『公園と道化師と僕に幸あれ』作者:新先何 / V[g*2 - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約5.6枚
 学校は嫌いだ。制服を着るとどうしても首にある大きなあざを隠せないのだ、前に一回クラスメートに見られた、その時はみんなどんびきだった。だから外に出たり学校をさぼる時はタートルネックが必須だ。あざは父によって作られた、いつも起きる時間より遅れたせいか木刀で首をおもいっきり叩かれた時のもので僕の記憶を痛めつける不快な物だ。
 水泳の授業はさらに嫌いだ。パンツ一丁なので体中にある無数のあざと傷跡を隠す術が無く僕の周りには誰も近寄ってこない。まあ、普段からそうなのだが。
 体にあるあざと傷跡は全て父によって作られた。
 飯の後ゲップをしただけで脇腹を蹴られ、テレビを見ていると急に灰皿を投げ付けられたり、ちょっと口答えしただけで蝋を垂らされ大きな火傷を作った。また、内緒で買ってきたマンガを見つけられると父の趣味の剣道の稽古相手として竹刀で体を叩かれまくったこともあった。けど父は僕のことを嫌っているわけではないようだ。この前映画に連れっててくれたこともあった、見終わったあと父と話をした。父は今までしてきたことを許してくれ、と泣いて言っていた。だから父は僕のことが嫌いなわけではない、ただその日の後、夕食を作り忘れ、また竹刀で殴られた。

 僕は本屋で万引きしたマンガを公園のベンチで読んでいた。公園は小さく数人の人しかいなかった、前方のベンチにはいちゃつくカップル、隣のベンチで肩を落とすサラリーマン風の男、それから公園の隅にはホームレスが食料を捜して徘徊している。それだけの場所、意味は無いけど僕には居心地が良かった。風は頭の上から吹いていきページを3ページ程めくり足下へ抜けていった。
 マンガは4冊目に入って気が付けば昼飯時になっていた。向かいのベンチのカップルはいつのまにか険悪なムードになっていたが、詳細な経緯は知らない。隣のサラリーマンはやっぱり肩を落としたまま目の前の鳩にパン屑をあげていた。ホームレスの姿は見当たらない、多分食料が見つかり寝床に戻ったのだろう。
 近くのコンビニに入りインスタントラーメンを買い、ベンチに戻り食べ始めた。公園には新たな登場人物が現れていた。
 派手な服を着たおじさんが登場して、その格好がピエロだと気づいたのはしばらくしてからだった。ピエロはこの公園には似合わない。僕はしばらくそのピエロに見入ってた、始めはポケットから出したボールでジャグリング、まあ上手かった。ただピエロなら失敗した方が面白いのでは。いつの間にかさっきのホームレスがピエロの前で寝そべっていた。

 父に初めて買ってもらったのは竹刀だった。僕を剣道少年にしたかったらしい、ただ残念なことに行き過ぎたスパルタ教育のせいで今や竹刀を見るのもいやになってくる。もう竹刀は僕の物では無く父の、僕を虐める道具になっていた。驚いたことに今、ピエロが竹刀でジャグリングをし始めた。意味わかんねえ、まあピエロだから許されるのか?先ほどのカップルはいまだに関係が治っていないようだ、だったらとっとと別れちまえ。隣のサラリーマンは暇つぶしにいい物が見つかったと情けなく体育座りをしてピエロを見ていた、いい年にもなって体育座りかよ格好悪い。僕は再びマンガに目を戻す、面白いわけじゃ無いが変なピエロを見るよりはいい。ただ、ちょっとこの公園が居心地悪くなってきた、ピエロがギャラリーを集めてきたのだ。一輪車に乗って竹刀を振り回すピエロはそんな面白いか?

 母は、僕の小さい頃に交通事故で死んでしまったらしい。母がいれば余計なあざはできなかったかもしれない。僕の名前は母が付けてくれたらしい、平凡な名前だが僕は誇りを持っていた。僕と母をつなぐ唯一の物だから。父は僕のことをおまえとしか呼ばない、だから最近自分の名前を忘れそうになる。きっとあのピエロにも名前があるのだ。名前があるやつにおまえと言うのと同じくらいピエロと言うのは失礼なんだ。あのカップルにもあのサラリーマンにも名前はあるんだ。しかもみんな自分の名前を言ってくれる人がいるんだろう。ピエロは未だに一輪車の上でヨーヨーをやっていた。ピエロの回りにはいつのまにかかなりの数のギャラリーになっていた。

 のどかな、ピエロのいる日常だ。ただしばらくして変化が起きた。ピエロが僕らの上から叫んだ。一輪車から降りれないんだ。まあ、とんだピエロもいたもんだ。この言葉には僕も含めてカップルもホームレスもサラリーマンもほかのギャラリーも声を出して笑った。最初のうちは演技かと思っていた、けれどピエロの目から涙が出てきて本当に降りれないんです、と泣いて懇願してきた。最初に助けようとしたのはサラリーマンの男だった、その男とホームレスの男が一輪車を押さえ、次にいつのまにかよりの戻ったカップルがピエロの持っていた竹刀やらボールやらヨーヨーやらをキャッチし、最後に上から飛び下りてきたピエロを僕がキャッチした。

 もう一つとんでもないことが起きた。キャッチしたピエロの顔を見て僕はびっくりした。ピエロのインクが涙で落ち、その下からはあの父が出てきた。

 日もくれて僕は父と肩を並べて家に向かって歩いていた。会話は無かったけど、僕は父に対する見方がちょっと変わった。
 学校をさぼって公園でマンガを読んでいたことが怒られません様に、それから僕を名前で読んでくれます様に。
 僕に幸あれ、あっ父にも幸あれ。
2005-03-12 16:51:16公開 / 作者:新先何
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■作者からのメッセージ
テストが終わり前から考えていたピエロ物を書きました。とりあえずテストの結果は明後日とのことですが、めっちゃくちゃ不安です。特に英語、予想通り駄目だった。半分いくのだろうか、赤点にはなりません様に。お願い神様(ついでに他の教科も点数あげて)
ってこれ作品についてじゃないです。すいません。
えーと作品に付いてですが、まあ得に無し、ではなくこれZOO(乙一)の影響でバイオレンスな親を書きたくなって書きました。それに以前からのピエロをまぜた作品です。御感想、御指摘お願いします。
以上、新先でした。
この作品に対する感想 - 昇順
全く分からないオチでした。ですが、オチと言うにはあまりに唐突過ぎて、え?と言うのが正直な感想です。なんで父親がピエロなのか。やっていることに理由があったのか。なんで暴力を振るうのか、それも読み取れませんでした。(読解力不足かもですが あと少し読みにくい箇所が何ヶ所か。例えば「ピエロの回りにはいつのまにかかなりの数のギャラリーになっていた。」ここですが、「ピエロの周りには」じゃなくて「ピエロの周りは」のほうがしっくり来る感じがします。ストーリにテーマと言うものが感じられなかったのが原因かなぁと。辛口になってしまいましたが、新先何様の作品は案外楽しみにしております。次回作、期待しておりますので。
2005-03-12 23:36:36【☆☆☆☆☆】影舞踊
計:0点
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