『クローズ・ボックス』作者:色灯二位式 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
少年は起き上がった。クローズ・ボックスの世界で。
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 少年は起き上がった。
 起き上がったその場所は自分の部屋ではなかった。

――何だここは?――

 それが、ここの第一印象だ。ここは、立方体のような部屋で、ドアも窓もなかった。朝か昼か、それとも夜なのかも判らなかった。

――なぜ俺がこんなところに――

 少年は見渡した。そして再び気付いたことがあった。――白しかなかった。壁がすべて白。天井もだ。だが……床は、奇妙としか言いようのない赤色で塗られていた。それも、うんと濃い赤だ、と思う。少年の首から上の部分は奇妙な赤色の方向に向かった状態で停止した。しかし、誰がこんなものを……、イヤ、その前に、なんだここは……。
 それ以外思えなかった。ここはへんなところ。いつもは冷静な思考を心がける俺でも単純単調な考え方しか許されないところ。誰が何のために生み出したのかわからないところ……
 少年は頭がおかしくなりそうになったため、床から目を背けた。

――これからどうしよう――

 少年はそう思った。ここには、何もなく、電灯もないのにやけに明るく、変化という変化がまったくないので、とにかく飽きる。どうしよう。少年は横になった。が、どうしても床の色――奇妙な赤色――のためか眠ることができない。
 今度は少年は歌ってみた。自分の記憶にある曲すべてを、だみ声に乗せて歌った。声は部屋の中で反響し、やがて消えた。そして少年は思ってしまった。

   死にたい。

 だが少年はその狂いかけた頭で論理的な思考をしようとした。
 ここは人が死を希望とするように仕向ける場所……
 つまりここは、何もない……色の自殺装置……

 少年の頭は完全におかしくなっていた。

 少年は壁に頭をぶつけた。すると少年は、壁が厚紙のようなもので作られていることが判った。少年はそれを破ろうとしたのだが、よほど分厚いのか、まったく破れるれることはなかった。
 少年は愕然とした。ここでは何もできない。何もすることができない。何をしても意味がない。
 舌をかもうか……息を止めようか……。イヤ、そんなことをしても意味はないはずだ……
少年は再び床を見た。何も変わったことはなかった。少年は無理矢理横になると、無理矢理眠った。

 少年は、夢を見ることさえもできなくなっていた。

 少年は起きた。目を覚まし、体を起こした。ふと、少年は前を見ると、再び愕然とした。
 壁の1つが、青色になっていた。それも、うんと濃い青色に……
 少年は頭を押さえ、下を向いた。そこには例の濃い赤色があった。少年は泣き叫んだ。
「誰か……助けてくれぇ!」
 狂ったようにほえる少年の頭上に、黒く光る小さな物体があることに、彼は気付いていなかった……


「27番さん、level2で脱落です。」
 そういって、目の前のボタンを押した。すると、モニターに移っていた少年の姿が消えた。
「ふぅ……何もここまでする必要はあるのか?見る側は別にいいんだが、されるほうはたまんないと思うぜ。」
「しょうがないじゃないですか。今の人たちは、面白いこと、刺激とかを欲しているんですよ。私だって好きでやっているわけではありません……。ただ、しょうがなく、視聴率のupと自分の財布のためだけに……」
2006-07-08 13:10:37公開 / 作者:色灯二位式
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