『芸術家 』作者:Town Goose / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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とある天才「芸術」画家と、とある天才「芸術」小説家の話

 昔々のようなお話か。とある天才画家と、とある天才小説家の話があった。いや、「話」というより「話し」なのかもしれないが、そんなことはどうでもよい。


 ただ、その物語に二人の男がいた……瞼を閉じるように、薄く薄く、小さな物語……


              
do now not getgetget futule


 懇々と雨が降りしきる中、二人は走った。どちらの男も、場所が違くとも理由は同じ、雨を凌ぐ為、走った。

 ――――そして、結果も同じ、その二人は、偶然(ひつぜん)に出会った……
 
多分雨宿りに、と入った店だったのだろうか。だが、不意打ち、とでも表しようか?その店はかなりの異端だった。

《おや…珍しい。二人しか来ないなんて………

ようこそいらっしゃいました。お部屋へどうぞ》

 なんでも、語り合わせるのだそうだ。そして勝負させる。それが楽しみでしょうがないのだ、と支配人はうれしそうに語ってくれた。

「さあ、語り合ってください。ただ、今回は何時もと趣向を変えてみますかねぇ。こんなのはどうでしょうか?」


――――――この先、どちらが成功するかどうか、……とか、ね?


芸術家と芸術家の話

「さあて…、どうしましょうか?実は私、人と話すの苦手なほうなんですよ。」
「小説家、なのにですか?」
 その答えに、小説家は苦笑する。
「はは…何せ売れない小説家ですからね。それに、多分、自分は愚かなんです。自分の文章に絶対の自信を持ちながらソレを認められず、しかしソレが私の芸術である以上変えることは嫌なんですよ。」
 それに、画家は笑いながら答えた。
「その気持ちは分かりません。僕も芸術家ですから。」
「ふふ、面白いですよね、同じく芸術家だから分からない。さらに面白いのが一般人にすらその気持ちは分からない。なんたって、芸術家ですからね。」
 まったくです。と
「詰る所、芸術家なんてのはあれです。自己満足なんですよね。しかもソレを他人と共有しようとするからたちが悪い。もともと自分と他人の価値観がずれているにも関わらずソレを誰かに認めてもらいたい。とあるアメリカ囚人の話を思い出しますよ。」

「孤独は人生最大の恐怖である……でしたっけ?つまり孤独に耐えられないから、誰かに認めてもらいたい、と。」

「違いますよ、孤独は人類最大の恐怖である……です。自分の思ったことを他人に押し付ける、というよりみんなそうなんだ、と思い込んでるあたりが僕たちとそっくりじゃないですか。」
 う〜ん、とうな垂れる小説家
「どうなんでしょうかね。自分と似ているモノなどクローンでさえあり得ないと思いますけど、……でも、やっぱり似ているんでしょうね。」
「芸術家って根本は同じなのかもしれませんね。まったく違いますが。」
 二人は、笑った。
「さて、そろそろ本題に入りましょうよ。私たち、どちらが成功するんですかね。」
「分からないでしょう」
「分かりませんよね」
「他人の心なんて理解できませんから」
 二人は、笑った。
「「なんたって、芸術家ですから」」




                  ◇

 100年の月日がたった。

 二人の芸術家はもうこの世には居ない。

結果 


この戦いは、画家が勝った。



何故かだって?簡単だろう。よく考えましょう皆さん。小説は月日が経つことを認めますか?

ゴッホやミロ、死んでから評価される画家


誰  や誰?死んでから評価される小説家?


そんなもの、聞いたことも無い……




この小説が、


この百年後の世界に、



最高と呼ばれる小説であっても、

それは………





                   完 

あとがき


 さて、こんな事を語ってみる。絵画と小説の違いとか。絵画は時が立つにつれ、評価される可能性がある。だが、小説にはそれがない。
 だから小説は芸術ではなく、娯楽である。自分の思うどんな芸術を描こうがその時代に合わなければ完膚なきまで忘却される。
さて、今、自分が書いた小説が現在、どんなにもつまらなく、致命傷なまでに変な文章だったとする。それは、果たして駄作なのであろうか?
 別に自分の小説のつまらなさを正当化する訳でもない。だからもしもの話、今、自分の書いているものが数百年後、評価されるものであったとしたら?



――――言い訳ですが、それはどういう意味を表すのでしょうか?
2005-06-25 23:43:02公開 / 作者:Town Goose
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■作者からのメッセージ
上で書いてしまったので書くことはありません。ええと「九九の話」の番外というかそんな感じで読んでいただけたらと、
この作品に対する感想 - 昇順
ふーん。と貴志川です。なるほど、とは言いませんがへーふーんとは言う生意気な貴志川です。嫌なやつだな、俺って。
さて、感想ですが。
もしメッセージを入れるのであれば、それはできればおはなしの中に入れて欲しかったです。あとがきのような形で入れる話をよく見るのですが、俺は(あくまでも俺は!!)そういうのが苦手です。何でかというと、俺としては小説はやっぱりお話であるべきであって、決してメッセージを代弁する道具ではないと思うからです。国会で紙芝居するようなものです。なんだか滑稽に見えるんです。やっぱり、お話は、お話かな、と。
話の中にメッセージを見事にいれていれば、この話は面白かったと思います。目の付け所は面白かったし。
小説家と芸術家の掛け合いは唐突に感じました。言っていることは面白いですが、なんとも入り込めませんでした。
というか支配人のところからちょっと唐突に感じました。「」のなかの改行とかが気になったからでしょうか? 
というわけで文句ばかりのバカを許してください。貴志川としては今評価されるほうが楽しいです。楽しいものは、今だけでいいんです。いつ見ても楽しいものなんて俺は嫌です。刹那だから俺は好きです。
だから、やっぱり今つまらないものは、後世でどれだけ名を残そうが、俺にしてみれば駄作です。だから? としかいえません。俺は今生きてるし……ははは! 俺は短絡的な男さ!!(←壊)
というわけで、そのテーマはなかなかイケてました。考えさせられました。
ではノ
2005-06-26 00:06:55【☆☆☆☆☆】貴志川
どうも、Town Gooseです。

貴志川さん

なるほど、あとがきは小説内で語るものではない…ですか、確かにそうですね。作者、作品を語るべからず、というのは自分の持論でしたし(ぉぃ
すいません、今回は見逃してやってください(汗 
それと、小説家と画家です、二人とも芸術家なのでよろしくお願いいたします。
ご感想有難うございました。

羽堕さん

難しい話です。自分で書いてて面倒くさい話です。時代に関係なく面白い小説ですか〜…そんな人になってみたいですね〜。ご感想有難うございました!

2005-06-26 00:20:09【☆☆☆☆☆】Town Goose
さて、と。どう感想を書くか迷っている京雅で御座います。失礼な事を語ります、ご容赦ください。メッセージ性と言うか、物語性に欠けていると思います。物語にテーマとなるべきものを定めるのは大切な事ですが、それだけになると、それは小説じゃなくて歌の様なものであると私は思っております。とまあ、そこは微妙な位置付けでありますから単なる京雅の戯言で御座いますけれど。ところで芸術についての概念が先ず私と違いましたので、それはそれで色色考えさせられました。ただ、貴志川様も書かれているように「あとがき」とは小説の外にあるもので御座いますから、要らないというか後を濁す気もします。言いたいことをつらつらと申し訳御座いません。次回作期待しております。
2005-06-26 00:23:32【☆☆☆☆☆】京雅
 私は絵も描きます。でも、絵を描くときと書き物をするときは、頭の使う部分が違う気がしますね。私は小説を読んで「芸術だ」と思ったことはないですが、絵画を見て「芸術だ」と思ったことは何度もあります。つまり、私は小説を芸術だとは思ってないのですよ。だから『成功』だとか『評価』だとか言われても、小説と絵画では尺度がまったく違う、別物だと思うのです。それに、『成功』は本人が感じるものでしょうし、『評価』は(基本的に)他人が下すものです。議論すべき論点が、始めと後とでずれているのです。
 この先の感想、もっとキツくなるやも。覚悟あれ。
 実は九九も読ませていただいていました。前半部分の構造は興味深いものでした。そして今回もその構造を借りてきているわけなのですが。読み手のアドバイスを生かしきれていないな、と思うわけです。この書き物は読み手に理解させていない、理解しようとしたときには結論がすでに出ている。強引さを感じてしまうのです。読み手の共感がなければ、それはただの書き手の言葉遊びで済んでしまう。本来なら読み手に考えさせるべき時間を、その書き方によって奪っているのです。天才小説家と天才画家を論理的に戦わせるのなら、まず『小説家』と『画家』、それに『天才』を論理的に定義づけるべきだと思いますね。読み手が反論の余地もないほどに論理武装してからラストにもっていき、決着をつけたほうがよいと思いますよ。
 ちなみに、私は最後のメッセージはあってもよいと思います。ただし、物語の語りとしてですね。『あとがき』としては、作者としては書いてほしくないなぁ、という感想。
2005-06-26 00:34:59【☆☆☆☆☆】clown-crown
clown-crownさん

ご感想有難うございます。なるほど、論理武装ですか。このような文章を書くならば読者に有無を言わせないまでのルールを作れ。という意味でしょうか?
そして、早急に結論を出しすぎだ、ということですね。このような的確な厳しいご感想は逆に励みになります。自分の欠点を直し、精進です!有難うございました!

京雅さん


小説と詩の違いですか…自分、詩とかも書いてるんですけど、物語を詩で作る、ということを試みたことがあります。
確かに、今回、「九九の話」のときと同様、物語として完成していなかったのかもしれません。有難うございました!

2005-06-26 00:49:50【☆☆☆☆☆】Town Goose
上下で御座います。
これを読んでかなり納得してしまいました。たしかに死んでから有名になる画家は多いですが死んでから有名になる小説家はおりませんね。そういう人はたいてい死ぬまえから有名な人ですからね。よっしゃ〜、自分はそういう小説家になるぞ〜(無理)全く感想になっていませんがこのぐらいで失礼します。
次回も楽しみにしております
2005-06-26 00:56:18【☆☆☆☆☆】上下 左右
上下左右さん

自分もその一人になりたいですね〜。というか、死んでから評価される人って結構悲惨ですよね。ミロとか結構苦労したらしいですよ?
ご感想有難うございました!
2005-06-26 01:42:15【☆☆☆☆☆】Town Goose
前回の九九の話同様、いろんなことに気づかされました。私も絵を描くのですが、それとは別に確かに時がたってから評価される画家はいるのに…と思いましたね。ピカソなんかは、「ラクガキだ」なんていわれていたのに…そう様子タイタニックなんかみるとわかりますよね(蛇足 すごく面白かったです。次回作また虚をつかれる作品待ってます。
2005-06-26 11:46:06【★★★★☆】風間 リン
こんにちは、前回に引き続き読ませていただきました。
私的に思考をこらしましても、答えなど出ませんね。
でも、仮に小説は残らず評価されなかったとして、それは負けなのでしょうか?作中に語られているように絵画で死後有名になった人達は多くいます。でも、小説にしろ絵にしろ死んでから評価されて嬉しいものなのでしょうか。確かに名が残ればそれは結果として良いことかもしれませんし、有名という課題にはあてはまります。けれどそれが成功なのかが解りかねますね。だってできることなら自分がそこにいる時点で評価や賛美を聞きたいと思うところですよね、誰しもが。つい最近偶然にも同じことを教わったので、百年も残る小説は稀ということはわかりました。なので、必ずしも絵が成功ではないと勝手ながらここに感想を寄せさせていただきます。
2005-06-26 12:30:44【☆☆☆☆☆】菖蒲
作品読ませていただきました。文章書きでも死んだ後に評価される人は結構いますよ。ウェルギリウスとかディキンソンなんかも生きている内の評価は低かったと思います。でもウェルギリウスは2000年も名前を残しているし、ディキンソンだって100年以上名を残しています。でも、一般論から言えば画家の方が死後の評価がされやすいかも。でも、死後に評価されても嬉しくないだろうなぁ。私は後世にボロクソに言われてもいいから島田清次郎のように生きている内にチヤホヤされたいです。さて、作品の感想ですが、着眼点は面白いと思います。けれど文章の流れが唐突すぎる感じがします。そのせいで小説と言うより課題提示の文章という感じもします。画家と小説家の論争を、もう少し哲学的問答のようにして長く書いても良かったかなと言う感じもします。でも、印象に残り考えさせられる作品でした。では、次回作品を期待しています。
2005-06-27 22:46:13【☆☆☆☆☆】甘木
菖蒲さん

なるほど、です。確かに、死後に評価される絵は成功か?という疑問に対して、自分は絶対に成功だ、と言い切れる自信はありません、しかし、評価されるか?という一点にしてみれば確実に画家は成功したと言えるではないでしょうか?
…と、自分、偉そうな事言っていますね。なんか、自分、数日後にまったく逆のこと言ってそうな気がします(汗
ご感想有難うございました!

甘木さん

ウェルギブスとディキンソンですか……自分、教養が足りずうろ覚えなのですが、どちらとも、彼らは詩人であったような無かったような…間違っていたらスイマセン(汗
ううむ、難しいですね、彼等の書いたのってどちらかというと精神論みたいなものだとおもうんです。彼等の書いたものは小説というより資料として…ではないなぁ。うぅむ、すいません、今度、両方の作品とも読まさせていただきます。自分の教養の無さに慙死の思いです(汗
貴重なご意見とご感想、有難うございました。
2005-06-29 00:45:13【☆☆☆☆☆】Town Goose
ウェルギリウスでした(汗
すいません

↓↓↓
2005-06-29 00:58:59【☆☆☆☆☆】Town Goose
計:4点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。