『無価値土塊 むかちつちくれ』作者:模造の冠を被ったお犬さま / SF - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
 平行世界の未来、月でのできごと。人類は人類と戦っていた。
全角4880文字
容量9760 bytes
原稿用紙約12.2枚
 無価値土塊 むかちつちくれ







 荒野を往くガンマンの長いコートが地を舐めるように、質感を伴う微細なざり……ざり……と響く音が耳を離れない。眠れない。
 部屋の窓にかかる薄いカーテンから漏れる閃光には慣れた。手榴弾の爆炎も、花火だと思えば風流にもなる。そう思い込まなければならなかった。それなのに、どこからか砂粒の入り込んだ時計の音に敏感になって眠れない。
 大航海時代、ヨーロッパ諸国が他国を討ち滅ぼし植民地にしたように、開拓者を自称するものたちが月に群がるようになってどれほどの年月が経っただろう。最初は、私も有象無象のひとりだった。月の利権争いでもっとも優位にあるといわれたシェパード氏の派遣一団『エンジェルエージェント』に志願し、五年前にこの月面に降り立った。当時荒れていた私は、しかし安寧を求めてのことだった。「月世界は楽園。引く手数多、失業の心配なし。生活の保障もばっちり。今を逃せばもうチャンスはない」その言葉に踊られていざ来てみれば。ゴールドラッシュもアメリカンドリームも吹っ飛ぶ現実を目にすることになる。私はシェパードの私兵として、戦争に駆り出されたのだった。
 未開地を発見した人類のとる行動は今も昔もただひとつ。侵攻して占拠して領土とする、陣取りゲーム。私の月世界進出は、陣取りゲームの駒の補充だった。
 月のクレーターは日ごとに増えている。

 車椅子を呼び寄せる。部屋の暗がりからとろとろと進み出る車椅子は、窓からの光を眩しそうにしている。戦えないこの身となった今でも、簡素とはいえ部屋を与えられているのは、ひとえに功労を認められたからだ。
 両肢が吹き飛んで後、新しく私の一部となった車椅子は二年以上の付き合いになる。妻を娶ることのなかった私にとっては、伴侶のようでもあった。
 六分の一の重力は、肢を失った私に優しかった。私は二度と星間移動を行わないことを条件に、ひとり残してきた妹にエージェント公式の死亡届を送ってもらった。
 部屋の外ではクロスワイズエレベータが待機している。この建屋を移動するにはエレベータを利用する以外にない。エレベータ内部には各種のカメラが設置されており、生体認識のほか持ち物検査や人間ドックまがいのことまで行ってしまう。人間が監視していたり、映像が記録されているということはない。動画保存するにはデータ量が多すぎる上、ほとんどが無意味なデータだからだ。すべては数字上で管理される。私の行動がなぜ見咎められないのか、探りを入れてみれば単純なことだった。
 慣れないうちは車椅子の生活をとても歯痒く感じていた。肢があれば難なくこなせるのに、と。それはエレベータパネルの操作にしても同じだった。単なる偶然、慣れない操作がたまたま隠された部屋へのコードを打ち込んでいたらしい。チン、と目的地の到着を告げるエレベータに、地球と変わらない懐かしさを感じる。ドアが開いたとき、ようやく自分の失敗に気付いた。部屋は、床面積では自室の三倍ほど、容積まではわからないが天井は高い。しかし、ある一面を除いてすべて鋼鉄でできているために心理的に息苦しく感じる。
 エレベータ正面の壁は剥き出しの岩盤になっている。そこに、迫り出す美しい女性の胸像があった。こちら側を覗き込むように前傾になって、胸部と二の腕までが岩から突き出ている。髪の一本一本はケーブルとなって岩と繋がっている。女性捕虜なのかと目を凝らすぐらいに精巧に造形されていた。私は息を呑んだ。

「眠れないか」
 彼女の頬に触れると、長い睫を付けた目蓋が持ち上がる。
 最初に言葉をかけられたとき、度肝を抜かれた。降り掛かる不条理と巻き起こる理不尽に精神ががたついていた私は、女性のなりをしているそれにしがみつくように触れた。そうしたら、彫刻だと思っていたものが口を利いたのだ。口振りが外見に似合わない蓮っ葉さで、声質が予想外にハスキーだったために、どこから聞こえたのか何度も頭を振ることになった。
「起こしてしまいましたか」
「 i が眠るときは月が眠るとき」
「詩人ですね」
「お前は赤ん坊のようだな」
「それは、アークが母親代わりになってくれるということかい」
 彼女のことはアークと呼んでいる。アーキテクトゴーレム01と名乗った彼女に付けた綽名だ。「それではアーキテクトゴーレムすべてがアークとなってしまう」と言っていたが、私は彼女以外のアーキテクトゴーレムを知らないし、知ったとしてもアークとは呼ばないだろう。
「人間が i の親だ。卵が鶏に成長するように」
「そこは『鶏が卵を産むように』だろう」
「それはエラー。常に卵が先にある。人間が神を創ったのと同じこと」
「アーク、君の発言は兎の跳躍のようだ。論理が飛躍しているとは言わないが、頭の出来が芳しくない私にもわかるように話してくれないか」
「アルゴリズムのサンプル周期を短く採ればいいのか。処理を実行する。
 卵が成長して鶏になる。人間が製作してアーキテクトゴーレムが完成する。人間が想像することによって神が生まれる。これらは同じ流れの中にある。ここまでの転送で致命的なノイズはないか」
「いや、私はその流れの矢印方向に悩むんだ。人間がアークを作ったのはわかるよ。でも、鶏は卵を産むし、神が人間を創造したとされている。つまり双頭の矢印、逆もあるのではないかと考えてしまう。その内実を知っているから命題として名高い『鶏が先か卵が先か』に喩えたんじゃないのか」
「チューニングテストだ。知識量・思考内容・理解度にどれほど開きがあるのか確認している」
「アークにテストされているのか。私なんかを人間の水準だと思ってはいけないぞ」
「安全性を見込んで性能を低く見積もることはあってもいいが、余計な卑下は相手を不快にするぞ、エージェントリーダ」
「久しぶりの皮肉だな。怒ってるのか」
 心なしか、声が上擦っているように聞こえた。聞こえただけだろう。
「『感情を表現することに意味はない』と、親は i に入力した」
 この場合の親とは、人類全体にかかるものではなく、アークを生んだ科学者ということだろう。公理を重んじ定理を発見する科学者らしいといえば、らしい。しかし、ならばなぜアークをこのような形にしたのだろう。話すことができる能力も矛盾だと感じる。アークと会って、いちばんの疑念がそれだ。
 アーキテクトゴーレムの目的は集合知。人の思念は時空を飛び交うものであり、それを収集・保持・分類するために製作された。半径五千キロメートル内を通過した思念はすべて採取される。その範囲は、月をまるごと覆う規模だ。ただし、いかに科学技術後期発展期を迎えたとされる現在においても“思念が空を飛ぶ”なんてのは超自然の神秘学でしかなく、科学の分野ではない。奇論でしかない論理を基礎にすえ、本当に情報を蓄積する機械を作りおおせてしまうなど現在の科学力の常識を逸脱している。そんなものはオーパーツ──Out Of Place ARTifactS──、水晶髑髏や恐竜土偶の一種だ。
 アークからアーキテクトゴーレムの機能を聞いていたが、その製作者についてはいつ聞いても不明瞭な答えしか返ってこなかった。隠している。アークが、というよりは製作者が自らに関する情報を引き出されないようにロックしていると見るのが正しいだろう。
「おかしくないか、アーク。君のその姿はなんのためにあると思っているんだ。情報をキャッチするだけならば、もっと適したフォルムがあるはずだ。君は明らかに人間と相対するように設計されている」
「個々人のデータも必要。ダイアログ形式をとることで必要なデータを集中的に取得することが可能になる。リーダ、君からも取得している」
「建前を訥々と述べるのは、とても人間らしい行為だぞ」
「人間的であることを感じるのなら、それはそうプログラムされているから」
「それはエラーだ。君の親は、君がどう判断しようとそれに支障がないようにさまざまな思考をカバーする人工知能を積んだ。人間的に振舞うように考えたのは君だ。製作者も予感していたのではないか、君が人間であろうとすることを」
 私は、車椅子から降りる。
「なにをしようとしている。やめろ、アーカイブス・ハップル師団団長」
 車椅子を掴み、岩盤を殴りつける。
 肢を失った代わりに握力は鍛えられた。筋繊維が衰えがちな月面であっても、地球の人間の握力ぐらいはある。肢のない私の体重は60キログラム弱。月面では10キログラム重にもならない。両腕だけで全身を支えるなど造作もないことだ。
「元・リーダ。元・師団団長だ。間違えるなよ」
 またしても肢を失う羽目になるとは因果なものだ。二年の付き合いはこれで破局。伴侶とも思える存在の犠牲を払ってまでも、欠片ひとつこぼさない岩盤が憎い。
 無常の音だけが虚しく木霊する。
「無駄だ。意味がない。わからないのか」
「けっこう、値が張ったんだがな。この車椅子」
 削岩機代わりの機材を用意することは容易だったろう。ダイナマイトなど、爆発物を手に入れることもできた。しかしそれらでは持ち込む手段がない。これがサスペンス映画だったなら、いかにもな車椅子に仕掛けを施して、何食わぬ顔で持ち物検査をクリアするだろう。現実は厳しい。クロスワイズエレベータは車椅子の中だろうと見通し、危険物の持ち込みには機械的にアラームを上げる。
「なにがしたい。物に当たるのはやめろ。 i が気に入らないなら詫びる。許せ」
「無駄だとか無意味だとか、そういうものに価値を見出すのが人間なんだよ」
「だからなんなんだ。サイコパスのほうがよほど理論立っている」
「アークに賭けているんだ。私は君を信じている」
「意味がわからない。なにがしたいんだ。ハップル、答えろ」
「おや、人間の思考を読み解くのが君の存在理由なのに、それができないと言うのかい。まともに動かさないから錆びついているんじゃないのか」
 私が手にしているものは、錆びつくどころか半壊している。
「私は君の心に訴えている」
 ぴしっ
 硬いなにかに亀裂が入った。それは岩盤だったかもしれないし、アークの閉ざされた心だったかもしれない。
「ここは地下なのだろう。君は、地上でなにが起こっているか知っているか。知らないはずはないな。その類稀な地獄耳を生やしているのなら、阿鼻叫喚を聞いただろう。あっけなく肢が吹き飛んだときの、私の情けない声を聞いたか。爆発に煽られてボールのように弾む人間の、声にならない叫びを聞いたか。もんどりうって倒れ、死に往く無念の悲痛を聞いているのか。故郷から遠く──あまりに遠く離れたこの地で──土だけの死の地で──ひとつまたひとつと死んで往く我々の声を聞いただろう。夢を追ってやってきながら、現実とのあまりのギャップに絶句しつつ、死なないために殺す状況に追われた、間抜けな私たちの想いをどんな笑い話に分類してくれたんだ」
 アークの表情に変化が見られる。発熱している。
「アークに同情を請うているんだ。応えてくれ、君には感情がある」
 岩盤に亀裂が奔る。
 前傾がさらに傾く。
 ケーブルが端子から外れ、あるいは引き千切られる。ひときわ大きな音がしたかと思えば、右腕が岩盤から引き抜かれている。まだ岩の形状を残している右手は、左手が埋まっている辺りに叩きつけられる。アークの両手が姿を見せた。あとは、時間にして一分もかからなかった。土煙から登場した全身はまさしく女性のそれであり、歳にすれば二十歳前後、均衡のとれた身体つき、身長は私より頭ひとつ低い。相変わらずの端正な顔。
「それで、なにをさせようと言うのだ。私のリーダ」







2008-10-12 16:00:52公開 / 作者:模造の冠を被ったお犬さま
■この作品の著作権は模造の冠を被ったお犬さまさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 人間と機械の対話を書きたかっただけです。
この作品に対する感想 - 昇順
ショート、と銘打ってあるので、これでおしまいなのでしょうか。私としては、やはりこのふたり(?)の今後の交際に、大いなる期待を抱いてしまうのですが。
主人公がエレベーターに向かうあたりから会話が始まるまでの、時制の『いれこ』構造には、初読時少々とまどいましたが、お犬様作品としては平易ですし、その後のふたりの会話などは、ちょっと涙が出そうになりました。ロマンチック。思わず絵柄を脳内演出してみたくなる対話です。
もしこの情景の地の文が、ブラッドベリのごとき叙情散文詩や、ロバート・F・ヤングのごとき甘いポピュラーソングの趣であったら、思わず座布団2枚を配っていたかも知れません。それがお犬様の意図と重なるかどうかは別として、狸的には、とても切なく美しい光景でした。
2008-10-12 21:30:40【★★★★☆】バニラダヌキ
拝読しました.対話の内容はよくわからなかったですが,雰囲気はよく出ていたと思います.1行目の文が,意味をとりにくかったです.読点の位置を調整するなどすると,よいかもしれません.また,「チューリングテスト」が正しいと思います.
2008-10-12 22:04:16【☆☆☆☆☆】一読者
こんにちは!読ませて頂きました♪
聞きなれない単語もいくつか出てきましたが話の流れの中で、なんとなく想像できて思ったより、すんなりと読めました。アーカイブスとっては、してやったりなのかなぁと、私のかってな思い込みですが、アークの岩盤の中に埋まってる部分を見たかったのではないかなと、自力で壊したりする事は出来ないと解っていたから、罠というか駆け引きによってアーク自信から出るように仕向けたのかなって。そういう伸るか反るかみたいのを楽しみました。最後の問いの答えがあるとすれば「もうない」かなと。その姿に新たな好奇心を持つかどうかは解らないですけどねwと多分、全然違うかなと思いつつも、かってに楽しませて頂きました。
では次回作も期待しています♪
2008-10-12 22:29:54【☆☆☆☆☆】羽堕
 望月の 欠けたることも なしと思へば

>バニラダヌキさん
 はい、ショートです。ショートが好きです。ケーキもショートが好きです。
 自制は、うやむやにしました。二度もエレベータに乗る描写をするには必要な緊張感を保てないので、現在と過去をシンクロさせました。もっとわかりやすく書く方法はあったかと思いますが、私の力が及びませんでした。
 バニラダヌキさんを泣く寸前まで追い込めたことは嬉しいです。あと一息。でも、「そっち方面でも攻められるのか」と勘違いしそうです。映像はとても意識しています。もう、存分に脳内演出してください。叙情的な地の文というのも、バニラダヌキさんでしたら書けるでしょうね。今回の試みは『そんな情緒溢れる内容を私が書くにはどうしたら佳いか』です。情緒溢れない私です。

>一読者さん
 一行目のセンテンスは確かに長く、瞬間的に捉えることはできないと思いますが、読点の位置はこれ以上動かせません。もしよろしければ、一読者さんの最適だと思う読点の位置を教えてください。
 チューニングテストはチューリングテストをもじって書きました。転送やノイズの単語同様、送受信に関する会話を行っています。

>羽堕さん
 専門用語のような言葉がアークの台詞からちらほら出てくることもありますが、物語に与える影響は雰囲気だけです。
 「自分の力ではどうしようもできないだろうな」とは、ハップルもかなり高い確率で見積もっていたと考えます。でも「もうない」って、ハップルどんだけえろいねん! えろえろじゃないですかハップルさん。
2008-10-12 23:54:21【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
こんばんわ、暴走翻訳機です。
なるほど、ハップルが歩んできた人生は悲劇ではなく喜劇だったのですね。私も、戦争や宗教上の争いなど、醜く滑稽なものにしか思えません。こうして、戦争などに対してを皮肉っているお犬様の作品が好きです。
望月の〜は、ハップルとアークが居る月と掛けているようで、お犬様のユーモアのセンスに感心するばかりです。藤原道長もビックリだ。
と、もうこんな時間なので、私も望月を眺めながら夢の世界へ飛び立ちましょうか。いずれ、月へ小旅行にいけると嬉しいですね。誰かロマンチックと〜め〜て♪
2008-10-13 01:26:03【☆☆☆☆☆】暴走翻訳機
あい.説明しにくいのですが.
「荒野を往くガンマンの長いコートが地を舐めるように、質感を伴う微細なざり……ざり……と響く音が耳を離れない。」これを次のように記号化してみます,「AがBするように,(Cと)Dする音が耳を離れない」.間違いないでしょうか...

A:ガンマンのコート(S
B:地を舐める(V
C:質感を伴う微細なざり……ざり……
D:響く(V
(Sは主語,Vは動詞)

1.Cの問題
A,B,Dの関係はよく読めば分かってきます.
しかし,「AがBするように(@)Dする」の間(@)にCがあるので,読者はそれぞれの関係を読み解くに苦労すると思うのです.Cが長いことも一因と考えられます.
たとえば,Cの「質感を伴う微細な」を削ることで,理解しやすくなると思います.
「質感」について,前文に「コートが地を舐める(ように)」とあるので,読者は物体がひきずられる様子を臨場感をもって想像できます.
また,「微細な」については,直後に「ざり……ざり……」と特徴的な表現(“ざりざり”でない点で)をなさっているのでそれだけでも十分効果的と思います.
したがって,「質感を伴う微細な」の一文を削っても支障は出ないと思います.このままではすこし説明が過剰なように感じます.

2.読点の問題
読者は,「AがBするように」とあったら,次に続く文を「(A)がDする」と予想します.ので,間に読点を入れると分かりにくい,と言いたかったですが,そうでもないようです.自信がなくなりました,すみません.

ただ,冒頭に,さらりと一読しただけでは意味のとり難い文があるのは,即効性が求められるショートショートにとって致命的ではないでしょうか.また,「ガンマン・荒野」などから読者が以降の物語にも西部劇の要素が,関係してくるのでは?と誤解してしまうのも問題だと思います.ショートショートをどこまで意識されているのか分かりませんが,冒頭の3行を省き,世界観の説明から入ったほうが,読者はとっつきやすいと感じます.以降の内容がむつかしいのであれですが(ショート*2を外したほうがいいのでは?).

チューニングテストはわかりませんでした.故意の誤字・もじりvs.誤字を読者が判別できないのは,なにか致命的と思いませんか?どうなんでしょう.
2008-10-13 01:58:43【☆☆☆☆☆】一読者
拝読いたしました。
冒頭から会話文の前までの描写、……個人的に、貴方様のこの書き方が私は好きです。
それと、この無常と無情の世界――そんなつもり無いかもしれませんが――ああ、好きな情景だ。砕けてしまいそうな、銀色の月世界だと思いました。
中盤まで読んだ時、ショートと分かっていたので残念でした。
次回作、お待ちしております。

2008-10-13 02:48:55【★★★★☆】ミノタウロス
 この世をば 憂き世とぞ思ふ 餅搗きの 欠けたる臼も 杵も重いわ

 こんにちは。「人間じゃないもの」を描いた結果として「人間」が描けている、という印象を受けました。SFにすることで、意図は成功なさったと思います。本領発揮? それとも世を欺く妥協? だけどとっても面白かったです。こういうの好きです。もっと長いのを読みたいです。長編に仕立て直したら小松左京みたいになりそう。もっとSF書いてくれないかなあ。

 冒頭は確かに「音」にかかる修飾語が多すぎて「頭が重い」悪文の典型だと思いますが、必ずしも悪文が悪いとは限らない場合もあると思うので、悩ましいところです。個人的にはOKの範囲ですが、一読者さんのおっしゃることも大いに頷けます。
 ただ、僕にはこれがショート・ショートだとは思えませんでした。「短い短編」ではありますまいか。ただの印象ですし、ジャンル論争をするつもりは毛頭無いのでここらでやめておきますけど。
2008-10-13 13:09:18【☆☆☆☆☆】中村ケイタロウ
おっと。忘れてました。ごめんなさい。
2008-10-13 13:09:49【★★★★☆】中村ケイタロウ
 「センスがある」と言われると、ここになにを書けばいいのかわからなくなる。

>暴走翻訳機さん
 なるほど、凄い裏読みですね。皮肉に皮肉を返して皮肉が皮肉を呼んで皮肉で皮肉を洗って、自分でもなにが皮肉なのかよくわかりません。
 私は未だに、空に浮かんでいるのは演劇で使うような張りぼての月なのではないかと疑っています。本当にアポロが月面着陸したのなら、ちゃんと月の兎を連れて帰ればよかったのに。交渉できなかったのだろうか。

>一読者さん
 となると、
【荒野を往くガンマンの長いコートが地を舐めるように、ざり……ざり……と響く音が耳を離れない】
 が最適ということですね。文章がすっきりしました。ご説明ありがとうございました。
 短い文章でありながら修飾語たっぷりの大長編のような情緒をもたせるにはどうしたらいいのか悩みました。【ガンマン・荒野】は後の【ゴールドラッシュもアメリカンドリームも】にかかってきます。【大航海時代・植民地】も、競争や戦争にかかってきます。自分の文章を分解するのは恥ずかしいですね。
 ショートであることはほとんど意識していません。もともとは今の二倍以上ある書き物でした。「このまま削り続ければ十枚以下になるかな」と思っていました。冒頭の三行を削ると、今度は大航海時代のヨーロッパが舞台だと思われるだけであまり違いがないのでは? ショートの分類を外すと、前作と逆のことが起きてしまうので必要だと判断しました。
 【チューニングテスト】は雰囲気作りだけの言葉ですし、わかる人だけに「ふっ」と笑ってもらえればよいと思っています。そういった遊びはこの書き物に限らずごろごろしているのですが、あまり指摘されないのでわかった上で納得されているのか、気付かれていないのか気になるところです。

>ミノタウロスさん
 よいのは会話文が始まるまで。【アベマ奇譚】のときにも似たことをいわれた覚えがあります。SFの設定を面白く書けるというのは重宝したい能力ですが、逆にいえば「会話でブち壊し」ってことですよね。もう、いっさい会話のないSFを書いてみようかな。
 情景を重要視して描きましたが、ここまで感じ入ってくれるとは思いませんでした。書こうと思えばもっと書けるだろうに、私の筆力不足が悔やまれます。

>中村ケイタロウさん
 確かに、兎にはちょっと重いかもしれません。
 人間が書けているとしたら、それはプログラムされているからです。もともともっと長い書き物で、この先もあったのですが、面白くなかったので削りました。各自で続きを補填してください。そのほうがきっと面白いものになります。
 冒頭に悪文がくるのは、私の気合が入りすぎているときです。「もっとリラックスして書けよ」と思います。
 ショートのことを調べてきました。どうやらオチという言葉に沿って、読み手の溜飲を落ちるまで下げていないといけないようですね。その点、この書き物は読後感まで引っ張ろうとしているのでショートではないのかもしれません(でも、短編って分類は登竜門にない)。
2008-10-13 14:28:06【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
2008-10-13 14:45:11【☆☆☆☆☆】Dr.アーム
 この子をば 担保にぞ入れむ 土地付きの 建てたる家も 無しと思へば

 こんにちは。
 いえいえ、僕としてはただ、「もっと長いSFを読みたい」と言いたかったつもりでした(文法が変だ)。必ずしもこの続きじゃなくてもいいんです。失礼ながら、向いていらっしゃると思うんだけどなあ、ひねった理屈をお書きになると不思議なムードがあるから。(それってミステリ向き、ということでもあるのかもしれないけど、以前申し上げたとおり僕は頭が散漫でミステリが苦手なので、SFがいいな)。それでは失敬。
2008-10-14 02:25:18【☆☆☆☆☆】中村ケイタロウ
 ベランダから月が見えません。

>Dr.アームさん
 ……読んで頂けたということでしょうか。ありがとうございます。

>中村ケイタロウさん
 その三十一文字にどんなツッコみを期待しているのでしょうか。お手上げです。
 読みたいと言って頂けるのは非常に光栄です。今現在も36章からなる超能力SFを書いていたり、続きものの侵略SFを書いていたり、続きものの時間SFを書いていたり、別のロボットSFを書いていたりするのですが、この書き物のような情緒はないと思います。できるだけバラバラなものを書こうとしています。
(中村さんはミステリも巧く書けそうだと言ってくださいますが、前作の二の舞が怖くてなかなか手が出ません)
2008-10-15 02:06:09【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
 中村ケイタロウさんの望月、面白いですね。道長もびっくり笑

 こんばんは☆モバイルで拝読してました。感想遅くなってごめんなさい。
 えっと、ショート・ショートじゃない、っていうのはあたしも思いました。短編っていうか、短い長編みたいな印象です。
 綺麗で退廃的な映像が浮かんできて、模造の冠を被ったお犬さまさんはこんな、魅せる文章も書くんだなぁ、って思いました。いつもの作品は、考えさせられることあれど、あまり情景が浮かんでくることは無かったんです。ちょっと意外でした。
 ここで終わり、っていうのも余韻が残って素敵ですね。今度はタイトルも文句無く好きです♪(ほんと、先日は失礼しました汗)
 それと、最初の一文の話なんですけど、「荒野を往くガンマンの長いコートが地を舐めるように」→「荒野を往くガンマンの長いコートが地を舐めるような」だと、心もちすっきりするような気がするんですけど、どうでしょうか。あ、でもそうすると「響く」があわないですね。うーん。すみません聞き流してください。

 次回作も楽しみにお待ちしてますね。
2008-10-15 21:16:48【★★★★☆】夢幻花 彩
 望月や ああ望月や 望月や

>夢幻花彩さん
 こんな魅せる文章も書きます。とてもとても暇で、やることもなく手空きのときには。彩さんの感想を見ると、まるで私は思想家みたいですね。
 タイトルも好きといっていただけて嬉しいです。好きに勝ることはないですが、嫌いであってもそう言っていただけたほうが私は嬉しいです。ためになります。
 【荒野を往くガンマンの長いコートが地を舐めるような、質感を伴う微細なざり……ざり……と響く音が耳を離れない】もいいですね。ただ、私は【ような】だと一文の繋がりが弱くなってしまうような気がします。繋がらないからこそすっきりするのでしょうけれど、ここは力任せにぐいぐい押し込みたいところです。
2008-10-16 01:14:29【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
>そういった遊びはこの書き物に限らずごろごろしているのですが、あまり指摘されないのでわかった上で納得されているのか、気付かれていないのか気になるところです。

「この書き物に限らず」とは,小説一般のこと,あるいは作者さまがお書きになった作品に限ってのこと,のどちらでせうか.後者と想像します.
前作でも先輩のセリフを誤字と誤読したような記憶がありますが,今作を読むにあたってわたしはその教訓を生かすことができなかったと思うのです.落ち度です.作者さまのような方が,誤字をするハズがないと(おそらく常連の多くの方が了解するところの前提と思います).
なので,みなさん,わかった上で納得されてると思います,それを遊びと理解されてる(おそらく).でも,その不安は想像つきます,ギャグが伝わっていないでスルーされてるのではないかという.3回目はないよう十分,注意したいと思っとります.
2008-10-17 05:13:23【☆☆☆☆☆】一読者
 夢の浮き橋 月の浮き舟

>一読者さん
 私が誤字を書くはずがないとは、ずいぶんとハードルを上げられたものだなあ。
 一読者さんの読解が私の意図とは違うところにあっても、それによって一読者さんが責められるところはどこにもありません。意図を伝えようとして伝わらないのは、私の心魂と技能が足りないからです。
 ギャグといえば、この書き物がひとつのギャグなのです。それがバレると、規約に抵触しそうになるので表立って言えませんが。一読者さんはいつも痒いところに感想をくれるので、私は自分で解説をして自滅していますね。
2008-10-18 14:04:06【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
計:16点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。