『とても言えない』作者:つん / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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 君のことばかり考えてますなんて、とてもじゃないけど言えないよ。
 君の弁当箱を盗んだのは僕だってこと、どうしても言い出せないよ。
 君のリコーダーをこっそり咥えて、ガキみたいに喜んでるだなんて、
 君のことを想いながら毎晩あんなことをしてるだなんて、恥ずかしくて顔には絶対出せないよ。

 それでも君は毎日僕に話し掛けてくれるし、毎晩夢にも出てきてくれるよね。
 君は僕の家に来て、勝っ手に上がり込んできて。
 僕は黙って君を出迎えて、二人で並んで腰掛けて。
 君はあのたまらない目線で僕を見上げて。
 僕は君の唇に唇をかさねて。
 夢はそこで終わるけど。
 それだけで下着を交換するはめになっちゃうんだよ。
 恥ずかしくてどうにかなりそうだよ。
 ああ、だから。
 僕の気も知らずに話し掛けてくる君の可愛い顔を、蹴り飛ばしたくなるんだよ。
 一生残るような痣ができるくらい、殴ってみたくなるんだよ。
 ぶっ殺したくなるんだよ。
 
 だから話し掛けないで。
 でも居なくならないで。
 僕をイライラさせないで。
 言う事をちゃんと聞いて。
 暴力を振るわせないで。
 よく解らない事を言うのは止めて。
 ベタベタしないで。
 僕に期待しないで。
 うっとおしい気分にさせないで。
 さっさと足開いて。
 やりたいことをヤらせて。


 ある日君がいなくなった。
 そのうち戻ってくるだろうと思ってたけど、なかなか戻ってこないね。
 耐え切れなくなって、クラスの奴に君の事訊いたよ。
  
 ああ、そう。
 転校したの。
 僕のこと嫌いになったんだね。
 いいよ、別に。
 本当にもう少しで、君のこと殺してしまう所だったものね。
 知ってたのかい?
 僕の鞄の中には、布で包んだ刃物が入っているんだよ。
 君の血のついた刃物を、どうしても家に置いておきたくなったんだよ。
 また新しいことができると思ってたのに、少し残念だね。
 でも、もう気にしないよ。
 だって君は、そのうち戻ってくるんでしょ?
 

 だって僕の夢には、君は毎晩来てくれているものね。
 僕のことを愛してるって、言ってくれるんだものね。
 君にそんなことを言われると、つい恥ずかしくなって。
 僕を見つめる瞳がなんだか恐ろしくて、また酷いことをしてしまうけれど。
 それでも次の日の夜には、ちゃんと夢に出てきて。
 僕を愛しているって、言ってくれるんだよね。
 
 君が愛してるって言うたびに、僕が君に酷いことをするたびに。
 僕の精神と体の一部がドロドロになる。
 暗い部屋で目が覚めて、今の夢を追って、時間を遡って。
 鼻血とよく解らない粘液でぐちゃぐちゃになったの君の顔を思い出して。
 よぎる恍惚と幸福感に思わず口元が綻ぶ。
 でもね。
 やっぱり少し、物足りないよ。
 自分でもどうしようもないくらい虚しいんだよ。
 ホンモノの君に会いたいよ。
 でも、君のことが必要だなんて、絶対に認められないよ。
 ねぇ、いつ戻って来るんだよ。
 とっくに学校なんて卒業しちゃったよ。
 クラスの下らない連中は、今は社会人気取ってて、どんどん歳をとって。
 連中にお似合いの下らない生活してるみたいだよ。
 君は何をしてるんだよ。
 僕に会いに来てよ。
 僕を助けに来てよ。
 僕に愛してるって言ってみてよ。
 ……今度君の家へ行くことにするよ。
 夢の中では君がいつも僕の家に来るから。
 たまには僕が君の家へ行くことにするよ。
 転校先なんて、調べればすぐにわかるんだものね。
 別に会いに行くわけじゃないよ。
 ただ通りかかるだけ。様子を見に行くだけ。
 家の前でうろうろしてる僕を見つけたら。
 君は昔のように僕に話し掛けてくれるよね。
 そしたら僕は……。
 
 明日だ。
 明日君の家に行こう。
 そんなことを思いながら目を閉じたら、
 夢の中の君が、また僕に擦り寄ってくるよ。
 無邪気に微笑む顔を捕まえて、僕を見上げるその眼を抉り出してやるよ。
 そしたら優しくキスしてあげる。
 君はキスが好きだから。

 
 …………。
 君のことを――だなんて、とても言えない。
2005-04-22 03:08:03公開 / 作者:つん
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■作者からのメッセージ
せいいっぱい暗い系目指しました。
しかし荒らし通報されてしまっては不本意なので、
性描写(?)は頑張って削減し、押さえ込みました。
私の中のマイナス要素をかき集めてこの程度ですので、
至らないところがあります。
感想評価をよろしくお願いいたします。
気分を害されたかた。
誠に申し訳ありません。深くお詫び申し上げます。
この作品に対する感想 - 昇順
朝食を食べながら作品を読んでいました。コメントにあるような感情は湧いてきませんでした。小説と言うより感情の羅列で私が主人公に感情移入できなかったからでしょう。確かにこの作品は性描写があった方が生きる作品だと思います(でも、そうだとここに投稿はできないなぁ)、一歩間違うと露悪趣味の作品になりかねないので気を付けた方がいいでしょう。感情移入できなかったもう一つの理由は、客観的立場から主人公が想う女の子の記述がなかったからでしょう。感情の対象となる人物がぼやけてるから主人公のストーカー的な恐怖が上っ滑りしていたように感じます。それと愛憎は表裏一体と言いますが、心の中で愛から憎へ変わるまでの中間プロセスが弱かったように感じます。長々と書いてしまってすみません。では、次回作品を楽しみにしています。
2005-04-22 08:08:42【☆☆☆☆☆】甘木
私は朝食は朝6時にもう済ませていたので、眠気を醒ます珈琲を飲みながら拝読した京雅です。うーん、一言まず沸いてきたのは、これは小説ですか?(失礼にも程がある……)いや、何だか悪趣味な歌の歌詞を書き綴った様にしか私には思えなかったのです。この程度の闇で気分を害する事はないのでご心配なく。欲求は確かに伝わるのですが描写が少なく物語性が低いせいか程度が小さく感じられます。もっともーっと読者側に寄ったほうがいいですよ。こうして語る私をお許し下さい、何せ買ってなかったせいで珈琲にミルクを入れれないのですから(あ、無関係か)。次回作も頑張って書いて下さいね。
2005-04-22 09:16:35【☆☆☆☆☆】京雅
初めまして、恋羽(ここは)と申します。作品を読ませていただきました。ちょっと辛くなるかもしれませんがご容赦を。……とりあえず、無理に暗い系統の作品を書こうとはしない方がいいのでは、と思ったりしました。何となく無理があるかな、とどうしても感じてしまいます。主人公の感情のみで物語を作るのははっきり言って難しいでしょう、多分(無責任)。たとえ一人称の語りで物語を進める場合でも、どこかに必ず作者としての描写だとかが必要だと思いますよ?逆もまた然り、ですが。性の描写についてですが、無くてもこの作品に深みを与えることも出来るとは思います。作品として成立するのかは別として。もしこれを作品にするのであれば三人称語りで十分な質感を与えることをお勧めします。長々と書いてしまいましたが、今後の作品に期待しております。それでは。
2005-04-22 11:13:22【☆☆☆☆☆】恋羽
読ませていただきました。皆さんが仰ってることで重複になるのですが、感情の羅列だけが淡々と書かれていたのが気になりました。暗い系の内容を目指して書いたということですが、それはまぁいけていたんじゃないかと。主人公の感情には面白みを感じたのですが、もっと描写を増やしたほうが小説っぽいなぁと。性描写云々は確かにあったほうが引き立つと思いますが、ここでは(苦笑 ラストはうまく纏まっていたと思います。辛口ごめんなさい(ぺこり
2005-04-22 11:43:38【☆☆☆☆☆】影舞踊
みなさまコメントありがとうございましたー!
ううむ、やはりムリがありましたか。
登竜門では背景描写などが重要視されていますのに、こんなん投稿してすみません
でも、みなさんがアドバイスしてくださってとても嬉しかったです
辛いなんてことはないんで、ご心配なくw
今度からは小説の定型に従ったほうほうで投稿させていただきます
それではw
2005-04-22 15:16:03【☆☆☆☆☆】つん
初めまして。私は大抵小説は途中で読むのをやめてしまうのが、ほとんどなのですが、この作品は序盤からインパクトが強烈で、他の作品との差別化に成功していると思いました。あまり感想を書くのが上手くないので、滅多に感想は書きませんが、これからも魅力ある作品を書いて下さい。期待しています。
2005-04-23 11:37:09【☆☆☆☆☆】由紀
由紀さん感想をありがとうございます。
ちょっと変わった作品も狙いに入っていたので、気付けてもらえてとても嬉しいです。
では、次の作品がご期待に添えるか微妙ですが、これからもよろしくおねがいいたします。
2005-04-23 12:01:19【☆☆☆☆☆】つん
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。