『絵のない絵本』作者:桃栗 / t@^W[ - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
地球が意思と体を持ち、化身となって地球に降り立ったお話です。題名の通り絵本調となっています。
全角1165文字
容量2330 bytes
原稿用紙約2.91枚

 その昔、この世界はとても便利な世界でした。
 勝手に洗濯をしてくれる箱や、夜になると強い光を放つ硝子玉。更にはもの凄い速さで走る鉄の塊などがあり、人々は毎日快適に生活していました。
 しかし、それらのモノは世界に毒でした。
 木々は枯れ、空からは石像がとける雨が降り、川は黒く濁り、魚や動物がたくさん死にました。
 それを見た神様は怒り、こういいました。
 
 『チキュウは人々に恵みを与える。だが人はチキュウを壊す。この違いはなんだ?』
 
 『それは意思。人は意思があるが、チキュウにはない。どんなに悲しくとも恨めしくとも、意思がなければ何も出来ぬ』
 
 『ならば私はチキュウに意思を与えよう。そして人と同じカラダを』
  
 『私はしばらく眠る。私が寝ている間の事はチキュウに任せる。愚かなる人を生かすも殺すもチキュウの自由だ』
 
 『そして人々よ、チキュウの思いを知るがよい。そして悔いよ』

 『今までしてきた事を』


 神様は眠り、それと同時にチキュウに1人立つ少女が現れました。その少女の髪は地球を思わせる青。そして右眼は太陽の赤、左眼は月の金でした。少女の名はキィ。
 キィは自らの体の上に降り立って、100年その地に住む人間の観察をしました。
 そしてすべてを滅ぼしました。
 誰もいなくなった世界にキィは嘆きました。
 そしてその泣き声に神様が目を覚まし、地球に新たな種を蒔きました。そして神様はキィにすべてを託す事を告げ、消える前に一言いいました。
 『私が消えるという事は、もう種を蒔く者はいなくなる。どんなに人が過ちを犯そうとも、消してしまっては取り返しがつかぬという事だ。だから、常にその目で見るがよい。もう2度と泣き叫ぶ事がないように』
 そして、神様は消え、キィは世界を周る旅に出ました。

 神様の蒔いた種は少しずつ大きくなっていきました。人は火を使う事を覚え、食料を育て、ゆっくりゆっくり進化していきました。
 そしてキィはある時、稀に人の中に不思議な力を持つ者がいることに気が付きました。そして、わかったのです。
 神様が新しく蒔いた種は地球を傷つけるような技術を持っていませんでした。そして、技術の代わりに、地球の自然の力を借りた魔術がどんどん発達していきました。
 安心したキィは旅をやめ、ある一点に留まる事にしました。山奥の、誰も来ないような森の中に洞窟をつくり、そこで一時眠る事にしました。木々たちはそんなキィを護る為により一層深く生い茂りました。
 その間、人はどんどん進化をし、世界に大小いくつもの国が出来ました。人は新世界に名をつけました。
  
   『マジック・アート』 魔術の芸術
  
 
2005-10-08 23:34:43公開 / 作者:桃栗
■この作品の著作権は桃栗さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 これは私が前に投稿したモノの改良版です。
 以前使っていた名前をすっかり忘れてしまったので、新しく桃栗と名乗らさせていただきます。
 神様の最初の方の台詞は独り言です。きっと神様はしゃべる相手もいない孤独な存在なので。
 いつかキィが人間を滅ぼすまでの100年間を番外編としてかけたらいいなぁって思っています。あとマジック・アートを舞台にしたお話も。
 
この作品に対する感想 - 昇順
初めまして、恋羽(ここは)という者です。読ませていただきました。丁寧な語り口で非常にすんなりと読むことが出来ました。淡々とした切り口で、細々とした部分を見せずあくまで全体を見つめる視点で、という感じを受けました。素敵な物語なのはわかるのですが、多分プロローグ的な要素が強いように見える今回の投稿分、これが今後にどのように繋がっていくのか、期待して見せて頂きました。夢のある話だなぁ、と。それでは、今後の展開を期待しながら、失礼します。
2005-10-09 08:56:32【☆☆☆☆☆】恋羽
 初めまして。そう言えば魔法と機械は同時には発展しないという話を聞いた事があるなあ、なんて思いながら読ませて頂きました。
 さてこのお話、「絵のない絵本」という事でしたが、私には地図のかけらのような感じがしました。まだ広がっていくお話、まだ深まっていくお話、そんなイメージです。楽しみにしています。うーん、恋羽さんと同じような感想になってしまいました。失礼致します。
2005-10-09 17:49:23【☆☆☆☆☆】シルヒ
作品を読ませていただきました。人間も自然の一部であり、文明も自然の産物であるような気がするのですが……。文明=悪と断罪するキィの心情がないためお話が唐突すぎるように感じます。人類がいなくてもマクロ単位で見れば生物は山ほどいるはずなのに、キィはなぜ嘆いたのでしょう? 視点を人類=悪と縛りすぎているのでは。ガイア(地球の意識=キィ)から見れば人類もバクテリアも同じレベルではないのでしょうか? 神様とキィの価値基準をもっと明確に提示してほしかったです。長々と辛口の感想を書いてすみませんでした。お気に障られたら謝罪します。では、次回作品を期待しています。
2005-10-10 23:43:21【☆☆☆☆☆】甘木
拝読しました。全体的に簡素に纏められているように思え、物語の根底に据えるべき世界観、序章、若しくは神話的なものに感じました。まだ区切る前の段階、ここからどこまででも膨らませてゆけそうで、書かれるならぜひ読みたいと思います。次回作(更新)御待ちしております。
2005-10-11 03:50:10【☆☆☆☆☆】京雅
計:0点
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