『Another Morning       』作者:パクパク / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約3.92枚
  目覚めは何時も唐突だ。自分の意思とは関系無くそれは起きる。人間なんてそんなものだ。いい例を出して見ると、もし君がテストの点で悪い点を取ってしまったとしよう。君は必死になってそれを隠そうとするだろう。だけど、その悪い点のテストを君は無くしてしまい何所を探してもそれは見つからない。君は失望と激しい喪失感に打ちひしがれるだろう。しかし、なぜか君の母親が悪い点のテストを見つけてしまう。君は言い訳をする暇も無く母親に怒鳴られるだろう。つまり、僕が言いたいのは探している時は出てこないのに何でこう都合が悪い時に出てくるのだろうか。だが、それは物とは限らないのだ。僕はその事を改めて痛感した。
 覚めなければ良かったのに。
 まだ、ぼやけている頭をコツコツと叩くとゴンゴンと音が鳴った。視界がぼやけて辺りが薄暗く見えた。いや、僕の目がおかしいのではなくて僕がいるこの世界が薄暗いのだ。手を伸ばしてみると何かに触れた。ひんやりしてジャリジャリとした感触が掌に伝わった。それは壁であった。この世界のすべてがその壁にはあった。僕が今、わかる全てであった。四方八方に手を触れてみた。僕の周りは壁で囲まれていた。閉塞された世界に僕はいた。瞼を擦ると幾分、視界がマシになった。壁の表面にはパズルのように繋ぎ目が張り巡らされていた。僕は試しに拳で壁を叩いてみた。よく漫画で超人が壁に拳を叩くと「ガン!」、「ゴン!」やら「ドゴーン!」とか音が鳴って壁が木っ端微塵になるが現実はそうはいかない訳だ。「ガン!」、「ゴン!」ましてや「ドゴーン!」と音がなるはずも無く、「グニャリ」と嫌な音が鳴って、拳はまるでコンニャクのように跳ね返り僕の所に戻ってきた。
さて、どうしたものか。
 まず、何で僕がこの壁で囲まれた閉塞された世界にいるのか考えてみることにした。その前に僕は誰なのだ? まったく思い出せない。自分の姿がぼやけてハッキリしない。自分の名前さえもわからない。この世界が何なのか考える前に自分は誰かという事を考えてみた。僕は記憶のパズルを必死でかき集めようと思ったが僕には記憶という自体が無かった。僕は一体誰なのだ? 誰かに問いかける。僕の頭の中に広がる虚無の中を探したがそこにはもちろん何も無い。僕は無駄なことと知りその行為を止めた。元から無い記憶を探したって何も出てこないことがわかったからだ。
 それにしてもこの世界は窮屈で息苦しかった。さっきからずっと体育座りをしていたので尻が痛かった。体を動かそうとしても壁と壁にサンドイッチ状態になっているので動こうと思っても動けない。僕は何でここにいるのか? 何で記憶が無いのか? そんな事はどうでも良かった。早くこの体育座りを止めたかった。もう、この世界から抜け出せなくてもいいから座る姿勢をどうにかしたかった。しかし、僕にはどうにも出来なかった。そう、僕は鳥籠に縛り付けられた小鳥なのだ。自由も奪われた哀れな小鳥。この壁で囲まれた閉塞された空間が鳥かごで僕を束縛している事に苛立った。ふつふつと怒りが沸いてきたのでそれを抑えようと思い僕は眠ることにした。
 そう、再び夢の中に戻るのだ。そうすれば痛みも感情もいちいち感じなくてすむ。そうだ、元はと言えば誰かが僕を起こしたのが悪いんじゃないか。気持ちよく眠っていたのに叩き起こして。そう考えると無性に腹が立って怒りがまた、ふつふつと沸きがってきた。もう、眠ろう。そんな事を考えるのも苛立ってきたので僕は瞼を閉じた。この壁に囲まれた静寂した閉塞された世界と一体化するように何も考えず僕はその運命に身を任せた。


 あの時、僕を永い眠りから目覚めさせた人は誰だったのだろう。未だに僕はあの閉塞した世界で永久に続く夢を見ている。
  
2005-03-24 05:28:43公開 / 作者:パクパク
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■作者からのメッセージ
こんにちわ。
また、また投稿させていただきました。
では、感想・指摘待っています。

前回、感想を頂いた貴志川さん、Town Gooseさん、どうもありがとうございました(キーボードが故障中の為、返信できないのですいません
この作品に対する感想 - 昇順
こんちは。貴志川です。読ませていただきました。最初のところで少し笑いました(そこまで悪い意味ではないのですが テストと母親……まるでのび○君のようだ(笑 全体的にかなり渋い感じの話だったので、これは「うーーん(笑」と言う感じでした。正直ここで俺は「オチは笑える系かなあ」と思ってしまったので。あとオチはどこにあったのかなあ……とこれは個人的な読解力の不足から来る疑問なんですが(スミマセン… 全体的な雰囲気と、流れは面白かったです。ではノ
2005-03-23 14:57:42【☆☆☆☆☆】貴志川
う〜ん、なんとも。パクパク様の伝えようとした意図を読み取れなかった自分を許してください。ラストは死んでしまったと言うことでしょうか? ショートショートを読むと、スパッとしたオチを期待してしまうのでどうにも。いや、曖昧な作品も結構考えさせられていいのですが。パクパク様の次回作に期待しております。
2005-03-23 15:53:51【☆☆☆☆☆】影舞踊
始めまして上下と申します。
主人公がいったい何者なのかを考えさせられるストーリーですね。
ほとんど動くことも無く何も、何も覚えていない。
見事にその表現が出来ているとおもいます。
2005-03-23 20:00:19【☆☆☆☆☆】上下 左右
初めまして。読ませていただきました。冒頭のありきたりの世界が、僕の目覚めと共に異常な世界。この不条理感がいいですね。この作品は、トマス・M・ディッシュのSF小説「リスの檻」みたいな話しなのか、それとも子宮の中なのか、起こしたのは神様か、なとど読んだ後にも色々考えさせられ楽しめました。次回作も期待しています。
2005-03-23 22:47:19【☆☆☆☆☆】甘木
いやはや、感想が沢山、来てますね(^^:
結局、どういう話だったのかというと・・・・・・僕は読者に考えてもらうのが好きなので言いません(意地悪
まぁ、ヒントは「ひきこもり」ですね(これ以上は以上はいいません
あとこれはSSではないですね、オチがありませんし(貴志川さん、影舞踊さん、決してあなた方の読解力のせいではありませんよ(汗:


2005-03-24 05:27:23【☆☆☆☆☆】パクパク
計:0点
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