『桜の木』作者:黒崎 凛 / ِE - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
 岡篠白兎。自分勝手。自信過剰。生意気。傲慢。冷静。妥協しなくても生きていける。そんな白兎の家は伝統ある家柄。岡篠家の血筋で、まれにしかいない、特殊体質『天真』。その体質を白兎はもっていて…。
全角2677文字
容量5354 bytes
原稿用紙約6.69枚
 桜の木


第一部


 第一話 引越し

 
 吐く息が白い。
 外に出ると車の中の暖かさはもう無くなっていた。
「兄ちゃん、雪だよ。」
和樹が目を細めて笑っている。
『白兎、お父さんは転勤するわ。小学校のお友達とはお別れよ。』
転勤。岡篠白兎は小学1年。まだまだ子供だったが、転勤の意味くらいは知っていた。
「さ、行きましょ。…お父さんに会うなんて久しぶりね。」
お母さんが車から降りる。お父さんは車から降りてブルルッと震え、
「さむいな。」
と言った。
お母さんは家の方に行く。家は和風。今時珍しい家だった。
「お父さん…。」
お母さんが驚いたように言う。おとうさん、白兎にとってはおじいちゃんだ。
 背が低いな…。
 白髪で細い体だった。
「白兎、和樹、よく来たな。」
おじいちゃんが言う。和樹は笑って、
「うん。ぼくね、車酔いしなかったんだよ。」
と言う。いつも和樹は車酔いをするので今日酔わなかった事が嬉しいのだ。
「そうかぁ。ま、外は寒いから中に入りなさい。」
ガラガラと、戸を開ける。
「白兎、和樹とは違う部屋になったわよ。」
お母さんが微笑む。前にいたアパートでは部屋が小さかったため、二人で一部屋だった。
 あいつはまだ小学生にもなってないのに部屋が欲しいとか言うからだ。
 和樹は駄々をこねたのだ。
「部屋は二階で、白兎はつきあたりのところ。和樹は少し行った、左のところだ。」
おじいちゃんが言う。白兎と和樹は階段を上った。
  
 白兎の部屋は広かった。しかも和樹と同じ部屋ではない事が嬉しい。壁にはところどころシミがある。 
 コンコン、とドアをノックする音が聞こえる。おじいちゃんが入ってくる。
「白兎、この部屋気にいったか?」
「うん。広いね。」
「…白兎、剣道知っているか?」
ケンドウ。白兎はその単語をまだ知らなかった。そしておじいちゃんがいきなりその事を訊いたのを少し怪しんだ。
「ううん、知らない。ケンドウって何?」
自分の知らない事を知らないままにしたくなかった。
「竹刀で勝負するものじゃ…。まぁ、チャンバラみたいなもんじゃな。」
チャンバラ。白兎はふうん、と言う。同学年の男子や上級生が箒をもって戦うやつか。白兎はそれを以前から『アホラシイ』と思っていた。そしておじいちゃんがこんな事を言うのだから、『剣道』というものをやらせたかったのかもしれない。
「そうじゃ、白兎。明日にはベッドが届くと祥子が言っていたぞ。」
祥子とはお母さんのことだ。
「分かった。わざわざありがと。」
おじいちゃんはドアノブを掴む。そして出て行く前に何かを言った。「何て言ったの?」その言葉を言う前におじいちゃんは出て行った。

 第二話
  
 白兎がこれから通う学校は青葉小学校だった。見た目は前に白兎がいた学校と同じようなものだった。
 『1−2』
女の先生に連れられて『1−2』という看板がついているクラスに入った。
「皆さん、おはようございます。今日からこのクラスに新しい友達が増えるよー」
わあっ!いろいろな人の声が聞こえる。かっこいいね。あいつ、ゲーム好きかなあ。白兎はそういう声にうんざりしながら自己紹介をする。
「岡篠白兎です。よろしくお願いします。」
「じゃあ白兎君、原田菜桜ちゃんのとなりの席だよー」
ポツン、と空いている席に着く。教科書は隣の原田に見せてもらった。
「じゃあ、算数の用意しようね〜。」
甘ったるい、先生の声がした。

 一時間目の算数が終わり一人の男子が白兎に近づく。
「…なあ岡篠、友達になろ。」
その男子の名札にはひらがなで『わかばやし としひこ』と書いてあった。
「いいけど。」
白兎は普通に言う。
「じゃ、じゃあさ今日の放課後、俺ん家であそぼ。」
いきなり俊彦は言う。
「うん。」
白兎はうなずく。友達と遊ぶのは久しぶりだった。
「じゃ、帰ってすぐ、青葉小でな。」
こんなに人懐っこい人もいるんだな、白兎は俊彦の後ろ姿を見ながらそう思った。

 四時間目の授業は50m走だった。
「あ〜…白兎くん、かっこいいよねぇ。きっと他のクラスからも見物人くるよ。」
里奈が体操着姿の白兎を見ながら小声で言う。菜桜は冷ややかに里奈を見て言う。
「…そう?外見あれでも運動神経とか頭脳がダメだったら…。」
「はぁ、なーちゃんは希望多すぎ!そんな完璧人間、どこにいるのよ?」
菜桜のニックネームはなーちゃんだった。
「ふんっ」
菜桜はそっぽを向く。今は男子の50m走だった。
 寒いのによくがんばるねぇ。
菜桜は半袖姿の男子を見る。けれど女子は長袖は良しだった。
「あ!岡篠君、長袖じゃん。」
里奈が言う。確かに長袖だった。菜桜は、
「風邪ひかないかぎり長袖はだめって事、言う方がいいかなぁ。」
と里奈に聞く。先生も白兎の事に気づいたようだった。
「岡篠くん、長袖はだめなんだよぉ。」
さっそくの注意。ここで長袖を脱ぐのが一番いい方法だ。
「女子はいいんですか?」
白兎は女子を見ながら言う。
「うん、いいんだよ。これが学校の規則なんだからぁ。」
「…それって男女差別じゃないんですか?」
 ここまで口答えしたらヤバィ。
 先生にこんな事を言うとなにかしら不利になる。菜桜のお父さんも言っていた。
『中学はいるとなぁ、ナイシンショってのがあるんだよ。だから菜桜はきちんと行儀よく、先生の事を聞いてないといけないぞ。』
この言葉を聞いてから菜桜は善人の仮面を被っていた。先生のお気に入り。そんなお遊びに菜桜はもう飽きていた。
 
 先生が白兎の事を鋭く見る。
「どうしても着たいのだったら見学か親に風邪のために長袖を着る事のメモを持ってきなさい。」
白兎は体操着のズボンのポッケトから紙を取り出す。
「親からのです。」
お母さんが白兎に渡した物だった。
「…チッ。分かったわよ。」
先生が舌打ちする。
やっと本性見せたな。甘ったるい、生徒に好まれたいために努力している良いセンセイ。その嘘の仮面を外して今白兎を見ている。
「白兎、50m走やろうぜ。」
俊彦が無理やり白兎を引きずる。
「自分で歩ける。」
俊彦の手をそっとはがす。自分の足で歩きたかった。




2006-08-05 13:45:21公開 / 作者:黒崎 凛
■この作品の著作権は黒崎 凛さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 はじめまして。更新遅いですがこれからよろしくお願いします。コメント辛口OKです。
この作品に対する感想 - 昇順
すんごい唐突。この段階ではなんとも……頑張って続き書いてください。
これ、バトルものですか?
2006-06-26 18:33:05【☆☆☆☆☆】君夜
 君夜さん、コメントありがとうございます。ほんと、唐突ですよね。あと、これ多分バトル系になるとおもいます。こんな私ですが、よろしくおねがいします。
2006-07-01 21:03:12【☆☆☆☆☆】黒崎 凛
羅沙さん、ありがとう。見たんだね。羅沙も頑張ってね
2006-07-08 13:26:19【☆☆☆☆☆】黒崎 凛
読ませていただきました。辛口可ということですので、感じたことをそのまま書かせていただきます。
一通り読んだ印象ですが、全体的に読者に物語を伝えるという意識が低すぎると思います。状況の説明がないので何が起きているかがまずわかりません。物語の冒頭なら、キャラクタや世界観についての説明が多少あっても良いのではないかと思いました(少なくとも今回読んだ限りでは僕は理解できまんでした)。見知らぬ相手と出会うにしろ異世界的な場所に連れて行かれるにしろ、ある程度説明がなければ話について行けません。この文章を読んで、読み手は作者さんの頭にある物語を理解できるか、というところをじっくり考えて欲しいなと思いました。
辛口可ということで好き勝手に書いています。こういう感想が必要なければ無視してください。
2006-07-10 02:00:26【☆☆☆☆☆】ドンベ
更新された、ちょっとはましになったかなと期待したんですが……これは例えるなら漫画のプロット状態ですよ。前に「唐突」と表現した意味がまるでわかってない。↑のドンベさんのおっしゃってるとおり、投稿する以上、読み手を意識しましょう。どれくらいローカルで作業されているかわかりませんが、原稿と胸を張っていえるもの投稿してほしい。筆の巧拙以前に真剣さが伝わってこない。
2006-07-10 11:09:56【☆☆☆☆☆】君夜
僕の意見も皆さんと同じで、少し酷すぎですね。皆さんも言っているように、何もかもが唐突過ぎて、ちょっとついていけません。
ちゃんと修正しないと、排除対象になってしまうので、早めに直した方が良いと思います。
あと、最後に人の意見をどうこう言うつもりはないですけど、加々美さんは何に共感したのか書いてもらはなければ、同一人物か友達が採点しているように見えます。
一応、期待はしている作品です。
2006-07-10 15:13:19【☆☆☆☆☆】天宮
 はい。皆様、すいませんでした。これ唐突ですね。なので、書き換えようとおもいます。内容はほぼ同じ。けれど一からやり直そうと思います。主人公は変わり、男にします。本当にすいません。ゆっくり、分かりやすいよう、やっていきたいと、そう思っています。みなさんがくれたコメント、ありがとうございました。またこんな作品ですが読んでくだされば嬉しいです。
2006-07-15 20:12:57【☆☆☆☆☆】黒崎 凛
「外に出ると車の中“での”暖かさはもう無くなっていた。」、、この文章での「での」の使い方には違和感を感じます。と、「多分、後編からが面白くなると思います」←コレはなんの意味ももちませんよ。本文で勝負しましょうヨ。。。今後に期待するとの意味も込めまして辛口の評価をさせていただきます。
2006-07-16 02:47:31【★☆☆☆☆】一読者
コメント、ありがとうございます。…そうですね。少し変でした。気づいてくださってありがとうございました。
2006-07-16 12:55:39【☆☆☆☆☆】黒崎 凛
 >岡篠白兎。自分勝手。自信過剰。生意気。傲慢。冷静。妥協しなくても生きていける。

 前書きからの抜粋なんですけど、小説というのは、自分勝手で自信過剰で生意気で傲慢で冷静で妥協しなくても生きていける人物を描くのに、自分勝手で自信過剰で生意気で傲慢で冷静で妥協しなくても生きていける人なんです、とだけ書いてそれでオシマイだったらぜんぜん足りないんですね。そんなことを言わなくても読み手に自ずから、自分勝手で自信過剰で云々なキャラクターだよなあと感じさせるような筋立てだとか、ドラマの展開だとか、エピソードの挿入だとか、そういう作業が必要なんですね。
 自分勝手で自信過剰な人物の肖像画を書くことを、例えばイメージしてみる。彼或いは彼女はどういう風貌をしているのか。自分勝手な人間とはどういう表情であるのか。立ち止まって考え出すと驚くほど深い。深いけれど一枚の肖像画を為すのはそれでも多く不足する。
 イージーにやろうと思えばね、その絵のタイトルに「自分勝手」とつければいい。鑑賞者はタイトルだけを見て自分勝手ねと言葉上の理解はしてくれる。だけれどもその描かれた風貌に自分勝手な人物というものを感じることはないのですよ。それと全く同じなんです。なまじ言葉を使えてしまうからそれでいいと考えてしまうかもしれないけれど、そうじゃないんですね。小説というのは、言葉と言葉の組み合わせによって絵を描いたり音楽を奏でたりする作業のことです。
 慌てなくていい。遅筆でもいい。だけれども、着実に、頭の中に鮮明なイメージを積み上げていかなければならない。自分勝手な人間とはどういう人間なのか、どういう人間性に対し書き手である自分は自分勝手さを感じるのか。そういうことをじっくり考える必要があるのですね。
 本当のものかきとは、原稿を書いているときだけものかきをやっているのではない。365日、24時間、言葉を組み合わせていないときでも自分の中のイメージを追いかけているものです。日々の中でいろいろ忙しいでしょうが、どうかがんばってください。
2006-07-22 22:14:05【☆☆☆☆☆】タカハシジュン
 コメント、ありがとうございます。前書きの「自分勝手」まだ、というかぜんぜん自己中さがつたわらない文ですいません。これから、がんばって岡篠白兎を描いてみたいです。
2006-07-23 13:05:32【☆☆☆☆☆】黒崎 凛
コンバンワ。初めましてです。
皆様の申される通り少々判りにくいところはありますが、私的には好きな物語です。
この先も期待&応援しますので、頑張って下さいっ
2006-07-23 22:19:14【☆☆☆☆☆】珠洲
珠洲さん、コメントありがとうございます。まだ短いですが、お褒めのコメント嬉しかったです。この先もがんばって書いていきたいです。
2006-07-24 11:00:14【☆☆☆☆☆】黒崎 凛
 恐らくこの先はご本人も書きづらいのではないでしょうか…。登場してからここまでで主人公のキャラクターがはっきりと出ていないところを見ると辛いと思います。チャンバラに興味がないならもっと陰気なキャラにしたりとか(本を読ませるとか無気力感を濃くしていく)曖昧でいたい気持ちは痛いほど分かりますが……。
 すいません大口でした。また覗きに来ようと思っています。
2006-08-20 14:02:42【☆☆☆☆☆】黒井あか
計:1点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。