってさー偽善者面ほどお得な商売って無いと思わない? インフルだの、子供ポルノだの、アフ●カ支援だのをうたって実行し、尊敬されて――もし、ちょっと不正がばれても慈善事業を盾にすれば誰も反撃出来ないでしょ? 他の悪いことだと叩かれちゃうけど、これは善意を前面に押し出せば糾弾の声をこちらから手で塞ぐことが出来るじゃない」
「……あんたって子は――」
 変な知恵だけは身につけるの早いんだから。
 得意げに語る天子に、真菜は言葉を飲み込み絶句する。
 でも、天子はそんな事はお構いなし――と言葉を続けた。
「そして、こうして偽善を演じていれば似たような悪い仲間がホイホイと集まってくるじゃない。その中には大金持ちとかもいるでしょう。そしたら、その金持ちを頼ってもっともっと大きな組織を作り出すの! 組織さえ出来てしまえばこっちのもの、何か批難されようものなら組織が全て敵の相手となって、偽者の善意を以って逆にどーんと押しつぶしてあげるのよ!」
「あのさ、しゃれになってなくて、怖すぎるんだけど……」
 ツッコミをいれる真菜。でもやっぱり天子は気にしない。
「ましてや組織に本当の善者や、同じ利権を求めた世間的に有名な人間達が入ってくれればもう地位的に勝ったも同然! うそ臭い偽善の大儀が完全に世間様の信頼となってモノになるの。すき放題やりたい放題よ! ね? すごくない? 物凄く明るい未来が見えない? ちょっとは善意を混ぜればまずバレないし、とてつもなく儲かるでしょ?」
「あはは。あははははははは」
 圧倒された真菜は乾いた笑いを漏らす。しかし、ふと思ったことを口にした。
「でも、それって結局見つかったら信用がガタ落ちになるんじゃないの?」
「もー、真菜ちゃんは解ってないなー。今の政治ちゃんと見てる? 鳩病魔総理大臣。いや、汚沢さんとかもか……つか売国党のみんなかな? あれもそうじゃない」
「え? どういうこと?」
「だーかーらー、何かが明るみに出たとしてもスーツを着て神妙な顔をして、頭を深く下げて、心から反省しているという溜息を見せれば日本っていう国は何でも許してくれるのよ。しかも、その態度に感銘を受けた有象無象の方々が必死で――黒もとびきり真っ黒な人たちの為に盾に望んでなってくれるのよ。こんなに都合の良い国って絶対他には無いじゃない。日本が無くなる前。やるなら今しかないわ!」
「な、なるほど――でも、私は偽善って自覚して行動なんて出来そうにないわ、無理」
 真菜、ドン引き。
「えー、勿体無いなぁ。どんなに不都合な事がこっちに起こり、相手が正統性があっても『不徳者』とか『子供を食い物にする』とか悪のレッテルを貼って、罵詈雑言をむしろこっちが浴びせねじ伏せることが出来る最高の職業だと思うんだけどなー」
 天子は真菜に否定されて不満そうに口を尖らせた。
「……じゃあさ、天子は偽善者になったらまず何をしたいの?」
 半分呆れた表情で真菜が尋ねる。
「うん? そうだねー、まずは募金で集めたお金で品川にでも超高層ビルを建てようかしら?」
 にっこりと天子は笑った。
「……あんたなら本当に出来そうだわ。でも捕まらないでね」
 勿論よ! と頷く天子に、真菜は溜息混じりに呟いていた。
 とりあえず天子とは友達を止めたほうがいいな、とも思った。
 

2009-11-03 09:41:51公開 / 作者:もげきち
■この作品の著作権はもげきちさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
普段のテイストで、またまた思いついたことをぱぱっと書かせて頂きお祭り参加です。
今回はいつもの自分らしい作品が書けたかな? とか思いつつ、ショートショートだとそこまで出せていないかも? とも不安に思ったり(汗 
読んでくださった皆様、本当にありがとうございましたー!
この作品に対する感想 - 昇順
こんにちは! 羽堕です♪
 偽善的な部分って、誰しも多少は持っているんじゃないかなと私は勝ってに思っているのですが、天子までいってしまうと、偽善者という仮面を利用する悪の組織の総統って感じがしました。やろうとしている事は悪いんだけど、どこか憎めないキャラというのか、真菜じゃないけど本当に出来そうな所が怖いです。ダークなのに明るいって感じかな。それに天子なら、次の日には「本物のヒーローになる!」とか言ってくれそう気がしましたw
であ次回作を楽しみにしています♪
2009-11-03 10:56:34【☆☆☆☆☆】羽堕
こんにちはもげきち様、よっつぁんです^^
作品読ませていただきました!
いやぁぁぁキワドイ。お得意のキワドイネタで攻めてこられましたね。審判「ギリギリアーウトッ!」^^
さて冗談はさて置き、己の思想を密に込めた作品ですね。難しい内容ですが、話し手が少女であること(+コメディ調)や真菜が一定の距離を保っている事が緩衝材になり、あまりカツカツした雰囲気になっていないのも素敵です。しかし、この話題で盛り上がっている昼飯時の少女2人の姿……う〜んシュール……
もげさんらしさに少しクスリッとしながら……それでは、次回作その他(ニヤリ)お待ちしております♪
2009-11-03 11:43:15【☆☆☆☆☆】有馬 頼家
拝読しました。水芭蕉猫です。にゃあ。
なんというか、なんというか、とても、朗らかとした征服日和的な会話ですね。これは悪の組織を創立する計画を立ててる日なのかな? でも、まぁ幸せなら良いじゃない。大きな組織なら、とりあえず何があってもマスコミさえ味方に回しておけばどうとでもなるような気がします。親とか見てたらそんな気持ちになります。
とりあえず、天子と友達になっておけば将来はどうにかなりそうな気持ちです。
2009-11-03 21:45:59【☆☆☆☆☆】水芭蕉猫
作品を読ませていただきました。組織の偽善とは、日本ユニセフ協会(国連のユニセフとは別物)のことですか? あの組織も会計に……おっと、関係ないですね。
「偽」とは「人」の「為」と書きますから、偽善者とは人の為に善をなす者と言うことですね。ならば大いに結構。私は天子を応援しますよ。大いなる偽善者になった暁には私を事務局長とか会計担当役員にしてくれないかなぁ。天子の夢が大きいようで妙に現実感を持っているのがよかったです。では、次回作品を期待しています。
2009-11-03 23:59:43【☆☆☆☆☆】甘木
>羽堕様
こんばんはー、またまた感想をいただけまして本当に感謝の極みであります!
偽善的な部分、自分に言い聞かせて正当化することって多々ありますが、それを「自分の為の利益になる!」と自ら確信し、実行できる強さって普通は無いですよねw 
天子のキャラクターのお陰で軽くはなっていますが、まぁお気づきの通り普遍の悪徳をつねに利用し続け25億円もの巨額の投資で品川にビルを建てたあの組織の事をちょっと(ニュアンスはご自由に)揶揄させていただいているのかもしれません。えへえへ。
天子なら、何かに気がつけば「あ、これ気がついちゃった♪」と新しい何かに再び猪突猛進! だと思うので正義の観念に気がつけばひょっとするとひょっとするかもですね!
感想ありがとうございましたー

>頼家様
こんばんはー、感想ありがとうございまっする(アブドミナル&サイポーズでご挨拶)
ええ、いつもの自分ですw えへえへ――って、アウトなんかい! セーフやないんかい!
かなり自分の考えを明け透けに出してしまった作品ですがそう仰って頂けると嬉しく思います。もうね、なんというかね、この鬱屈とした気持ちをだしたかったんだー><
しかし、急にこんな話出してきたらその時点でシュールですよね……天子のキャラに頼りすぎな面もありますが、喜劇ですわ。喜劇ですわ。で許してやってください。
今回もありがとうございました! お互いに切磋たくまさん(35)の英霊に敬礼しつつ頑張って参りましょう!

>水芭蕉猫様
こんばんはー、またまたご感想ありがとうです。ぶもっ! (豚好きな自分失礼)
本当、実際マスコミのメディアリテラシーとかBPOとか全く機能せず、すさまじいくらい受身の情報に流されて大変な事になってますよね……ここまで来てても、まだ他人のせいで逃げるあの政党を応援している上司とか本当に――って、話が逸れましたw 天子のキャラクターのお陰で喜劇として書ききる事が出来たのが幸いです。本当「ああ、分かっちゃった♪」で全て切り抜けそうな力強さに、自分も友達になれたらとか思っちゃいます。
ではでは、今回もありがとうございました! また見かけたらかまったってやってくださいー

>甘木様
こんばんはー、またまたご感想ありがとうございます!
いやいやいやいや、すでに品川とか書いちゃってるあたりが危険かな? とか思いつつもやってしまったので開き直ってますが、勿論あの組織のことであります。ピンはね率の半端無い、毎日変●新聞と仲良しのあの組織は本当に……色々不可思議な事が多いですよね。
偽善大いに結構! って、何だか打算的な――っ?! 自分も会計に……もにょり。大それたことなのに、実際これが悪徳として普遍的に浸透してる分、現実感を持って見て頂けたのかな? 嬉しく思います! 今回もありがとうございましたー
2009-11-04 18:55:33【☆☆☆☆☆】もげきち
どもです。読ませて頂きました。
実際募金詐欺はありますからねぇ。某4コマだと、募金箱というなの貯金箱をレジ前に設置する、という巧みな事をしてましたがw
さておき、暴走天子が良い味だしてますねぇ。政治家……というよりも、自己啓発系とか合いそうな気がします。この手の人は強いですよ、マジで。

ではでは〜
2009-11-06 16:11:55【☆☆☆☆☆】rathi
>rathi様
こんばんはー! わわわ、またまた感想ありがとうございます!
本当、募金詐欺ありますよね。100円募金しようとしたら1000円以上でお願いします! とか言われた人もいたりとか聞きますし、なんと言うか胡散臭さ満載です。善意の皮をかむった普遍の悪意はどうしようもないですよねぇ……。アーグー●ースー(危ない
天子の暴走は強いですよね。思ったら周りの弊害なんて気にしない、読まない。その行動力って本当に強い。周りの怨嗟の声とかもきっと聞こえませんから、ずっと幸せでいられそうですw こわこわ。
ではでは、感想ありがとうございました! またであります〜
2009-11-06 18:43:12【☆☆☆☆☆】もげきち
 こんばんは、もげきち様。上野文です。
 御作を読みました。
 にゃっはっは。笑え…ないっTT
 外車乗り回しながらうちの子のために募金してとか、発展途上国のためにって集めたお金を私的な団体に横流しとか、人身売買を平然と行う宗教とか…。
 おひとよしも…、考え物かもしれません。100回騙すより、100回騙される方がいいなんて、悪党からすれば、ただのカモネギですから。
 邪気の無いかけあいのなかに、すぱっと斬るような心地よさがあって、たいへん心地良かったです! 
2009-11-09 21:50:00【☆☆☆☆☆】上野文
>上野様
こんばんはー! 感想頂きありがとうございますっ!
あははは……本当に笑えない事実がw 月24万の生活保護じゃ生活できない。娘と沖縄旅行に行きたい。とか言ってる謎の人種が新聞に出てましたよね^^ 
人権屋は儲かるので、日本にたかりに来る方々の多いこと多いこと。あと、最近法の番人たる大臣が法を無視しまくってるらしいですし、怖いですよね。本当、奴らの上辺だけの偽善を見ていると、満面の笑みで素敵な言葉を紡ぎだしたくなってしまいます。 って、自分危ないこと書きすぎてる><
天子くらい開き直ってくれていれば、むしろスッキリするのですが。そうは行かない現実。
上野様に心地よいと言ってもらえて本当光栄であります^^ めっさ嬉しいです(笑
ご感想ありがとうございました!
2009-11-10 23:41:47【☆☆☆☆☆】もげきち
計:0点
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