『Tea Time Lover(読み切り)』作者:浪速の協力者 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約6.04枚

「拓海(たくみ)〜、紅茶入れて〜。」


拓海の家に遊びに来ている私は、だらだらした感じで言った。


「あのな、ぐ〜たら姫。俺は今、仕事中なのだが?」


こちらに背を向けたまま、パソコンに向かって文字を打ち続けながら、彼は言った。


「だって、退屈なんだもん。」
「だから『今日は来ても相手できない』って言っただろ?」
「家にいたら、余計につまらないじゃない。」


彼は手を止め、私の方を向き、じっと見つめてから、すくっと立ち上がり、台所へと向かった。







短編小説 『Tea Time Lover』






私たちは付き合い始めてから、3年目のカップル。
彼とは高校2年の頃に知り合い、現在は同じ大学に通っている。
先ほど彼の発言にあった『仕事』というのは、執筆のことである。
実を言うと、彼は高校生の頃に、作家としてデビューを果たしているのである。
作品の売り上げも決して悪くは無い。


「お前、大学の友達とは遊びにいないのかよ?」


台所で紅茶を入れている拓海が言った。


「だって、遊びに行ったら、そっちが妬くじゃない。」
「男が相手じゃないだろ?」
「じゃあ、男だったら妬くんだ〜。」
「…………………………。」


何も返事が返ってこなかった。
どうやら図星だったようだ。
しばらくして、可愛らしいティーポット1つと、取っ手が金縁のティーカップ2つをお盆に載せて持ってきた。
その時、彼の顔が少し赤かった事は言わないでおいた。


「ありがと〜♪」
「ったく、紅茶ぐらい自分で入れろよな。」
「だって、拓海の入れる紅茶って美味しいんだもん。」


それは本当だった。
拓海の入れる紅茶は、そんじょそこらのカフェよりも数段美味しい。
『優しい』という表現がぴったり合いそうな味だった。


「じゃあ、お前はこれを飲むためだけに俺の家に来たのか?」
「うん♪」


私が元気良く返事すると、彼はやや残念そうな表情を見せた。
何がそう残念なのかは大体察しが着く。
要するに、私はただ遊んでいるだけだ。
というわけで、もう少しからかってみることにした。


「こんな可愛い彼女を放っておいて、自分だけ良い思いをしようなんて、そんなの不公平でしょ?」
「普通、自分で自分のことを可愛いって言うか?」
「うっ………い、いいの!」


逆にからかわれてしまった。
少し腹が立ったので、入れてもらった紅茶に口をつけた。
ふぅ………やっぱり拓海の紅茶は美味しい。


「美味いか?」
「もちろん♪」
「今日のは、いつものとは違って、特別な紅茶だ。」
「特別?」


そう言われてみれば、たしかにいつもと違う感じがする。
普段のと比べて、香りや風味が違う。


「出版社の人からの頂き物さ。本場イギリスの高級ブランドの物だそうだ。」
「え?!そんなの私が飲んでいいの?!!」
「紅茶飲むのが目的で来たくせに、何を今さら………。」


たしかに、それもそうだ。


「お前が、紅茶好きだという話をしたら、向こうの人も気を利かしてくれたみたいだ。その代わり、良い作品を書いてくれ、だとさ。」
「……………。」
「ん?どした?」


私が黙って、ジトーッと拓海の顔を見ていると、彼はそれに気づき、紅茶をテーブルに置いた。


「………拓海ってさ、出版社の人には私の事をどういう風に言ってるの?」
「ああ、そんな事か。」


彼はにやりと笑った。


「我が侭で、ぐ〜たらで、妙に意地っ張りで、まるで猫のよう。」


そう言って、彼は紅茶をまた一口飲んだ。


「………………………。」


ショックだった。
多少は自覚していたが、改めてそこまではっきり言われて、ショックを受けない人が一体どれくらいいるだろうか?


「でも、優しくて、可愛くて、甘えん坊で、俺にとってはめちゃくちゃ大切な彼女です、って言ってある。」


……………ハッキリ言って、恥ずかしい以外の何物でもなかった。
よくもまあ、それだけの事を、普段顔を合わす人に言えたものだ。


「嬉しい?」


彼は聞いてきた。


「し、知らない!」


と言って、ティーカップを持ったまま、身体ごとそっぽを向いてやった。
もちろん、嬉しいかと言われれば、嬉しい。
嬉しいに決まっている。
けど、あまりにも恥ずかしすぎる。
万が一、彼の職場を訪れる時があれば、どういう目で見られるか分からない。


「まあまあ、そう照れるなって。」
「照れてなんかない!!ってゆーか、あんたそんなこと言ってて、恥ずかしくないの?!」


彼は紅茶をテーブルに、ゆっくりと置いた。


「勿論、少しは恥ずかしいかなとも思うさ。でも、俺はそれ以上に、お前を自慢できて嬉しいという気持ちがある。俺にとっては、テレビで話題になってる芸能人や、アカデミー賞を取った女優とは比にならないくらい、誰よりも素晴らしい女性だと思えるから。だから、ちょっとくらい恥ずかしい事でも堂々と言えるんだ。」

……………。
あまりに褒められすぎて、逆にどういうリアクションをすれば良いのか分からなかった。


「え、え〜っと………あ、ありがと。」
「どういたしまして。」


彼の顔は、微笑んだままだった。


とある、昼下がり。
彼の紅茶はいつものように甘かったが、それは砂糖のせいだけではなかったと思う。






Fin
2005-04-05 21:48:28公開 / 作者:浪速の協力者
■この作品の著作権は浪速の協力者さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
3日間近くかけて書いたんですけど、あまりちゃんと考えずに書いたもんですから、オチがとてつもなく変になってしまいました(蹴)
しかも、背景が背景なもんですから、駄作な上に読みにくいという特典付き。前はそこまで言うほど短編って苦手じゃなかったんですけどね〜(かと言って、得意だったわけでもない)
もっと修行を積まねば、と思うばかりです。


<2005年3月9日〜12日 執筆>
この作品に対する感想 - 昇順
紅茶を通してかかれた恋人たちの午後っていうのにとても惹かれて読んでみると、やはり暖かい感じで良かったです。『紅茶』って言う小道具には本当なんか不思議な魅力があるな、と思ったり。ただ表現された彼女の心情がありきたりすぎて、あとは少しセリフに頼りすぎてる印象を受けました。って失礼な言い方になって申し訳ないです(汗)ただ『紅茶』にもつイメージが素敵すぎて、思わず注文を(笑。次回作も楽しみにしています。
2005-04-05 21:58:16【☆☆☆☆☆】ゅぇ
ども、初めて読ませてもらいました。主人公達の経歴をもう少し詳しく説明しても良いかと思います。例えば、小説は何を書いているとか、出会ったきっかけとか。恐らく、最後の台詞を書きたいが為にこの作品を書いたと思うのですが(その辺の気持ちは良く分かるので)引っ張り具合が足りなかったかと。あと、台詞の最後に『。』は要らないと思われます。昔の小説とか見るとたまにありますが、今だと使われていませんね。長々と申し訳ない。ではでは〜
2005-04-05 22:42:03【☆☆☆☆☆】rathi
初めまして甘木と申します。作品を読ませて頂きました。全体を通した暖かさは非常に心地よかったです。ただ……失礼な言い方ですが、会話の心地よさで文章描写や心情の心地よさでなかったのが少々残念でした。ところで取っ手が金縁のティーカップってウェッジウッドのユーランダー・パウダー・ブルーかロイヤルドルトンのブルトモアあたりですかね?(と言うか、それぐらいしか知りません。あんまり茶器の知識ないもので……。では、次回作を楽しみにしています。
2005-04-05 22:47:16【☆☆☆☆☆】甘木
初めまして羽堕という者ですm(._.*)m読ませて頂きました♪くすぐったい感じのお話で私は好きです(*゜ー゜)(*。_。)拓海くんの炒れる紅茶を飲んでみたいなぁーと思いましたw拓海くんと彼女はずっと仲良くやっていけるだろうなって思えました(>_<")ただ彼女が浮気とかしたらどうなるのかな?とか邪推してみたりして(*^^*ゞあっ、「」内に出てくる!、?の後はそれが最後じゃない場合スペースを一つ入れるみたいですよ。「好きだ! 本当に……」みたいに(~0~)では次回作も楽しみにしてます(。・_・。)ノ
2005-04-06 00:22:35【☆☆☆☆☆】羽堕
拝読しました。あれですね……読んでて赤面するってのは、何というか。というか、むちゃくちゃ熱熱のカップルのやりとりに夢中になって、気付けば終わりまで来ていました。ただ私個人の意見なので気にしないでほしいのですが、文と文の間のスペースが多くてやや読み難いかなと思います。けれど話自体は、確かに美味しい紅茶を飲む位に堪能させてもらいました。次回作も期待しています。
2005-04-06 04:53:50【☆☆☆☆☆】京雅
たくさんのご感想、ありがとうございます!!正直、こんなにレスが返ってくるとは思ってもいませんでした(苦笑)

<ゅぇ様
たしかに『紅茶』って、暖かい感じを出すという不思議な魅力がありますよね。因みに自分はアイスティーが好き(蹴+殴)やっぱりセリフに頼りすぎですか〜。自分で書いてても、全体的に少しセリフが続きすぎてるな〜と思いました。自分でもどうにかしたいと思うばかりです(苦笑)

<raith様
初めまして!この作品は、本当にオチなどを考えずに書きました(何)題名はRAG FAIRの曲名から取っただけで、言ってみれば、自分で自分にお題を出して書いたようなものなんです。ところで最近の小説って、セリフの最後に読点が無いんですね?!先ほど手元にあった小説で確認しました。正直、めちゃくちゃびっくりしました(苦笑)

<甘木様
初めまして!文章力の無さをセリフでごまかしてる浪速の協力者です(苦笑)今後もより良い物を書けるように努力します。ティーカップですが・・・正直、全く分かりません(爆)ただ、少しオシャレかな、と思っただけでしてw次回もよろしくお願いします!!

<羽堕様
初めまして!RAG FAIRの曲に影響されて書きましたw彼女の方は・・・多分浮気しないんじゃないかと思います。っていうか、浮気寸前まで行った時に、拓海君の悲しそうな顔が頭に浮かんで踏み止まる、という感じでしょうか?(何)次回もよろしくお願いします!!

<京雅様
感想ありがとうございます!自分に彼女がいないからって、ラブラブなカップルを想像しています(爆)夢中になって頂ければ、幸いでございます!スペース問題については本当に悩んでいます。自分のサイトで掲載したら、行間は2行空けるのが丁度良かったのですが、どうもこのサイトでは1行空けたら十分のようですね。今度からは1行だけにしときます。次回もよろしくお願いします!!
2005-04-06 10:39:44【☆☆☆☆☆】浪速の協力者
はじめまして。読ませて頂きました。……くすぐったい!なんか、もう…(言葉にならない)。これだけの短いシーンがこれほどの効果を読み手に与える作品っいいですね。ある意味SSの完成形のひとつかな、と。敢えて、欲を言うなら語り手(彼女)の心理をもう少し説明して欲しかったかな。この作品、拓海君ver.で読んでみたい気もしますけどね(笑)次回作にも期待しております。
2005-04-07 11:31:08【☆☆☆☆☆】樂大和
どうも、遅ればせながら拝読させて頂きました。いやあ、クサいですね。良い感じにクサいです(笑 表現や心情については皆様の記述にあるように感じました。しかし、私もなかなか誤魔化す部類の人間ですので特には気になりませんでした(笑 敢えて言うならば改行の多さでしょうか。特別重要である箇所以外は詰めておくと改行がより効果的になると思います。個人差はあるでしょうが。あとは、「普通、自分で自分のことを可愛いって言うか?」で言い負かされてしまうのに違和感。これは私の全くな私情だと思います(笑 次回も頑張ってください。
2005-04-07 21:04:46【☆☆☆☆☆】昼夜
返事が遅くなりました!ごめんなさい!!

<樂大和様
初めまして。感想ありがとうございます!やっぱり、ナレーションがこれだけじゃ心理も分かりにくいですよね(苦笑)拓海君ver.ですか?!う〜む………機会があれば挑戦してみます!(何)次回もよろしくお願いします!!

<昼夜様
感想ありがとうございます!!改行は素のミスです。プレビューせずに投稿してしまったので、改行された様子をちゃんとチェックしてませんでした(蹴)言い負かされた部分、僕自身も無理があると思いました(何)でも、あれ以外に思いつかなかったもんでして………。次回もよろしくお願いします!!
2005-04-08 23:17:53【☆☆☆☆☆】浪速の協力者
計:0点
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