『運命の機械』作者:らぃむ。 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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容量3656 bytes
原稿用紙約4.57枚
『運命の機械』

賑やかな繁華街にあるゲームセンター。ゲームセンター内にある診断機のような機会の前で、杏子と健司はソレを眺めていた。黒に近い紫色の機械に、パソコン位のディスプレイ。上にはディジタル時計のような、数字が表示される機能もついた機械が設置されていた。二人はなんのためらいもなく、なんとなくその機械に100円玉を投入した。ディスプレイがどことなく明るくなる。およそ二人がこの機械にコインを投入するまで、殆どのヒトが使わなかったのだろうが、とにかく、二人はその機械にコインを入れたのだ。
少し明るくなったディスプレイに、ぼんやりと文字が表示された。
「えっと…『誕生日を入力しろ』…?」
杏子がディスプレイに表示された分を読み上げ、それに従って健司がパネルをタッチして入力していく。
「お前の誕生日って11月だよな?」
「うん、19××年の11月2日だよ」
杏子が言った生年月日を入力して、『start』と書かれたパネルを押して、あとは結果が出るのを待つだけだ。
ディジタル数字が事細かに動いている。パッと表示された年は、それぞれ命を落すと予想された年だ――杏子が202×年で、健司が201×年だった。――二人はその結果を見て、特に何も思わなかったが、死因の欄は、少々気にかかった。

『射殺』

『爆死』

それぞれ、健司と杏子のものだ。機械にしては不自然な死因。
「――これって、ゲームの機械だもんね。」
心配そうに顔をしかめる杏子に対し、少し苦笑いしながら健司は杏子に言った。
「そうだな、大して気にする事ないよな、ゲームだし。」
二人はそう言って、今見た結果を忘れようとした。





―――――数年後。


とある国と、この国の近くの国が戦争を始めた。それは、大した理由もなく、唐突に始まった。この国も危険にさらされ、20歳以上の成人男性はこの戦争に駆り出された。その中に、俺も混じった。緑色の迷彩柄の戦闘服を着て、頭を守る為のヘルメットと、腰に巻かれた弾丸と手榴弾。そして、手に重く圧し掛かる拳銃一丁。弾の確認をして、敵地に向かって銃口を定め、隊長の合図で引き金を引いた。たまに運の悪い奴が敵の流れ弾にやられて殺されたが、仕方のないことだった。運がないだけ。時には命令で手榴弾を敵地に投げた事もあった。栓抜きして、一気に投げた―――まるでキャッチボールをするかのように―――不思議な感覚がした。たった今投げた弾が爆発して、何人もの人間をこの世から無くしたのだから。実感すら、沸かない。ただ、少量の罪悪感と、杏子に対する想いのみ。
この地にきてから、杏子のことを思わなかった日は、一度もなかった。毎日毎日、爆撃音と地響きしか聞こえないここで、杏子のことを想っていられる俺が凄いと思った位だ。――――今日も、人を殺す。何人も、何人も。死ぬ人間がいる、何人も、何人も。
不意に聞こえた銃声。ソレは、俺の身体を貫いた。数人の仲間が、流れ弾で死んでいるのは知っていた。まさか、自分もその仲間入りとは、思わなかったから。

「きょ…こ、き…ぅ、こ……―――」

そうして、杏子の事を思いながら、健司は絶命した。



――――――202×年

相変わらず、戦争は終わらなかった。それどころか悪化して、18歳以上の女性まで出兵しなければならなくなった。仕方がないのだ、男は殆ど死んでしまったのだから。数年前にこの戦争で死んだ健司。あたしの、愛した男は、この戦争で死んだ――いや、殺された。どう死んだのかは知らないが、とにかく、殺された。だから、あたしもこの戦争に出兵したのだ、自ら名乗りでて。
迷彩柄の戦闘服と、支給された拳銃に、手榴弾。ゆっくり撫でて、その感触を確かめた。――これらが、あたしの愛した健司を殺したのだ。そう思うと、ゾっとした。

何ヶ月か、あたしは生き延びた。凄く酷い惨劇を見ながら、あたしは生き残った―――だが、仲間と共に捕まったのだ。敵の、男兵士に。
久々に見た男。生易しく扱うわけがない。あっという間に、あたしらはエサとなった。男の、欲望のエサに。
悔しかった。
だから、隠し持っていた手榴弾の栓を引き抜いた。
あたしの、今出来る、最期の、一仕事。


――――――ドオォォオオォォン……‥



貴方と、共に。

*END*
2003-11-05 20:23:15公開 / 作者:らぃむ。
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■作者からのメッセージ
意味不明なネタでゴメンナサイ。もう少し表現力が欲しいです。
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