『誰より一途に貴方だけ NO.1』作者:井上怜也 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約9枚

河崎悠乃(かわさきゆうの)。

主人公、河崎悠弥(かわさきゆうや)が今まで逢った中で、誰よりも一途に人を愛し続けた少女。
誰よりも、一途に。





「キャ―――ッッ!!ユーヤ、見て!RUKAだよ、RUKA!!…カッコイー……」
 主人公は、河崎悠弥(カワサキ ユウヤ)。ちなみに高一である。
 RUKAというのは、今まぁまぁ人気のあるアーティストで、大人気、と言うわけではない。
 だが、けっこう顔が良く、歌う曲は自作で、ロックもバラードもOK。
 それでいて、かなり歌が上手い。
 人気が出ないのがおかしい、と悠乃は言う。
 悠乃というのは、悠弥の目の前にいる一つ年上の姉、河崎悠乃。
 顔は可愛い系で、ごく普通に明るい性格。
 何処にでもいそうな感じの少女である。
 …たった一つの事を覗いては。
「ねぇ、ユーヤ…なんでRUKAって、こんなにカッコイーのかなぁ…?…犯罪だよねぇ……」
 そう。
 悠乃の異常な所は、そこである。
 本当に異常なまでの執着、羨望、憧れ。
 ファンと呼ぶのには、度を過ぎているのだ。
 ストーカーではないし、借金をしてまでグッズを買う事もしない。
 しかし、出来る限りの手を尽くしてRUKAの出る番組はチェックし、ビデオ録画までして必ず観る。
 近くで行われるライヴには、命を賭けてまで行く。
 お小遣いでやりくりしてはいるが、出るグッズは殆ど買う。
 持っていないRUKAのグッズなんて、無いと自他ともに認める程だ。
 お小遣いで買えない分は、友達にプレゼントさせるか、男に貢がせるか。
(…我が姉ながら、なんでこーんなにRUKA、RUKA、RUKA、RUKAって……)
「ね、ユーヤ聞いてる〜?」
「あー…聞いてる聞いてる…ってかそんなにカッコイーか、コイツ。」
 そんなRUKAを適当に扱うような言動をすれば。
「…!! な…何言ってんのアンタ!目ェおかしいんじゃないの!?こんなにカッコイーのに!!」
 という言葉と同時に、頭に平手が飛んでくる。
 
 ペシッッ

「…ってー……」
「RUKAに失礼なコト言うからだ。無礼者めが。」
 そう言うと、悠乃はテレビ画面に視線を戻す。
 RUKAが映っているのを目にするなり、他の誰にも見せないような微笑みを、画面へと向ける。
(…あ。)
 悠乃は、RUKAを好きになってから、RUKAを観ている時によくこんな表情をするようになった。
 本当に、一番愛する人にしか向けないであろう笑み。
 悠弥が見た限りでは、この笑顔を悠乃が向けた事があるのはRUKAだけだった。
 悠弥がぼ〜っとそんな事を思いながら悠乃を見ていると、悠乃が笑みを切なそうな表情に変え、小さく呟いた。
「…どんなに……」
「…え?」
 よく聞き取れなくて、悠弥が聞き返す。
 すると、悠乃は表情を戻す。
「う、ううん!何でもない!! あ、ホラ!ユーヤが話しかけるからRUKAが画面から見えなくなったじゃない!!
 アンタのせいだからね!」
 眉を吊り上げてそんな言葉を言う所は、いつもの悠乃と何ら変わりない。
 しかし、悠弥はいつもの悠乃が見せないような一面を見たようで、気になってしかたなかった。
(…なんか……)
 隠しているのではないか。
 悠弥はそう思った。
 とても仲が良く隠し事など殆どない悠弥と悠乃だが、今回ばかりはそんな気がしてならない。
 訝しげな表情で悠乃を見ていると、悠乃がまた悠弥に顔を向ける。
「…何よ?」
 いつもと全く変わらない顔で、悠乃が悠弥に問う。
「や…別に?」
「じゃあこっちばっかり見ないでよね。RUKAに集中できないじゃない。」
 肩までのセミロングの髪を揺らし、テレビ画面へと眼差しを戻す。
(普通…だよな?いつもと同じ悠乃…でも、なんか…おかしくないか?)
 何かが、いつもと違う。
 そう感じるが、理由がわからない。
(なんだ…?)
 テレビ画面を食い入るように見つめる姿は、いつもと同じ。
 そう思った瞬間に、「違う」、と悠弥は感じる。
 何が違うのかは、まだわからない。
 悠弥は言いようのない不安感に襲われる。
(なんで……)
 何故かはわからないが、不安。
 何かが起こっているのか、それとも起ころうとしているのか。
 そんな不安感を悠弥は感じた。
 悠乃の隣で悠弥がうーんうーんと考え込んでいると、悠乃が悠弥に話しかけて来た。
「ねぇ…ユーヤ?」
 その横顔は、何処か不安げだ。
 何かに、戸惑っているような、そんな表情。
「何?」
「あの…さぁ。私がRUKA好きって言ったら…信じる?」
「はい?」
 とても不安そうな表情で、そんな事を聞き出す悠乃に悠弥は拍子抜けしてしまう。
「好き…って、そんな事もう知ってるし……」
 悠弥がそう答えると、悠乃が苦笑する。
「違うよぉ。ファン的な「好き」じゃなくて、本当にLOVEの意味の「好き」のコト。」
「はぁ…?「憧れ」とかじゃなくて??」
「そう。憧れとかじゃなくて。」
 その悠乃の言葉を聞いて、少しだけ悠弥が考え込む。
「…諦めろ。」
「え?」
 少しの沈黙の後だったので聞こえなかったのか、悠乃が聞き返す。
 悠弥がもう一度繰り返し、理由を続ける。
「諦めろ、って言ったんだよ。実りがない想いなんて、大きくなる前に諦めた方がいいだろ?」
「…そう、思う?」
 悠乃がもう一度聞き返す。
 何故そんなにしつこく聞くのだろう、と疑問に思いながらも、悠弥は言う。
「だって…RUKAって芸能人だぜ?叶うワケないだろ、そんな恋。」
 そう悠弥が言うと、悠乃は少し表情を暗くした。
「そう…かぁ。ユーヤもそう言うんだね。」
 そう言うと、悠乃は悲しそうで、とても切なそうな笑みを浮かべた。
「…え?」
「ううん…ユーヤなら違うコト言ってくれるかと思ったんだけど…ユーヤも、一緒なんだね。」
「悠…乃?どうかしたの…?」
 悠弥が心配そうに悠乃に聞くと、悠乃はそっと苦笑して、
「何でもないよ。ただ、気になっただけ。」
 そう答えた。





 しかし。

 何でもなくは、なかったのだ。

 RUKAを想う、悠乃の気持ち。

 そんな悠乃の気持ちを、悠弥ははかりきれなかったのだ。

 その過ちのせいで、起きてしまう悲劇。

 その悲劇の合図を、すでにこの時、悠乃は出してくれていた。

 その合図に、悠弥が気付ききれなかっただけで……





 その会話があった一週間後。
 悠乃と悠弥は、リビングで一緒にテレビを見ていた。
 たまたま流れていたニュース番組で、RUKAに関する報道があったのだ。
<今度は、おめでたいニュースです!人気アーティストのRUKAさんが、結婚する事がわかりました。
 お相手は、RUKAさんの憧れの人だったという雪野羽琉架(ゆきのはるか)さん。
 きっかけはバラエティー番組での共演だそうです。
 その時の事をRUKAさんは会見で「あれのお陰だからね(笑) 凄く感謝してるよ」と答え、とても嬉しそうでした。
 ファンの皆さん、結婚したからなんてコト言わずに、これからもRUKAさんを応援して下さいね!!>
 その番組のアナウンサーは違うニュースを読み始めた。
(ふーん…RUKA結婚するのか〜……)
 悠弥はぼんやりと考え、悠乃を見て話しかける。
「悠乃、良かったじゃん。RUKA結婚するって…よ……」
 言葉の途中で悠弥は目を見開いてしまう。
 隣にいる悠乃が、身体を小さく震わせて、目を見開き画面を見つめたままの状態で動かない。
 その悠乃の異変に気付き、悠弥が悠乃に近付く。
「おい、悠乃?だいじょ…」
「何…が…?…」
「え?」
 瞳に涙を溜めて、悠乃が小さく呟く。
「何が…めでたいの?何が良かったの?どうしてそんなコト言えるのよ!!」
 ソファから勢い良く悠乃が立ち上がる。
「ごめんユーヤ…私、今日はもう寝るね?おやすみ。」
 そう言うと、悠弥の返事も待たずにさっさと悠乃はリビングから出て、自室へと向かった。
(…そんなに、好きだったのか…?…)
 首を傾げ、頭の隅で考える。
 それでも、悠弥にはわからなかった。

 何故、そこまで悠乃がRUKAに執着するのか。

 何故、そこまで悠乃がRUKAに興味を持つのか。

 …そして。

 これから起こる、悲劇の結末を。
2003-11-12 20:52:33公開 / 作者:井上怜也
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■作者からのメッセージ
はじめまして、井上怜也と申します!
初心者で拙い文章ですが、読んでもらえると嬉しいです。
この作品に出てくる「RUKA」と「河崎悠乃」には、モデルがいたりします・・・。
まぁ、悠乃のモデルは私なんですが(苦笑)
それでは、感想・指摘お待ちしてます。
井上怜也でした。
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