『ワインとガーベラの鼻唄。』作者:雨音(あまね) / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
ワイン青年とガーベラ少女。ふたりは全く噛みあわないのに何処か繋がった思いを抱いている。
全角1577.5文字
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原稿用紙約3.94枚

ワインとガーベラの鼻唄(ハミング) 


バーテンダー風の黒服に身を包んだ、未だ成人して間もないであろう青年が、所狭しとワインボトルが並べられた棚をじっと見つめている。
「―――なぁ」
見つめる先に、ガラス戸に映る自身の姿が在る。
青年は僅か、ワインを抱きかかえる両手に力を込めた。

「俺さ、判るんだよ。ワインが順に跳ねていきながら、‘La・La・La‘ってハミングしてんのが」

ふっ、と目蓋を落とした青年の脳裏に、陽気なメロディが流れ込む。
この仕事を志してから随分と利くようになった鼻に、長年眠っていたワイン特有の古びた匂いが香ってくる。
目蓋の奥に映りこんでくる、深い深い紅。
青年にとってのワインは、‘大人‘の象徴であり、‘望む姿‘そのものだった。


陽気なメロディがだんだん、麗らかな旋律に変わってゆく。
古びた匂いがだんだん、甘さを帯びて溶けてゆく。
深い深い紅がだんだん、淡く淡く薄れてゆく。

 ***
無垢な純白のワンピースを纏う、成人まで四・五年はかかりそうな少女が、桃色のガーベラを一輪摘み取ってそっと眺めている。
「―――ねぇ」
眺める先に、ガーベラの向こう・薄蒼色の水彩画ような空が在る。
少女は僅か、ガーベラを握る手に力を込めた。

「私ね、判るの。花畑のガーベラが葉っぱの手を広げて揺れながら、‘ら・ら・ら‘ってハミングしてるのが」


ふわ、と目蓋を瞑った少女の脳裏に、麗らかな旋律がたゆたう。
この花畑に来るようになってから随分と利くようになった鼻に、開きたての花特有の甘い匂いが香ってくる。
目蓋の奥に映りこんでくる、淡い淡い桃色。
少女にとってのガーベラは、‘少女‘の象徴であり、‘変わりたくない願望‘そのものだった。


麗らかな旋律がだんだん、陽気なメロディに変わってゆく。
甘い匂いがだんだん、古さを帯びて溶けてゆく。
淡い淡い桃色がだんだん、深く深く沈んでゆく。

 ♯♯♯
青年は語る。
「今までずっと……義務だのなんだの押し付けられることの無い、自由に、大人になりたいと願って来た。お前もだろう?」
 ***
少女は語る。
「今までずっと……責任とかいろいろ持たされることの無い、庇護下に、子供のままでありたいと願ってた。あなたもでしょ?」
 ♯♯♯
「どうしてだろうな、それなのに」
 ***
「それでもね、ふと」
 ♯♯♯ 
「たとえばワインを割っちまったとき、店長にさ」
 ***
「大人って自分で決めれるんだなぁ、って思うことがあるの」
 ♯♯♯
「‘責任取れ‘って給料からひかれんだよ。いやさ、まぁ当たり前なんだけど」
 ***
「別に羨ましくなんかないけれど」
 ♯♯♯
「子供のとき友達に給食ぶっ掛けちゃったときとか、謝ればあとは親が金だしてくれてたこととか、思い出して」


ふたりの噛み合わない会話は続いていく。
お互いは見えていない。ただ、向こうに誰かが、自分と繋がった誰かがいるということを、知っている。


 ***
「子供の、庇護と規制」
 ♯♯♯
「大人の、自由と責任」
 ***
「どうして、でしょうね」
 ♯♯♯
「どうして、だろうな」




「「そのふたつはいつも隣り合わせに在る」」



暗転、
ワインが順に跳ねていきながら、陽気なメロディのハミングを唄いだす。
暗転、
ガーベラが葉っぱの手を広げて揺れながら、麗らかな旋律のハミングを唄いだす。


‘♪ラ・ラ・ラ  庇護と自由を一度に頂戴♪‘
噛み合うのは我侭な鼻唄。
2007-03-26 19:15:08公開 / 作者:雨音(あまね)
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■作者からのメッセージ
この春中学生になります〜!
先生方の話からも責任、大人への第一歩的な内容が増え始めて、大人への憧れもある分、未だ大人の庇護下にありたいという気持ちも強いです。
……なんてそれらしいこと言ってますが、実際ダメダメさんですorz

普通の文庫のかたちで書くのは初めてだったので、なにか間違えているところがあるかもしれません。
感想・ご指摘ぜひお願いします。
この作品に対する感想 - 昇順
はじめまして、作品を読ませていただきました。この作品の世界観がよく見えてきませんでした。全体を通して、心理・情景描写をもっと増やしたほうが良いと思います。それでは、次回作に期待します。ではでは、
2007-03-27 18:03:02【☆☆☆☆☆】こーんぽたーじゅ
演劇の脚本のような印象を受けました。言いたい気持ちは分かるけれど……といった感じです。
2007-03-28 20:36:14【☆☆☆☆☆】ゅぇ
作品を読ませていただきました。文章的なイメージよりもPVのような映像的なイメージが先行した作品ですね。イメージが独立してしまって、読者がその世界に入りきれないという印象でした。では、次回作品を期待しています。
2007-04-01 11:04:44【☆☆☆☆☆】甘木
せっかく感想を頂いたのに返信が遅れてしまいごめんなさい;
>>こーんぽたーじゅ様
お読みいただき有難うございます。
そうですね、全くといって良いほど描写をしていませんでした;
次回は気をつけたいと思います。

>>ゅぇさま
お読みいただき有難うございます。
うわぁ、本当に脚本みたいですね・・・;
もっと小説らしくなるよう頑張ります。

>>甘木様
お読みいただき有難うございます。
確かに勢いのまま書き流した、みたいな感じでした・・・;
読者様がこの世界に入りきれるような文が書けるように努力します。

とにかく描写、読者様意識、気をつけますね。
2007-04-03 14:19:02【☆☆☆☆☆】雨音(あまね)
計:0点
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