『秘密。   後半』作者:風間 リン / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約7.82枚
 


「ヒマだ……」
受験生ってのは、本来勉強しろと周りがうるさいのが普通と思うのだが、俺の場合親が少し有名な会社を営んでいるせいで……嫌な言い方になるが、金のおかげでもう進学先は決まっている。成績は中の上あたりで、その高校も成績的にはあまり問題ないので、実際俺はがんばって暇してる。
 そんな俺の友達はパソコンだ。周りの友達は自分が選んだ学校へ行くのに精一杯に鳴っているので、携帯はほとんどガラクタだ。連絡が来てもせいぜい「図書館いかねーか?」とか「オマエはいいよな」とか皮肉タップリの言葉だ。

  メールが届きました

パソコンから聞こえる無機質な声。受信箱を開くと、見たこともないアドレスからだ。  

 おめでとうございます。あなたは全世界よりただ一人選ばれたラッキーヒューマンです。
 あなたはこのメールによって、全世界の人々の秘密を知ることが出来ます。方法は、秘密を知りたい人物の氏名、性別をこのアドレス先に返信してください。
 5分以内にこちらから返信いたします。


「なんじゃこりゃ。なんかの勧誘か?」
悪戯と思った。でも面白いとも思った。試しに返信…。けど誰の秘密を…あ、テレビがあるじゃん。こいつでいいや。
 

  龍矢みこと 女


最近デビューしたアイドル。ネット上の噂ではどうやら本名そのまま芸名として売り出してるらしいし。こんなかわいい子、秘密とかって言っても精々まだ処女です―とかそういうのだろうなぁ…。
「あ、来た。ホントに早いな」

 龍矢みこと 女  該当者38名  追伸 情報が多いほど深い秘密が調べられます

「なるほどー・・・おもしれーなぁ。ゲッ!この子とおんなじ名前のヤツこんなにいるのかよ!…あ、写真とかあるじゃん。げーこんなババァの名前がアイドルと同じ名前かよー。これとか明らかに生後4ヶ月ってとこじゃん。おっいたいた。」
 何なに?元ヤンキー!?地域では有名なレディースの5代目総長…実年齢23歳!?だってみことちゃんって19歳なんじゃぁ…。
「ていうかアイドルのことなんて本当にあってるかどうか……そうだ、俺のこと調べてみよう」
  
 
 波賀トシユキ 男 6月4日生まれ ふたご座 AB型

こんなもんかー。ソウシーン♪楽しくなってきたぞー。
「早っ。もう来た。」

 波賀トシユキ 男 6月4日生まれ ふたご座 AB型 該当者17名

 やっぱりこんだけ情報があれば減るんだな。それでも17人・・・。雑誌の占いコーナーとかで俺とまったく同じとこ見てるんだろうな。
「俺の写真あるしー…ドコで撮ってるんだか。…小学生のとき、波賀の賀の字を崩して「カガイ」と呼ばれていた。同じクラスの山根サクラに告白するも、彼女は担任の田中のことがスキだったことを知り、1週間寝込む。」

 当たってるなんてもんじゃねーよ…小学生の時のことはともかく、サクラちゃんの事まで……。一応、このメールを信じたほうがよさそうだ。ていうかまずカナリヘコム・・・。

まぁ暇な俺だ。しばらくコレで遊ぶとしようか。



 部屋の窓から簡単に屋根にいける。俺はよくその屋根に寝転んで漫画を読んだり意味もなく空を見上げて、たまにそのまま寝てしまう。
今日は風もないのに、青い空に広がる雲は、うっすら筋をひいてそれが重なって空に濃淡ができていた。飛行機雲は一本一本平行に流れてアクセントをつけている。
 さて、休憩はこれくらいで。まぁ別に疲れているわけじゃないんだけど、一応学生だ。少しくらいは勉強しとかないと高校に行ったときに、困るのは自分だ。
 
 メールはあれからも続けている。この一ヶ月でわかったことがいくつか。
どうやら顔写真を貼り付けて送れば、それだけで何人かに絞られ送られてくる。でも名前等の情報があれば、もっと…ってとこだ。
 2年に援助する女子がいた。しかもあんまり喋らないような子だった。校長と逢引してる同級生(男)とかもいた。職員室に入り込んで名簿のコピー取っといて正解。俺はこんなにも楽しませてもらっている。
特別、何をしたいわけじゃない。ただ、知りたい。だめだ、俺入り浸ってる。
 そうそう、結構驚いたのはとなりの席の松下由加里だ。かわいいと評判で、いろんなヤツから告られてたわりにゃ、彼氏になったやついない。そんなに気にしなかったが…まぁ俺にはサクラちゃんがいるし?…フラれたけど。松下だが、実は担任の後藤と、学年主任池田と二股で付き合ってるらしい。もちろん二人とも既婚者。いわゆる「不倫」ってやつだな。
 
 学校のヤツ、大体は調べた。ここで芸能人とか調べるべきだろうけど、俺はまだ調べていない人がいた。不仲な両親だ。裕福な家庭だが、なぜか両親は仲が悪い。

 
 波賀裕子 女 8月25日生まれ B型 

 
 ついでに顔写真付きで送信。返信はやっぱり早い。5分くらいだ。方程式を2問解いたらちょうど返事がくる。

 波賀裕子 女 8月25日生まれ B型 該当者2名

あーマジ似てる。ちょっとこれは怖い。あ、こっちのほうが少し老いてる。
「日高博、里美との間の第一子。S女子大付属の初等部に入学後そのままお嬢様街道を歩む。波賀隆志と結婚後、息子トシユキを出産。高校時代に付き合った男は14人。とある詐欺商人にだまされ、月15万を出費している」
 母さんのことだ、だまされて15万はありゆる。げ、高校時代に付き合ってた男の名前まであるし…。まぁ詐欺のことはあとで母さんに聞いてみよう。次、父さんだ。
母さんと同じように情報を送信。

 波賀竜二郎 男 2月1日生まれ A型 

これも顔写真つきで送信。って、返事が少し早いように思う。

 波賀竜二郎 男 2月1日生まれ A型  該当者1名

おー…該当者1名!初めてだ。どれどれ…
「波賀権坐と三春との間の第一子。代々の会社を大きくした。家族の前では良いように見えるが、実は女癖が悪い。子は3人。1人は妻、裕子との子でもう2人はそれぞれ愛人との子」

……ちょ、愛人って……。



「父さん。柳舞子って知ってる?」
「何だイキナリ。知ってるさ」
一番聞きたいこと。

「知ってるよね?山根健司も」
「何なんだ」
「舞子も健司も俺が生まれたときから友達だからな。ついでにいうと父親が同じっていう共通点があるんだよ。オレたち3人」

淡々と話すトシユキ。

「ト、トシユキお前何を!?」
「舞子も健司も父親がいたけど、二人とも義父だったよ。結果的に別れたらしいけど。オレも舞子も健司も血液型はAB型だよ。二人のお母さんはどちらもB型だったよ。まぁこんな血液型にこだわっても意味無いけど」
「どこで調べた…どうやって調べたんだ!」


 

  その瞬間竜二郎は天を向いて倒れた。腹部には銀色の刃物。立ちすくむ手の赤いトシユキ。


「悪いけど、母さんと舞子と健司を不幸にした代償は大きい
 あ、どうやって調べたかって?実はさ、あるメールがきて…って聞いてねーし」


 波賀トシユキ 男 6月4日生まれ AB型
「父親殺害の罪で逮捕される。出所後、秘密屋『竜』を創業。裏社会での情報収集で成功し、その世界の長となる。生涯独身。子供はいない。アイスガイを食べ過ぎて腹を壊し、入院したことがある。中学生のころ、同級生の女子に告白。だが『足がくさい』と振られる」


2005-06-13 10:04:54公開 / 作者:風間 リン
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