- 『犬やらつまようじやら』作者:おんもうじ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
- 全角1487.5文字つまようじが好きな僕は、灰色に染まって夜空になりかけのあの夕空へと希望を漂わす。
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原稿用紙約3.72枚
いつかあの子が僕のそばにいてくれる日が来たら――もしもの話だけれど
そんな淡い希望はふらふらと宙をまってつまようじのつま先にやどり、そして突き破られる。見渡す限りの空だって同じ。人の気持ちはすんなりと空を突き刺して、儚くどこかへ消えて行く。
僕は、学校の帰り道、公園で道草を食っていた。本当はもう家で家族が夕食を作って待ってるはずなんだけど、ちょっと今そんな気分じゃない。っていうかなんか、黄昏てみたいんだ。今の空の色は黄昏って言葉には少し割りに合わない気がするけど。
目の前を老人と子犬が通る。背の低いおじいさんだ。腰が曲がっているが、時折はしゃぐ犬にこらこらと微笑みつつ叱り付けながら、ゆっくりと公園の横の道を歩いていく。
犬か――。
まじしんどいわ。人間って。悩み、苦しみ、悲しんで、結局何を手にするのかっていったらそれは実体のないもので。
犬だったらそんな感情なんてないんだろうね。いっそ犬に生まれてきたかった――ってそれじゃああの子に恋できないじゃん。
僕は自分の愚考をすぐさま拒否し、ブランコの方へ歩いていく。風で揺れるブランコはまるで透明人間でも座っているようだ。僕をかたどっていてくれるならありがたい。僕はその型にぴったりはまるようにブランコに座る。
思えば、僕の生きてる意味ってあの子くらいなもんかな、だから辛いし、だから幸せでもある。もしあの子がどっかへ消えて行ったりしてしまったら――
僕は一瞬その考えの意味する恐怖に気づけないでいたが、それを実感すると、急に身震いする。
わおんっ。僕の存在意味は消えてしまうじゃないか。
僕には友達だっているし、家族にも恵まれていると思う。学力や身体能力だって人並みにはある。だけど、自分に存在意義があるなんて思うことはできない。でも、あの子を見ている瞬間、僕は生きていて良かったと思う。存在意義を感じられるのだ。それなのに、あの子がいなくなってしまうなんて――
でも、いつかその日がくるってことは分かる。だって、卒業するときには離れ離れじゃない。そりゃそれまでに想いを打ち明けたいよ。でも、もし想い打ち明けたとしてもだよ、こんな僕に心を許してくれる気がしないし――そうなったら、本当に物理的な距離と心理的な距離とに大きなギャップが生じてしまう。近くにいるのに、今よりもっともっと遠い存在になってしまう。そんなもどかしい事態なんて嫌だ。
要するに、僕は臆病なのか?
わおんっ。吠えてみたいよ。この空に向かって、自分に向かって――あの子に向かって。
後先考えずにさ、犬みたいにさ、噛み付いていきたいよ。
誰か僕に勇気をちょうだい。わんわんっ。
くぅんっ。
ふと前を見る。ベンチには……あ、あの子……と犬。さ、散歩かな???
僕の心ははちきれそうだ。こんなところにいたら、ハジケ飛んでしまいそうだ。
あの子はふと僕を見る。優しいあの笑顔。ななな……
僕の心ははちきれそうだ。そんな笑顔されたら、そんなつまようじで刺されたら、ハジケ飛んでしまいそうだ。
ああ、駄目だ、我慢できない――――ー!!!
僕は、隣ですやすやと眠る君にそっと囁く。
「あのとき、僕に勇気をくれたのは、僕を犬にしてくれたのは、結局君だったね」
Fin - 2005-08-03 19:42:13公開 / 作者:おんもうじ
■この作品の著作権はおんもうじさんにあります。無断転載は禁止です。 - ■作者からのメッセージ
こんばんは。おんもうじです。
いやー懲りずにまた行き当たりばったりな作品を作ってしまいました……すいません。(;_;)(;_;)ですから分量も文体も内容も非常に淡白、、、というか貧弱です。
今回はつまようじ、で文頭をはじめて想うがままに書きました。今までせっかくもらった皆様からの指摘もお構いなしです。す、すいません!いつかもっとじっくり作品を書いてみたいと想いますので、どうかご許しください。
想った事がございましたら、気ままに感想をお寄せ頂ければ光栄でございます。
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