『ピアノの森』作者:永遠 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角1177文字
容量2354 bytes
原稿用紙約2.94枚
「皆様、ご覧下さい。あの、黒い影絵の様な森が、ピアノの森、と呼ばれる森で御座います。
 ……さて、わたくしがこんなに森から離れて森をご紹介いたしますのも、理由が御座います。
その理由故、あの森はとても不思議な森なのです。
こんなところにひっそりとあるには惜しいくらいの、とても不思議な森なのです。
 これから、ゆっくりとご説明してからあの森へとご案内いたします故、どうかしばらくわたくしのお話にお付き合い下さいませ。

「まずは、わたくしが森から離れてあの森のお話をする理由から参りましょうか。
 皆様、信じがたいことではあるとは思いますが、あのピアノの森は、音の無い森なので御座います。
音の無い、と申しましても、郊外にあり煩くないと言う意味では御座いません。
全くの言葉どおりに、あの森に入ると、一切の音は聞こえなくなってしまうのです。
 森の中に入ればもちろん、森の近くも音が聞こえにくくなっております故、奇妙なことですが、
わたくしどもはこうして森から遠ざかったところでご説明させていただいております。納得していただけたでしょうか。
 あの森は、名前はピアノとついてはおりますが、あの森の中でいくらピアノを弾いても、誰にも聞くことは出来ますまい。
音と言う音は一切、どんなに大きな音でもあの森の中では無効になってしまうのですから。

「それだけでは御座いません。ピアノの森は、また、色の無い森でもあるのです。
先ほどわたくしはあの森を“黒い影絵のような”と表現いたしましたが、それは非常に言い得て妙な表現なのです。
 皆様は、一度は影絵をご覧になったことがおありでしょう。
影絵と言うのは、影だけで物を表現いたしますから、色は付いていません。
それと同じで、あの森の中には色が御座いません。
例えるならば、あの森の中の景色は、モノクロオムの写真の様なのです。感じが、分かっていただけたでしょうか。
 左様な理由故、あの森は闇の無い森とも呼ばれております。
色が無く、光の明暗のみで構成される景色を持った森ですので。その全ての景色は、光によって形作られているのです。
ですから、光だけがある、つまり闇が無い、と言いますのが由来で御座います。

「さて皆様、森の話ばかりで、さぞかし退屈されていることでしょう。
そろそろお話はおしまいにいたしまして、いよいよピアノの森の中へご案内いたしましょう。
 先ほど申し上げたとおり、あの森は音の無い森です。
ですから、お連れ様とのお喋りや、わたくしへの質問等は出来なくなってしまいますが、今のうちに何か御座いませんか?
……ないようですね。では、参りましょう。

「さあ、森に近 いてきま たね。
 そ  は 様、森を抜 るまで、ご げんよ 」
2005-06-08 20:39:52公開 / 作者:永遠
■この作品の著作権は永遠さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
掴み所のない森の、掴み所のない案内人によるお話ですが、
世界の雰囲気に浸っていただければ幸いです。
この作品に対する感想 - 昇順
初めまして、京雅と申します。はて、SSという事でこれで終わりなんでしょうかね。掴み所のなさを目的としたならそれは感じました。しかし雰囲気はと言うと、描写がないのであまり伝わってこず、科白のみを書き綴ったように思えてしまうのです。不思議な森、というものを描写として表現していき、何かしらのオチをつければ充分読ませられる題材だけに惜しいです。失礼な事ばかり語りました、申し訳御座いません。語り口調については巧かったと思います。それを生かした次回作を読める事を楽しみにしております。
2005-06-08 20:48:54【☆☆☆☆☆】京雅
はじめまして。作品拝読いたしました有栖川と申します。う〜ん、不思議――というか、大変失礼なことを申し上げますがあとひとひねりしたらものすごく不思議でものすごく印象に残る作品だったと思います。このままでも十分すぎるほど雰囲気のあるお話でしたが、短編から一部を切り取ったような印象がどうしてもあったように思いました。オチがあるようでないというか、でもこれってオチがなくてもいいのかなぁなんて書きながら考えたりもしているのですが(アホ)。不思議な世界に入り込んだような奇妙な錯覚といい、音の無い森、闇の無い森というこれまた暗喩的なものといい、個人的には非常に好きでした。次回作を期待してお待ちいたしますっ。
2005-06-08 21:59:38【☆☆☆☆☆】有栖川
初めまして。神安と申します。作品、拝読させていただきました。「もったいないな」これが、失礼ながら、私の最初の感想でした。「ピアノの森」という、とても魅力的な舞台を用意してあるのに、使っていないのか、と。ただ、読了後に不思議な読後感が後を引き、二度、三度と読み返す度に、「ああ、これでいいのかなぁ」と、無責任な感想を抱くようになって来ました。そういった意味では、とても魅力ある作品だったと思います。このような、不思議な魅力、世界観のある次回作に、期待しております。では、失礼いたします。
2005-06-08 22:56:04【☆☆☆☆☆】神安 藤人
早速感想を下さった皆様、ありがとう御座います。そして初めまして。
拙作へのコメントとアドバイス、参考にさせていただきます。

>羽堕様
残酷な童話、ですか…。
残酷かどうかは分かりかねますが、童話的な要素を盛り込もうと思ったのは確かにあります。
結局語り口調の雰囲気くらいにしか努力の後(笑)は見られませんが…。
やっぱり、話全体の雰囲気が断片的ということなのでしょうか。精進です。

>有栖川様
うーん、その一捻りをどう加えるかでやっぱり色々変わってしますよね。
突然ですが、有栖川様はどんな一捻りがあったら良いと思われますか?
参考までにお聞きしたいかも、なんて思います。
オチ、はとりあえず一番最後の虫食いの科白のつもりだったんですが、やっぱり弱いですかね。

>京雅様
本作は本当にこれだけの話です。
皆様、これだけでは物足りなさを感じていらっしゃるようですね…。
一捻り、奥が深いです。
失礼だなんて、そんなことはありません。参考になります。


ではでは、コメント、本当にありがとう御座いました。
2005-06-08 23:07:44【☆☆☆☆☆】永遠
作品読ませて頂きました。プロローグ……じゃないんですね。なにか長いお話の一部分を読んだような、不思議というか、消化不良というか、はっきり言って満足していません。作品の雰囲気が良いだけにもう少し読みたいというのが本音です。読後の感想は、私もピアノの森に行きたいなぁ。と言うものです。ピアノの森ならば、真夜中にバイオリンを弾きたくなっても我慢しなくて済む。それにミュート(消音器)も使わなくて良い……あっ、いくら弾いても音が聞こえないのか。馬鹿な感想はおいて、では次回作品を期待しています。
2005-06-09 00:01:25【☆☆☆☆☆】甘木
二度もすみません。えと、意見を求められましてもそんな大それたこと言えませんが、思い切って蛇足な補足を……させてもらえば、なんて……。
このままでは小説としての起承転結がないかなぁ、なんて思ってしまったのです。起と承で終わってしまったかと。ここから『転』で何か物語が動き、『結』で終わっていたなら読み手は満足満足です。これだけの雰囲気をもった作品ならばバッドエンドでも負けなかったと思いますし、最初と最後を同じにするという手法を使っても真ん中にはさんだあんこ(間抜けな表現で申し訳ないですが^^;)しだいでは活きたと思いますし。これだけ素晴らしい骨組みがあるのならばいくらでも広がると思います。オチは虫食いのセリフだったとのことですが、読み手はピアノの森がどういう森だかすでにわかってるので、セリフが虫食いになってもそれは予定調和として普通に受け入れてしまう可能性が。オチにはなってない……かも……?と思ったのですよ。って、なんだかものすごく失礼なことを申し上げてますねあたし!ごごごごごめんなさいっ。あくまであたしが感じたことを申し上げましたので、異論・異存おありでしょうし、しょうもないことをべらべらと、と思われるかもしれないのですが(大汗 ほんのわずかでも参考にしていただけましたらと思いましてお答えさせていただきました。でしゃばったマネをいたしましてごめんなさい。次回作もがんばってくださいねっ。
2005-06-09 17:29:10【☆☆☆☆☆】有栖川
続々とコメント、ありがたいです。

>神安様
話自体が舞台のピアノの森の説明と言う導入だけですからね…。
でも、とりあえずお話はこれだけで終わりです。
森に入ったら、音もなくなって空白だけになってしまう、と言う屁理屈です。
でも皆様が「物足りない」とおっしゃっているのを見ると、続きを書こうかなんて木に上ってしまいます(笑

>甘木様
導入部分でしかないような話ですが、これで一話完結で御座います。
でも神安様のレスでも呟いている通り、続き、考えてみようかなと尻軽的発言…
ピアノの森、近所にあると良いですよね。
頭を冷やしたいときとか、本当に一人になりたいときとか、重宝しそうです。

>有栖川様
真に勝手な質問でしたが、答えてくださってありがとう御座います。
起承で終わっている…ですか。参考になりました。
何か思いつきそうな気がしてきました(安易


もしかしたら、本当に続編書いてしまうやも…。
そのときは、よろしければまたお付き合いいただければ非常に光栄で御座います。
様々な意見、どうもありがとう御座いました。
2005-06-09 18:32:10【☆☆☆☆☆】永遠
コメント、ありがとう御座います。

>ずっぽぱ様
突っ込みどころ満載の話で申し訳ないです…。
何故この森がピアノかと言うと、光(白)と影(黒)で構成される森なので、
その状態がピアノの鍵盤のようだ、と言う意味から付けました(白黒でないピアノもありますが…
その設定、どうでもいい伏線もどきになってしまっていますね。
また、閉じていない括弧は全て同じ案内人の科白であり、時間経過とともに段落を区切り、新括弧で始めています。
また、この話では光があり、それを物体が遮ることで出来る影、その二つだけが森にはあり、
光の入らない場所――闇がない、と表現しております。
ややこしくてすみません…文中で説明するのは、話の流れを妨げないように省略していました。
分かりにくいとのご意見、ありがとう御座います。
文中への書き込みの量について、一考の切っ掛けとさせていただきます。
2005-06-09 23:07:25【☆☆☆☆☆】永遠
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。