『神の悩み』作者:上下 左右 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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 人間が到底見つけることができないほどの高い場所に神様がいた。
 彼はこの世界をつくり、植物を作り、それを維持するための空気を作った。そして最後に動物と、どの生き物よりの知性の高い人間という生き物を作り出した。
 この神は何不自由なく暮らすことができた。食べ物がほしいと思えば作り出すことができ、家来がほしいと思えば自分で作り出すことができる。
 思ったことをなんでもすることができる。なんでも作り出すことができる。まさに全知全能の神だった。
 そんな神がある日、何もすることがなかったので地上の人間を見てみた。
 そこはそれほど大きくはない広間で、数人の人間の子供が遊んでいる姿がある。そして、子供達はこんな会話をしていた。
「俺の夢は冒険者になることだな」
 一人の少年が言った。するとその隣で少女が。
「だったら私の夢はそんなあなたのお嫁さんになること」
 夢?
 それは神が与えた言葉の中にはなかった言葉だ。ということは、人間が新たに作り出した言葉なのだろう。
 望んだことが何でも叶う神は、すぐさまその言葉の意味を知った。
 今のところ、すでにやることをほとんど終えていた神は、ぜひとも自分も夢を持ってみようとも考えた。
 しかし、考えるのはいいがそれは逆に虚しいことに彼は気がついたのだ。
 そう、彼は何でもできるのだ。試練というものなどは存在していない。難しいと思えることもない。
 次第に、神は人間達に対して怒りを覚え始めた。
 何故自分は夢というものがもてないのか。何故人間達は、何でもできる彼に持てないものを持っているのか。むしろ、どうして何でも手に入る自分にそれが手に入らないのかと。
 神は、ただただ自分の怒りを静めるためだけに地上に大雨を降らした。
 何日も何日も続く大雨。次第にそれは人間の住んでいる町を洗い流し、山を平らにしていった。
 それでも神の怒りは治まることはなかった。さらなる災害を地上に与え、人間達を困らせていた。
 気がつけば、その土地は人間が住めるような土地ではなくなっており、そこで生活をしようとするものは人間だけではなく、動物すらもいなくなってしまった。
 そのような状態になって初めて、彼は自分のしていた愚かしさに気がついた。
神はどうして自分がこんなことをしてしまったのかと後悔し続けていた。
 何日も何日も悩んだ。
 それから何十年も経ったある日、悩み続けている神はふとした拍子に下界を見た。
 するとそこには街ができているではないか。いや、正確には作ろうとしていた。まだ骨組みだけの家が並び、人間が住める状態ではなかったが、それは明らかに街と呼べるものを作っていた。
 彼らの心の中は、またこの土地に住めるかもしれないという希望があった。
 自分達の力で作ったこの街で家族や友達と共に楽しく暮らそうという夢があった。
 地上をそのようにしてしまったお詫びと言わんばかりに神はその街を作る手伝いをしようとも考えた。
 しかし、ここでひとつ引っかかることが生まれた。
 もしも私が手伝ってしまえば彼らの夢というものを壊すのではないのか。自分達で作った街で暮らすという夢を。
 神はまた悩んだ。彼らの持つ夢というものをどうしたら手に入れることができるのか。
 もう、地上の者たちにあたるようなマネはしない。だからこそ一人で悩み続けた。
 夢を持つことが夢になっていることも気がつかぬままに……。
 
 
2005-09-21 23:52:05公開 / 作者:上下 左右
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■作者からのメッセージ
こんばんわ〜。近頃がんばって役に立たない感想をつけさせてもらっている上下です。しかし、そのために私の頭の中は自爆寸前で御座います。おっと、そんなことはどうでもいいですね。さてさて、連載中のSS第二弾で御座います。いや〜、どうしてこうもSSばかり浮かんでくるのでしょうか……。早く死神を進めたいところなのですけど。どうも進まないもので。お許しを〜。でも、途中で投げ出すことだけは止めておきたいので何年かかっても書き上げます!!それまでに読者さんがいなくならなければいいですけど。それでは読んでくれた皆様方、また死神の方で会いましょう〜(宣伝?)
この作品に対する感想 - 昇順
こんばんわ。タイトルに惹かれて作品読ませていただきました。
ええと、批評等の類は苦手というか出来ないので、簡単に感想だけ書かせてもらいます。
頭のぼんやりした自分にもさらりと読めて良かったです。神様って人間臭いですよね。人間が作ったものだから仕方ないのかもしれませんが、それでも神様は万能な割りに人間臭い。夢を夢見る神様は、恋に恋する乙女に似ていると書いたらちょっと違うかもしれませんが、神様がこれぐらいの優しさをもって人間に接してくれたら良いのなーとか思います。あ、でも洪水は勘弁してほしいですね。怒らない神様って居ないのかなぁ……。次回のお話も楽しみにしています!
(こっそりと)うちの神様もこれぐらい優しかったりしたら良かったのになぁ…なんて。
2005-09-22 00:18:24【☆☆☆☆☆】水芭蕉猫
こんにちは、時貞です。拝読させていただきました。読み終わっての第一印象は、この短さの中で過不足無く見事にまとまっているな、というものでした。本当に実際の神話の一つを読んでいるような感覚で、興味深く読ませていただきました。夢と希望。どんな災害や逆境に立たされても、この二つを持ちつづけていれば人間は立ち上がっていけるものなのですね。最後の一行がとても効果的であったと思います。この一行が、まさにSSならではの醍醐味といった感じでした。上下様の《死神》の更新を待ちわびながら、次なる新作にも期待しております。
2005-09-22 10:42:12【☆☆☆☆☆】時貞
こんにちわ。拝読させていただきましたぁ!!夢を持つ事について面白おかしく、そして真剣に書かれている。そんな感じがした作品で、面白かったです。こういうお話大好きです。神様の視線から見ているので、ふんわりしていたし、最後になるほどぉ、と思えました!!
2005-09-22 16:14:47【☆☆☆☆☆】聖藤斗
こんにちは、ミノタウロスです。拝読致しました。うーん、色んな意味でノーコメントなお話だ! 上下様には1,2ヵ月後にその理由をお教えしましょう。(←忘れてるっちゅ―の!)その時またここに書き込みます。覚えていたら覗いてみて下さい。忘れた頃に感想数が増えているので(^O^)では、連載の続き、お待ちしておりますよ♪
2005-09-23 16:18:44【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
作品を読ませていただきました。うーん、夢かぁ。夢なんて悪夢しか見ていないような。ま、悪夢も夢のうち。見られるうちが花かな。などとわけの分からない書き出しで済みません。人間の営みが生み出す夢を解りやすい言葉で書き上げていて良かったです。欲を言えば、神様の夢に対する渇望をもう少しねちっこく書いた方が、怒りにまかせて行った行為が強調されて良かったのではないでしょうか。でも、正に夢のあるお話で楽しかったです。では、連載の更新及び新作を期待しています。
2005-09-23 21:59:30【☆☆☆☆☆】甘木
水芭蕉猫さん>
自分も批評のようなものはできないもので、水芭蕉猫さんへの感想のご無礼は少し多めに見てほしいです。実際、自分達は神というものを見たことがないので(宗教の方々はわかりませんが……)やはりそこら辺は全て想像というもので作らなければなりません。ということはやはり、人間くさくなってしまうのかもしれません。怒らない神様は……。今の人類を見ていたらいないのではないのでしょうか♪
(こっそりと)やさしいとかそれ以前に見捨てちゃってますからね(苦笑)
時貞さん>
自分としてはなんか物足りないかもしれないかな〜っとも思っていましたが、思ったよりは大丈夫だった見たいですね。一番の欠点は短かったことかと思っていたのですが……。夢も希望もない上下にこれが書かれたこと自体が奇跡のような気もしないこともないのですよ。でも、いろいろと伝わったのであればうれしい限りですね。やはり、SSっというのは中身も大事ですが最後の一文もかなり大事だとは思うんですよ。しめですからね。できるだけ毎回がんばっております。
聖藤斗さん>
読んでいただき有難うございました。こんな作品に面白おかしくっと言ってもらえてうれしいです。自分ではそういうのはよくわからないもので、やはり読んでくれた方々に言ってもらわないとわからないものです。自分はあまり夢っというものがないのですから書くのはかなり難しかったですね(どうでもいいわ!!)
ミノタウロスさん>
ノーコメントとはいったいどういうことなのですか!それこそがかなり気になるコメントとなっておりますが、本当ですね。本当に書くのですね。こういうことだけは覚えている上下なので、絶対に現れますよ(笑)よっしゃ!!絶対に忘れないようにしなければ!!それでは、また1,2ヶ月後にこの場所を覗いてみることにしましょう。

甘木さん>
あっ、悪夢だけなんですか。いくら夢があるのはいいと思いますが悪夢とは……。確かに、少しその部分は足らなかったかもしれません。神の夢のことは立ったの6行ぐらいでしたからね。う〜、やはり思いつきだけで書くには限界があるのでしょうか!もっと長くかこうかとも思っていたのですが精神力が(前作と同じ理由)このような作品で申し訳ない。それでは、読んでいただき有難うございました。死神の続きは……。もう少し?ですかね(^o^;

2005-09-24 15:44:04【☆☆☆☆☆】上下 左右
今晩は、忘れた頃にやってきました。そろそろ、お答えしなければなと思いまして。本当は、答えるのに2ヶ月近く掛かるかなと思ったのですが、今の調子だと永久に書けそうもないので、もう書くことにしました。まず、私が『月下に〜』を書いていた事を覚えていますか? ネタばれですが、実はあの話、神様が主人公のお話だったんです。滅びた地球を見つめ、嘆き、あの街を封鎖したお話だったんです。あの話を書き上げてから、答えようとしてたのですが、もし書くとしたらずーと後になるので、今答えちゃおうと。この話を読んだとき、自分が書こうとしていることに似ていたので。例えば、神が人間臭く悩んでいるところとか、夢をみたいと思う神とか、自分が書こうとしていた部分にかなり近かったので、この話読んだとき、もう、ぜーんぶ話したいと言う衝動を押さえるのに必死でした。だから、この話、私的にはかなり面白くて、短いながら、よく出来ているなぁって思っていました。身勝手な神様、私の思い描く神様って常に身勝手で、普通の人間より性質が悪い。上下様の書く神様はまさに、私が思っている神様像にリンクしすぎて面白かったです。
はあ、長々と、だらだらと書き綴ってすみません。はい!これが、書けなかったコメントでした。ではまた!
2005-10-20 22:12:23【☆☆☆☆☆】ミノタウロス
計:0点
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