『三世界』作者:緋陽 / b - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
争いを無くそう、と言う物語。
全角2010文字
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 ある所に天使と呼ばれる存在と、
 悪魔と呼ばれる存在と、
 人間と呼ばれる存在がありました。
 その三種族は同じ世界に住んでいて、一緒に暮らしていました。
 その世界では平和な暮らしがされていました。

 でも、ある日を境に変わってしまったのです。
 天使は悪魔の黒い羽の姿が醜いと言い、悪魔は天使の白い羽が気に入らないと言い、人間は天使と悪魔が空を飛べるのが羨ましいと言い、互いに互いを憎んでいました。
 その争いを見ていた神様はどうしたものかと悩みました。何日も何ヶ月も何年も。神様は悩み続けました。しかし、皆はとうとう、憎しみが爆発して、戦争を始めてしまったのです。
 互いに互いを殺しあって、たくさんの血が流れました。
 神様はそれを見て怒りました、そして考え付きました。
「種族で住む場所を変えてしまえば、争いは起こらない」
 そうして神様はさっそく皆を別の世界へと移動させます。
 天使は天空の世界へ。
 悪魔は地底の世界へ。
 人間は地上の世界へ。

 そうして、神様は一安心しました。これで争いは起こることは無い、と。
 神様が思ったとおりに争いはなくなりました。
 無駄な血が流されることはなくなったのです。
 しかし……。
 人間だけは違いました。
 他の天使や悪魔は同じ種族で平和に暮らしていると言うのに。
 人間だけは争いを止めません。
 ある人達は
「神様のため」
 と争いを始めました。
 勿論神様が喜んだりするはずもありません。
 
 ある人達は
「無駄な争いをなくすため」
 と争いを始めました。
 そんな事を言っても自分達が争いをしていては争いなど無くなりません。
 神様は悲しみました。

 ある人達は
「平和のため」
 と争いを始めました。
 本人達が争っていては、永遠に平和なんてやってきません。
 神様は嘆きました。

「どうしたものか。また争いが始まってしまった。こうなったら人間を滅ぼす以外に方法はない」
 神様は困った後に、決めました。
 人間達を滅ぼすことを。
 しかし、そんな中でも争いをしない人間もいました。
 その人たちを見て、神様は感心しました。
 人間にも心を持ったものがいるのだな、と。
 神様はその人達に力を与えました。
 争いをなくすための力を。
 これで争いはなくなる、と神様は心の中で喜びました。

 しかし、神様の思いどおりにはなりませんでした。
 力を与えられた、優しい人々が、神様に貰った力で世界を支配し始めました。
 やはり、血が流れ、争いは絶えずに。
 神様は諦めました。
 もうこうなっては人間を滅ぼさなくてはならない、と。
 なぜ、天使や悪魔達は皆で支えあって生きているのに、人間だけはこうも争うのか。そのわけがわかりません。
 神様は地上を異常にしました。
 人間には住めないような環境にしてしまえ、と。
 雨が降り、雷が鳴り、火が燃え上がり、土がひび割れ、木が倒れて。

 残されたのはそれに耐え切った少しの人間と、少しの動物達。
 こんなに少なくなってしまえば争いは起こらないのではないか、と神様は思いました。
 ならば、これ以上する必要もない、と考え、神様は異常を止めました。
 
 人間達は言いました。
「こんなことになるとは我々の争いをみて神様がお怒りになったに違いない。これからは争いをなくして、協力して生きよう」
 そこから人間達の支えあいが始まりました。
 ある時は笑い、ある時は泣き。
 ある時はいがみ合い、ある時は歌を歌って。

 年月がたって、世界はまた元に戻ろうとしています。
 神様は地上の様子を観ました。
 また、元のように争いはしていないか。
 心配になって観たのです。
 しかし、その心配は要らなかったようです。
 人間達はもう、いがみ合うことは有れど、争うことはしません。
 血は流れなくなりました。

 にこにことして神様は地上の世界に祝福を与えました。
 柔らかな陽の日差しを照らしました。
 穏やかな雨を降らせました。
 作物は育ち、地上の世界は豊かになりました。
「神様、ありがとうございます」
 人間達は感謝を込めて言いました。
 神様は嬉しくなって心が温まりました。
 これからも平和でありますように、と。
 神様は地上の世界を見守るのを止めました。

 
 神様は気分を変えて、天上の世界を観てみようと思いました。
 すると、なんと、平和だった世界が争いに満ちているではありませんか。
 神様は溜息をつきました。


 神様の苦労は、まだ絶えません。







2005-09-22 16:26:46公開 / 作者:緋陽
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■作者からのメッセージ
初の童話形式。いや、ほとんどが初めてだから関係ないか。はい、ほのぼのとした雰囲気を目指して書きましたが……書けてるかな(汗
題名と内容があってないのは仕様……と言いたいところですが私にはわかりません(笑
私が伝えたかったことは、争いを出来得るだけ失くせばいいのに、ということです。いや、此処で言っても仕方がないか。
では、感想をお待ちしております。
この作品に対する感想 - 昇順
読ませていただきました。肉付けするところや言い回しなど、もう少し変えたらもっとずしりとくるんだけどなぁ、という印象はありましたが、言いたいことはとてもよく分かりました。良かったと思いますよ♪次も頑張ってください。
2005-09-22 16:57:25【☆☆☆☆☆】ゅぇ
こんばんは、時貞です。拝読させていただきました。優しい文章でとても読みやすかったです。まるで聖書の中の一節にでもありそうな、教訓に満ちた内容で見事にまとまっていたと思います。ようやく人間たちも平和に目覚め、これで一安心と思ったら・・・・・・神様の苦労が忍ばれます(笑)最後の一行がいい味を出していると思いました。すらすらと読めて面白かったです。次回作も楽しみにお待ちしております。
2005-09-22 18:10:17【☆☆☆☆☆】時貞
こんばんわ、緋陽です。返信をば。
【ゅぇ様】
初めまして、緋陽と申します。以後お見知りおきを……いや、堅苦しい挨拶は無しにして(笑
肉付け、言い回し、どちらも鋭い指摘で御座いますね。いや、私の未熟さが窺えると言うものだ、うん。
伝えたい内容が伝わってくれれば此方としては嬉しい限りです。
読んでくださり、感想を下さり有難う御座いました。
【時貞様】
なるべく童話的文章を作ろうとしたけど、時貞さんの一言で安心しました。聖書を基にして書いたものだから、やっぱり似てるかなぁ(笑
其処まで内容を理解していただければ感激ですね。
読んでくださり、感想を下さり有難う御座いました。

最後に感謝の意を込めて、本当に有難う御座いました。では
2005-09-22 18:56:30【☆☆☆☆☆】緋陽
拝読しました。省略化・排斥化はしておりますけれど、メッセージ性は能く伝わってきますし、しかし真意として緋陽様は「争いは絶えない」と言うことを暗に語っているのかとも思います。人間も天使も悪魔(堕天使≒天使)も神のつくったものであり、争う自由いがみ合う自由も与えたのは、実はそのなかで争うことの無意味さ等を知ってほしかったからなのかと最近考え始めた京雅で御座います。簡素に纏まりつつ、楽しめました。次回作御待ちしております。
2005-09-23 09:16:28【☆☆☆☆☆】京雅
こんにちわ、緋陽です。
【京雅様】
すごいなぁ、其処までわかるんだなぁ、と感激してみる(笑
この作品は理科の授業で「人間はおかしくなっている」と言う話を聞いて、皆さんにもわかってもらいたい、と書きました。人間は同属を殺します。動物の世界では必要最低限の殺害しかしません(らしい)しかし、人間は自分の権力のために殺します。何故、そんな争いは絶えないのか、権力者達の考えることは解からないなぁ、とか。いや、そんなことは此処で語っても仕方が無いのか……。
失礼。私としては、其処まで作品(私)の意図を解かってもらえて嬉しく思ったりもします。現状で満足しないのは別に悪いことではないのだけれど、それが負の方向に働くと、こうなってしまうのですね。
これを呼んでくださった方々、どうか考えていただきたい。
これが私の考えです。
……此処で語る(略 ごめんなさい、京雅さん。返信かけてねぇよ(汗
そんなこんなで失礼します
読んでくださり、感想を下さり有難う御座いました。

それでは感謝の意を込めてもう一度。本当に有難う御座いました。
2005-09-23 15:53:53【☆☆☆☆☆】緋陽
初めまして、ミノタウロスと申します。童話好きとしては読まなければと思い、覗かせて頂きました。聖書を元にしているとのコメントを見て、むむむと血が騒いだのですが、脱線した感想になってしまうので、そこは触れないとして、人間はその成り立ちが抗争の繰り返し、平和を願うのはいつの世もありましたが、誰の平和を願うかで、その争いの単位が変わるのです。例えば国の繁栄であれば国同士、宗教であれば宗教同士。もし星のレベルであれば星間戦争まで発展する。戦争は無意味だ。確かにそう言い切れる物が多いでしょう。しかし、もしそれが独裁者に支配された国の民衆と権力者の戦いで、血が流れてしまったとしても私は間違いだとは思いません。難しい問題です。無神論者ではありませんが、無宗教論者の為、神って奴は人間が滅びようと繁栄しようとさして問題にしていないと思っています。何十億年の内のホンの一瞬の人間の繁栄など気にも留めていない。なんてね。結局宗教論ぽくなってすみません。戦争絶対反対派ですが、理由によっては……と思っているので、メッセージ色の強い作品の為、やたらに書き込んで、申し訳御座いません。色々考えさせられた話でした。作品中にもう少し作者の強いメッセージを入れても良かったかな、と思いました。失礼致しました。
2005-09-23 20:15:39【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
作品を読ませていただきました。簡略に書かれていることと、救済神話によく見られる構成はもう一捻りが欲しいと感じてしまいました。でも、ラストの神様の溜息はイメージが浮かびやすくニヤリとさせられました。ただ、なぜ人間だけが争い続けると言う流れだったのでしょう? 天使や悪魔はなぜ争い続けなかったのでしょう? 一度は争いを起こしたものが一切争わないというのは腑に落ちない展開でした。わけの分からない感想で済みませんでした。では、次回作品を期待しています。
2005-09-24 10:07:32【☆☆☆☆☆】甘木
おはよう御座います。返信をば。
【ミノタウロス様】
初めまして、今後ともよろしくです。
やはり考え方の相違は誰にでも在るものですね。貴方の考えを見て、「なるほどなぁ」と頷きました。うん、確かに争いは無意味と言えないものも在る。しかし、今の世の中は多分、無意味な争いの方が多いんじゃないかな? 例えばイラクとか、ね。いえ、これはあくまで私の考え。別に貴方様の考えを縛ろうとかは考えておりませんよ? 私も無宗教です。でもやはり、TVとかを見ているとこんな考えがふと浮かんできます。やはりね、色々と現代の問題を解決せずとも考えていかなくてはならないのだろうな、とか。
……なんか、自分の考えを押し付けているような書き方だ。すいません、気にも留めないでください。
読んでくださり、感想を下さり有難う御座いました。
【甘木様】
はい、めっさ簡略化してます。短く纏めようと思ったらこうなった……畜生、ハナから長編目指しとけばよかったかな(笑
争いのことはえっと……つまり簡単に構造を書くと。
人間平和だと天使か悪魔のどちらかが争いを始める→(争いを始めた方の)どちらかが平和になる→人間と争っていない方のどちらかが争いを始める→このループを繰り返す……。
という流れで神様の苦労を演じたかったからです(なんとわかりにくい説明か)まぁ、ようするにズレですね。平和と戦争の時間的ズレです。
どっかで戦争が始まった→終った→またどっかで戦争が始まった。みたいな。
うん、自分でも訳解からん(苦笑
読んでくださり感想を下さり有難う御座いました。

最後に感謝の意を込めて、本当に有難う御座いました。であ
2005-09-24 10:32:39【☆☆☆☆☆】緋陽
読ませていただきました。上下です。やはり、人間というものは最も争いの絶えない種族のようですね。まあ、今の世界を見てもわかりますが……。動物などは生きるためだけに、領土を守るために争いますが、人間は自分の土地だけでは飽き足らずに争いをしかけます。考えが違う者同士が争います。まあ、それは考える力というものが強すぎるからかもしれませんが。だから、少し読んでいて思ったのが初めのうちは協力し合うのはわかりますが、おそらく戦いが起こらないことはないと思います。すいません、なんか意味のわからないことばかりをいっております。これ以上ボロが出ないうちに退場します。それでは、次回も楽しみにしています
2005-09-24 13:54:22【☆☆☆☆☆】上下 左右
こんばんわ。返信をば。
【上下左右様】
そうですよ、戦いが起こらないことは在りません。この物語は永久にループします。平和な時代が続いても、また戦乱の世は来るのです。丁度三世界でジグザグに起こるような感じ。……うぅ、なんてわかりづらい説明だ。すいません、解かりにくすぎますねこれ。まぁ、そこら辺は自分の解釈で(マテヤ
読んでくださり、感想を下さり有難う御座いました。

それではもう一度、本当に有難う御座いました。でわ
2005-09-24 22:38:43【☆☆☆☆☆】緋陽
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