『if綴り』作者:Town Goose / b - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
 もしもの話
全角2124.5文字
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原稿用紙約5.31枚
 人を殺しても罪にならぬ。人を殺すのは当然のことに過ぎぬ。
 その様な世界があったならば、と、そのようなことを夢想する自分はもしや異常なのやも知れぬ。
 唯其に在れど自分は考える。もし法により殺人を裁かぬ、それが当然であるならば、どうなってしまうのだろうか、などと戯事のようなものを。
 何、戯言ならぬ戯事に過ぎぬと思えど、夢想に罪になる事は無いであろう。ならばその様な夢想を殊更にこの場に一心に書き綴ることは自分にとって楽しいことやも知れぬ……
 

【人を殺しても罪にならぬ】

 それは単純に人間の理性なる物を無くしてしまうのであろう。このような事ならば人類は滅亡するやも知れぬ。この世界の住人はさぞかし普通なのであろう。もしかしたら、今の自分達のような生活をしているのやも知れぬ。
 近所付き合いも良好であり、お隣同士の田中さんと斉藤さんはとても仲良しなのやも知れぬ。
 ただ殺人が容認されるならあさ田中さんが斉藤さんにおはよう、と声を掛けたならば殺される。というようなこともあるに決まっているのではなかろうか。
 むしろ殺人鬼などはテレビでも放送されることなく当然のこととしてそこら辺にいるのではなかろうか?偽名など使われず、「切り裂き田中さん」などという恐ろしいこともあるでなかろうか?
 ここで、げに恐ろしきは人間の性なのであろう。
 自分は性悪論のような、かの哲学者の言葉を借りて書き綴る気はさらさら皆無にあるし、人間など基に在るものは悪に他ならぬのではなかろうか?等と言うこともあるまいて。
 だが、自分なるものが人間を語れるほど卓越した人物であるかどうかは疑問であるが、人間なるものは、縛られなければなんでもする。そういうものなのではないだろうか?何、人は常に人が殺したくてたまらぬ、等と壊れたことは言わぬとも。
 ただ、駄目と言われなければ、人間と言う者は「必要でなくても」するのではないだろうか?
 無駄な行動を起こすのは人間だけではないか。自分の小さき知識の中、その様に記録されている。

―――つまり、このif綴りに結末を加えるならば、人間は縛らなければ存在しえないものである、と、結論を加えるのが正解なのやも知れぬ。


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 文学に魂を売ったような女性の山田さんが初めて秋葉原に行(ゅ)く。その様な事があったならば、と、そのようなことを夢想する自分はもしや異常なのやも知れぬ。
唯其に在れど自分は考える。もし山田さんが秋葉原に行ってしまった、それが事実であるならば、どうなってしまうのだろうか、などと戯事のようなものを。
 何、戯言ならぬ戯事に過ぎぬと思えど、夢想に罪になる事は無いであろう。ならばその様な夢想を殊更にこの場に一心に書き綴ることは自分にとって楽しいことやも知れぬ……

【山田さんが秋葉原へ行く】

 山田さんはまず、秋葉原の駅で驚くのやも知れぬ。駅に張られる萌えキャラと評されるものが描かれている物をみて山田さんは「萌え」とは何だと疑問に思い、右手に持った国語辞典をぱらぱらと捲るのである。
 そしてそこには「草木の芽生えの意」等と書き綴られており、顔に掛けた眼鏡がずるりと汗で落ちそうになるのやも知れぬ。
 そして山田さんは人混みに紛れてとあるメイドカフェに紛れ込んでしまうのやも知れぬ。そしてお帰りなさいませご主人様、と言われ戸惑うのである。
 しかし、山田さんはカフェであるならばと何かを頼む事もありえる。
 そこで「ドジメニュー」なる変わったメニューを発見しそれを頼んでしまうのである。そうすると、オレンジジュースが運ばれてきて、それを持ってきた店員さんがこけて、オレンジジュースを山田さん目掛けぶっ掛けられるのやも知れぬ。
 そのオレンジジュース代を換えの無いまま払わせられると、気分を一新しようと山田さんは本屋へ行くのである。
 しかし、秋葉原の本屋が何処に売っているのか山田さんは知らぬ、よって道行く斉藤さんに聞くところ、「アニメイド」なる場所を教えられるのやも知れぬ。
 そこで山田さんは本を買おうとするのだが、文学的な本はどこを探しても見つからぬ。そして、悲しみに明け暮れて秋葉原の道端を歩いていた山田さんはとうとう泣いてしまうのである。すると何故か周りをカメラをもった男たちに囲まれて写真を撮られてしまうのやも知れぬ。そこでまたもや聞く「萌え」と言う言葉を理解せぬまま、山田さんは疲れ果て、自分の世界へ戻ってゆくのである……。
 
―――このif綴りに結論を加えるならば、やはり身分相応、自分の居場所にいることが一番の安全であるし、道を踏み外さぬのやも知れぬ。と結論するのが正解なのやも知れぬ。


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 もしもの問題に答えを綴る。if綴り、無駄に自己満足であるがこのようなことを書くことは楽しい。この綴りにいつ簡潔な完結があるのやら、それは自分にも分かることが無いのやも知れぬ。だからif、この物語が続くのであれば、自分が、何かに疑問を感じ、それを前提とした話なのであろう……
2005-10-03 01:57:51公開 / 作者:Town Goose
■この作品の著作権はTown Gooseさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 自分のやりたいことをやってみたかったのです。って、何も考えず、自分のやりたいことをずっと書いていたらこんなものが出来上がっていました(汗 なんか自分、異常者っぽいです(危
 新しい書き方や表現方法をしてみたかったんです。ご感想、指摘、宜しくお願いします。


一言

異常なる自分の遅筆のせいで、作品が終わる前に過去作品のほうへ行ってしまった(泣……向こうでも地道に頑張ります。
この作品に対する感想 - 昇順
拝読しました。言葉のつかい方等正しいかどうかは能く判らないのですが、奇妙さがあって楽しかったです。「もしも」と言うのはひとの思考経路を垣間見せてくれるのかなと思ったりしました。秋葉原の件は兎も角、前半は、道徳を失うと言うことは本能と超自我・そこから形成された自我の関係性が崩壊しているのかなと考え、そうなるとひとは動物に戻り本来もっている独特の考え方(無駄なことも)すら失うのではないか、なんてつらつら思い、それは嫌だなと行き着きました。次回作御待ちしております。
2005-10-03 11:39:00【☆☆☆☆☆】京雅
作品を読ませていただきました。可能性の面白味ですか。誰でも一度は考えたことがある題材だけに興味深いですね。前半の可能性の提示と、後半の山田さんを例にした文章のリズムが違っていて、ややギクシャクしていた感じがしました。山田さんの例はおかしみを含んでいるのですが、読者から離れた書き方をしているようで淡白な感じがしました。山田さんの当惑などをもう少し書くとメリハリがついたのかな。可能性による自己の崩壊まで書いて欲しかったですね。では、次回作品を期待しています。
2005-10-04 08:13:48【☆☆☆☆☆】甘木
京雅さん

ふむ、超自我(スーパーエゴ)による良心の監視がなくなるわけではなく、そうですね、そもそもの良心の定義がずれてしまったような話なのです。超自我が薄れエス(イド)が突出すると言うわけではなく、その前提である、法則がずれてしまったのだと考えていただけたら幸いです。超自我、自我、エスの関係性で表すのならば、人間のエス、つまり本能、あるいは自我なる部分には「必要の無いこともする」と言う物があり、それが良心的にまずいものならば、それは超自我によって抑制されるわけです。しかし、その超自我なるものそれ自身に、「人を殺める」という事が道徳として問題の無いものとするとしたら、彼等、【人を殺しても罪にならぬ】の住人たちは道徳精神を失わずに、単純にイド、あるいは、自我によって当然のこととして人を殺してしまうということです。……何を書いているんだ自分は
 ご感想有難うございました!

甘木さん

 ふむ、そうですね。今自分で読んでみると妙にリズムが違う気がしますね(汗 同じ形で書こうと思っていたのですが多分甘木さんが言うように山田さんの話の内容にメリハリが付いていなかったのでしょうか。山田さんの話は起承転結の起のみを考え、ソコから彼女はどうなるのかを考えずに書いた作品でしたので、……それは駄目ですよね。ご感想有難うございました!
2005-10-05 00:07:52【☆☆☆☆☆】Town Goose
拝読しました。
発想が斬新というか、一風変わった感じがして楽しかったです。ですが小説やSSというものとは少し違った感じもしました。もう少し、淡々と述べる想像の世界に深まりがあっても良かったかなと思います。この語り口調は、個人的にはとても好きでした。では次回作、お待ちしております。
2005-10-05 01:06:02【☆☆☆☆☆】十魏
十魏さん

ご感想有難うございます。
 一風変わっている、と言われるのは自分の最大の幸福ですとも。ええ。
 ……なるほど、深みが足りませんでしたか。ふむ、自分の悪い癖です。なにか物語を勝手に自分の中で書き足してしまうようなことが良くありますとも(ぉぃ ご指摘有難うございました。精進です。
2005-10-05 02:04:33【☆☆☆☆☆】Town Goose
はじめまして。時貞(ときさだ)と申します。拝読させていただきました。非常に実験的で、前衛的な作品であると思いました。この手法は僕にはとても真似できないものがございます。ストーリー性を重んじる読者の方にはとっつきにくい作品のようにも思われますが、僕は心地よく翻弄されて楽しかったです。作品個性を重視して評価をさせていただきました。難しいことだとは思いますが、このような手法の中に更にミステリー的な仕掛けを施した、もう少し長い作品を読んでみたいと思ってしまいます。それでは、Town Goose様の今後の作品を楽しみにお待ちしたいと思います。
2005-10-05 18:01:33【★★★★☆】時貞
時貞さん

 このような変な文章を前衛的と評価していただけることは自分にとってとても嬉しいことです。今回は本当に実験でした。もうまさに何を書いているんだ、と言うくらい、自分でも意味不(強制終了
 もともと変わった人とか変わったこととかが大好きなのです。
 はて、ミステリーですか……難しいですね(汗 元々伝わりにくい書き方であるし、それにさらにミステリー特有の謎が加わるとなるととんでもなく難しい、読みにくい作品になってしまうような気が(多汗
 それを可能とするまでの技術を自分は持っていない(泣
 ……いや、泣いている暇はありません。それだけの技術を手に入れるまでです。ご感想有難うございました!精進です。
2005-10-05 22:03:53【☆☆☆☆☆】Town Goose
お久しぶりです。作品読ませていただきました。「〜かもしれぬ」って何か古典ぽくて気に入りました。奇行や奇妙な感じで楽しかったです。何というのかな〜、真剣に読んで理解しようとする作品なのか。それとも簡単に堅いこと抜きにして読む。みたいなw
とにかく多要素で面白かったです。次回の作品待ってます。
2005-10-06 00:00:55【☆☆☆☆☆】朱色
朱色さん

ご感想有難うございます。いや、あまり深く考えてもらわなくてけっこうですよ。自分の思ったことを書いているだけですので……(汗
 古典ぽいですか。ふむ、古典なのでしょうね。
 いや、どうしても童話という言葉を見たとき、「童話はこういう風に言わないとだめだろ!日本昔話じゃ!」なんて事を考えてこのような形に落ち着きました。まあ、とにかく色々な書き方を試してみたかったのです。これからも頑張りたいです。それでは、有難うございました。
2005-10-06 22:17:55【☆☆☆☆☆】Town Goose
計:4点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。