『猫と死と、コーラと煙草とシートの焦げ穴』作者:村瀬悠人 / AE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
猫の死。近所の野良猫の死。
全角3736文字
容量7472 bytes
原稿用紙約9.34枚




 退屈で平穏な片側一車線の県道を僕は自分の車で走っていた。平成七年式スターレット、鮮やかな緑色のボディはクリア塗装もはげ始めていて、いかにもみすぼらしかった。最後に洗車したのがいつだったのかも覚えていない状態だったから、町外れに路上駐車するだけで廃車に見える。我が物ながら悲しい車だと思うけれど、まだ走る以上、捨てようか、という気にもならない。せっかく、後二万キロ乗れば二十万キロの大台なのだ。どうせいづれは解体するのなら、せめて天寿を全うさせてあげたい、と僕は思うのだけれど、なかなか、分かってくれる人は少ない。
 この車で僕が過ごす時間や、眺める風景、というのはひどく一定だ。傷だらけ、油膜だらけのフロントガラス、煙草穴だらけのシート、動かないエアコン、感度の悪いラジオ。たまに引っかかって動かなくなるワイパー。ラジオからはいつだって最新の情報が流れてきているのだろうけれど、僕の耳の飛び込んでくるのは、断末魔の呼気のような雑音と、その隙間で、弱弱しくその存在を主張するDJの声だ。そもそもよく聞き取れないのだから、それが最新の情報だろうと何だろうと、全く関係がない。百年前のニュースが流れていたとしても、たぶん、僕は気づかないだろう。それでも、僕はラジオをつけたままにしている。何のことはない。スイッチが馬鹿になってしまって、上手くオン・オフができない。それだけの話だ。
 もはや手遅れ、といったほどにみすぼらしい車の状態だから、せめて、と思い車内だけは綺麗にしている。十個目の焦げ痕を作ったとき――二年半くらい前だ――車内禁煙にしたし、コーラを一リットル近くぶちまけた時――五年前。あれは厳しかった――緑茶以外の飲食も禁止にした。シートの上にもモノは置かない。荷物はすべてまとめてリアハッチへ。僕は自分の策定したルールをかなり厳格に守るほうだから、ボロ車の車内はいつも清潔だ。ただ、この日はちょっと特殊だった。この日だけは、僕は助手席のシートに荷物を置いたし、車内でコーラを飲んだ。しかも、そのコーラの缶に灰を落としながら煙草まで吸った。ちょっと、いろいろあったのだ。



 休日の暇つぶしに買い物でも行こうか、と思い車庫の自分の車に乗り込もうとした時、僕は自分の車の下に覚えの無い何かがあることに気がついた。黒くて、小さくて、複雑な形をしたもの。嫌な想像を振り払いながら軍手をはめてそれをゆっくり引きずり出すと、ちゃんと想像通り。猫が一匹。僕の車の下で死んでいた。ちょっと見てすぐ、よく家の周りを歩き回っていた野良猫であることが分かった。僕が引っ張り出した時に、つい見てしまった猫の目。死んでしまっている、と自己主張しているかのように、その目には光が無くて、僕は思わず顔を背けた。冷たくて、硬い。死を、全身で表現していた。
 両親も、祖父母も健在、ペットを飼ったこともなかった僕にとって、”死”というのは曖昧なイメージでしかなかったのだ。生物的に”死”がどういうものかは理解しているつもりだったけれど、多分、僕は分かっていなかったのだと思う。本物の死の重みや、冷たさは、僕の想像を凌駕して余りあるものだったし、光を失った目が、その影の中に僕を追い落とすのはとても簡単なことのように思えた。重くて、冷たくて、悲しくて、痛ましくかったし、それらの言葉を頭の中に順番に並べてみてもまだ足りないほどに、それは衝撃に満ちていたのだ。
 この猫が死んだ、ということは僕にとってそこそこの事件だった。いつからか近所に住み着いたメスの野良猫。僕は勝手に”リリー”と名付けていた。別に飼っていたわけではないから、何か食べ物を与えた、であるとか、ノミ取り薬を与えてやった、とかそういう類のエピソードは無いけれど、リリーの方はどういうわけか、家の付近が気に入っていたらしく、特に我が家のガレージは、彼女にとっては最適の棲家だったらしい。おかげで、ガレージの周りはいつでも彼女の排泄物の臭いに満ちていたし、僕のみすぼらしい車は爪あとだらけだった。タイヤをパンクさせられたこともある。生贄に捧げたかのような鼠の死体を置き捨てられたこともあった。つまり、僕は彼女に嫌がらせをされていたようなものだ。にも関わらず、死んでしまってくれたおかげでせいせいしているか、と言えばそういうわけでもない。寂しさを感じる理由も、悲しみに暮れる理由も何処にも無いのに、それでも、僕の心の中を何度も蠢き回っていたのは”リリーが死んでしまった” という言葉。それに、寂しさ、悲しさ。嬉しくなんか、まるで無かった。
 手近にあった段ボール箱の中に贈答品のタオルを三枚入れて、僕はその中にリリーを入れた。ガムテープで蓋を閉じて、そのまま車の助手席に箱を置いた。どうしてもリアハッチに置く気になれなかったのだ。想像出来ようとどうだろうと、ほんの何時間前かまで生きていたものを荷物扱いする気にはなれなかった。それは多分、僕がそもそものところで”死”というリアリティに慣れていないせいなのだろうけど。



 国道を東に十キロほど行ったところにある川原を目指して僕は車を走らせた。それが、動物の死に対しての正しい手続きでないことは知っていたけれど、とりあえず電話をした保健所に「燃えるごみで出して」と言われた時点で、もう僕は正当な手続きを踏む気など無くしてしまった。自分勝手と言われようと、何と言われようと、死に結びつくイメージは燃えるごみではなかったのだ。不法投棄で訴えるのなら、そうするがいい。それくらいの気持ちだった。
 道は殆ど車どおりがなく、順調に流れていた。信号もオービスも無い、片田舎の小さな国道。僕は、アクセルを出来る限り強く踏んだ。速度はすぐに制限速度を越し、ボロ車が悲鳴をあげはじめたのが分かった。少しでも早く、川原に行きたかったのだ。そこには、筋の通る理由なんか存在しない。死が、力強く僕の背中を押していたのだ。


 川原の、草むらが一際生い茂っている辺りに僕は穴を掘り、その中にリリーを入れた。彼女のこわばった体に土をかけていくと、土で隠れた分だけ、僕の日常から死の色が遠ざかっていくのがよく分かった。それはどこか儀式めいてさえいた。せめて、と思い、手を合わせ、冥福を祈り、声に出して「さようなら」と言った。
「さようなら。また、どこかで」
僕と彼女との間に生まれたひと時の沈黙。その隙間からかすかに「嫌なこった」という言葉が聞こえてきた気がした。



 川原からの帰り道、僕はローソンで、缶のコーラと煙草を買った。車に戻ってコーラを一息に飲み干し、それから煙草を吸った。窓なんか一センチだって開ける気にならなかった。灰皿なんか一ミリだって開く気にならなかった。ドリンクホルダーに置いたコーラの空き缶に、灰も吸殻も落とした。すぐに二本目に火を点けて、助手席のシートに十一個目の焦げ痕を作った。炎の先端を押し付けると、くすぶったまま少し煙が上がった。シート表面はすぐに穴になって、中の黄色いスポンジが顔を出した。僕はその煙草をそのままシートでもみ消して、コーラの缶の中に再び落とした。
 色々なことが嫌になった、などと感傷めいたことを言いたくはないけれど、自分の決めたルールがいかに馬鹿馬鹿しいか、という事に僕は気づかざるを得なかったのだ。誰かの死、というやつは気がつかないうちにこちら側の生を作り変えるのだ。それが、例えば縁もゆかりもない野良猫の死だったとしても。平等にやってくる死は、平等に、誰かに何かを残していく。残された僕が、自分自身の馬鹿馬鹿しさに気がついたのだって、決して不自然なことじゃない。あらかじめ決められていたかのように自然に、そして唐突に、それはやってくる。僕は今更ながら、そのことに気づいてしまったのだ。 何が正しいとか、正しくないとか、そんなもの、どうでもいい。どうでもいいのだ。僕という存在がどんなものであろうと、何を成し遂げようと、何をしくじろうと、何も変わらない。例えば僕が一流のミュージシャンだか俳優だかだったとしても、やはり同じようにリリーと出会い、死に立会い、こうして埋めに出かけたのだと思う。僕の家のガレージに停まっている車がオンボロのスターレットなんかじゃなく、BMWのスポーツセダンだったとしても、きっと。国道の長い直線。僕の思考は、どこまでも連なり、終わりの気配すら見せなかった。煙草の残り香、コーラのべたつきと、死の気配。油断していると、今にも追いつかれそうだった。
 逃げ出すかのようにアクセルを目いっぱい踏み込むと、リアハッチから空のダンボールが転がる音が聞こえた。ラジオが、遥か彼方の渋滞を報告してきた。その向こう側、猫の鳴き声のようなノイズを感じた。思考の中で暴れるリリーの影ごと、力いっぱいラジオのスイッチを殴りつけた。ラジオは断末魔を残して受信を中止し、それを合図にして、世界の終わりのような雨が降ってきた。ワイパーのスイッチをいれたけれど、動く気配すらなかった。
2007-05-30 14:40:16公開 / 作者:村瀬悠人
■この作品の著作権は村瀬悠人さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
第二稿です。皆様からのご指摘をもとに、作り変えられる範囲で動かしました。
新しいのもプロットいじりだしたので、また投稿したいです。
その際は宜しくお願いいたします。


※動物の遺体は、各自治体により定められた適切な方法に基づいて処分してください。この物語は事実を基にしたフィクションですが、
自治体の条例などへの違反を奨励するものではありません。
この作品に対する感想 - 昇順
 村瀬悠人さんは美的感覚が薄い方のように思えるね。他者との干渉において一義が疎通すれば良しと判断できる方だ。それに、そのための能力に秀でている。浮かんだ情景を文章化するのに多くのアクセスを必要としていない。ごくごくありきたりで陳腐な言い方をすれば『天才肌』かな。だけれど、天才ってやつは能力の伸び率が非常に低い気がするのだよね。
2007-05-26 14:18:29【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
こんばんは。感想ありがとうございました。う〜ん・・・ごめんなさい。多分、僕がバカなんでしょうけれど、
おっしゃっていることの意味がよく飲み込めていない僕がいます。とりあえず精進すれば良さそうですかっ!?(汗
具体的にどんなところを直せば良さそうですか??
2007-05-26 21:51:29【☆☆☆☆☆】村瀬 悠人
 総合的に見て、書き物をする能力は高い。書き物をするに至る必要な思考を一足飛びに超えている。だから思考力が養われない。
 どんなところを直せばいいのかわからないのも、私の感想の根拠となるのではないかな。別に、「努力しろ」と言ってるわけでもない。凡人に合わせる必要はないよ。ただし、私はここを精進の場だと思っている。凡人の意見を聞かず、天才性を維持・発揮したいなら去るべきと思うね。
2007-05-26 22:56:47【☆☆☆☆☆】模造の冠を被ったお犬さま
はじめまして。おもしろかったです。読みやすい文章でした。ただ、妙な改行のせいで非常に読みにくい印象を受けます。投稿前に確認されたほうが無難だと思いますよ。
2007-05-26 23:25:00【★★☆☆☆】アナハイム
村瀬です。改行の件ですが、どうもウインドウサイズが問題のようですね。申し訳ありません。お読みいただいたすべての方にお詫び申し上げます。

>模造の冠を被ったお犬さま
模造の冠を被ったお犬さまさんが慧眼なのはよく分かりましたので、どうか、お願いです。馬鹿にも分かるように
シンプルにお願いいたします。自慢じゃないが、僕は馬鹿です。少なくとも二回の書き込みで僕に理解できたのは「考え無しに書いてるよね」
「頭使わないで直感で書いているよね」ということくらいです。そして、それについては「確かにぃぃぃ」としか言いようがありません。
短編だと大体30分くらいで初稿あげちゃうんで・・・。ただ、言いたい。僕がいつ「凡人の意見は聞かない」なんてことを言いましたか?
変な解釈しないでください。なんだかそれぢゃあ、僕がすげー嫌な奴じゃないですか。模造の冠を被ったお犬さまさんの仰ることの正否は別として
僕としても首肯しがたい気持ちです。
2007-05-27 01:24:36【☆☆☆☆☆】村瀬悠人
追記・・・連投すいません。今後の改行対策として、ウインドウ解像度1024*768サイズでの適正表示になるよう調整して
投げ込むようにしようと思います。アナハイム様をはじめとした、お読みいただいたすべての方に重ねてお詫び申し上げますとともに、
再発防止により注力いたします。すいませんでした。
2007-05-27 01:27:46【☆☆☆☆☆】村瀬悠人
 拾い上げるものの数々、それらの丹念さ、そういった部分に魅力のある文章だと思います。中々面白い。ただまあ言外領域が、薄いといえばそうですね。十のイメージの中で表現を吟味して一を用いているとか、そういう感触を受けない。
 書き手の実感性とコネクトしているのはわかるんですね。虚心、正直ということだと思います。ただまあ何というか、自分の中の要素の取捨にやや安直なところがあるのかな。実際に執筆する作業もそうなのだけれども、自分の中の要素を時間をかけてあぶりだしつかまえるという執筆外の作業、熟成も、追求する方がいいのかもしれないですね。
 ただ僕はこの作品のスタンスに好感を持ちますね。
2007-05-27 01:50:04【☆☆☆☆☆】タカハシジュン
わざわざそんなことしなくても、この掲示板では自動的に改行します。また改行の調整は本来必要ないはず。必要に応じて適度な“文末”を繰り下げればまず問題は起こりません。
ちなみに犬さんは噛みついて跡をつけてあげないからわかりにくいですが、ようするに前回の投稿時に言われたことは聞いていなかったのかとほえてらっしゃいます。私のレスに既視感をもっていただければすぐ気付かれると思いますが、3度目の正直にするように、テキストの整理には気を付けるべきです。
2007-05-27 01:53:23【☆☆☆☆☆】アナハイム
>タカハシジュン 様
ご感想拝読いたしました。ものすごくタメになります。おっしゃられている通りで、”行間の弱さ”は僕の改善せねばならないポイントの一つです。
修練します。

>アナハイム様
なるほどですね。言い訳しても仕方ないことですが、当方のモニター上で正常に表示されているのです。
んで、サブマシン(1024*768で設定)で確認したところ、一部の折り返しが大変なことになっていた、
というところは確認出来たのです。それで、ああ、解像度の部分でバランスとってやればいいんかいな?と思った次第。
もちろん、こちらのエラーなのでぐうの音も出ないのが正直なところです。申し訳ありませんでした。三度目の正直、にしますね。

ただ、模造の冠を被ったお犬さま さんがそのように言っているとは僕には思えませんでした。また、仮にそのように言っていたとしたら、
逆にもっとシンプルな言い様をされるのが自然であると思います。「美的感覚が薄い」であるとか「思考力が養われない」であるとか、
そういった物言いのされ方は、「ケンカ売ってんやろか? この人」と思われても仕方の無い物言いです。それをいくらアナハイム様に
「要して」いただいても、「ああ、そうだったのか…」とは思えませんし、納得も出来ません。
改行ミスに関しては再三の謝罪をいたします。同時に次回の改善をお約束いたします。では。
2007-05-27 04:04:16【☆☆☆☆☆】村瀬悠人
「嫌だ:というのの「:」はカギカッコの間違いでしょうか。

漠然とした抽象的な文章と、細かいリアリティのある具体的な文章と、そこらへんのバランスが悪いような印象を受けました。ひとつひとつの文章が安定してるだけにそう思うのかも。だから内容自体は嫌いじゃないし、面白くないわけでもないんだけれど、どことなく物足りなさを感じてしまいます。もうちょっと濃さが欲しいなぁと思いました。いまいちうまく言えないもんで、申し訳ないのですが。
村瀬さん、お犬様はそういう物言いの人です(笑)ケンカ売ってんやろか?に笑いました。
2007-05-27 08:46:45【☆☆☆☆☆】ゅぇ
初めまして、読ませてもらいました。読みやすい文章ですね。
 恐らくは「僕の考え」の範疇が大きすぎる気がします。きれいにまとめているストーリーの中で「僕」の説明の比重が多い。僕の出会う「猫の死」さえも結局は「僕」の中で処理しきれてしまっている。やはり他者性と出会うという要素が欲しかったようには思います。そこに介在する他者の不可解性って「僕」が僕から抜け出す為には(又は僕が僕でいられなくなるという感覚を持つためには)必要な事だろうと。
 もう古い表現でしたら申し訳ないのですが、都会的なスタイリッシュな文体ですね。作者さんが良い目で社会や自分の生活を見ているのが分かります。全て個人的な意見ではありますが、後は耳を使って社会や自分の生活の中の声を聞いていくとより広がりが出て行くのだろうと思います。
 次回作も楽しみにしています。
2007-05-27 08:48:33【☆☆☆☆☆】カメメ
作品を読ませていただきました。主人公の持つ感情(思考)はぼんやりと伝わってくるのですが、その感情(思考)に至るまでの過程が省略され過ぎているように感じました。たとえ他者から見て瑣末な自己規範(こだわり)でも、それを否定するのですから自己の中で感情(思考)が色々と動いていたと思います。でも、ラストのほろ苦さは十分に同期できるものでした。戯れ言を失礼しました。では、次回作品を期待しています。
2007-05-27 09:01:39【☆☆☆☆☆】甘木
はじめまして。大変見苦しい感想になることを先にお詫びいたします。全体的に読みやすく、情景が浮かびやすい点は好きなのですが、主人公の感情に同調できなかったため楽しめたかと言うと微妙です。どうして同調できないのか、原因を色々考えてみました。この作品は「(ある時点にいる)僕」が僕について語っているのですが、5つに分かれている語りのパートで、一つ目の「僕」と5つ目の「僕」が別の時点からの述懐をしているように思えました。例えば戦時中の軍人に戦場の様子を語らせた文章と、戦後かなりの時間が経過してからその軍人に戦場の様子を語らせた文章には差異が出ると思います。前者が猛烈な感情の入り混じったものだとすれば、後者はそれに比べて幾分か冷静な視点で戦場の様子を語ることが出来るかと思います。そして、もしその戦場の様子の語りを一つにまとめようとした時には、必ずどちらかの時点での軍人ただ一名に語らせるべきだと思います。例えこの過去と未来の軍人二人が同一人物であろうと、戦場で起こっていることは同じことであろうと、語る「僕」の内面に相違があれば、語られる内容の統一は困難になるからです。つまりこの作品の僕を語る「僕」の時点が一箇所ではないがために、「僕」の物事や感情を把握している視点が若干のずれを感じさせているから、私は同調しにくいのかなと初めは予想しました。
ただこの予想には大変自信がありません。語っている「僕」がどの時点にいるかについてぶれを感じることは確かですが、それが決定的な要因だとは思えないのです。僕を語る「僕」が場面ごとにぶれているから、というよりか、むしろ単純に「僕」が行う僕の説明が不親切故に同調できないという気がします。何故少しでも早く川原に行きたかったのか、何故アクセルを出来る限り強く踏んだのか、そういった僕の心理を説明してくれるはずの未来の「僕」が、筋のとおる理由なんか存在しないといって同調をさせてくれていない。また、「嫌だ」という言葉を聞いた気がした時の僕の心理も、具体的には示されていません。
ですので、一連の流れの中で僕がどんな感情になったか、その結果としてどうして「どうでもいい」という心情に辿りついたかが不明確に思えます。だから私は同調できなかったのだと思います。
終わり方の表現とかは好きなのですが、同調できなかったのが残念です。わかりづらい感想で申し訳ありません。失礼します。
2007-05-27 20:05:56【☆☆☆☆☆】メイルマン
>ゆえ さま
コッカ部分の誤字訂正しました。ご指摘ありがとうございます。「濃さ」ですか。まだまだ修行が足りませんね・・・。
個人的感触が、マジョリティとずいぶんずれてしまっていることに気づかされてばっかりです。精進します。
あと、「あの部分」に笑っていただいた、というのが何だか、心和む一言でした。ありがとうございますw

>カメメ さま
ご感想ありがとうございます。スタイリッシュだなんて、そんなことないですよ。かなりタチの悪い手癖です。
たとえば、もっと猫側の意識も介在させるべきだったかもしれません。こうして皆様にご感想をいただき、ご批評を
いただき、改めて読み直すと、なんだか、自分の無力さを思い知る気分です。がんばります。

>甘木 さま
ご感想ありがとうございます。率直なご指摘は大変分かりやすく、次なる物語に向けて気持ちが燃えてきました!
気合いれていきます!次もご批評ぜひ、お願いします!!

>メイルマン さま

ご感想、ありがとうございます。分かりづらくなんかありません。僕の小説の欠点を浮き彫りにする、感想文の見本、とでも
いうべき名文だと思います。(冗談で言っているわけではないですよ)
僕は、僕自身が記述しながら想起している情景や心情が文字を介して皆様に伝わるのだ、という部分において、ずいぶんと
目分量を誤ってしまっているのだなあ、と感じずにはいられませんでした。こうして皆様からのご感想を拝読するたびに、
自分が今、伝えたいことは、今の自分の能力では50%程度しか伝えることが出来ていない。修行不足ですね、本当に。
特にこの話は・・・・必ず昇華させます。死んでしまった野良猫君のためにも、僕は、やらなければいけないのです!
素晴らしいご感想、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
2007-05-27 23:41:01【☆☆☆☆☆】村瀬悠人
 拝読しました。
 色々感想が並んでいますがとりあえず思ったのは統一感が無いだけだろ……といった感じでした。
 主人公の感覚が色んな所に飛び火してふわふわしてる気がします。一文一文は素晴らしいのですが、話自体は結局彼がどういう人間でどう変わったのか、わからずじまい。
 色んな表現で驚きや感傷(主人公は違うって言ってるけどやっぱ感傷だぜ……)を表現してるのは話の流れで表現できなかったからなのかな、とも思ってしまいます。言葉を連ねているだけだから浅く見えてしまうんですよね。そういえば『物語の中では語る主人公より黙ったままの主人公の方が饒舌』、ってどこかの監督が言ってましたね。生き方で示した方が伝わりやすい時もあるんじゃないでしょうか。
 と書いてますが、なんだかんだでこの作品は高いレベルにあると思います。とにかく言葉の取捨選択が良い。キャラクターももう少し読者にパーソナリティを教えてくれれば好感が持てるでしょう。
 それと同情するわけではないですが多少の改行位でマイナスもなんなので点入れときます。もちろん正当な評価点も込みの点数ですが。 
 次回作品にも大いに期待します。それでは

2007-05-31 03:03:50【★★★★☆】無関心ネコ
計:6点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。