『闇との決別』作者:恋羽 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角5161文字
容量10322 bytes
原稿用紙約12.9枚
   

 
 
 闇が、僕という存在を満たしていた。
 その年、僕は両目を一時的に失明してしまった。角膜の損傷、医師にはそう告げられていた。
 絶望、怒り、そんな感情はほとんど持たなかった。もとから僕など、生きている価値のない人間なのだと自覚していた。神がそんな僕に宣告したのだ、お前は光の無い世界を生きるべきなのだ、と。全てが暗闇に満ちた世界に生きることこそが、お前の下らない人生の運命なのだ、きっと神はそう僕を嘲笑っているのだ。心から、そう思っていた。
 角膜移植のドナーが現れるまで入院しているように言われた時には、一体何の冗談なのかとあきれ笑いを浮かべてしまっていた。もう放っておいてほしかったのだ。僕のことは放っておいてくれ、どうせろくな人生は送れないんだから、と。病院から追い出されて、凍える街角で野たれ死んでしまうのが僕の運命なのだから。
 彼女に出会うまでは、そう思っていた。
 


 その年は、桜が、水しぶきが、紅葉が、雪が、綺麗な年だった。僕はそう伝え聞いている。



 手に触れられることが少し嫌になっていた。顔も知らない他人に手を触れられることが。
 僕は、顔を見たことすら無い看護婦に強引に手を引かれ、外の空気を感じられる場所へと連れ出されていた。
 院内の中庭にポツリとただ一本、忘れ去られたように揺れている桜の木。そのゴツゴツとした無骨な感触が僕の手の平に浮かび上がってくる。春のほこりを舞い上げる強い、生命の薫りを帯びた風の中、僕はその幹に手を触れていた。そこに、確かに生命の息吹を感じた。
 いや、それは少し違うのかもしれない。僕がそう感じたのは、彼女がこう伝えてくれたからなのだろう。
「桜の花びらが、風に舞ってますね」
 その言葉と同時に、僕は自分の頬に触れる微かな、優しげな、柔らかな花びらを感じた。
春、僕の心は少しずつ絶望とは違うものに満たされるようになっていた。
僕の手を引く彼女の手の平に、もっと深く触れられることを望んでいた。
その春、僕は光の失われた心に、違った光が注がれる感触を確かに感じていた。



 夏は僕の暗闇にさえ息苦しい暑さをもたらしていた。
 冷房の効いた室内にいても、夏のジリジリと照りつける日差しが窓から感じられ、僕の肌は夜の間も海に行った後の日焼けのようにひりひりと痛んだ。それでも僕は、窓を開けておくように彼女に言っていた。
 不思議な感覚だった。僕の瞳からは光が失われているのに、この僕の腕や顔には今も光が照り付けている。肌を焦がすほどに強い光が。
「今日も暑いですよ。外。それでも散歩に行くんですか?」
 もちろん、僕はいつも彼女の問いかけにそう答えた。心からそう思っていた。彼女との大事な散歩の時間を僕が欠かす訳が無かった。
 エレベーターで一階へ降りる時も、中庭へ続く廊下を歩く時も、彼女は僕の手を握っていてくれた。暑さのせいで手の平にかいた汗に、僕のこの気持ちがあふれ出て彼女に伝わってしまうんじゃないか、そう思うと恥ずかしくて、でも人混みを歩く時にギュッと強く手を握ってくれる彼女に、僕は心から感謝していた。そして、手を触れられるのに姿を知らない不思議な関係性が、もどかしくて苦しくて仕方ないと思いつつもずっと続いてくれることを願ってしまってもいた。
 中庭の小さな噴水が、その日から稼動を開始する、という話を彼女から聞いていて、僕は少し楽しみにしていた。
 もちろん僕の目は見えない。春の桜の淡い色彩を実際に目で見ることは出来なかった。
 でも、それは本当に辛いことなんだろうか? 目が見えていることが、そんなに幸せなんだろうか?
 遠くから聞こえてくる噴水の、その雄々しく吹き上げる音と、しぶきがタイルに叩きつけられる軽快な音。そして時折吹く熱風になびく夏の桜の木。目が見えていた時、これらの音の作り上げる世界を感じることが出来ただろうか? 
 そして、人の言葉の持つ美しさに、僕は気付いていただろうか?
「水しぶきが、綺麗です」
 ただそれだけの言葉が僕の体中を駆け巡り、ただそれだけの言葉に僕は体を震わせる。彼女の、時間にすればたった数秒間の言葉達が、僕の暗闇に美しい光に満ちた水の柱を浮かび上がらせ、僕は吹き上げる水の偉大さに感動するのだ。
 そしてその偉大なる水の前に立ち尽くす僕の傍らには、空白に身を固めた彼女が確かにその手を握り返していた。



 秋は雨が多く、散歩で外へ出ることが出来ない日が続いた。
「今日は、喫茶店に行きますか」
 陰鬱な、ただただ降り続く雨の音響の中、彼女は僕にそう声を掛けた。三日もベッドから動いていない。そのせいで随分と落ち込んでいた僕を見て気を使ってくれたのだろう、本来は看護婦と患者が一緒に入ることが許可されていない最上階の食堂兼喫茶店に僕を誘い出してくれたのだ。
 いつもとは違う場所へ向かう緊張感があった。エレベーターまでのいつもと同じ廊下ですら、どこか違う国を歩いているような不安感に押しつぶされそうになる。聞き慣れた看護婦の声ですらいつもとは何か違うような気がして、僕は気が気じゃなかった。
 そんな時、僕はただ彼女の手の平をいつもよりも強く握り締めていた。あまりにも強く握ったので、彼女は小さく「痛いです」と僕に言った。
 喫茶店に入ると、僕はコーヒーの、彼女は紅茶の食券を買った。パジャマ姿のままだった僕はお金を持っていなかったので、彼女がおごってくれた。
「遠くの山が、紅葉してますよ。すごく綺麗です」
 窓際の二人用の席に腰を落ち着けると、彼女は微笑みの混じった声でそう言う。僕は彼女の方を向いて軽く笑った。
「何かおかしいですか?」
 彼女が訊いても僕は笑顔をやめなかった。
「こうしてると、恋人同士に見えるのかな、と思って」
 僕がそう言うと、彼女は黙り込んでしまう。どうしたんだろう、彼女の表情がわからないから不安になる。
 僕は彼女が今どんな表情をしているのかわからなくて、彼女の手を探して両手を前の方に差し出す。
 その差し出された右手を、彼女は両手で捕まえて、そして引き寄せた。
 僕の右手が、引かれるままに彼女の胸元へと誘われる。手の甲がそこに触れると、柔らかな感触の中にいつもよりもずっと近い彼女の鼓動があった。その胸の鼓動は激しく、早鐘のように高鳴っている。そして、その振動が伝播したように、僕自身の鼓動も早まっていく。
 何か言わなければならない、そう思えば思うほどに頭は空回りしていく。何も思いつかない。彼女の鼓動を、僕の鼓動が追い越してしまいそうだ。
「コーヒーと紅茶をお持ちしましたぁ」
 その声が、二人の距離をいつも通りの患者と看護婦に戻してしまう。僕はテーブルに肘を突いて、行き所を失った手の指を組み合わせていた。
 鼻にコーヒーの香りが届く。苦味に酔ってしまうほど濃厚な、久々に嗅ぐその香りに僕はしばらく言葉を失ってしまった。
「砂糖は、いくつ入れますか?」
 彼女は何事も無かったかのようにそう言うとテーブルの上でガラス瓶を小さくカチャカチャと鳴らし、自分のカップに砂糖を入れた。
 小さな、シュッという音が、店内で談笑する男女の声にまぎれて聞こえてきた。
「……角砂糖?」
 僕は彼女にそう問いかけた。彼女はええ、と答える。
 そうか、今の音は、やっぱり角砂糖の溶ける音だったんだ。様々な声が行き交う中に、ただ一瞬起こった角砂糖の溶ける音。
 それは悲鳴だったんだろうか。角砂糖が角砂糖で無くなる時、彼らが発する悲鳴のようなものだったんだろうか。
 いや、違う。角砂糖が甘味に変わるとき、彼らが発するのはきっと歓喜の声なのではないか。自らの役割を全うできる喜び。彼らの役割はガラス瓶の中で煌くことではなくて、コーヒーや紅茶にその身を溶かし、一服の時間に甘味を加えることなのだから。
 そんなことを考えていると、テーブルの上で組まれた僕の手に、冷たいガラス瓶が触れる。ガラス瓶の中で、小さな角砂糖が揺れる感触が伝わってきた。
「自分で入れられますか?」
 僕は頷いてみせると、瓶の蓋を開けて小さなスプーンに一つ角砂糖を乗せると、自分のカップを手探りで探してそこに角砂糖を落とす。
 ポチョッ、シュッ。角砂糖が溶ける。
 僕はガラス瓶からもう一つ角砂糖を取り出すと、それを自分の口の中に放り込んだ。



 冷たい窓ガラスの感触が、冷ややかな外気を僕に感じさせてくれた。秋は雨音を伴って通り過ぎ、木枯らしの吹きすさぶ音だけが僕の暗闇には残された。
「いよいよ、明日ですね」
 彼女は僕の衣類をかばんの中にしまいながら明るくそう言ってくれた。
 そうだ。明日、いよいよ明日。
 僕の目に光が戻される。運命の悪戯に惑わされ、失われていた光が。一度は全てを諦めさせた暗闇が晴れる日が、とうとうやってきた。
 ある日は心から待ち望んだ光。ある日はもういらないと叫んだ光が、また僕の目を満たす。
 何も心配が無い、とは言えなかった。眼球の痛みは無いのに、彼女を呼びつけて困らせた日もあった。一度失われたものをもう一度手にする不安が、僕の心を支配していた。
 彼女を知りたいと望んだ。彼女を自分自身の確かな光の中で見つめ、いつも手を引いてくれた彼女の手を、今度は僕が握り締めたいと望んだ。そして彼女を見つめ、抱き締めたいと。
 だが、不安で仕方がない。もしかしたら僕は、暗闇の中に生きていたからこそ彼女を愛しいと思ったのではないか。本当は、心の中で勝手に作り上げた幻想の彼女に酔っているだけなのではないか、と。闇が僕の眼から取り除かれたとき、僕は目の前に存在している彼女を本当に愛することが出来るのか。
 そして、その日は不安な闇の中で震えている僕を無視して訪れた。
 診察室に足を踏み入れる時も彼女は僕の手を握っていてくれた。いつもは心強く思えていたその手の平が、今日は遥か遠くに感じられた。触れているのに、いつもならばそこから感じられる彼女の想いや優しさが、何一つとして感じられない。
「では、包帯を取りましょうか」
 医師がそう言うと、僕の頭に巻かれていた包帯が、彼女の手によって少しずつ緩められていく。目に加えられていた微かな圧迫が徐々に消えていく。
 やめてくれ! そう叫びたい気持ちを、僕は何とか抑えつけていた。
 一度は暗闇の中で一生を終えるのも悪くはないと呟いた。それが運命なのだから放っておいてくれと望んだ時もある。孤独な暗闇の中で死んでいくのが自分にはお似合いの人生なのだ、と。
 しかし、いつの間にか慣れてしまったこの暗闇が、今僕から奪われようとしている。失いたくない、そう願ってしまう。いつまでもこの暗闇で日々を暮らしていく生活を心から願ってしまう。
 包帯は僕の目から離れ、心許ない、自分の意思で開くことの出来る目蓋だけが僕の瞳の前に残されていた。もうすでに眼球は目蓋の裏に赤い血潮を感じている。
「さあ、開けてみてください」
 医師がそう呼びかける。僕はその言葉を受けてもまだ躊躇していた。まだ自らの内を満たす暗闇に縋ろうとしていた。


「大丈夫ですよ、さあ、目を開けて」


 声が、いや、声ではないのかもしれない。僕の手の平に触れたその感触こそが、僕にそう訴えかけているのかもしれない。
 いつも繋いでいたその手の平が、手の平ではなく僕の心に直接触れ、そして僕を励ましている。
 ああ、僕は何を躊躇っていたのだろう。
 何を怖がっていたのだろう。
 震えるこの目蓋を押し上げて、僕がこの手を握り返すのだ。
 

 さあ、光を求めて。


 そして、僕の前に降ろされていた帳は開かれる。
 優しい闇から光に満ちた世界に、僕は歩み出す。



 光に満ちた朝、僕は煌く世界で、自らの瞳に彼女の姿を宿した。
 僕を導いたその手の平、優しげなその顔立ち、思い描いていたよりもずっと美しい、その姿を。
 何も恐れることなど無かった。ただ彼女を信じればよかった。導きのままに進めばよかったのだ。
 満ち足りた闇から抜け出した時、僕は大いなる光を、傍らでいつも輝いていた光を、自らの眼ではっきりと見つめていた。
 


                  完


2006-01-09 20:53:36公開 / 作者:恋羽
■この作品の著作権は恋羽さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 ええ(恥 お読み頂きありがとうございました。
 ええ。たまには僕だって純愛物を書いてみたりするんだぞ、という(恥 
 映画では描けない感覚と思考の世界を、つまり小説ならではの空間構築を主眼に書いてみたいと思い書き上げてみたのですが、いかがでしたでしょうか。角膜移植の為に一年間も入院させられることは無い、という部分については、一応設定はあったのですがいまいちしつこかったので省きました。気にならないように書いたつもりですが、もし気になりましたなら一言頂けるとうれしく思います。
 それではお読み頂きありがとうございました。お気付きの点について、感想、批評等、頂けましたら喜ばしく思います。
この作品に対する感想 - 昇順
 一年の歳月の流れをたった原稿用紙16枚に詰め込めながらも淀みなく、小川のように緩やかに流れていく物語。珠玉と形容することを躊躇わない、充実した内容だと思った。ときおり心の闇、醜さを見せながら、けれど全体を通して清々しさを感じられる。SSであることがその清々しさの一因であるのは承知しているが、それだけでなく、自らの心情を主人公に重ねて(それも、青春の恋のような淡く酸っぱい思いを込めて)書かれているのだと思う。だから、この書き物からは“生”を感じられた。駄本を百冊読むより、この書き物のような生きている小説に一冊でも多く出会いたいものだ。
2006-01-09 22:23:27【★★★★☆】clown-crown
2006-01-09 22:52:06【☆☆☆☆☆】メイルマン
 書き手自身がね、センチメンタルな自分自身の感覚と、明確に書いていくという意思の中に込める想いとしてのそれと、そういうところの均衡が取れなくなって破綻するとか、赤面してしまうほど過剰になってしまうとかね、そういう部分がこのタイプの作品を書く上で問題になってくるよね。その断面から見た時に、この作品は非礼な言い草だけど合格点に達していると思うよ。何ていうんだろう、すべからくそうだと思うけど、小説ってただ言葉を連ねるだけではダメなんだよね。綺麗な言葉、口当たりのいい言葉を単にチョイスして並べていたって、その言葉の向こう側にあるものを感じさせないとマネキンなんだ。そうじゃない作品は、作品を解して書き手と対話することができる。ひとつひとつの言葉に込められた書き手の思いや気持ちを、直裁でなく類推していくことができる。構成、特に季節に関する演出はちょっと過剰かなとも想ったけど、つまり作り物めいてしまってその分口当たりはいいけれど折角の絶妙な均衡で密着した書き手と作品との世界の深化のチャンスをやや損なうところがあるように見えてしまうのだけれど、誠実な作品だと想う。それは書き手として感じることをしっかり言葉に込めているからだよね。
 もちろん、作り物を作り物として見せて読ませるタイプの小説も重要だし、魅力がある。でもこういうタイプの作品こそがベーシックでスタンダードであるといいもんだとつくづく思います。
2006-01-09 22:54:58【☆☆☆☆☆】タカハシジュン
失礼、点数つけ忘れ。
2006-01-09 22:55:31【★★★★☆】タカハシジュン
 早速お読み頂きありがとうございます。恋羽です。

 clown-crownさん。
 あの、ありがとうございます。clown-crownさんからこれほどのお褒めの言葉をもらったのはいつ以来でしょう? それ以上に気になるのは、もしかして雑談板の甘口に合わせてこの感想を書き付けたのではないかという疑問なのですが、いや、clown-crownさんはそんなくだらないことで点数を付けたりはしないだろうということを認識していますから、本心からお褒め頂いたと考えていいだろう、と自分を納得させておきます。ありがとうございました。

 メイルマンさん。
 ありがとうございます。……これはお読み頂いたという意思表示であるということで受け取ってもよろしいのでしょうか。というか、寧ろ『読んだが特にアドバイスをするところは無い』ということと受け取らせて頂こうかと思うのですが、よろしかったでしょうか。お読みいただきありがとうございました。

 タカハシジュンさん。
 ありがとうございます。いや、僅かな綻びからでも物語を破壊してもらって全然構いませんでしたよ? ただ執拗に季節感に関する部分を否定し続けてもらっても構いませんでした。書いていて気持ちは良かったですね。今まで押し込めていた部分を前面に出したので少し違和感はあったかもしれませんが、これが元の僕の描いていたものなんです。最近はあまり書いていませんでしたが。うん、ただただ純粋に物語を書こうと思っていました。それゆえにこの小説の物語性の主幹である季節感が、主人公の感情を抑えつけてしまっていたかもしれませんね。それが移入度を低くしてしまう部分かもしれません。アドバイス、ありがとうございました。(いきなりレスが四つに増えていたんでびっくりしましたよ(苦笑 

 それでは。
2006-01-09 23:18:14【☆☆☆☆☆】恋羽
 上のはミスです、すみません。この物語に何か足りないような、私自身何かを見落としている気がするのですが、それの正体を把握できず歯がゆく思っております。私自身のことはさておいて…。
 後半の空行の多用が残念でした。クライマックスなので空行を使ったのだと推察するのですが、「大丈夫ですよ、さあ、目を開けて」で急に主人公との同化から覚めてしまいました。おそらく主人公の彼女への主観の美化が急に表面化したこととも関係あると思います。それでも主人公の瑞々しい本心をさらけ出して綴られる物語の心地よさ、読者に想像を喚起させる設定と、単語・思考選択の妙で主人公との一体化感がとても高く、それだけでも充分楽しめました。面白かったです。
2006-01-09 23:25:08【★★★★☆】メイルマン
 メイルマンさん、ご丁寧にありがとうございます。
 何か気になる部分があったのでしょうか、それは僕も果てしなく気になるのですが、メイルマンさんがいいというのなら僕もそうさせていただきましょう。
 メイルマンさんから点数を頂いたのは初めてですね。大変うれしく思います。何か少しでも進歩しているように感じました。
 なるほど、後半の部分の改行の多用に覚めてしまいましたか。美化し過ぎ、ですか。……受け止めさせていただきます。しかしお褒めの言葉をいただいて、本当に嬉しいです。楽しめた、というのが一番の褒め言葉ですね。ありがとうございました。
2006-01-09 23:40:28【☆☆☆☆☆】恋羽
作品を読ませていただきました。いままでも他の作品を読んではいたのですが、私が感想を書くと不愉快な思いをされると思い遠慮していました。しかしこの作品だけは感想を書かせてもらいたい想いで、失礼を顧みず書かせていただきます。
光のない世界がこんなにも美しく、情景豊かだとは思わなかった。書き手の持つ情景が「闇」というフィルターを通して、更に光り増して描かれていて心地よかったです。そしてそれを上回る人間の想いの心地よさ。全てを投げ捨ててしまってがらんどうになった主人公が、他者を介在して再構築される喜び。上手い言葉は浮かびませんが、移ろう季節と人の心が織りなす一幅の絵を見ているようでした。
それでは失礼いたします。
2006-01-10 01:12:22【★★★★☆】甘木
 読ませていただきました。読んでる最中に?と思ったことを順に述べさせていただきます。「角膜損傷で両目を失明」物理的に傷がついたのかウイルス性の疾患なのか、そこらへんが判然としませんで冒頭からつっかかってしまいました。「生きる価値のない人間だと自覚」ほう、どうしてなのかしら「神様が宣告してあざ笑ってる」ふーん。それなら、最初から入院なんてしなければよろしい。医師に何を言われようが、家に帰るなり「街角で野たれ死」ぬなり富士の樹海に直行するなりすればよろしい。「忘れ去られたように揺れている桜の木」忘れ去られたように揺れるとはどのような様子でしょうか?貧弱な樹なのでそう見えるのでしょうか?いまいちピンときませんでした。「冷房の効いた室内」「窓を開けておくように」個室なのでしょうか?電力の無駄に思えてなりません。それともカーテン全開の間違いなのでしょうか。「もちろん、僕はいつも彼女の問いかけにそう答えた」『もちろん〜答えた』ではなく、『もちろん』は『そう』に当たるのですね。一瞬?でした。「不思議な関係性が〜続いてくれること」関係性というと「性質」の意ではないでしょうか?『関係性が続く』/『関係が続く』どっちでもいいですかね。「しぶきがタイルに叩きつけられる」/『しぶきがタイルを叩きつける』ホントに細かい事言うようでアレなんですが、Aがしているのか?Aがされているのか?ここらへんの微妙な違和感が作中に頻出しております。私だけが感じるのかもしれませんが。「噴水の、その雄々しく吹き上げる音と、しぶきがタイルに叩きつけられる軽快な音」、「噴水の」は後の2文にかかるのでしょうか?「噴水の吹き上げる音」「噴水のしぶきがタイルに叩きつけられる音」。。。なんだか違和感があるんですよねえ。「しぶきがタイルを叩く軽快な音」、、うーむ。すいませんグダグダとナガナガと。総じての感想を最後に述べさせていただきますと、純愛物なのコレ?と。主人公は四季の変化に感動します。それはわかります。しかしどれも失明して初めて感じられるといった特別さは感じられない。ちょっと自然を感じたいなあと意識すれば誰でも感じられるレベルの話です。「失明」「暗闇」という特殊な状況から感じたにしては弱いかな、と。「生命の薫り」「水の偉大さ」というように字面でその特別さを表現しているように見受けられますが、所詮、声に出して読んだときに響きがよろしいだけかと。で、ですね。眼球以外の感覚器官で自然を感じるという素晴らしさに気づかせてくれたのは看護士さんの言葉のおかげだと主人公は思うんですね。「水しぶきが綺麗です」「桜が綺麗です」、、そんだけ?こういった「数秒間の言葉達」を聞くと次の瞬間「僕」はやたらと感動します。で、そこから恋心が芽生える。なんでそうなるの?作中の「言葉」つまり人物の台詞にそんな重大な意味を感じることはできませんでした。感謝の気持ちはわくかもしれませんが、リスペクト/恋心な感情に飛躍するのがピンときません。「手つなぎ」に関しても僕視点なのが原因なのか一方的な思い込みにしか読めませんし、喫茶店の場面も!?な感じでした。おかしいでしょう、と。僕の感覚も超人的な域に達してます。口の中で角砂糖が溶ける感覚なら分かりますけど、、。以後、手術への不安と妄想が続きます、理由のよく分からないネガティブ妄想、人生超悲観論。「僕」視点でおなかいっぱいです。美化し過ぎとの声もありますが、たしかに綺麗です。綺麗だけど何か足りない。何なのでしょう
2006-01-10 13:50:21【☆☆☆☆☆】一読者
何かが足りないのが逆に良いんじゃない?という取り方も出来ますな
2006-01-10 19:04:42【☆☆☆☆☆】取るに足らない読者
お久しぶりです。お元気にしてらっしゃいますかー。読ませていただきました。今までのショートよりは、今回のほうがとても読みやすかったし分かりやすかった(笑)話としては良かったです。でももやもやしたものが残りました。あ、一読者さんの仰っているところとかぶりますが、「もちろん僕はいつも彼女の問いかけに〜」というところ、私には分からなかったです。読解不足かもしれませんが、すみません。面白かったと思うんです、思うんだけれども……。これは仕方のないことだけれど(私も失明した主人公を書いたことあるし)、この文章は、「眼の見えている人間」の文章だな、というのをガンガン感じてしまったのです。一人称だから余計にそうなのかもしれません。あくまで私には、ということですが、「眼の見えている人間」が書いている文章(当たり前の話なんですけどね)だと感じてしまったから、「僕」についていけなかったのかもしれません。私の今いる状況が状況だけに、こういう捻くれた見方をしてしまうのかもしれませんが、これも一読者の感想ということでお許しください(笑
これが「眼の見えている人間」が書いている文章ではなく、本当に「眼の見えない人間」の心の中だと感じられ、シンクロできたならば、この作品は私にとって非常に深いものになったように思います。次回作も頑張ってください。
2006-01-10 19:39:15【☆☆☆☆☆】ゅぇ
今晩は。読ませて頂きました。純愛物に対する感想、苦手なんですが覚悟して読んでください。まず、唐突な自己否定から物語が展開され、何故、主人公がそこまで己を否定していたのか最後まで分かりませんでした。それ故、彼女のお陰で自己肯定に至ったという流れが空々しく、彼女に対しての恋愛感情も、素直に飲み込めませんでした。恐らく最初の非常に強い自己否定が無ければ、すんなり入っていけたと思います。まあ、これはあくまでも私の主観ですが。と、後、春夏秋冬の表現に関して言うなら、盲目になった事の無い者が語るのはかなり難しいかと思いますが、実際の体験者の言葉を借りて貴方様が語ることは決して難しい事ではないと思います。しかしながら、今回の書き物から、私にはその視覚以外の五感で感じる四季を充分には感じ取れませんでした。視覚が生きていた時の【感覚】が記憶する四季の美しさとの対比などを織り交ぜたりしても良かったのではないかと思ったり。貴方様になら描けたと思いますし。
正直申し上げますと、恋羽様のSSなので、かなり期待して読んだのですが、心地よさを感じられませんでした。かなりの辛口で申し訳ありません。次回に、期待しております。
2006-01-12 00:42:12【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
拝読しました。綺麗な事象が描かれた書き物でした。ですが純愛とは云えませんね、綺麗な恋と云えば納得は出来得ますが。感情を伝えるなら先ず人間を通さなければなりません、そこへ同調させるか共感させるかして人間性から見たものを読者は理解しなければなりません。感情や思考は物質界には形の無い非常に定義し難いものだから、個人の感じ方が全く異なってしまいます。ですから、何かしらの方法を以て書き手は読み手を頷かせなければなりません(肯定という意味ではなく、飽く迄理解させるという意味です。そこから先は嗜好の範囲であって、それをどうこうは不可能です)《という考えを京雅がもっているという前提条件をおきます》。そう考えると、この書き物には人間が居ません。人物像が無いのです。背景事情に触れることなく物語は進行します。それだけに読む進めるのは容易く綺麗に映るのですが、中身の無い饅頭のようなもので、味気が無いです(皮が美味しいんだよ、と云われれば、それもそうですねとしか云えませんが)。何がどの経路を辿って思考が動いているのか、理解出来得ないのです。若しも人間性が示されていたなら(その起因が解っていたなら)、どう感じるかは兎も角作中の感情を理解し共感出来たかもしれません。私個人が共感出来得なかった要因がもう一つあります。ゅぇ様が書かれている「眼の見えている人間の文章」の件です。私にはそれが「眼の見えている安心感、安定感の下に書かれた文章」に思えてしまいました。私は二、三分両目が見えなくなっただけでも相当な恐怖でした、故に直接共感は出来得ません。また、人物像が描かれていないので、理解や納得も出来得ません。矢張り私には、愛を語るからには人間性、人物像は欠かせないものだと思います。それと、時間軸のことです。「眼の見えている安定感」が、偏った見方をすると「眼が見えるようになってから書いた文章」にもみえます。作中表現が詩的じみているのも、何だか訥訥と語っているように思えるのも、後になってから書いたような、日記か手紙か記録文か、そういう類だからかもしれません。他者の思い出を聴いても、容易く共感は出来ませんし、物語を共有したことにもなり得ないのではないか、と思うのです。尤も、そこを作者が意図して書かれたか書かれていないかということは考えていませんが。長長と書きましたが、共感し得る条件がもう一歩あれば、なるほど事象は輝き美しく思えたかもしれません。作者が書き物に同調するあまり人物像を書かなくても良いと思ってしまったのか、それとも最初から書くつもりはなかったのか。些か、綺麗過ぎました。闇と決別したと云うよりは、必要なものまで藪の中に投げてしまった印象です。次回作御待ちしております。
2006-01-12 09:58:39【☆☆☆☆☆】京雅
 皆様、お心のこもったご感想をありがとうございます、そして返事が遅れてしまって申し訳ありません。

 甘木さん。
 お読み頂きありがとうございます。ええと、なんと言っていいやら……、まず初めに。申し訳ありませんでした。不愉快云々という感情は全くありません。むしろ自らの感情の操舵能力が稚拙さを、そして貴方を傷つけてしまったことを重ねて深くお詫び申し上げます。何が悪かったかといえば、うまくは言えないのですが、僕の中に湧き起こった一種の嫉妬と焦り、そしてある一つの願望なのでしょう。貴方は本当に優れた方です。あれ以降幾つかの作品を読ませて頂いて、つくづくそう感じさせられました。だからこそ、言葉を変えて心の中にある願望をもっとはっきりと伝えたいと思います。
「ライバルになってくれませんか?」
 よろしければ、お返事をお聞かせください。もしNOであったとして、貴方との関係がこれきりになってしまったとしたら、陰ながら貴方の今後のご活躍を心から願わせて頂きます。もし作中の切り取る部分を間違っていたなら、貴方はこうして感想を書いてはくれなかったのかもしれない、そう思うと決して選択は間違っていなかった、と感じています。僕には決して出来ない勇気の要る書き込み、ありがとうございました。

 一読者さん。
 お読み頂きありがとうございます。まず、貴方の嗜好に合わないものに仕上げてしまったこと、お詫び申し上げます。表現には様々な手法がありますが、特に今回は好みの分かれる手法を用い、好みの分かれる出来であったことをよく知った上で投稿させて頂きましたので、むしろこういった表現の一つ一つに違和感を感じられるバランス感覚をお持ちの一読者さんは、おそらく僕などとは比べるまでも無く優れているのでしょうね。そして、その違和感は表現以外でも本来描かねばならない場面を悉く切り刻んでいるための弊害でしょう。手術前の緊張を切り、手術前後の場面を切り、更には主人公や彼女の背景までも切り刻んだというのは、ある意味で全く挑戦でした。描くべきなのはわかっていても、描き上げてから下らない、邪魔だ、これでは他と大差ないものになる、と考えた愚作者と優れた読者の方とのギャップなのでしょう。恋愛でもなく、また季節でもなく、失明の恐怖でもない何かを描きたかった、などと綺麗ごとを並べたところで所詮は負け犬の遠吠えですね。受け入れられなかったのだからいくら言い訳を並べたところで、無意味です。なんにせよ、こうして否定していただけたことに意味を見出させていただきます。ありがとうございました。

 取るに足らない読者さん。
 これは、一読者さんの続きと読んでいいのでしょうか? ありがとうございました。

 ゅぇさん。
 お読み頂きありがとうございます。ええ、元気にさせて頂いております。ええと、まず表現について。「もちろん、僕はいつも彼女の〜」は、わかりにくくて申し訳ないのですが、もちろん、の部分が単独の、鍵括弧で囲うべき部分なのですね。すみません、わかりにくくて。表現の下手さは今に始まったことではありませんが、反感を抱かせるような文章を作ってしまったこと、申し訳なく思います。目の見える人間が書いている文章と感じさせてしまった、とのこと。時間の流れをより鮮明にかっちりと描けば、とりあえずの納得を得られるようには書けたのですが、というか、これは二度書き直しましたが(最初は少なく見積もってもこの3倍、二度目はこの1.5倍程度の文量がありました)、その時により多くの読者の方に理解して頂く為の部分まで削ってしまったのでしょう。いえ、ひねくれた見方などとは思いません。たとえどんな評価であろうと、正面から受けさせて頂きます。ゅぇさんの評価が僕の等身大の姿なのかもしれないですから。ただ、これは絶対に三人称で書いてはならないものだったとだけ、下らない人間ながらも言わせて頂きます。本当にへたくそですみません、ありがとうございました。

 ミノタウロスさん。
 お読み頂きありがとうございます。すみません、ご期待を裏切る形になってしまったこと、申し訳なく思います。ええと、貴方の仰る事に対して反論する資格など無いことを重々承知の上で、なのですが、実際に失明を体験した方から聞いたことをそのままに描くことは、残念ながらできません。今まで多くの方と出会い、沢山の体験を聞かせて頂きましたが、僕はそれを描こうと望んだことはありません。本当に沢山の、それも強く生きている方に沢山のことを教えて頂いたのですが、それはあくまで僕が伝え聞いただけのことなのであって、僕は表現者としてそれを踏み台に進みたいとは思えないのです。リアリズムに徹することを本望としている訳ではありませんし、自分自身の体験をそれそのまま語るだけでは正直満たされません。だから今回のこれにしても、本来であれば目隠しをして街中をうろついているべきだったのですが、そして必要であればそうしてもかまわないというだけの創作という行為に対する強い思い入れがあって、あえてそうしませんでした。つまりは僕自身の表現力の甘さがそう感じさせてしまったのでしょう。結局、それは僕という存在自体の稚拙さに通ずる部分なのでしょう。ありがとうございました。

 京雅さん。
 お読み頂きありがとうございます。ここまで綺麗にすっぱりと好みが分かれるのなら、最初から「好みが分かれる小説です」と書いておけばよかったかもしれませんね。今となっては遅いことですし、そんなことを書いて自分を守るのも下らないですね。ここまで顕著に分かれるものだとは正直考えていませんでした。
 まず。貴方の推察は的確に作者の意図を捉えています。日記や手紙、目が見えるようになってから書いた、この部分。文章の多くに過去形の言葉を用いているのはこの為ですね。ゅぇさんからいつもご指摘を受けている「文の末尾の豊かさ」というものを度外視していますので。ただほんの少しだけ違うのは、物語云々ではなく、ストーリーに共感する云々ではなく、小説特有の一体感のようなものも同時に意図していたという点です。メイルマンさんがご感想の中で主人公との一体感という言葉を用いられていますが、余計な条件余計な背景を用いることでその一体感を害したくなかったというのが唯一つ、貴方の感想と僕の意図との差異ではないでしょうか。そして、今回僕はいつも以上に読者を意識しました。果たして書いているものと自分が一体であったかどうか、正直わかりかねます。自分自身と主人公との距離をより空けて、読者の方へと追いやった、つもりでした。ですが、おそらくは中途半端だったのでしょう。もっと質感を持たせなければならなかったのです。僕の意図を完遂する為には、背景を消し去っても違和感を感じさせないだけの、むしろ霞ませるほどの表現力が必要だったのです。その意味で、僕はまだまだ甘い。恋愛も季節も全てにおいて、まだ表現が足りない。饅頭の皮だけで楽しませることが出来ていない。そのことを申し訳なく思います。そして、書き直しが足りず、読み返しが不足していたことも。微妙なものを絶妙なものに変えることが出来なかったことを。ありがとうございました。
2006-01-14 12:20:01【☆☆☆☆☆】恋羽
なんだか不安なので、もう一度。ええと、「もちろん〜」のくだりは了解いたしましたー。あとですね、反感はまったく抱いていないので誤解のないようにお願いします。けれど、この作品に関しては時間の流れを鮮明に書いても、やはり「眼の見える人間」の文章だという感じは抱いてしまうような気がします。私は「主人公」が「眼が見えるようになってから書いた」文ではなくって、「眼の見えている作者」が書いた文章だな、と思ってしまったのです。三人称で書いてはならないものだった、というのは分かりました。ただ、三人称で書いてはならない「一人称で書くべき」ものであればあるほど、細心の注意を払って書かねばならないと思ったりもしました。これは自分に対しても思ったことです。その題材が「眼が見えない」とか「耳が聴こえない」とか、そういったことなら尚更だと思いました。この作品に感想をつけてから自分の作品をみて、「これも眼が見えてる人間の書き方だ」と愕然としました(笑)自分も含めてですが、こういうのは書き手が真摯かつ真面目な態度で書いていても、そう思えない出来上がりになってしまうことがあるようです。私は今現在、病気のために左目の視力を失いつつあるので、ようやくこのような考えに至りました。実感したんです。眼が見えない人がこの作品を眼で読むことはできないけれど、視力を失いつつある立場から見ると、やはり少し甘えた書き方だったかな、とも思ってしまったのでした。私の言いたいことが伝わらなければ、言葉足らずか表現不足です、ごめんなさい(笑)伝えられたかなぁ。しかも本当に失礼な物言いになりました。それも重ねてお詫びします。ああ、あとそれと(まだあるのか)「くだらない人間ながらも」とかそういう言い方、申し訳ないけれど私にはしないでください。突飛な要求をして申し訳ありません(汗)
2006-01-15 00:12:12【☆☆☆☆☆】ゅぇ
私は書き手になったことがありません。言い逃げ可能な卑怯な立場をとっています。その上で。これは、仰るとおり好みの問題なのでしょう。私が優れているわけありませんで、もちろん、作者様が負け犬なわけでもございません。私はどちらかというと、スマートより、ふっくらのほうが好みです。グダグダの紆余曲折で全体を見たとき不恰好でも。苦労を切り捨てるよりも残して晒してくれるほうがいい。
2006-01-15 00:42:49【☆☆☆☆☆】一読者
 再びのご感想、ありがとうございます。
 
 ゅぇさん。
 すみません、言葉が足りず、言葉で十分伝えることが出来なかったこと、深くお詫び申し上げます。正直、僕は貴方に嫉妬と恐れのようなものを感じているのですね。だからこそ、謙ってしまうのです。そんな方法しか誠意の示し方が思いつかない僕をお許しください。
 短い文章にまとめようという弊害があるというのは間違いないことなのですが、そうですね、確かに実際に失明を経験した方から見れば所詮は甘えと綺麗事の世界なのかもしれません。そして、そういった方に読んでいただくことを想定していなかったというのは僕の短慮が故でしょう。申し訳なく思います。出来ることを最大限遂行しなかった僕の手抜きなのでしょう。その点、本当に努力が足りなかったのでしょう。こだわりを持つ前にまずは自分がすべきことを完璧にこなすべきでした。
 申し訳ありませんが、今健康体で様々な恐怖と対峙していない僕には、貴方に「大丈夫ですか?」や「可哀想に」という言葉をかけることは出来ません。それが僕なりの貴方への想いです。
 五感の一つを失うことに対して、残念ながら今僕は一切恐怖を抱けない段階です。もし失ったらそれまでかと簡単に諦めてしまえる自分がいます。理解できないとは思いますが、それが僕の人生に対する姿勢です。その部分の鈍感さが小説にのりうつってしまったのかもしれません。もし失うとして、その時自分がどれだけの衝撃を受けるのかはまったくわかりませんし、理解しようとも嘆く人を馬鹿にしようともしません。それが唯一僕が僕の人生に定めたルールです。
 あと、反感についてですが、例えば本当に失明した誰かがこの小説を誰かに読み聞かせられて、もしくはゅぇさんのように病院というこの小説に密着した環境にいらっしゃる方が読んで敏感に反応されたということは、はっきり言って僕の想定の外の出来事でした。つまり、その点についての配慮が全く為されていなかったのです。これは単純なことに見えて甚大なミスです。少なくとも僕にとっては。垂れ流しの小説を書くつもりなど全くありませんから、これは僕にとって重要な出来事です。たとえどんな想いの下であろうと、そのことに気付かせて下さったゅぇさんに感謝致します。ありがとうございました。

 一読者さん。
 例えば僕が優れていたとして、一読者さんが自身創作を経験したことがないとして、「お前らには一生わからないんだよ」と偉そうに読み手を切って捨てることは出来ません。例え誰の言葉であろうとも、この文章に違和感を感じた、という言葉を切り捨てる気は全くありません。万人に評価される作品を作り上げることは、今現在の僕にとってはハードルの高すぎる挑戦でしょう。しかし、だからといって諦めて屁理屈をこねるのは自分自身に納得がいかないでしょうから、ああいった風に否定されたこと、深く受け止めさせていただくつもりです。感想をいただいてから、僕が潰れてしまおうが自殺してしまおうが結局のところそれは自分の問題であって、気にかけていただく必要はありません。苦労を切り捨てたのもまた作者個人の問題で、読み手の方々にはその点について一切気にかけることなく思いの赴くままに感想を書いていただきたいと望みます。ありがとうございました。
2006-01-15 03:47:21【☆☆☆☆☆】恋羽
計:16点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。