『夏祭り』作者:和蝶 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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青空高く蝉が鳴く。
あぁもう夏が来たのかと僕は実感した。
忘れられない不思議な不思議な夏の夜…。

あの日もまた今日のように湿気が多く、蒸し暑い日だった。
あの日僕は友達の木村と夏祭りにでかけたのだ。

「なぁ坂田―あの子可愛くねぇ?」

木村は目の前にいる青い浴衣の少女を指差して言った。
木村はことあることに女女女。年中そんな感じだ。

「あぁそうだな。」

またか…と思いつつ生返事を返し、少女に目をやる。
その浴衣の色は青く真っ青という言葉がふさわしかった。
吸い込まれそうな…とでも言おうか、夏の夜に溶け込んでしまいそうな印象を与える。
頭の中を一筋の記憶がかすめる。
あの色…どこかで…。
それにあの少女、どこかで見たような気がする。気のせいだろうか?

きっとテレビかなにかで見たのだと自分を納得させ、僕は木村と馬鹿みたいな話に打ち込んだ。
気がつけば夏祭りも人が増え始めていて、僕は人でいっぱいになるまでそれに気がつきはしなかった。
しだいに夏祭りの公園は人でいっぱいいっぱいになり、やがて人の波におぼれるようになった。
しかし…。
こんな小さい、しかも地域住民がやる小さな夏祭りにこんなに人が来るものだろうか?
何か抽選でもやっているのか…?

「うわっ」

人はどんどん増え続け、いろんな人に体が当たる。

「大丈夫か坂田!?」

「あっあぁ…なんとか…いてっ!」

「どうした?」

「足踏まれた。」

誰が足を踏んだかなんてわからない、ただその足の激痛に足を踏まれたと実感した。
それほど人は多かった。

「木村は大丈夫かっ?」

…。

反応はなかった。
人ごみはうって変わらずざわめきを増すばかりで、すべてを飲み込んでしまいそうだった。

「木村…?」

もう一度読んでみたが返事はない。ただざわめきだけが大きく聞こえた。
僕は何もできずどこに立ち尽くした。
人の波がすりぬけてゆく、知らない人だらけの夏祭り。
そのとき僕の手を誰かがぐいっと引っ張った。

「木村か!?」

とっさにつかんだその手は冷たくひんやりとしてた。
遠い昔に…この手を握ったことがある。そんな気がした。
とにかく人の波から抜け出したくて、とっさにつかんだ僕に、それが木村か誰なのかも確認する余裕はなどない。
人ごみから抜け出したあと、僕はお礼を言った。

「ありがとうな木村…どうなるかと思った…」

人ごみから引っ張り出されて出た神社の前は、遠くに夏祭りの音が聞こえるだけで
木村の返事はなかった。
そっと木村のほうを振り向いたとき
その手の主が木村ではなかったことは僕は知った。

吸い込まれそうな青い色。夏の夜にとけてしまいそうなほどの…

少女がペコリとさげた頭を上げたとき、僕はその少女を懐かしく感じた理由が、ようやくわかった…。

「あ…。」

その顔には見覚えがあった。
はっきりとは覚えていないが、まちがえなくどこかで会った。
懐かしい顔立ち…。
少女は口を開いた。

「翔ちゃん…驚かせちゃってごめんね。私…いっぱい心配かけちゃったね」

「え…?なんで僕の名前を…?」

にこっと少女はまるで子供のような笑顔を見せた。
その時僕の中に眠っていた記憶が、ようやく目を覚ました。

「ゆ…由香ちゃん?」

「…覚えていてくれたんだね…翔ちゃん…。」

由香ちゃん…確かに覚えている。
6年前僕がまだ幼かった頃よく一緒にいたのだから…。
だがそんなわけがない。
由香ちゃんは6年前の夏にもう亡くなってしまっている。
ここに居るはずがない。
だけど現に目の前にいるのは由香ちゃんだ。
僕は何度も我目を疑った。
眼鏡をはずし、拭いて、駆けなおしたとき
もう由香ちゃんの姿はなく、由香ちゃんがいた場所には青いボールが1つ落ちていた。

ずいぶん前になくした僕のボールだった。
由香ちゃんと最後に遊んだときも、このボールはあった。
夏の夜の出来事だった。
一緒に河原でボール遊びをしていたのだ。由香ちゃんはボールを追いかけ
それっきり戻ってはこなかった…。
次の日の朝に由香ちゃんは川から冷たくなって発見された。
夜。生い茂る草もてつだって、由香ちゃんの姿はわからなかったのだ。
その後どれだけボールをさがしてもなぜか見つからなかった。
もしかしたら…由香ちゃんは僕にボールを返しに来たのかもしれない…。

そんなことを考えていると、僕の名前を誰かが呼んだ。
木村だ。

「おーい坂田ぁーお前どこいってたんだよ!」

気がつけば夏祭りの会場の人はかなりの数がいなくなっていた。
木村だった僕は木村にすべてのことを話したが信じてはくれなかった。
だけど確かに確かに由香ちゃんはそこにいたのだ。

その日家に帰ってから
今日が由香ちゃんの命日だということを母親に初めて聞かされた。

ボールの裏には小学一年生のような字で ありがとう と書いてあった…。
2005-07-04 15:23:59公開 / 作者:和蝶
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■作者からのメッセージ
初めまして。和蝶です。
小6のころにかいたものを書き直したもので、ベタな小説ですが…読んでいただけたら幸いです。
では
この作品に対する感想 - 昇順
おもしろかったです。
“木村だった僕は木村にすべてのことを…”
の一文の“木村だった”は必要ないと思います。それだと、自分が木村だったということに…、もし「。」を忘れただけだとしてもその前の文章で名前を呼んだのは木村であることを書いているのだから、くどくなってしまう気がします。
あと、途中まで主人公は眼鏡をかけていないと思ってたので、“眼鏡をはずし”というのに少しびっくりしてしまいました。なにかそれを指し示す一文を最初の方に入れた方がいいかと思います。
でわ、次回作も期待しております!!
2005-07-04 15:41:46【☆☆☆☆☆】umitubame
上右 下左です(違う違う)
うう〜、よく幽霊ものを書こうとする自分にはとても参考になる一品でした。しかし、少し「木村」が多くありませんか?「彼」とかも使ったほうがいいかもしれません。もしかしたら、それは狙いかもしれませんが(自分の読解力不足?)あと、少し改行が多いかもしれません。えらそうなことをいってすみません。それでは、次回も楽しみにしています
2005-07-04 20:36:00【☆☆☆☆☆】上下 左右
コメントありがとうございます。
もう感想もらえるだけで幸せを感じちゃってます和蝶です。
たしかにこの小説はまだまだいたらない部分が多いですね…。
アドバイスありがとうございます!
くどくなったり、読みにくくなったりしないように心がけて頑張って生きたいとおもいますゆえ
遅れましたが、はじめましての私をどうぞよろしくお願いします(^^*
では。
2005-07-04 21:04:11【☆☆☆☆☆】和蝶
初めまして、京雅と申します。作品拝読しました。文章全体にやや淡く掛かった青色が(おそらく一文目の青空が私の中にのこったのでしょう)心地好く彩っているように思えました。ただ、切ない系統の話は感情移入できるかどうかが肝腎な部分となってくるので、もう少し心情描写を増やしてよかったかもしれません。それと、単一の文章としては読み易く軽快なのですが、全体を通して読んだ時人物の姿などがあまり描かれていない気がします。そこら辺をもっと強めれば、物語にはいって切なさも増すのかなぁと。すみません、偉そうに語ってしまいました。失礼ついでに、「―」は「――」、「…」は「……」にしたほうがなお読み易くなりますよ。ほんとうに長長と申し訳御座いません。木村くん……木村くんはこの場面に一体なぜ居るのか、というどうでもいい事を考えつつ次回作期待しております。
2005-07-04 21:22:11【☆☆☆☆☆】京雅
作品読ませていただきました。夏の日の幻想というか、思い出をワンシーンだけ切り取ったような、感覚に訴えかけてくるような作品で良かったです。でも、全体的に説明不足と心情不足な感じはあります。また木村君があまり生かされていなかった感じもしました。では、次回作品を期待しています。
2005-07-06 00:14:27【☆☆☆☆☆】甘木
初めまして、菖蒲と申します。
淡い夏の情緒に乗せて、ほんのひと時の情景を表現された感じがとても良かったです。最後の一文がそれをさらに際立たせるようで好きでした。あとは、もう少し由香ちゃんに対する描写が欲しかったですね。幼い頃に亡くなったはずの彼女が再び目の前に立っていて、それでも尚彼女だと気づけた理由付けとしてただ懐かしいというだけでなく、顔のどの部分がそっくりだとか変わっていないだとか。その方が、和蝶さんの読みやすい改行感覚にさらに拍車をかけると思いますよ。では、次回作も期待しております。
2005-07-06 11:26:52【☆☆☆☆☆】菖蒲
 初めまして、スズノと名乗っちゃったりしているものですw
 結構あっさり読めました。ですが多々引っ掛かる所が……、勝手な意見を述べさせていただきますので、スルーしちゃってもかまいません(汗)
 まず、「少女がペコリとさげた頭を上げたとき、僕はその少女を懐かしく感じた理由が、ようやくわかった…。」はいらないと思います。続きの文章でまだまだ正体も暴けていないようですし…。また、その分に至るまでにもう少し【わだかまり】のようなものを入れられるとより良くなるような気がします。
 ストーリーの方でもうちょっと勝手なことをいいますと、6年前の由香ちゃんと遊んでいるところで帰ってこないところは書いてあっても探したとは一切書いてないのが、省いてあると解っていても引っ掛かりました。それに関連してもう一つ、「とっさにつかんだその手は冷たくひんやりとしてた」とあるので、回想シーンみたいな感じで由香ちゃんの死体を前にして手を握るところなども書いてほしかったなぁ…とかぬかしてみます(逝け)
 文章の方をいいますと、改行がとても多いとこと改行したあとは一文字分開けるほうが読みやすいというところです。(説明が下手なので他の方の作品を見て頂くと良く解ると思います(汗))細かいところを言ってしまいますと、「打って変わらず」とは言わない気がします;;
 後は、先に書き込んでいらっしゃる方々と同意見です。
 長く妙なコメントで申し訳ありませんでした;;
2005-07-06 16:01:16【☆☆☆☆☆】鈴乃
はじめまして。戮煦です。ころくと読みます。どうぞよろしく。読ませていただきました。偉そうに指摘しようにも、要らないのではと感じる部分があったこと等、諸先輩がたの意見と同じになります。しかし、人物の姿格好の描写が少ないような、という部分、確かにそうかもしれませんが、自分に限っては返って良い感じがするところもありました。幽霊な女の子の描写が特にそうです。頑なに色の一点に集中し、されど少ない言葉によって表されております。表情、髪型、背格好、全て読み手の青に対するイメージに頼るこの書き方は嫌いになれません。次回作を期待しております。偉そうに失礼しました。
2005-07-07 13:06:30【☆☆☆☆☆】戮煦
計:0点
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