『ゴーストバスター部、本日の会議』作者:小氏 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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大桜学園高等部 ゴーストバスター部 第七回会議



 大桜学園西校舎――つまり高等部の校舎にある「生徒指導室」は、ゴーストバスター部(通称:バスタ部)の部室である。
 八畳ほどの狭い教室には長机が二つあり、パイプ椅子が四脚ある。そしてその四つの席は、ゴーストバスター部のメンバーで埋まっている。

 部長:神崎蒼太。三年生。バスタ部最強の戦士にして、メガネのクールガイ。
 副部長:森野イズミ。二年生。背が低い。
 書記:阿倍琴音。一年生。苦手なものはカエル。
 隊長:湯河原次郎。一年生。実は長男。

「それでは、会議をはじめよう」
 神崎が切り出した。
「イズミくん、こたびの議題を」
「はい」
 イズミが立ちあがる。小学生に間違われるというだけあって、その身長はなかなかの低さだ。ちなみに学園全体に調査を行ったところ、彼女に思いを寄せている男子生徒は、実にその70%にも達した。ちなみにこの調査結果は、「日本人男性の98%がロリコンである」という次郎の持論と多少ながらも矛盾するため、調査を行った次郎自身が闇に葬ったのであった。
「本日の議題は、『ろくろ首について』です」
「私から、よろしいですか?」
 琴音が神崎の方を見ながら挙手する。
「許可しよう」
「ろくろ首は、何のために首が伸びるようになったのでしょうか?」
「フム、面白いな。次郎くん、君はどう見る?」
 いきなり振られ、次郎はビクッと反応する。その際に膝が長机に当たり、動いた長机は神崎の腹部に当たった。
「ぐはっ」
「そうですね……例えば同じように長い首のモノ――キリンは、木の高い位置にある葉を食べるために首が長くなったといいますから……おそらくはろくろ首も、高いところにある『なにか』を『どうにか』するために首が長くなったのではないかと」
 イズミが感嘆のため息をもらす。 
「流石だね。次郎くん。動物博士の異名は伊達じゃないね」
「恐縮です」
「琴音ちゃんはどう思う?」
「私もイズミ先輩と同じ意見です」
「え?私と?」
「はい。伊達じゃないと思います」
「あ、そっちかあ……ところで、神崎先輩はどう睨んでるんですか?」
「私かね……私は……ついさっき気がついたのだが、人間、とっさに大きなダメージを受けた場合、『ぐはっ』くらいしか言えないのではないだろうか」
 全員キョトーンとしている。
 そこで、なぜなにガールこと琴音が、停滞した空気を破って質問した。
「先輩、それってどういうことですか?」
「ん、つまり、かの板垣退助氏は暴漢に刺された際、『板垣死すとも、自由は死せず』などと気の利いた言葉は言えず、実際は『ぐはっ』くらいしか言えなかったのではないか……そういうことさ」
 後輩たちは驚愕した。神崎が優秀な男であることはわかっていたが、まさか歴史に潜む矛盾点すらも発見してしまうとは。しかも、ろくろ首について話しているときに。
 世紀の発見に、琴音は興奮気味に発言する。
「では、『板垣死すとも、自由は死せず』という名台詞は、後の時代の歴史家がでっち上げたものだということですね?」
 神崎はあくまで冷静だ。
「いや、それよりも、板垣氏の同志たちが、彼を神格化し、その影響力を死してなお強めるために偽造し、流布したと考えるほうが妥当だろう。自由民権運動の英雄の死も、その気高い目的まえでは単なるプロパガンダに過ぎなかったというわけさ」
 イズミなどは、最早うっとりとした眼で神崎を見つめている。
「先輩……好きです……」
 なんか告白までしちゃってる。
 カオスだ。
 わりと始めのほうから気づいていた方もいるかと思うが、この空間はカオスだ。
 そんなカオスを破るべく、『上げ足キラー』の異名も持つ次郎が、満を持して口を開いた。
「でも……即死じゃなかったら、失血死するまでの間に、それくらいは言えたんじゃないんですか?」
「………………」
「………………」
「流石だね。次郎くん。動物博士の異名は伊達じゃないね」
 あ、そっちかあ……。

「恐縮です」
2007-06-02 02:03:52公開 / 作者:小氏
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■作者からのメッセージ
短い話を書いてみたくて書きました。
批評しづらい作風になってしまったかもしれませんが、どうぞ可愛がってやってください。
この作品に対する感想 - 昇順
全体的なゆるゆる感が大好きですね。本当にゴーストハントしてるのかこいつら、とも思いますが、それすらもネタだと思うので。
ところで、これは続き物でしょうか? 「短い話」と仰ってますし、連載ならこの長さは違反らしいので、短編なのでしょうね。
それ前提で言わせて貰うなら、もっと長く書いて欲しかったですね。もっとダラダラ書いて、ゆるさをもっと楽しませて欲しいです。神崎のdon't read airやイズミのロリっぷりは不完全燃焼な感じですし、琴音の「カエルが苦手」が生きていませんし、湯河原の「実は長男」が何に対する逆説なのかも知りたいですし。
ちなみに、ろくろ首の件ですが、中国の飛頭蛮という頭が体から離れて浮遊する妖怪が由来だと言われています。昼間は普通の女性なのですが、夜になると首を伸ばして行灯の油や人間の生気を食するそうです。恐らく、高いところにある行灯まで届くように長くなったのでしょうね。
更にちなみに、板垣の件の話ですが、確かに後の創作だという説もありますね。こういう事って少なくないんですよね。源義経が自害した後に「国外に逃げてチンギス・ハンになった」なんて言われたりしましたし、川中島での武田信玄と上杉謙信の一騎打ちは創作だったとする説もありますし、明智光秀は山崎の戦いから逃げ延びて僧になったという話もどこかで聞いた気がしますし。
無駄にトリビアを撒き散らしたところで失礼させて頂きます。
2007-06-02 12:58:25【☆☆☆☆☆】月明 光
月明 光さん>ご意見、ご指南の方、今後の創作にきちんと反映させていただきます。
ちなみに次郎の「実は長男」というのは、「次郎」という名前が次男っぽいということに対する逆説だったりします。
それと、貴重な情報をありがとうございます。
2007-06-02 21:33:20【☆☆☆☆☆】小氏
作品拝読させていただきました。
各キャラの設定を活かしきれずに終わった感が否めませんでした。カエル苦手だとか、そういったことがただの紹介で終わってしまい、少し寂しいです。もう少し書いてもよかったのではないか、と。キャラの魅力を引き出せていないんじゃないかなと思いました。
短いせいなのもあるとは思いますが、もう少し一人一人のキャラを大事にしてあげてほしかったです。

ただ、部長のキャラは好きですw部長だけは僕の中でキャラとして確立してましたw
次回作も頑張ってください。失礼します
2007-06-03 02:26:12【☆☆☆☆☆】紅い蝶
赤い蝶さん>ご指南ありがとうございます。「キャラ設定の意味がわからん」というのも一つのギャグのつもりでしたが、なるほど、そうだとしてもキャラを確立させることはやはり不可欠なのですね。
大変参考になりました。
2007-06-03 20:30:30【☆☆☆☆☆】小氏
作品を読ませていただきました。ショートすぎる感がありました。登場人物の魅力が伝わる前に終わってしまったと言う感じです。もう少し長く書いて混乱の様相をテンポよく書いて欲しかったです。現状ではカオスらしさが弱かったですね。戯れ言を失礼しました。では、次回作品を期待しています。
2007-06-04 00:23:17【☆☆☆☆☆】甘木
甘木さん>ご意見ありがとうございます。
もっと強力なカオスを生み出せるよう頑張ります。
ショートショートといえど、自分の今の力量でキャラの魅力を引き出し、うまい話をつくるには、ある程度の長さは必要になってくるのだなと思いました。勉強になります。
2007-06-04 00:37:19【☆☆☆☆☆】小氏
ある意味カオスだったと思います。
次郎の件ですが、命名の由来などを辿れば、「実は長男」というのも普通に納得がいきます。
今は少なくなりましたが、昔は生まれた順番に、一郎、二(次)郎(もしくは郎の代わりに太郎)という具合に命名してましたから。今は、浩一、浩二のように最後に付ける方が一般的なのかもしれません。
字も兄弟の順番をあらわす漢字を一文字目に使う命名の仕方がありましたし。
(↑これは関係ないですね。失礼しました)
ただ、せっかく登場人物の設定があるんですから、カエルが嫌いなどそういった要素を少し触れてほしかったな、と思いました。
2007-06-07 21:02:22【☆☆☆☆☆】湊瓏瑛
湊瓏瑛さん>ご意見ありがとうございます。
他の皆さんも申されますように、やはりカエルも活かさないとですね。
大桜学園の他の部活の話も書こうと思っているので、その中で活かそうと企んでいます。
2007-06-07 23:36:59【☆☆☆☆☆】小氏
計:0点
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