『色のある世界』作者:Town Goose / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約3.39枚
 目に映るものは総て無虚、
 黒と表さないのは色なんてものを視た事がなかったからだ。
 彼の名前は佐々木 創玄(ささき そうげん)盲目と言う先天的な位置づけをスタート地点に置かれてしまった現在中学3年生である。
 別に、目の見えないことに不満を感じたことは無い。もちろんそれは、眼が見えては見えないものが視えて来たからだ・・・・・なんてことは無い。
 ただ、どうでもよかった。果てしなく、どこまでも、気にする以前に気にする理由が見つからなかった
 それは彼の意識が果てしなくプラス思考だったからであろうか?
 否、ただ、先天的なものであったから、色のある世界を羨む前に存在を知らなかっただけだ。

「そんな時、俺は不良に絡まれたとさ…」

 そんなことを考えている場合ではないのが今の自分です、はい。道を歩いている途中、何故だか自分の周りは囲まれていた。この柵が不良だと気づいたのはいちゃもんを付けられたからだ。
  『…どこ見てんだごらぁ!!…』
 俺は、どこも見えない。そんな事言ってもこの人たち馬鹿だから分からんでしょうが…第一気付けよ、何で白い杖を持ってるのか、それ位分かるでしょうが。
 次の瞬間、意識が飛んだ。何が起こったかなんて分かるはずがない。無眼(め)を覚ました瞬間、激痛が走った。
 胸にあった財布の圧迫感が消えている。
 何も出来ないのは知っていた。眼が見えないと、相手の危険度が分からず、その大きさを限りなく過小評価するか、限りなく過大評価することしか出来ない。
 だから、受け入れるしかないのだ。どんな過大のものでも、どんな過小なものでも、危険が分からない以上、受け入れるしかないのだ。
「畜生…いてぇな………」
 それでも、佐々木創玄は眼の視得ない事を呪わない。
「何か、カッコイイかも、俺」
 そんな嘘孤自賛(じがじさん)を真に受け、ニヤリと顔を歪ませながら家へと帰る。

―――――ひた、ひた、ひた、ひた

 杖は折られてしまったが、ここから家までなら何とか壁を伝って帰れるだろう。

―――――ひたひたひたひたひたひたぁ

――――――愚著っという何か変な音

「あれ…?」

何か、硬いものが後ろから前に押し出された。
 抵抗は無い、そうなるのが当然のように光沢の帯びたモノが背中と胸を繋ぎ合わせる。まるでところてんの様だ、なんてことを考える自分は…

 視界が一気に白くなる、否、分からないそれは白と言っていい色なのか、それは青かそれは赤か、もしかしたら群青色とか言うものかもしれない。
 視得る、色の世界が。其処にあったのは道路と呼ばれるもの、灰色の平らで太い線が目の前にある。
 そして、自分の胸から溢れる血液、ならば今、目の前に移っている色が赤色というものだろう。
 そして、後ろにある何色か分からないジャケットに赤いTシャツ、そして何色か分からないズボンをはいた男。
 目の前が暗くなっていく、そして、虚無へと戻る…いや、虚無ではない、それは黒色。
 「畜生、・・・・・・・・・・・」      


 其処にあった無念は

 「畜生、眼が見えねえ……」


   完
2005-03-21 19:42:57公開 / 作者:Town Goose
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■作者からのメッセージ
素晴らしく突っ込みどころの多い作品です。批判をよろしくお願いいたします。
自分が今視ている色が確かな赤色であるという確証は無く、他の人が言う緑色が赤色という世界の定義となっているのか。もしかしたら自分以外の人と眼を交換したら色の変な世界が広がっているのではないか。そんなことを考えて書いてしまった作品です、はい・・・
この作品に対する感想 - 昇順
読ませていただきました。最後の辺りで色が普遍では無いという観念を上手く伝えていますね。私は当たり前に色を感じ、万人が同じように感じていると思っていたので面白く感じました。ただ色の観念がない人間が受けた衝撃を固有の色彩で表現していい物か……と考えてしまいます。例えば「目の前が暗くなっていく」の表現はどちらにもとれる表現で私は戸惑ってしまいました。佐々木創玄は光の濃淡はわかる盲人なのか、それともあくまで比喩で光りすらわからないのか。それによって文頭の虚無の概念も違ってくると思うのです。唐突な展開も少々戸惑う物ですが、これは小説の妙として判断しましょう(いいのかなぁ)。でも視点(揶揄ではありません)がいいし、面白く読めました。次回作を期待しています。
2005-03-21 20:18:46【☆☆☆☆☆】甘木
甘木さん、ご感想有り難うございます。つくづく自分の言葉足らずな文章を思い知らされました。必要を最小限に・・・と言うのが自分の中にあったのですが、それ以上に必要が足りていなかったのは致命的なミスだと思います。ご指摘有り難うございました。
2005-03-21 20:27:35【☆☆☆☆☆】Town Goose
良く言えば、目が見えないというのがとてもよく伝わってくる作品。悪く言えばつかみ所のない作品でした。文章を読んでも映像がほとんど浮かんでこない。主人公視点で描かれているので当たり前、むしろそれが面白かったです。盲目なことに対してマイナス思考じゃない主人公も好感が持てました。ただ、なんで殺されたのか(通り魔?)、なんで最後色が見えたのか(半分幽霊になった?)、展開が急だった感は拭えません。色々書きましたが、ショートとしてはありなんじゃないかなと(どんなまとめ? 次回作も頑張って下さい。
2005-03-21 21:34:28【☆☆☆☆☆】影舞踊
影舞踊さんご感想有り難うございます。情景が浮かんでこないとは俯瞰としての視点が無い・・・と言うことでしょうか?改善点として試みてみます。やはり物語の展開の速さは自分の文章の肉付けの足りなさ、そして構成力の無さだと思います。小説をもっと読んで勉強していきたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。
2005-03-21 22:43:14【☆☆☆☆☆】Town Goose
単刀直入で言うと、理解しにくかったです。まず、目の見えない人が「光沢を帯びたモノ」を表現できるかが微妙です。というのも、色を知らない人が光沢を言葉だけで理解し、尚且つほんの一瞬で光沢だとわかるか、というとかなり無理に近いでしょう。小説なのでそこまでこだわってほしいなと思いました。
通り魔(?)について、もう一つ。後ろから刺された場合、視界にズボンまで映るということは考え難いです;;創玄さんが相当の根性で見ない限りは…;;(僕の思い込みかもしれませんが;;)
妙なところばかり言ってきましたが、色についての疑問を小学生の頃考えた自分がいるのでとても楽しめましたwいい題材だなぁっと思ったのでこれからも頑張ってくださいw
2005-03-22 15:07:01【☆☆☆☆☆】鈴乃
鈴乃さん、ご感想有り難うございます。
こだわり不足ですね・・・(汗
やはり自分の小説には足りないものが多くあります。頑張りますのでこれからもよろしくお願いいたします。
2005-03-22 15:29:43【☆☆☆☆☆】Town Goose
計:0点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。