『吟遊詩人』作者:神崎盛隆 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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あるにぎやかな街。
私は、この街を訪れていた。
私は、旅をしながら詩を作り、このハープの音色ともに唄う。簡単に言えば、私は吟遊詩人である。
今日は街の路上で唄うつもりだ。私の作った詩を聞いてくれる人に、喜びや悲しみなどの感情を味合わせてあげたい。そんな気持ちで始めたものの、やっぱり生きるには、金が必要だ。だから私は、聞いてくれた人からのおひねりを求めて唄っている。しかし、今までおひねりで稼いだ金は、たった一日分の生活費しか手に入らなかった。そして、私はこの街で唄って、その稼ぎ次第で辞めるか、辞めないかを決めたいと思う。

そして街の中央広場にて、私は唄う準備をはじめた。
準備といっても、座るところに布をひき、自分の前に缶を置くだけだ。
広場では、私の他の吟遊詩人やコメディアン達が歌などを披露している。私はすこし不安の気持ちになりながらも、地面に座り、ハープを弾き始める。
『消えゆく人 私を残して去って行く。どんなに追いかけても 私を残して去って行く―』
ハープの綺麗な音色と共に、私は悲しいそうな声で唄う。

詩がちょうど中盤に差しかかった時。私の綺麗なハープの音色に連れられて街の人達が私の所へ集まってくる。その中で、最初の所から聞いてくれている人が数人いて、その人達は、この詩に涙していた。その時、私はその人達の涙を見てやっと気づく。今までおひねりを目当てで唄っていた事が間違いだということを。そして私は、途中で唄い方を変えた。私の詩を聞いてくれている人達への感謝の気持ちをこめながら、私は唄う。そして詩は終盤に入り、今までの自分の愚かさに涙しながら唄い。そして最後を綺麗なハープの音色で閉めた。
その時、聞いてくれていた人達は、大きな拍手をあげ、たくさんの金が缶の中へと入って行く。そしてしばらくして、缶から金が漏れこぼれるほど入った。私は、その光景を見て、喜びと感謝の気持ちが胸の中をいっぱいにした。すると、人々の方からアンコールの声が上がり始める。
(ああ…神よ。本当にありがとうございます)
青く澄んだ空を見上げながら、私は神に感謝の意味を込めて祈りを捧げる。
そして私は、アンコールに答えてもう一つの詩を唄う事にした。その詩は、喜びと感謝の気持ちが詰まった、アンコールにちょうどいい詩だった――
2003-10-22 01:29:16公開 / 作者:神崎盛隆
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■作者からのメッセージ
ひとまず、はじめまして。ここに初めて投稿する神崎盛隆という者です。
この作品は、ある吟遊詩人が主人公で、ジャンルはファンタジーです。
では、今後ともよろしくお願いします
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