『サヨナラの恋』作者:KR / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
「私」は3日前に「彼」の電話番号を削除しました。今までもこれからも、ずっと好きだったはずの人でした。何が変わってしまったのでしょう。何が二人にあったのでしょう。その問いに、答えはないのです。それが、この「恋」だったのです……。
全角759文字
容量1518 bytes
原稿用紙約1.9枚
「やり直さないか、俺たち」
 午前0時を過ぎてから携帯電話にかかってきた、その番号は、3日前にメモリーから削除した、かつての恋人からだった。
 昔からそうだったが、彼は物事を深く長く考えるという行為が苦手で、重要な部分を適当に流してしまう、そんなところが嫌になって、私は別れを切り出したのだ。
「やり直すって、今さら?」
 私はシャワーを浴びて濡れたままの髪をタオルで絞りながら、温度のない声で聞き返す。3日間という時間は、彼にしては長考した方かも知れない。けれど、私の決心は固い。
 沈黙が流れる。こんな風に、会話が途切れることも、彼は好きではなかった。気持ちは解るが、それでも言葉に出来ない感情の流れとか、無言のメッセージだとか、そういうものを私は彼に感じ取ってもらいたかった。3日前のあの日も。3日後の今も。
「なんで、こんな風になっちゃんたんだろう」
 彼が言う。私は答えない。
「ずっと変わらないで、ずっと一緒だって、そう思ってたのに」
 私は黙ったまま、今にも泣き出しそうな彼の表情を思い浮かべる。その顔に免じて、これまで何度私はあらゆることを許してきただろう。仲の良かった男友達、結婚の話題、彼にまつわる女性の噂。彼が触れたくないと言えば、決して手を伸ばそうとしなかったあらゆるものたち。
 変わってしまったから、別れようと決めたのではない。変わることが出来ないから、別れるしかなかったのだ。
「……あなた、何も解ってない」
 それだけ言って、私は電話を切った。明るい液晶画面に、彼の困惑した表情が浮かぶ。なんで、こんな風になっちゃったんだろう。それを聞きたいのは私の方だ。
 ねえ、私たち、なんで今までこんな日が来ること、気付かずに恋してきたんだろうね?


 fin.
2006-08-30 01:15:30公開 / 作者:KR
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■作者からのメッセージ
テーマは「温度」でした。
どんな恋にも沸点があって、二人でそれを上げていかなきゃ熱は生まれない。
いつもピッタリ同じ温度でなくてもいいけれど、片方が冷めてしまったらどうしようもない。
けれど、熱くなるのも冷めてしまうのも、要は相手次第なんですよ。
と、そんな気がするのは作者だけでしょうか。
この作品に対する感想 - 昇順
短めだったので寝る前に感想を……
要は僕の恋愛経験が足りないからでしょうが、つまるところいったいなにが伝えたかったのか、それがわからなかったなぁ、と。恋愛の間際を見せたかったのか人の恋愛なんてこんなもんだと斜に構えたかったのか。哲学の話で『恋愛は他者から見たら赤面するだけの陳腐さだが当人達からすれば自己確立の重要な行為である』とかそんなのがあって、これは『永遠に他者である読者はただ赤面するだけだが作者にとっては重要な行為だ+』というふうに当てはめられると思います。
恋愛ものではつまるところ、読者をどれだけこちら側……作者側に引き込めるかが、作者にとってもっとも重要なんじゃないかなぁと。つまり、主人公がなぜ彼を好きになったのか、彼の好きな所はどこなのか、を描写して欲しかったなと、そういうことです。はい。
(注意書きみたいですが、これはあくまでも僕の感想です。KRさんなりの考えがあるのなら、そちらを優先してくださいm(_+_)m)
長々と失礼しました。文章自体は実力の程を感じましたし、もう少し長い話も読んでみたいなぁ。恋愛モノには卓越してらっしゃるのでしょう。次回作に期待しますね(^-^)
2006-08-30 08:46:35【☆☆☆☆☆】無関心ネコ
計:0点
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