『吉川』作者:老人力研究所 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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吉川は東京に住む高校生だ。
何も起こらない平和な日常にこの上なく満足していた。
吉川は学校の帰りに同級生の荒木と帰っていた。

吉川は夕焼けに染まった赤い空を見つめて
荒木は携帯をみつめていた。

沈黙をやぶったのは吉川だった。
「さっきから何、携帯を見てるんだ?」

荒木はそっけなく返した。
「返事を待ってるんだ。」

吉川は誰からの返事を待っているんだろうと思ったがそれを口に出すことはしなかった。
吉川と荒木は歩いた。
吉川は沈黙の織り成す“間”に耐え切れなくなって何度も「ふう」とか「はあ」とかため息をついた。
荒木は携帯を見つめている。

ついに吉川は再び口を開いた
「よっぽど、返事が気になるんだな。」
荒木は「ふっ」と鼻で笑い、少し吉川を見た。
そしてまた、携帯を見つめた。

すこし時間がたった頃、荒木の携帯に着信が入った。
荒木はいきなり鳴った携帯の音に少し驚いて小さく「おっ」と言った。
そして、少し内容を確認するとため息をついて携帯をカバンにしまった。

吉川は聞いた。
「何の返事を待っていたんだ?」

荒木は空をボーッ見ながらつぶやいた。
「今日、生まれて初めて女の子を振った。」

吉川はさっきの荒木と同じように鼻で笑って発声した。
「彼女がいたことすら知らん。」

そして二人は歩く速度を変えずに歩いた。

今度は荒木が吉川に話しかけた。
「結果は聞かないのか?」

吉川は
「聞かない。」
と、かっこよくキメた。



二人の頭上をトンボが抜けていった。
二人にはトンボがとても急いでる様な気がした。

そして夕焼けが都会の風景を少し変えながら二人をつつんでいた。
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吉川は、荒木が放った昨日の秘密の暴露に少し、ショックを受けていた。
しかし、それは吉川の迷いを決断させる出来事でもあった。
吉川は荒木に話した。

「俺、好きな人に告白するよ。」

荒木はその言葉にすぐ返信した
「ふーん」

そして、帰りに吉川は勇気をだして、女の子に話しかけた。
「○○さん、家こっちなの?たまには一緒に帰ろうよ。」

そして二人はしばらく喋っていたが彼女はとても悲しそうだった。
吉川は、相手の様子を見兼ねて言った。
「どうしたの? なんか悲しいことでもあった? 」

すると、女の子は言った。
「昨日ね…彼氏に振られたの。」

吉川は戸惑ったが表面に出さなかった。
「あぁ…そうなの。」

それを聞いてしまったら吉川はもう、抜け殻状態だっただろう。
結局、吉川は女の子と何事もなく別れていった。

次の日、吉川は荒木を軽く殴った。
2005-05-04 19:55:47公開 / 作者:老人力研究所
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この作品に対する感想 - 昇順
初めまして甘木と申します。作品拝読させていただきました。日記のような淡々とした書き方が逆に面白く感じました。描写が少ないのが残念ですが、「沈黙の“間”に耐え切れなくなって何度もため息をついた」など巧い表現があるので、このように書き込んでいくともっと素晴らしい作品になったと思います。文末が「〜た。」で終わるのが多く文章が少々淡白になっていたような気がします。では、次回作品を期待しています。
2005-05-04 22:24:36【☆☆☆☆☆】甘木
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