『九九の話 / ショートショートショット』作者:Town Goose / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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九九の話

ようこそいらした。突き詰めよう。なに、ここでのルールは窮めて単純さ。

   例えは 天才        
   例えは 馬鹿        
   例えは 理窟屋
   例えは 幽霊
   例えは 一般人ですらよい

ただ、ここで会話して欲しい。今日のお題は「九九」単純だろう?
そしてもう一つ、これは勝負だ。言い負かされたほうが負け


          さあ、創めてくれ



理窟屋と一般人

「なあ、九九の出来ない奴ってどう思う?」
理窟屋は尋ねる
「さあ、どうなんだろう。年寄りの人は知らない人もいるから普通だし、同年代の人が知らないのは馬鹿だと思う。」
「俺はそうは思わない。年寄りが知らないのは当然かもしれない、でも、それでも馬鹿には変わりないだろう。よく考えろ勉強していないからしょうがない。だから普通なのか?違うだろう。勉強が出来ない状態の人であろうが、九九が出来ない以上馬鹿なんだよ。同年代の人も年寄りの人も、出来ない状況にあろうが、やらない状況にあろうが、馬鹿と言う結果は変わらないのさ。」
「うぅん…よく分からないかも。」
「何が分からないんだ。」
「えっと………………すいません、僕の負けです」


                  ■

窮めて単純。理窟屋が勝つのは目に見えていた。所詮一般、平均と一部途出型の戦い、安定はエラーに弱いってこと。






天才と理屈屋の話

「なあ、天才 お前さぁ、九九が出来ない人間ってどう思う?」
 何を考えたかコイツはそんなことを言い出した。そんな答え、当に決まっていると言うのに。
「なに、それは単なる馬鹿だろう?」
「じゃぁさ、九九の出来る人間ってなんだ?」
「それは普通以上だろう?」
「でさ、九九の出来る奴と、九九の出来ない奴、は両極の存在だよな?じゃぁさ、その反例も両極に成るんじゃないのか?」
 コイツは、本当に面白い考え方をする。それが単なる屁理屈にしても、とても愉快だった。
「つまりお前は、九九の出来る奴と、九九の出来ない奴が両極であるなら、その反例も馬鹿と天才でなければならないといいたいのか?」
「そういう事だ、矛盾してるだろう?反例はイコールで結ばれる物と同義で無ければならない。でも、1反例と2反例はイコールではないのさ。窮めて矛盾、窮めて理窟にそぐわないと思わないか?」
 その答えに、天才は冷たく言い放った。
「なに、単純なことだ。そんな物必要ない。第一、私はそんな物、理解していない。物事に過程は要らない、起承転結、私は常に起結しかない」

                 ■ 

勝負は、呆気無く、天才に軍配が上がる。なに、天才は常に結果だけを出し、それ故に方式しか知らないだけの話だ。




馬鹿と理窟屋の話



「なあ、お前、九九の出来ない奴ってどう思う?」
「別に普通だろ?」
馬鹿は一言、そう言い放つ
「いや、違うね。九九の出来ない奴は世間一般では馬鹿と定義されるんだ。」
「なんで?」
「い、いや…何でと言われても。だってそうだろう、就職も出来ないし、それに九九なんて数学における基本中の基本だろう?それが出来なくてなにが普通なんだ?」
 馬鹿は、はぁ〜と息を吐く。
「お前の言ってること分からねえんだけど。「テイギ」とか「シュウショク」とか「オケル」とか、もっと簡単な言葉で言ってくれよ。わけ分からねえよ。」
「……………………」

                ■

勝敗は馬鹿が勝った。なに、簡単なことだ。理窟屋は言葉に理窟を込めるのに、言葉を理解できない馬鹿に理窟屋が勝てるはずも無い。


馬鹿と馬鹿の話

「なあ、九九ってどう思う?」
「別にどうでもいいだろ」
「それじゃぁ会話にならねえよ。じゃぁよ、九九できないやつってどう思う?」
「普通だろ」
「普通だな」


                 ■

結果、引き分けだ。なに、馬鹿の種類など無く、結局結論は同じと言うことだ。




ここで、話は終わりですか。では、またのご来店をお待ちしております…


 
                 ■■■


最後の話   創造〜ルール〜/魔術・依存・隠匿




「…ん?なんですか?ああ、私と話がしたいと…いいだろう。さあ話そうか。」



支配人と綾下 連下


「なあ、何でこんな所でこんなこと遣ってるんだ?」
 これは単なる素朴な自分の疑問だった。
「はは…ご想像にお任せします」
「理由を教えてくれよ」
 そう、問う自分に支配人はくすりと微笑する。
「何、単純なことです。道楽です。皆様が話し、それを聞き、楽しんでいるだよ。」
「ふぅん…なんだ、変な趣味だな」
 否、それ、悪趣味だ。
「なに、君も十分変わっているさ。それで、何の話がしたいんだい?」
「いや、別に大したことじゃない、人間は何なんだろうと思って。」
「あはは、君、随分達観した事を聞くね。人間なんてあれだ、最弱の生物に違いない。勝手にルール作ってすぐ思い込んで、それでいてそれを思い込みでなくルールとする。」
 えぐる様に、確信が…
「でも、聞きたいのはそんな事じゃないだろう?」
 はぐらかされる様な、それで射て核心を突くような、支配人と名乗る男、何故か気が会うような気がした。それでいて嫌悪感が募る、まるで油と水が見事に混ざり合ったような奇妙な感覚。
「何もかもお見通しってか?…やっぱいいや、ちょっとした悩みだから気にしないでくれ」
 別に、単なる気紛れだ。ここにくるつもりは元々無かった。そして奴は最後にこういった。



――――――――なに、過去など思い出せるわけ無いだろう?お前は■■
     時間は禁忌、未来も過去も行くことなど無謀、忘れ物は一秒たったときからも     う取り戻せないのさ………






「…だよな」
 軽く、そう、言った……











2005-06-12 22:26:46公開 / 作者:Town Goose
■この作品の著作権はTown Gooseさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
作品について書けと言われても…影響はキノの旅かなぁ…なんか短編短編短編つながり見たいのやって見たかったんですよ…結果最悪と最悪のお子様ランチメニューみたいな物になってしまった…


酷評をよろしくお願いいたします。



そして、一つ宣伝か?

最後の支配人とのお話ですが、この綾下連下という人、「作品集その9」に言った私の創造〜ルール〜/魔術・依存・隠匿というお話に出てくる人です。はい
この作品に対する感想 - 昇順
どうもこんにちは。初めましてですね。菖蒲と申します。
哲学?いや、論理?ううん…それとも案外単純な問題でしょうか。理解力に乏しい私には、何度も読み返さないとわからない点も数々あって、すらすらと読み進められなかったことをまずお詫びします。(これは私がいけないんですね。たぶん)難しいというか、何というか、題材に凝ってらっしゃいますね。初め題名を読んで、これは99個の話かな、と阿呆なことを思って(また粗相を…)読み始めたところ、掛け算の方でした。ハイ、ゴメンナサイ。人それぞれ、何かに対する思考と詮索の方面は様々多種多様で御座いますね。理窟屋の突き詰め方に問題があるだとか、天才の見解に異論があるだとか、馬鹿は根本的に間違っているだとか、そういった対象の判別の元におけるディベートはいつでも結果や結末は出ても答えは出ないものです。私にはどれが正しいのかなんて勿論わかりませんし、それを一概に否定することもできないので、考えさせられる部分が数多くありました。でもすべてに判断がくだらない以上、好き勝手に自分の意思を通すことができる権利を持っているのが人間ですから、ここで一つ質問させていただくなら、「九九ができない人間は馬鹿、なら出来るがやろうとしない者は中間に入れるのでしょうか?」。(すいませんくだらないことを)それともやらないならばそれで馬鹿の区分にはいるのでしょうか、いずれも理窟屋の主張においてはどうなのでしょう。関係のないことを随分と書き連ねましたが、すべて私の戯言として軽く流してやってください。最後の話に登場する人たちのことですが、作品集すべてにはまだ目を通していない私には失礼ながらわかりかねました。これからすぐに読みにいこうと思います。では次回へ期待をして、ここで失礼致します。
2005-06-12 22:55:34【☆☆☆☆☆】菖蒲
はじめまして。読ませていただきました。すごく惹かれました。というか、わくわくしながら読んでいきました。一言にオモシロイ!です。単純なことなのに、なぜか惹かれていって…あぁどう表現したらいいのか。次回作も楽しみにしております。
2005-06-12 23:01:04【★★★★☆】風間 リン
羽堕ですm(._.*)m読ませて頂きました♪あうーうーん、面白いような気もするんですが、釈然としないような(^-^;そう言えば、最初に天才とか一般人って誰が定義したんだろう?とか、そんな所も思ったりして≧(´▽`)≦きっと、もし分類するなら、私は一般人か理窟屋になると思うのですが、きっとそうは言わないだろうなって思うから、きっと完全に面白いって言い切れないのかもしれません(/ー ̄;)ディベートを持ってくると、同調できる人とそうでない人で分かれると思うので難しいかもと思ったりもしました(・Θ・;)では次回作、期待しています(。・_・。)ノ
2005-06-13 00:38:34【☆☆☆☆☆】羽堕
ご感想有難うございます…まぁ、異常会話とでも言うのでしょうか。そういうものを書いてみたかったんです。
一つの題材に対して色々な人々を喋らせたら何が起きるか、そんな物を書いてみたかった。結果、小説として成功したかどうかは分かりませんが、自分のやりたいことをやれたかなぁ…と(汗
ただロジカルバイオレンス、とでも言うのでしょうか?なんか書いてるうちにみんな理窟っぽくなっちゃったかなぁ…
練習あるのみです。
2005-06-13 00:40:05【☆☆☆☆☆】Town Goose
多分私は馬鹿か天才です(要するに天才バカボンと同類ってことで)。ディベートの場面はとても面白く読めました。お題が九九。七の段が微妙に怪しい人としては大変痛いテーマではありましたが、ものすごく面白かったです。どことなく深い意味があるような感じがとても好きで…次回作を期待します(今度はもう少し物語性強めで)
2005-06-14 13:32:44【★★★★☆】棗
>棗さん

まず、ご感想有難うございました。七の段ですか、はい、7×6とか自分も怪しいです。そして点数が入っていることに驚きを隠せなかったり。
こういう物を書くのは初めてでそれが評価されるのは嬉しいとともに意外であって本当に驚いています。はいもうマジで。少しだけ複雑ですが(峻
そして謝罪、自分でもこれは小説ではなく論理戦会話だと思いました。ストーリー性は薄薄のすけすけです。一つの題材に多数の人を会話させる以上、それに物語を入れるのが、嫌だったんです、否、入れる実力が無かったんです。ご指摘有難うございました。
精進です。
2005-06-14 20:57:26【☆☆☆☆☆】Town Goose
作品読ませていただきました。上記の分類じゃ私は「馬鹿」だな。馬鹿は良いなぁ難しいこと考え無くって済むし。馬鹿が馬鹿なことを言っていないで感想書こう。読んでいて釈然としないと言うか、据わりが悪いというか、面白味は感じるのですが、討論に至った大前提のようなものが不明で感想が書き辛いというのが本音です。ただ、このような発想は私にはないので新鮮ではありました。感想になっていない感想でごめんなさい。しょせん馬鹿が書くことですから許してやって下さい。では、次回作品を期待しています。
2005-06-14 22:16:15【☆☆☆☆☆】甘木
馬鹿と天才と理窟屋、京雅は「愚か者」。論理は道理を通さねば掛け合いにならぬもの、ゆえに馬鹿と天才と理窟屋(そもそも理窟屋は性格ですからね?)の定義を物語上の意味で書くべきです。「最後の話〜」の件はなくていいと思いました。個人的に幽霊というものの意見を聞きたかったですね。失礼な事を語っておりますが、ついでに――私的に、裏設定とは「明確に語らぬ、しかし書き手にとっては必要な設定」で御座います。何やら偉そうに書き込んでしまって申し訳御座いません。次回作期待しております。
2005-06-14 22:25:41【☆☆☆☆☆】京雅
馬鹿、天才、理屈屋、一般人と登場し語り合ったわけですが、どの人格もなんとなく普通と言うか……本当に語り合ううちに話が終わってしまったなぁと。個人的に、天才とは起と結の間、つまり過程が特異で一貫した人間であり、理屈屋は過程にしか興味が無い人間、というような認識がありまして、そしてこの個人的な認識は作者様とやや違うのかなと思いまして、その辺が気になりつつ読んでいました。せっかくテーマを設けたなら、それに対するオチが欲しい……というのが正直な感想です(SSでもオチがないと寂しい気がします)。ちなみに幽霊が九九について聞かれたなんて答えたのでしょう。「生きてる時は知ってたけど、でも死ぬときは死ぬから」とか答えるのかな……と夢想してみたりしました。九九の話が終わった後、ラストのワンシーンは、ちょっと自分にはよくわかりませんでした。連載物を読んでいない不勉強な人間なもので……。
2005-06-15 00:49:32【☆☆☆☆☆】ドンベ
計:8点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。