『アブノーマル 〜女と女〜』作者:桔梗 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約3.28枚
 今まであたしはノーマルだった。
好きになった相手はいつも男の子だったし、
その中の何人かとはそこそこのお付き合いもした。
 ところが17歳、高2にしてあたしに大きな転機が訪れる。
 あの子が、瑠璃子があたしを変えたのだ。

 初対面であたしは彼女に少なからず好意を抱いた。
 彼女は、目がまんまるで色白の顔も同じように丸く
小柄でぽちゃぽちゃした女らしい体つきをしている。
 誰が見てもかわいいなぁって思うような子だ。
 その上とても感じがよかったので
この子とお友達になりたいってあたしはすぐに思った。
 不思議なことに彼女もあたしに好意を持ってくれていたらしく、
 ある日同じ電車に乗り合わせたときに、
彼女の方からあたしに気軽に話し掛けてきて
こう言った。
 「わたし前から藤城さんと仲良くなりたいって思ってたんだ」
 このとき、お菓子に例えたらショートケーキのように彼女が甘く柔らかく笑ったことと、
全身が粟立つほどあたしは嬉しかったのを覚えている。
 そして特にお互い意識していたわけではないけど、
その時から自然にあたしと瑠璃子の
友達関係が始まった。
 瑠璃子のことはあたしははじめは一人の友達として
大好きだった。
だけど彼女のかわいさを一つまた一つと知っていくうちに、
あたしの中の彼女に対する好きという気持ちは
少しずつ姿を変えていった。
 彼女を抱きしめたい・・・
 彼女を独り占めしたい・・・
そんな欲望とエゴの絡んだ紛れも無い恋という感情。
 気がつくと
その気持ちは歯止めがきかなくなっていた。
 そしてさらに不思議なことに、
彼女もいつからかあたしのことを
同じように想っていたのだ。
 
 「わたし千景のことホントに好きかもしれない・・」
 いつもの下校途中、
二人で夕日の落ちた河の橋にさしかかったとき、
瑠璃子が声を震わせてそう呟いた。
 その瞬間にあたしの心の中で
何かがビクンと飛び跳ねたのを感じた。
 瑠璃子のことが好き。
 それは今まで自分の中に
必死であたしが封じ込めてきたもの。
 たとえあたしが彼女を好きでも
あたしは女で瑠璃子も女だ。
好きになってもどうしようもないんだから
彼女のことは好きになってはだめなんだと。
 今まで底の底に押さえつけて
安全な殻の中に静かに隠していたその気持ちは
彼女の言葉によっていとも簡単に
殻が破られてしまい
そこから容赦なく溢れ出して
やがてあたしの心一体に広がった。
 もうこれ以上閉じ込めておくことは不可能。
 彼女の横顔に夕日が差し、
その恥じらいに満ちた顔が
いよいよはっきりとあたしの目に映ったとき、
あたしは彼女をたまらなくいとおしいと感じた。
 そしてあたしは彼女の手をそっと握った。
 「あたしと、同じこと思ってたんだね・・・」

 それから、ちょっと変ったあたしと
瑠璃子の関係がスタートしたのだった。

 
 



  
 







2003-10-25 03:15:23公開 / 作者:桔梗
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