『彼』作者:由愛 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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 男の人とあまり、関わりがなかった私に初めて彼氏ができた。
 相手は、バスケ部に通って2年のキャプテン。優司だった。二人は同じ部活という理由だけだったが、少しずつ関わりが多くなり、次第にお互いに惹かれて合っていった。
 優司は、優しく人当たりがいい人だった。いつも傍には友達がいる状態で、人気者だったのだ。
それに比べ、私は他の人よりも多少引っ込み思案な方だった。そんな私に優司からの告白。
 もう付き合いだして、半年が経つ。
この日も夏休みの補習が終わり、優司と私の二人だけで帰っている途中だった。
 外の暑さで汗が止まらない。
「茜。今日、この後何か用事ある?」
「うーん…今のとこはないよ? 何で?」
「いや…暇あったらさ、俺んち来て遊べるかなぁって思ってさ」
 初めてのデートの誘いに嬉しさのあまり笑みがこぼれる。
「うん! じゃあ、何か買って行こうか? コンビニでも寄ってジュースとかさ」
「あー…うん。家に何もなかったら困るしな」

二人は冷房がよく効いたコンビニに入った。少し冷房が効きすぎでわ? と思うほどの涼しさだ。
 外の暑さとコンビニの中の涼しさの差が激しすぎる。汗で湿った制服が冷やされて気持ちがいい。
「ねぇねぇ、このアイス買って行こうか。あ、後ー…このお菓子も」
 一人で食料を選ぶ私。
「俺は、これだけでいいよ。食うもんは茜選んでいいから」
 優司がカゴの中にポイっと入れたのはジュース一本だけだった。
「じゃあ、もういいかな」
 私たちはさっさと会計を済ませると、コンビニを後にした。

 外は、相変わらず日差しが強い。さっきまでの涼しさが恋しく感じる。
 アスファルトからの熱もかなりのものだ。
「あー、やっと家についた…あっちーなぁ」
 ガチャリと優司がドアノブをまわすと、中から生ぬるい風が吹き抜けてきた。
「俺の部屋、階段上って右の部屋だから。先行ってて。俺着替え持ってくる」
「うん。お邪魔しまーす…」
 私は、小さな声で挨拶を済ませると、ゆっくりと優司の部屋へ向かった。
家には誰もいないようで、物音すらしない。唯一聞こえるのが優司がガサゴソとタンスを開け閉めしている音だけだった。
 優司の部屋に入ると、キチンと整理されていて殺風景な感じの部屋だった。
意外にも、熊のぬいぐるみが所々に飾られている。
――――私があげた誕生日プレゼントだ
 先月、ちょうど誕生日だった優司に、あげた時計が机の上に飾られていた。
落として壊したと言って、表面には無数の傷がついてしまっている。
私は、少し悲しい気持ちになった。
 扉の向こうからバタバタと階段を駆け上がってくる足音が聞こえる。ガチャリと音と同時に
「ごめん、ごめん。着替えんの遅くて」
「ううん。全然大丈夫だよ。それより早くお菓子食べようよー」
 ガサゴソと、さっき買ってきたお菓子の袋を開け始めた。
 私は、お菓子を口にすると、優司がじっと私を見ているのに気づいた。
「ん?? 何? 何かついてる??」
「いや…別に何でもないよ」
 優司は何か言いたげだったが、私は気にもとめなかった。
「そっか…あ! 優司も食べなよ! これおいしい…」
 私が話してる最中だった。優司がいきなりキスをしてきた。
「ん…ちょっと…」
「…」
 優司はただ黙ったままだった。何も話さず、ただ私の唇をむさぼるように求めてきたのだ。
何故だろうか…。何故か、急に恐怖を感じ始めた。
 ガタイの大きい優司は、力も強く、キスをしながらいつの間にか押し倒されていた。
「ちょ、ちょっと…! 優司…?」
「……」
 ただ黙っている優司。私の中に恐怖がふつふつと湧き上がってくるのがわかる。
「あ、あたし帰る!」
 私が起き上がろうとすると、優司は無理にでも押し倒す。
抵抗するが、相手は男。力で敵うはずがない。
―――怖い
 優司は、乱暴な手つきで私の服を脱がそうとする。
「ちょっと! 優司? 本当にやめてよ!!」
―――もう嫌だ。帰りたい。逃げたい…
 無駄な抵抗を繰り替えす私に、優司がボソっとつぶやいた。まるで悪魔のささやきのように…
「黙れよ」
 普段優しい優司が、急変し、今はまるで獣のようになっている。
「や…やめて! 優司…!!」
 部屋の中で、私の泣き声と優司の荒い吐息だけが響いた…。

――――無駄だった。
抵抗も虚しく、もう事は終わっていた。放心状態でボーと立っている私。いつの間にか外にいた。
 どうやって外に出たのか、それすら覚えていない。
「……ぅ…うぅ…」
 溢れてくる涙は止まらなかった。思わずその場に座り込んでしまった。あまりの突然の出来事、恐怖心。
――何があったんだろう…。
自分でも理解できなかった。優司が、一瞬別人に見えた。
 私は、ゆっくりと重い腰で立ち上がると、フラフラとした足どりで家に向かった。
「…」
 もう、何も話す気力はなかった。
通り過ぎていく人々が、私の泣き顔を振り向いて見ていく。

 優司の家から、すでに1時間以上はたっていた。すでに辺りは薄暗かった。
私は、家につくと真っ先に自分の部屋に駆け込んだ。泣き顔を家族の人に見られたくなかったから…。
真っ赤に腫れた目は、鏡で見ると笑えるくらいだった。
 通行人が振り向く理由が今わかった。
「…ぷっ…はは…」
 何も面白くないのに、無理に笑おうとしている自分がいた。
強引なSEX。愛情のかけらもなく、涙だけの性行為。
―――嫌…
急に吐き気がしてきた。思い出すと吐き気が容赦なく襲い掛かる。
 そのときだった。いつの間にか、自分自身を傷つけていた。
「え…何で血でてんの…?」
 私にもわからなかった。何故、自傷行為をしたのか。ただ、無償に切りたかった。
 きっと、心に傷つくスペースがなかったのだと思う。
私は、気が狂ったように腕を切るのを繰り返した。

 あの日以来、私は精神病院に通っている。
たった一度の事だけど、心に深い傷を負った私は、未だ自傷行為を繰り返す。
―――いつになれば切らなくてすむの…?
私は、自分の手についた傷を見て思う。
 病院の窓から見える青空は、私の心の曇りを消すかのように綺麗だった。
2005-07-21 19:45:40公開 / 作者:由愛
■この作品の著作権は由愛さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして。何がなんだかわからない作品になってしまいました(汗。
自傷行為は、私も以前繰り返していたので、少し自分に照らし合わせて書いてみました(汗。
初めてなので、話がうまくまとまってないかと…涙
どんどん、指摘してくださいm(_ _;)m次に向けての参考にしたいと思います(何。
ご意見・ご感想よろしくお願いします。
この作品に対する感想 - 昇順
読ませていただきました。骨組みは良かったと思います――もっと肉付けをすれば深く入り込んで読めたのではないかなぁ…。状況説明の描写は充分だったと思いますが、心情描写がいまいち足りなかったのではないかと思ったり。前後編くらいの長さで描いてみるのがいいかもしれませんねっ。ps「無償」→「無性」かなんかの間違いのような気がしますが、どうでしょう(汗
2005-07-21 22:05:17【☆☆☆☆☆】ゅぇ
はじめまして。
さてと。
自分の中に、物語や想いが、澱のようにたまっていて、書き手はそれを吐き出したくて仕方がないものなのですが、ただ吐き出すだけでは作品にならないのですね。この物語の骨子について由愛さんの想いがあることはわかったのですが、書き手はそれに惚れこみつつも、それを別の面で統御しなければならないのですね。ちょっとそのコントロール加減、制御加減、ある程度冷徹に距離をとった上での演出や構成をかける必要があるかなと思いました。由愛さんが主人公の女の子のココロをよくわかるのであれば、焦る必要は何もないですので、主人公の女の子とよくお話をしてみてください。そして返ってきたことばを作品に織り込んでいくのがいいと思うのです。
2005-07-21 22:11:57【☆☆☆☆☆】タカハシジュン
初めまして、京雅と申します。拝読しました。この物語は一つの場面と最期の部分を強引に繋げた様に思えました。唐突とは一寸違うのですね。概要のみ掴むなら筋は通っているし、前の場面だけをとっても能く解ります。けれどそれは外側から眺めてる感じになっていて、容の重さに対して深みが足らないかなと。流れのみを意識し過ぎて登場人物はその通りに操られているのではないかと感じます。心情面の葛藤や、それに付随する細かな仕草を書き込むだけで色色と読み取らせる事が出来得ると思います。偉そうに語って申し訳御座いません。次回作期待しております。
2005-07-22 14:13:08【☆☆☆☆☆】京雅
コメントありがとうございますm(_ _)m
やはり、強引すぎましたね;もう少し、骨組み・表現の仕方を工夫してみようと思います。
皆様の意見を作品の中に生かそうと思います。ご意見・ご感想ありがとうございます。
2005-07-22 17:55:20【☆☆☆☆☆】由愛
初めまして、こんにちは。菖蒲と申します。
作品自体の速度が速いので、登場者の心情描写などが一緒に流れていってしまっているような気がしました。簡潔に話をまとめ、こういったことがあったと体験を語るような部分に違和感はないのですが、全体的に若干の膨らみや方向性が欲しいかなと思います。方向性というのは、話の途中で結末や結びが予測できてしまうので、半ばそれを裏切るような展開があればということです。(わかりにくいでしょうか…?すみません)逆に、予想どおりの進行となってもそれを飽きさせない発想で読み手の興味をつなぐものも多々ありますので、一概に裏切れということではけしてないのですけれどね。でも、純粋に綴ろうとする面は伝わって参りましたよ。自分と照らし合わせるということは、きっと難しいことだと思います。起伏を抑えられなくなってしまったり、詰め込みすぎてしまうこともあるのではないでしょうか。ですけれど次回も頑張ってください。自身との葛藤などからもより良いものが生まれると思いますので。それでは、失礼なことを申しましたがこれでおいとま致しますね。
2005-07-22 22:23:21【☆☆☆☆☆】菖蒲
作品読ませていただきました。自傷行為に至るまでの茜の心情をより細かく描いて欲しいですね。失礼な書き方ですが、物語の骨子は単純な一本道だけに、感情の吐露がないと読み手としては作品の世界に溶け込めません。自傷行為でも自殺でもそれを行う自分なりの心の動きがあったはずです。そこを丁寧に書いて欲しかったです。辛口の感想になって済みませんでした。では、次回作品を期待しています。
2005-07-23 23:43:26【☆☆☆☆☆】甘木
悪い表現かもしれませんが、男と女の価値観のちがいでしょうか。心情描写が足りないとお思いになるかたもいると思いますが、僕としては読者が登場人物の心理面を想像して読んでいくのも一興でありだと思います。
2005-07-25 20:01:33【☆☆☆☆☆】buchiM
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。