『私の部活動』作者:みやねこ / RfB/΂ - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約20.71枚
1話 さつき
 私の名前は仲元かずは。みんなから、「かずはちゃん」と呼ばれています。…ごめんなさい、今嘘つきました。普通に仲元ってよばれてます。
 好きなものは裏に暗証番号の書かれているクレジットカードです。みかけたらください。お願いします。
 嫌いなものは、ハンバーガーのピクルスです。あれさえなければハンバーガーは大好きです。
 好きな言葉は、冷静。いつも、この言葉の通りに行動してます。…はい、冷たいってよく言われます。
 嫌いな言葉は、1つ目が努力。2つ目がガンバル。
 
「ふぅ」
 高校生になって、新しい先生に自己紹介して、売り込んだ5月の事。私は、例年通りの5月病にかかっていた。
 ああ、空はあんなにも蒼いのに、どうして心はこんなに曇っているのだろう。
「おはよう、仲元。どうしたんだい、ため息なんかついて」
 って言ってくれる男子でもいれば、少しは日常が楽しくなると思うけど、あいにく男子とは無縁の生活です。自分の年齢=彼氏いない歴です。告白なんて夢のまた夢。ラブレター?なにそれおいしいの?
(あー。彼氏欲しいな。っていうか、ぼぅいふれんど欲しいな。友達からでいいのに。女友達ばっかり。それも悪くないけど、なんだか疲れちゃう。あー。彼氏彼氏)
 そんな私にある悪魔的なひらめきが。
(……あ、そうだ、こんな私でも、男子と会える機会が必ずある方法が一つあるじゃん。ずっとその存在を忘れてたけど、挑戦してみようかな)
 そう、その方法は、部活。
 部活動。それは、
「分類:名詞 意味:学生・生徒が始業前や放課後に行う運動部・文化部などのクラブ活動」
 …じゃなくて、青春を一言で表すのにちょうどいい名詞。ぴったり。しっくり。ジャストフィット。
(…そういえばうちの学校、どんな部活があったっけ?)
 かばんのそこ付近にある、「学校紹介」のパンフレットをひらいた。サッカー部、剣道部、野球部、陸上部など、いろんな部活の名前が書き連ねられてある。
(体育会系は除外。私暑いの嫌いだもん。文科系で何かないかなー)
 文化 とゴシック体で書かれた文字の下に、文芸部、映画部、茶道部、吹奏楽部、とこれまた多種多様な部活名が。その中で、ひときわ異彩を放っている部活があった。
(何これ…。本気?)
 その部活名は、長谷部。…はせべ、って読むんだよね?
(人名じゃない…っ!部長か何かかな?)
 人間というものは、一日の間なら、なかなか物事を忘れる事が出来ないようになっている。
(長谷部、長谷部…。う〜ん、気になる)
 
「ええ?!長谷部に入部?!」
「いけませんか?」
 放課後の職員室に、私は部活名と氏名住所を書いた入部届をもっていった(入部届はパンフについてました)。
 そう、結局入部しました。長谷部に。これで私は、今この時点で、長谷部員よ!
「いや、悪くないけど、まさか本当に入部するやつがいるとは…」
「では、これからいってみるので、場所を教えてください」
 本当に入る奴、ということは、私以外に生徒は居ないということだろう。つまりは、ハーレムも夢じゃないかも。
 先生、どうして焦るの?
「わ、わかった。北館の2階の、一番西の教室だ」
「ありがとうございます」
 先生が少し焦っていた気がするけど、気にしない。職員室を出るとき、視線を大スター並みに集めた気がするけど、これも気にしない。

 ふぅ。ここが、部室か。長谷部の、新たな高校ライフの、始まりの場所か。
 ドアに手をかけ、ガチャリ、とひいた。
 踏み出そうとしたそのとき、目の前を何かが下におちた。黒板消しだった。…まあ、通過儀礼というやつかもしれないので、無視する。
「こんにちは。新入部員の仲元です」
 冷静に、極めて冷静に。そして、深々とお辞儀をした。
 顔をあげると、3つの顔が見えた。男子二人、女子1人。男子は将棋をやっていた。片方はやさしげで、もう片方は眼鏡の似合うイケメンだ。女子は、窓辺で本を読んでいた。長い黒髪の、クールな人だ。どこかでみた構図だけど、恐らく気のせいだろう。女子が居るのが気になるけど、競争率は低いから、一安心。
 男子は、二人とも“超”がつくほどイケメンだった。…美化してないです。男に飢えてるからでもないです。
「新入部員?!あんた本気?本気じゃないなら、今すぐ帰りなさい」
 真っ先に口を開いたのは、女子部員のほうだった。私より美人だった。胸も大きい。…はい、悔しいです。ええ悔しいですとも。
「まあまあ。退部なんかいつでもできるんだから」
「そうですよ。…僕は3年の杉縄昌一だよ。よろしく」
 まず優しげなほうが自己紹介をした。優男、ってこんな感じだろうか?
「それはそうだけど…。ま、本人の自由だしね。私は3年の桐村あやか。よろしくね。困った事があったら、相談だけはしてあげる」
 にっこりと笑った。…悔しい。こんなに笑顔とクールを併せ持つ人間が居るなんて。
「僕が部長の湯本譲治だ。君、名前は?」
 眼鏡をかけた賢そうな最後の一人が名乗った。あだ名決定。メガネ先輩。私の中だけだからいいよね!
「私、仲元かずはといいます。よろしくおねがいします」
 軽く会釈すると、みんな返してくれた。
「…ところで、この部は何する部活ですか?」
 自己紹介を手早く済ませ、一番気になっていたことを聞くと、部室がしんと静まりかえった。えっ?何?地雷?
「…聞きたい?」
 桐村先輩が小さな声で聞いた。目つきが鋭い。
「非常に」
 ディ・モールト。
「じゃあ、教えてあげる。この部活はお花見の場所取りから人に言えない仕事まで受け持つ、なんでもありな部活なの」
「嘘ですよね」
「ばれたか」
 てへ、っと下を出し、頭をかく。
「本当は何する部活なんですか」
「なんでもあり、ってのは本当よ。登山もするし、バンドだってやる。まあ、気分しだいだけど」
「そうなんですか…。…で、部活の名前の由来はなんですか?」
 桐村先輩の目が緩んだ。
「初代部長の名前。…もしかして、名前で入ったの?」
 再び鋭く。ああ、もう。
「…いえいえ!とんでもない!気になったから入…じゃなくて、えっと、えっと」
 そういえば私、なんで入ろうと思ったんだろう。なんか、こう、魅力を感じたのよね。
「…いいのよ。私もなんではいったかわかんないんだから。こう、魅力、っていうのかな」
 …面倒くさい。
「さて、終わったか?終わったなら、歓迎会でもするか」
 将棋を指していたメガネ先輩がゆらりと立ち上がった。
 杉縄先輩と桐村先輩がメガネ先輩のほうを向いた。頭に“?”マークがついている。
「どうした皆。歓迎会だぞ」
 皆無言。ていうか、唖然。
「…ああ、お金か。全部私持ちだ。安心しろ」
「あ、いや、そうじゃなくて」
 杉縄先輩が疑問符を投げかける。
「歓迎会って、なんですか?具体的に、何するんですか?」
 問題はそこじゃないと思う。
「なんだ、そんな事か。…そうだな、焼き鳥でいいか。…君、鶏肉は好」
「嫌いじゃないです」
 間髪いれずに答える。鶏肉は、コラーゲンがたくさんだからね。それに、さりげなく謙虚さをかもしだした私の発言グッジョブ。
「なら決まりだな。…杉縄、コンロ持ってきてくれ」
 了解、と小さく呟いた。
「そうじゃなくて!」
 いままで黙っていた桐村先輩が勢いよく立ち上がった。
「えっと…なんで焼き鳥?」
「嫌いか?」
「違うわ。えっと、…何かおかしくない?」
「どこがおかしいんだ。…杉縄、早く」
 杉縄先輩がドアを開けて出て行った。黒板消しをまたいでいった。…優雅。
「おかしい。やっぱりおかしい。…そうよ!」
「なにか言い訳でも見つかったか?」
「常識的に考えて…じゃなくて、校内じゃない?校内に火気の類や銃器の類は持ち込み禁止じゃないの」
 銃器持ち込むヤツがいたのか…。
「…そうだったっけ」
「この部の第1条!校則は破らない!」
 鬼の首を取ったように叫んでいる。でも、怖くない。
「……」
「わかったら、とっとと杉縄を…」
 その時。部室のドアが、ガチャリと開いた。
「ただいま」
 手には、大き目のコンロが。何処からくすねてきたのかは知らないが、新品のようだ。
「ちょうどよかった」
 メガネ先輩が、眼鏡を光らせながら杉縄先輩のほうを向いた。杉縄先輩は、さわやかな笑顔をたたえている。
「中止になったから。焼き鳥」
 桐村先輩が、続けた。
 がたん、と何かが地面に落ちる音がした。たぶん、金属質の硬い物体だろう。
 軽く頭を下げておいた。顔を見ないようにして。


2話 みなつき
 6月。1年の半分。ジューンブライド。梅雨。夏服への衣替え。

 英語の授業を適当に受けていると、右方向45度辺りから小声で話す声が聞こえた。最近女子の間で話題の“学校の怪談”の話のようだった。
(怪談なんて、小学生までで充分でしょ。それを高校生にもなって…)
「でね、昨日私マユミと学校来たのよ」
「本当?!で、どうだった」
 犯罪ですね。不法侵入で逮捕ですよそこのあなた。
(夜の学校か…。私は音楽室とか体育館より、テスト作ってる先生の机に直行するけどなぁ)
 結局聞き耳を立てていた。…気になるじゃない。
「怪談って、7つあるじゃない。そのうち5つが零時丁度に起こる物で、残りは丑三つ時に起こるらしいのよね」
「じゃあ、全部確認できてないのね?」
「そう。だから、“零時丁度に音楽室のベートーヴェンの両目が縦横無尽に動きまわる”と、“丑三つ時に音楽室のスリッパの色が七色に変色する”だけ確かめたの」
「ふんふん。で?で?」
「両方本当みたい。さながらカメレオンのようだったわ」
(まじすか。え?真実?怪談が?)
「すごーい」
 何が凄いんだ。
「でしょ。あとは、“零時丁度に校長室の前にある水槽の水が3リットル前後で増えたり減ったりする”と、“午前零時に東館4階の廊下で約50人くらいのテケテケがほふく全身で鬼ごっこをしている”と…あとなんだっけ?」
「知らないの?“零時丁度に図書室の黒板にそれなりに難しい漢字が書かれる(例)蝙蝠”と、“丑三つ時に校庭に首の無い少女がコサックダンスを踊っている”よ」
「6つだけ?」
「何も知らないのね。そうよ、この学校の怪談は6つなのよ」
(微妙な怪談ばっかり…。全部本当だとしたら発見した人は只者じゃないわね。まあ半分くらい嘘だと思うけど。…興味が出てきたわ。先輩達に話したらなんていうかな。…6つ目怖いなおい)

 退屈この上ない授業が終わり、放課後。
「こんちわー」
 がちゃりと部室のドアを開け、中に入った。黒板消しトラップは仕掛けられていなかった。なので私が代わりに仕掛けておいた。
 黒板消しトラップは、本当に相手を陥れるものでなく、通過儀礼という物らしい。
 部室の中には、杉縄先輩のみが窓際の椅子に腰掛けていた。目は閉じられている。おそらく寝ているだろう。
「こんにちわー」
 部室のドアを開け、私を除いた唯一の女子部員・桐村先輩が顔を出した。綺麗、というよりはかわいい、という雰囲気を出している。そしてその“かわいい”顔の上に、黒板消しが落ちた。
「うわっ。ごほっ」
「大丈夫ですか先輩」
「大丈夫だけど、棒読みで心配しないで」
「善処します」
 長い黒髪が一部白く染まった。
「もう。不覚だったわ」
「そうですよ。頭の上にこう、ストーン、って、大成功の鑑でしたよ」
「……もしかしてあなたが仕掛けたの?」
「否定はしません」
 そのとき、ドアが開けられ、最後の部員にして部長の、メガネ先輩(湯本先輩)が入ってきた。
「こんにちは」
「ああ、こんにちは」
 丁度杉縄先輩が起きた。うーん、と伸びをしてから挨拶をした。
「さて、今回何かやりたい事とかあるひとは」
 メガネ先輩が皆に聞いた。 
 はい、と私は手をあげた。
「はい、仲元君。20字程度で簡潔に述べなさい。ただしドイツ語で」
「無理です。私は日本語とある程度の英語しか喋れません」
「じゃあ日本語でいいです」
「はい。…聞いた話ですが、この学校に怪談があるらしいです。なので、皆で検証してみたいと思います」
「怪談?そんなの、聞いたことも無いわよ」
「最近女子の間で人気独占中なんです。本当だったら面白いじゃないですか」
「では聞くが、その怪談の内容をこれまた20字程度で簡潔に述べなさい。もちろんドイツ語で」
 メガネ先輩の要求を聞き流し、日本語で説明した。
「6つなの?」
「らしいです。普通7つだと思うんですけどね」
 そこで私は、あることに気がついた。
「杉縄先輩?どうしたんですか?」
 いつもなら必ず何か言うはずの杉縄先輩が、ずっと下を向いて押し黙っている。
「……頼みがあるんだ」
 重々しく開かれた口からは、そう聞こえた。
「私に出来る事なら」
「できれば誰にも話さないで欲しいんだけど、いいかな」
「いいですよ」
「ああ、わかった」
 私とメガネ先輩が了承した。
「僕、怖いの駄目なんだ…」
 ……?
「ネタ…ですよね?」
「いや、真剣だ」
「良い事聞いちゃったぁ」
 桐村先輩がうれしそうに飛び跳ねる。
「だからこの話は無かった事に……」
「そうか、反対意見があるなら仕方ない。多数決で決めようか」
「ええっ?!負けるって絶対!」
 杉縄先輩が全力で拒否する。
「何を言う。この部活は民主主義を大切にする部活なんだ」
「そんなのいつ決めたんだよぅ」
「まあそれはおいといて、多数決だ」
「人の話を聞けー!」
「怪談検証作戦に、賛成の人」
「はい」
「はい」
 私と桐村先輩が元気よく手を挙げる。
「おい杉縄?」
 杉村先輩は窓の外、遠く空を見ていた。
 そしてそのあと午後11時にもう一度私たちは学校の校門前に集合した。杉縄先輩は逃げなかった。
「押さないでください」
 夜の学校。なぜ恐ろしいのだろう。怖いのだろう。不気味なのだろう。
 それは、昼間と違い、静かだからかも知れない。暗いからかもしれない。目に見えない“何か”がいるからかもしれない。
 その中で、私たちはなぜか一列、―――私、メガネ先輩、杉縄先輩、桐村先輩の順で並んで歩いていた。窓の外ではじとじとした雨。肝試しには絶好の天候だ。
「押してないぞ」
「押しましたよう」
「押してない」
「取り込み中のところ悪いけど、まず何処に向かうの?」
「6つ中2つはその少女たちが確かめてくれたらしいから、」
「僕達は何もせず帰りましょうか」
「残り4つを2人で分けて確かめようか」
「スルーかよ」
「それが効率的ね。じゃんけんで決めよう」
「では行くぞ、じゃんけん、ほい」
「ほい」
「ぽん」
「ぽん」
 私 ぱー。
 メガネ先輩 ぐー。
 桐村先輩 ぐー。
 杉縄先輩 ぱー。
「きれいにわかれましたね」
「ではこれで、そこの角から別行動だ。くれぐれも、警備員や宿直の先生方、その他の不審者等に見つからぬようにな。もし見つかった場合、僕達は君達を見捨てて逃げる。もし僕達が見つかった場合も、君たちはそうするように」
「了解です」
「了解よ」
「帰って良いかな……?」

 私たちは図書室と校庭を受け持つ事になった。あの二人はどうやら恐怖に耐性があるようで、別行動をとるらしい。尊敬ー。
「失礼しまーす」
 そういって私は図書室の扉を開けた。時刻は午後11時55分。目的の時間まであと5分だ。
 図書室の中は梅雨時の季節だからか空気がいくらか湿っていた。本棚に並べられた無数の本が、一斉にこちらを向いた…ような気がした。
「誰かいますかー」
 いたら困るが、一応聞いておく。
「仲村、今何時?」
「11時56…今57分になりました」
「なあ、このまま帰らない?」
「怖いのですか?」
「うん」
「恐怖を知り、打ち勝ってこそ勇気なんですよ。逃げてばかりでは勇気になりません」
「勇気なんて要らないよ…」
 そのとき、黒板のほうからカツカツという音が聞こえた。
 一瞬にして背筋が凍りつく。首が動かせない。
 勇気は私も足りないみたいだ。
 そんな私に関係なく、カツカツという音は続く。
 そして1分ほどでその音は鳴り止んだ。その間、私はずっと目を閉じていた。
「おい、仲村」
「なんでしょうか?」
「黒板…見てみろ」
「え?」
 先輩が指し示す黒板には、

 Q1 蝙蝠
 Q2 絨毯
 Q3 澱粉
 Q4 詔
 Q5 上総
 Q6 主税頭
 Q7 糒

 答えは五分後に!

 と書かれていた。
「先輩、読めますか?私Q3までしか解りません」
「そういうときは、再変換してみるといいよ」
「私には無理です」
「Q1こうもり、Q2じゅうたん、Q3でんぷん、Q4みことのり、Q5かずさ、Q6ちからのかみ。Q7、ほしいい。Q6、Q7は難問だね」
「すっごーい。尊敬しちゃいますー」
「頼むから棒読みでほめるのはよしてくれ」
「はい。…次行きましょうか」
 なんだかノリノリになってきた?
 
 真夜中の校庭なんて、全く怖くない。そう思えるのは、体験してみてから言って欲しい。周りに何も無いというのは、案外怖いものだ。
「丑三つ時までどうやって過ごしましょうか」
「百物語でも」
「本気で何か出てきそうなんでやめましょうよ」
「そうだね、ろうそくもないしね」
 そういう問題じゃないが。
 しかし、時間というものは気がつくと立っている。気付くと午前1時58分だった。
「丑三つ時って、午前2時ですよね」
「そうだけど、何も起こらないな」
「帰りましょうか」
「そうしようそうしようそれがいいそれがいい」
 校門前には二人の先輩たちがすでに到着していた。
「やあどうだったかね諸君。こちらは二人とも起こったよ」
「校庭の方は起こりませんでしたが、図書室の方は起こりました」
「ま、噂なんてそんなものよね。5つも起こったことに驚くわ」
「本当ですね」
 結局、それだけで今日の作戦は終了した。
 筈だった。

 次の日。授業終了後の部活。
「こんにちは」
 いつも通りにドアを開け、いつもの場所にかばんを置く。
「やあ」
 部室には杉縄先輩が眠らず机についていた。詰め将棋をしていた。
「昨日は怖かったですね」
「? 何の事だい?」
「何の事って、肝試しをした話ですよぅ」
「初耳だな」
 あまりに怖すぎて、記憶から消してしまったのだろうか。
「じゃあ先輩、主税に頭、とかいてなんて読みますか?」
「国語は苦手だ」
 おかしい。じゃあ糒では、と聞こうとしたとき、メガネ先輩が入室した。
「やあ諸君」
「こんにちは」
「こんにちは」
「先輩、昨日って」
「昨日?何かしたかな?」
 この人も覚えていない…!
「もしかして、君の勘違いかも知れないよ?」
「何の話をしてるんだ」
「昨日、皆で肝試ししたって言うんですが、僕は記憶にないです」
「昨日はそんな事はしていない筈だが…」
 もしかして、本当に勘違い…?
「勘違い、じゃないか?」
「そ、そうかもしれませんね、あはは」
 何故。何故覚えていないのだろう。日付は確かに進んでいる。
 勘違いだとしたら、私は昨日の夜十二時ごろに何処にいたんだろう。
 怪談は、本当にあるのかもしれない。
 触れてはいけないのかもしれない。
 探ってはいけないのかもしれない。
 窓の外では、昨晩と同じような雨が降り続いていた。
2008-06-21 20:15:13公開 / 作者:みやねこ
■この作品の著作権はみやねこさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
がんばって書いてみました。
長谷部 に故意はありません。

1話 とにかく思いついたこと全部書いてみました

2話 季節含めて好きなもの書いてみました
この作品に対する感想 - 昇順
 うーん、どうなるかさっぱりわかりませんね。
 それが狙いなら問題ないのですが……。
 とりあえず利用規約を。
『…』はどこでも『……』とふたつつなげてつかいます。
「会話文でのはてなのあとは? 一文字開けます。びっくりも同じです! 一文字開けます」
2008-06-07 08:01:21【☆☆☆☆☆】翼
 こんにちは。はじめまして。
 こういうの、嫌いじゃないです(パクリ)。
 変な部活とかサークルとか、楽しいですよね。個人的には、中学や高校よりも大学を舞台にしたほうが、自由度が大きくて広げやすくて好きですが。
 ひとつ意見を申し上げますと、こういう喜劇的要素の強い作品の場合、スピードやテンポが命だと思いますので、会話や描写のスピード感を、遅くしたり早くしたり、そういう手綱加減が大事だと思います。今のままでは、全体に早すぎてさーっと流れていってしまう感じがするので、溜めるところや引っ張るところと、落とすところにメリハリをつけてみられるといいのではないでしょうか。
 それとあとひとつ。「嫌いじゃないです」という言い方って謙虚でしょうか? ぼくには、むしろなんか偉そうに聞こえるんです。新入りの後輩がこんな言い方したら、ぼくだったらムカっとしますよ。
 では。失礼いたしました。


2008-06-08 09:46:15【☆☆☆☆☆】中村ケイタロウ
作品を読ませていただきました。怪しげなクラブに入って主人公が右往左往する物語はプロアマ問わず結構あるので、どれだけ個性的で魅力ある長谷部を作るかを楽しみにしています。長谷部メンバーが個性強いだけに仲元がアンカー役になると思うのですが、いまの段階では仲元の個性が弱く感じられました。では、次回更新を期待しています。
2008-06-08 22:55:07【☆☆☆☆☆】甘木
こんにちはm(._.*)m読ませて頂きました。
なんというかシュール?といのかな、面白かったです♪基本、私は笑いが
大好きなのです!今回は『長谷部の、新たな高校ライフの、始まりの場所か』
って所で結構、笑いましたw一つ気になったのは、一人称なのに途中で( )
を使ってたのですが、必要ないかなと思いました。
では続き楽しみしています(・ω・)ノ
2008-06-25 16:19:19【☆☆☆☆☆】羽堕
[簡易感想]もう少し細かい描写が欲しかったです。
2008-06-29 16:03:14【☆☆☆☆☆】甘木
はじめまして。作品、楽しく読ませていただきました。
気づいたら読み終わっていた、という感じで次回更新を楽しみにしています。
ただ、一つだけわからなかったところがあるのですが、怪談の話は仲元かずはの夢のようなもの? もしくは、怪談を見たことが七つ目の怪談だった。とか、なのでしょうか?
自分の理解力が低いせいですが、少し気になりました。それでは、失礼します。
2008-07-09 21:09:40【☆☆☆☆☆】アンバラ
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。